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博士(医学)亀岡正典 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)亀岡正典 学位論文題名

前単球系細胞株であるU937 に由来するサブクローンにおける HIV ―1 感染とアポトーシス誘導の感受性に関する研究

学 位論文内容の要旨

  ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV‑1)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスで あり、HIV‑1感染からAIDS発症へと向かう病態進行は、HIV‑1の主な宿主細胞である CD4陽性細胞の減少と密接な関わりを持っことが明らかにされている。HIV‑1感染個体 は、ー・過性の急性感染期を経た後、平均9.8年にも及ぶ長い無症候(AC)期に入る。この AC期末梢血より分離されるウイルスは、主に単球ーマクロファージ系細胞に感染する 弔球指向性ウイルスである。このことは、単球ーマクロブァージ系細胞へのHIV‑1感染 が、AC期中に徐々に進行する免疫不全の誘導に深く関わっていることを示唆している。

    そこで、HIV‑1感染宿主細胞としての重要性が示唆される単球ーマクロフアージ系 細胞へのHIV‑l感染様式を明らかにすることを目的として、前単球系細胞株U937より樹 立 し た 分 化 ス テ ー ジが 異 なる サ ブク ロ ーン を 用い たHIV‑1感 染 実験 を 行っ た 。   前単球系細胞株U937より限界希釈法により樹立したサブクローン46株は、そのHIV‑1 感受性を指標として、2株のHIV‑1高感受性型(high‑type)、2株の低感受性型(low‑type)、 及び42株の中間型(middle‑type)に型別された。非感染状態のサプクローン代表6株(各型 2株づっ)の細胞表面抗原の発現を調べたところ、細胞表面のCD4分子の発現量には各型 間で大きな差は認められなかったが、LFA‑1の発現量はhigh ‑typeサブクローンで最も低 く、low‑typeサブクローンで最も高かった。HIV‑1感染後に現れる細胞の変化として、

活性酸素の産生がhigh‑typeサブクローンでは感染後、初期から一貫して永続的に認めら れるのに対して、low‑type及びmiddle‑typeサプクローンでは一過性にウイルス抗原発現 量が高い時期にのみ認められた。また、HIV‑1感染に伴う分化誘導の結果と考えられる 付着細胞がhigh‑typeサブクローンにのみ出現した。これらの結果は、各サブクローンの HIV‑1感染感受性の違いは、細胞の分化程度の違いに依っていると考えられた。HIV‑1 感受性に違いが認められた原因を明らかにするため、ウイルスの吸着量、ウイルスDNA 合成量、ウイルス転写効率についての解析を行った。その結果、今回high‑typeサブクロ ーンで認められた高感受性は、ウイルス吸着率や染色体への組み込み型のHIV‑1DNA量 には依存しておらず、非組み込み型のHIV‑1 DNA量に依存していることが判明した。

  一方、HIV‑1感染生体内においてCD4陽性細胞の減少にはアポトーシスが関与すると いう報告が多数ある。このHIV‑1感染に伴うァポトーシス誘導の大きな特徴としては、

(2)

アポトーシスが主にHIV‑1ゲノム陰性の細胞に起こっていることが挙げられる。この知 見はHIV‑1感染に伴い、ウイルスの間接的な影響によルアポトーシスが誘導されること を示しているが、AIDS病態進行とHIV‑1の転写量には正の相関関係が認められること、

即ちCD4陽性細胞数の減少はHIV‑1の複製とぃう直接的な影響の結果であるとも考えら れ、矛盾点を含んでいる。そこで、HIV‑1感染実験に併せて、上記U937由来サプクロー ンのアポトーシス誘導についての解析も行った。今回、我々は感染者生体内でもその存 在が確認されていながらも、そのAIDS病態への関わりが全く解明されていない不完全 HIV・1粒子の細胞への吸着が細胞に及ぼす影響に着目して、そのアポトーシス誘導能に ついての解析を同様のサブクローンを用いて行った。不完全HIV‑1粒子としては、以前 に樹立されていた非感染性HIV‑1粒子(L‑2粒子)を用いた。その結果、HIV‑1に対する感 受性の低い2株のIow‑typeサプクローンは、2株のhigh‑typeサブクローンに比ペ、TNF‑a や抗Fas抗体と同様に、非感染性の不完全HIV‑1粒子(L‑2粒子)の吸着により誘導される アポトーシスに高い感受性を示すことが判明した。また、この不完全HIV‑1粒子により 誘導されるアポトーシスはU937のみでなく、健常成人より分離した末梢血Tリンパ球に も、細胞活性化依存的に認められることもわかった。

  これらの結果より、今回樹立したU937由来サブクローンにおけるHIV‑1感染の感受性 とァポトーシス誘導の感受性は逆相関の関係にあった。

  HIV‑1感染生体内におけるアポトーシス誘導について、HIV‑1が感染し活発なウイルス 複製が起こっている細胞にはアポトーシスが認められず、アポトーシスはむしろ非感染 細胞で起こっているとの報告がなされている。即ち、生体内にはHIV‑1が感染し活発な ウイルス複製を行う細胞種とHIV‑1によるアポトーシス誘導を受ける細胞種は別々に存 在すると考えられる。今回のU937由来のサブクローンを用いた、HIV‑1感染感受性とア ポトーシス感受性が逆相関の関係にあるとぃう結果より、これらサプクローンを用いた 解析がHIV‑1感染生体内で起こってる現象を解明する上で重要なモデル系となり得るも のと考えられる。

