博 士 ( 医 学 ) 森 平 学 位 論 文 題 名
泰
コンドロ イチナーゼ ABC が椎間板に与える長期的影響 学位論文内容の要旨
[ 目 的 ]
Chymopapainに よ る 化 学 的 髄 核 融 解 術 は 欧 米 に お い て 臨 床 応 用 さ れ て い る が 、 組 織 毒 性 や ア ナ フ ィ ラ キ シ ー シ ョ ッ ク な ど の 副 作 用 が 報 告 さ れ て い る 。Chondroitinase ABCは ム コ 多 糖 分 解 酵 素 で あ り 、 椎 間 板 髄 核 に 含 ま れ る プ ロ テ オ グ リ カ ン を 特 異 的 に 分 解 し 、 椎 問 板 周 囲 の 神 経 血 管 組 織 へ の 毒 性 がchymopapainに 比 べ て 著 し く 少 な ぃ こ と が 報 告 さ れ て い る 。 し か し 髄 核 融 解 術 後 の 椎 間 板 の カ 学 的 特 性 に 対 す る 長 期 的 な 研 究 は 少 な < 、 chondroitinase ABCとchymopapainを 比 較 検 討 し た も の は な ぃ 。 本 研 究 で は 、 ブ タ 椎 間 板 に お け る 、 両 酵 素 に よ る 髄 核 融 解 術 の 長 期 的 な 影 響 を 、 生 体 力 学 的 、 形 態 学 的 に 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。
[材料 と方法 ]
(実験 材料)
成 熟 豚 11頭 を 使 用 し 、 X線 Chondroitinas、e ABCは、4.0un の highヰ ose群 の ニ 群 に 分 け ml/discで 、 対 照 用 生 理 食 塩 水 に6頭36椎 問 板 を 摘 出 し 、53週
(生体 力学試 験)
し た 。 ml/disc KU/O.05 入1週 後
椎 間 板 一 椎 体 複 合 体 を 作 成 し 、 自 作 の 三 次 元 荷 重 負 荷 装 置 を 用 い て屈 曲 ― 伸展 、 軸 回 旋、
左 右 側 屈 の6方 向 の モ ー メ ン ト を 負 荷 し た 。 検 体 の 運 動 は 二 方 向 同 時 写 真 撮 影 法 を 用 い て 記 録 し た 。 設 置 し た マ ー カ ー の 三 次 元 動 態 を 解 析 し 、 得 ら れ た 荷 重 一 変 位 曲 線 か ら 、 以 下 の2つ の パ ラ メ ー タ ー を 算 出 し た 。1. Range of Motiori. (ROM):最 大 負 荷時 の 回 旋 角 度 。2. Neutral Zone(NZ) :ONm負 荷 時 の 残余 変 位 。統 計 解 析 には , .one―way ANOVA とTukey―Kramer検 定 を 使 用 し た 。 ま た 、1週 時 と53週 時 の 変 イ 匕 に つ いて は 、StudentのT 検 定 を 用 い て 解 析 し た 。
(X線 計 測 )
薬 剤 注 入 前 と 注 入 後30月 毎 にX線 側 面 像 を 撮 影 し 、 椎 間 板 高 を 計 測 し た 。 椎 体 間 お よ び 撮 影 条 件 の 差 に よ る 影 響 を 除 く た め 、 椎 問 板 高 を 下 位 椎 体 高 に て 補 正 し たBrandnerの disc indexを 用 い て 評 価 し た 。 注 入 前 のIndexを100% と し て 、 注 入 後 の 椎 間 板 高 の 残 存 率 を 算 出 し た 。 椎 問 板 高 の 各 時 期 に お い て 、one―way ANOVAとTukey―Kramer検 定 を 用 い て 解 析 し た 。
( 組 織 学 的 検 査 )
非 破 壊 力 学 試 験 後 に 各 椎 間 板 を10% 中 性 ホ ル マ リ ン 固 定 し 、EDTA脱 灰 後 に パ ラ フ イ ン 切 片 を 作 成 し た 。 光 顕 用 標 本 はsafraninー0染 色 を 行 い 観 察 し た 。 ま た 免 疫 組 織 化 学 的 検 討 と し て 、 二 次 抗 体 を 用 い た 間 接 法 を 行 い 、typeIcollagenとtype IIcollagenの 局 在 を 光 学 顕 微 鏡 に て 観 察 し た 。
[ 結 果 ]
( 生 体 力 学 的 評 価 )
酵 素 注 人 後1週 時 、 屈 曲 ― 伸 展 で は 、 す ぺ て の 酵 素 群 でROMお よ びNZは 、 対 照 群 に 比 べ て 有 意 に 人 き か っ た (p<0. 05) 。 軸 回 旋 で は 、ROMは す べて の 酵 素群 で 対 照群 に 比 べ て有 意 に 大 き く 、NZはchymopapaln群 の み 対照 群 に 比べ て 有 意に 大 き かっ た (p<0,05) 。 左 右側
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※ 鬱 に1 2ゼ 板、 m間 間 と (
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、 は 後
屈では、群問に有意差を認めなかった。53 週時、屈曲ー伸展および左右側屈において、
すィ辷ての酵素群でROM およびNZ は減少し、対照群との有意差を認めなかった。軸剛旋で は、ROM でchymopapaln 群のみ対照群に比べて有意に小さかった(p 〈0 .
05)。すぺての酵素 群で
NZは減少し、対照群との有意差を認めなかった。また屈曲ー伸展、軸回旋、左右側 屈の
6方向において、すべての酵素群における
ROMおよびNZ は、1 週時および
53週時で有 意差を認めた(p <0 .05 )。
(X 線学的評価)
1
週時、すぺての酵素群で対照群に比べて有意に狭小化した(p <0 .
05)。その後の椎問板 高の経時的な変化では、
chymopapain群および
chondroitlnaseABC群いずれにおいても、
有意な同復は認めなかった。53 週時の残存率はehymopapain 群で75 .5 %、chondroitlnase
ABCのhighdose 群で85 .1 %、lowdose 群で87 %であった。またchymopapain 群の狭小化は、
chondroitinaseABC
両群と比較して有意であった(p 〈0 .05 )。
(組織学的評価)
1
週時では、すべての酵素群ともに、髄核の
safranin−O 染色性が消失した。
53週時では、
chondroitinaseABC
を注入した椎間板は、髄核のsafranin −0 染色性は回復したが、本来 の
notochordalcellは消失し、線維性に富む基質内に
chondrocyte類似細胞が出現して い た 。
chymopapainを 注 入 し た 椎 間 板 は
chondrocyte類 似 細 胞 は 散 在 す る が 、
chondroitinaseABC群に比較し髄核の線維化は著明であった。免疫組織学的に;ま,53 週時、いずれの酵素を注入した椎間板とも、髄核基質はtypencollag 帥抗体に反応し、
typeIcollagen
抗体に反応しなかった。
[考察]
酵素注入後
1週時、両酵素群で椎間の可動性の指標である
ROMおよびNZ の増加を認め、
本 研究におけ る化学的髄 核融解術の効果を示唆した。その後53 週時には
ROMおよびNZ は対照群と同等となり剛性の回復を認めた。これは酵素による侵襲に対して、生体にお ける椎間板内の反応が、椎間運動を安定化させた可能性がある。しかし生体力学特性の 回復と異なり、chymopap ヨin ならびにchondroitinase ABC のどちらにおいて´も、椎問 板高は明らかな回復を認めなかった。本実験の注入酵素の用量は、その臨床予想使用量 を考慮して、髄核の重量で厳密に補正して決定したが、ブタ椎問板は、臨床用量の酵素 注入にて、注入前の椎間板高は回復しないことが示された。組織学的には酵素注入後1 週時、両酵素ともに椎間板髄核の
safranin−O 染色性を消失させたが、53 週時には、線 維性に富む髄核基質が再構築され、そのsafranin −0 染色性は回復していた。免疫組織 学 的 所見から再 構築された 髄核基質は 主に
typeHcollagenに て構成され ており、そ れらはchondrocyte 類似細胞によってっくられた可能性がある。したがって化学的髄核 融解術後、破壊された椎間板基質は単に瘢痕組織によって埋められていくのではなく、
何 ら かの 再 生の メ カニ ズ ムが 働 い てい る こと が 示唆 さ れた 。
Chymopapainおよ び
chondroitinase ABCの比較においては椎間板高の狭小化はchymopapain において顕著 で あ り 、 注 入 後
53週 時 の 椎 間 板 変 性 も
chymopapainに お い て 高 度 で あ っ た 。
[結語]Chondroitinase ABC による化学的髄核融解術は、chymopapaln に替わりえる組 織 障 害 性 の 少 な い 新 し い 椎 間 板 内 療 法 と し て 今 後 の 臨 床 応 用 が 期 待 さ れ る 。
―580―
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
コンドロイチナーゼ ABC が椎問板に与える長期的影響
コ ン ド ロ イ チ ナ ー ゼABC( CABC) は 、 椎 間 板 髄 核 に 含 ま れ る プ ロ テ オ グ リ カ ン を 特 異 的 に 分 解 し 、 椎 間 板 周 囲 の 神 経 血 管 組 織 へ の 毒 性 が chymopapainに 比 べ て 著 し く 少 な い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 、 ブ タ 椎 問 板 を 用 い て 、 両 酵 素 に よ る 髄 核 融 解 術 の 長 期 的 な 影 響 を 、 生 体 力 学 的 、 形 態 学 的 に 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。 成 熟 豚 11頭 を 使 用 し 、CABCは 、 4.Ounit/0. 05 ml/disc ;