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学位論文 審査の要旨

     学位論文題名

前単球系細胞株であるU937 に由来するサブク口ーンにおける HIV ―1 感染とアポトーシス誘導の感受性に関する研究

  ヒ ト免 疫不 全ウ イル ス1型(HIV‑1)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスで あ り 、HIV‑1感 染 か らAIDS発 症 へ と 向 か う 病 態進 行 は 、HIV‑1の主 な宿 主細 胞で ある CD4陽性細 胞の 減少 と密 接な 関連 性の ある こと が示 され てい る。HIV‑1感染 個体 は、 一 過性 の急 性感 染期 を経 た後 、平 均9.8年に も及 ぷ長 い無 症候(AC)期に入るが、このAC期 末梢 血よ り分 離さ れる ウイ ルスは、主に単球ーマクロファージ系細胞に感染する単球指 向性 ウイ ルス であ る。 この こと は、単 球ー マク ロフ ァー ジ系細胞へのHIV‑1感染が、AC 期 中 に 徐 々 に 進 行 す る 免 疫 不 全 の 誘 導 に 深 く 関 わ っ て いる こ と を 示 唆 し て い る 。   そ こで 、前 単球 系細 胞株 であ るU937より 樹立 した 各種 サブクローンを用いたHIV‑1感 染実 験を 行っ た。 樹立 した サブ クロー ン46株は 、そ のHIV‑1感受性 を指 標と して 、2株 のHIV‑1高 感 受 性 型(high‑type)、2株 の 低 感 受 性 型(low‑type)、 及 び42株 の 中 間 型 (middle‑type)に型別された。非感染状態のサブクローン代表6株(各型2株づっ)の細胞表 面抗 原の 発現 を調 べた とこ ろ、 細胞表 面のCD4分子 の発 現量には各型間で大きな差は認 められなかったが、LFAー1の発現量はhigh ‑typeサブクローンで最も低く、low‑typeサブ クロ ーン で最 も高 かっ た。HIV‑1感受 性に 違い が認 めら れた原因を明らかにするため、

ウイ ルス の吸 着量 、ウ イル スDNA合成 量、 ウイ ルス 転写 効率についての解析を行った。

その結果、今回high‑typeサブクローンで認められた高感受性は、ウイ´レス吸着率や染色 体 へ の 組 み 込 み 型のHIV‑1DNA量 には依 存し てお らず 、非 組み 込み 型のHIV‑1 DNA量に 依存していることが判明した。

  一 方、HIV‑1感染 生体 内に おい てCD4陽性 細胞 の減 少に はア ポト ーシ スが 関与 する と いう 報告 が多 数あ る。 このHIV‑1感染 に伴 うァ ポト ーシ ス誘導の大きな特徴としては、

アポ トー シス が主 にHIV‑1ゲ ノム 陰性 の細 胞に 起こ って いることが挙げられる。この知 見はHIV‑1感染 に伴 い、 ウイ ルス の間 接的 な影 響に よル アポトーシスが誘導されること を示 して いる が、AIDS病態 進行 とHIV‑1の 転写 量に は正 の相関関係が認められること、

即ちCD4陽 性細 胞数 の減 少はHIV‑1の複 製と ぃう 直接 的な 影響 の結 果で ある とも 考え ら れ、 矛盾 点を 含ん でい る。 そこ で、HIV‑1感染 実験 に併 せて、上記U937由来サブクロー ンの アポ トー シス 誘導 につ いての解析も行った。今回、感染者生体内でもその存在が確 認さ れて いな がら も、 そのAIDS病態へ の関 わり が全 く解 明されていない不完全HIV‑1粒 子の アポ トー シス 誘導 能に ついての解析を同様のサブクローンを用いて行った。不完全

良 敬

和  

  利

田 木

生 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

HIV‑1粒子としては、非感染性HIV‑1粒子(L‑2粒子)を用いた。その結果、HIV‑1に対する 感受性の低い2株のlow‑typeサブクローンは、2株のhigh‑typeサブクローンに比ベ、

TNF‑aや抗Fas抗体と同様に、非感染性の不完全HIV‑1粒子(L‑2粒子)の吸着により誘導さ れるアポトーシスに高い感受性を示すことが判明した。また、この不完全HIV‑1粒子に より誘導されるアポトーシスはU937のみでなく、健常人より分離した末梢血Tリンパ球 にも、PHA、ConA、Ionomycinにる細胞活性化依存的に認められることも明らカゝになっ た。これらの結果より、今回樹立したU937由来サブクロ亠ンにおけるHIV‑1感染の感受 性とアポトーシス誘導の感受性は逆相関の関係にあった。

  HIV‑1感染生体内におけるアポトーシス.誘導について、HIV‑1が感染し活発なウイルス 複製カ瀧こっている細胞にはアポトーシスが認められず、アポトーシスはむしろ非感染 細胞で起こっているとの報告がなされている。即ち、生体内にはHIV‑1が感染し活発な ウイルス複製を行う細胞種とHIV‑1によるアポトーシス誘導を受ける細胞種は別々に存 在すると考えられる。今回のU937由来のサプクローンを用いた、HIV‑1感染感受性とア ポトーシス感受性が逆相関の関係にあるとぃう結果より、これらサブクローンを用いた 解析がHIV‑1感染生体内で起こってる現象を解明する上で重要なモデル系となり得るも のと考えられる。

本研究は、AIDS病態進行に係わる中心的と現象と考えられるアポトーシス誘導に関し て、感染性の認められないドーナツ様粒子の関与の可能性を初めて示したものであり、

申請者が博 士(医学) の学位を受 けるのに充 分な資格を 有するもの と判定した。

参照

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