の 低 用 婁 群 と 、12. 5unit/0. 05 ml/discの 高 用 量 群 の 二 群 に 分 け 、22椎 間 ず っ に 経 皮 的 に 注 入 し た 。 Chymopapainは400pKU/O. 05 ml/discで 、 対 照 用 生 理 食 塩 水 , は0. 05 ml/discで そ れ ぞ れ11椎 間 に 注 入 し た 。 注 入1週 後 に36椎 間 板 を 摘 出 し 、53週 後 に 30椎 間 板 を 摘 出 し た ィ 屈 曲 伸 展 、 軸 回 旋 、 左 右 側 屈 の6方 向 の モ ー メ ン ト を 負 荷 す る 生 体 力 学 試 験 を 行 い 、 以 下 の 2っ の パ ラ メ ー タ ー を 算 出 し た 。1. Range of Motion( ROM): 最 大 負 荷 時 の 回 旋 角 度 。2.Neutral Zone
( NZ) :ONm負 荷 時 の 残 余 変 位 。 ま た 経 時 的 にX線 側 面 像 を 撮 影 し 、 椎 間 板 高 を 計 測 し Brandnerの disc indexを 用 い て 評 価 し た 。 注 入 前 の Indexか ら 注 入 後 の 椎 間 板 高 の 残 存 率 を 算 出 し た 。 ま た 、 非 破 壊 力 学 試 験 後 に 各 椎 間 板 の safranin− 0染 色 に よ る 組 織 学 的 検 査 を 行 っ た 。 免 疫 組 織 化 学 的 検 討 と し て 、 二 次 抗 体 を 用 い た 間 接 法 を 行 い 、 typeIcollagenと type IIcollagenの 局 在 を 調 べ た 。 生 体 力 学 試 験 で は 、 酵 素 注 入 後1週 時 、 両 酵 素 群 で 椎 間 の 可 動 性 は 増 加 し 、 そ の 後53週 時 に は 対 照 群 と 同 等 と な り 剛 性 が 回 復 し た 。 こ れ は 酵 素 に よ る 侵 襲に 対 し て、 生 体 に お け る 椎 間 板 内 の 反 応 が 、 椎 間 運 動 を 安 定 化 さ せ た 可 能 性 が あ る 。 し か し生 体 力 学特 性 の 回 復 と 異 な り 、 両 酵 素 群 と も 、 椎 間 板 高 は 明 ら か な 回 復 を 認 め な か っ た 。本 実 験 の注
男 樹
則
明 平
和
浪 原
田
三 杉
安
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
入酵 素の 用量 は、 その 臨床 予想使用量を考慮して、髄核の重量で厳密に補正して決定した が、 ブタ 椎間 板は 、臨 床用 量の酵素注入にて、注入前の椎間板高は回復しないことが示さ れた。組織学的には酵素注入後1 週時、両酵素ともに椎間板髄核のsafranin ー0 染色性を消失 させたが、53 週時には、線維性に富む髄核基質が再構築され、そのsafranin −0 染色性は回 復していた。免疫組織学的所見から再構築された髄核基質は主にtypeII collagen にて構成 されており、それらはchondrocyte 類似細胞によってっくられた可能性がある。Chymopapain にお いて
CABCと比 較す ると 、椎間板高の狭小化および椎間板変性が高度であった。CABC に よる化学的髄核融解術は、chymopapain に替わりえる組織障害性の少ない新しい椎間板内療 法と考える。
審 査に あた り、 副査 杉原 教授よりCABC 群の群間で差が無かった理由についての質問があ り、 用量 は臨 床用 量か ら計 算されたため、低用量群においても酵素による十分な効果があ った 可能 性が ある こと を回 答した。また、今後解決すべき問題についての質問に対し、臨 床応 用に おい て、 必然 的に 治療効果が重要であり、現在、多施設で臨床試験が行われてい ることを回答した。副査安田(和)教授より対照群の生理食塩水注入の影響についての質問 があ り、 組織 学的 に炎 症性 細胞の浸潤などの変化は認められず、影響はないと判断したこ とを 回答 し、 酵素 の有 効性 についての質問に対し、本実験の結果から有効性にっいての評 価は 難し い事 を回 答し た。 また、主査三浪教授より椎間板ヘルニアのタイプによって臨床 適応が変わるかについて
CABCを担体と供に使用することの可能性についての質問があり、
CABC
は椎 間板 周囲 の組 織に 対しての障害が少ない酵素のため、protrusion タイプのへルニ アだけでなく、chymopapain では危険である脱出髄核への適応の可能性があること、その際 には 、安 定し て酵 素が 働く ために、適当な担体の使用が有効と考えられる事を回答した。
こ の 論 文 は 、
CABCに よ る 髄 核 融 解 術 の 長 期 的 な 影 響 を 検 討 し た 独 創 的 な 研 究 で あ り 、 す で に 臨床 応 用 さ れ て いる
chymopapainと 比較 し組 織障 害性 の少 なく 、椎 間板 運 動機 能を 温存 する こと を明 らかに した 点で 脊椎 の椎 間板 内治 療分 野に 大き く寄 与し た。
CABC
. に よ る 化 学 的 髄 核 融 解 術 は 、
chymopapainに 替 わ り え る 組 織 障 害 性 の 少 ない新しい椎間板内療法として今後の臨床応用が期待される。