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博士(医学)森 律明 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)森   律明 学位論文題名

力学的負担減少による腱組織リモデリングにおける オステオポンチンの役割

学位論文内容の要旨

序諭 :骨や筋肉はカ学的 ストレスの環境下 で人体の動きに対 しカ学的な支えを提 供し、その構造や組成、再 構築 (ルモデルング)は カ学的負荷に感受 性がある。腱は骨 と筋肉を連結する組 織であるが、筋肉によって 発生 するカを骨に伝達し 関節の動きやその 保護作用に重要な 役割を持つ。骨や筋 肉がカ学的負荷感受性組織 で ある こ とと 同様 に、これ まで腱に対するカ 学的負荷減少の効果 は腱のカ学的強度 の低下や腱の構成 成分 であ るコラーゲン線維径 を減少することが 知られている。し かしながら、力学的 負荷による腱組織リモデル ン グ過 程 にお ける 分 子生 物学 的 メカ ニズ ム は十 分に 解 明さ れて い ない 。オ ス テオ ポンチン (以下OPN: osteopontin)は、元来骨組織中に存在する非コラーゲン性細胞外マトリックス蛋白質として同定されているが、

力学 的負荷よる骨リモデ リングの引き金と なる重要な因子で あることが示されて いる。OPNは皮膚創傷治癒 過 程 や 損 傷 筋 肉 再 生 過 程 で も 関 係 し て お り 、 多 彩 な 機 能 を 有 す る サ イ ト カ イ ン 様 の 分 子 で あ る。

  筋・ 骨 格系 組織 の細胞で ある骨芽細胞、筋 芽細胞、皮膚や腱の 線維芽細胞は間葉 型幹細胞から分化 して おり 、骨・腱・靭帯・筋 肉は多能性幹細胞 から分化した同一 の機能的なユニット であると考えられ る。OPN は カ学 的 負荷 に関 係するサ イトカインであり 、著者らは腱に対す るカ学的負荷減少 の効果はオステオ ポン チン の存在によって調節 されるという仮説 を考えた。本研究 の目的は、(1)正常腱組織 におけるオステオ ポ ンチ ン の発 現を 確 証す るこ と 、(2) Wild‑type (WT)マウ スとOPN knockout (KO)マウスの両群で カ学 的 負荷 減 少後 、膝 蓋 腱の 超微 細 構造 変化 を形態学的に 解析すること、(3)力学的負 荷減少後の膝蓋腱 にお け るOPN mRNAの 発 現 変 化 を 調 べ る こ と 、(4) OPNに 基 づ い た 腱 組 織 リ モ デリ ン グの メカ ニ ズム を明 らか にすることである。

方 法 と 結 果 :1. 腱 線 維 芽 細 胞 に お け るOPNの 発 現 解 析 。RT‑PCRに よ り 正 常 膝 蓋 腱 か ら のOPN mRNA の 発 現 を 確 認 し 、 ま たOPNはWTマ ウ ス正 常膝 蓋 腱の 線維 芽 細胞 に局 在 して いる こ とが 免疫 組 織化 学染 色 の結 果 より 明ら か にな った 。2. コ ラーゲ ン線維の超微細構造 解析。透過型電子 顕微鏡による腱の 形態 学的 解析の結果、6週間除負荷さ れた腱はコント口ー ルと比較しコラー ゲン線維径や111D12あたりのコラー ゲ ン線 維 の面 積率 は 有意 に減 少 した 。し か しOPN KOマ ウス では そのような変化は みられず、統計学 的に コ ラー ゲ ン線 維径 及 び面 積率 の 平均 変化 率 は共 に、wrマウ スはOPN KOマウスと比 較し有意に低値を 示し た 。こ れ らの 結果 より、除 負荷による腱リモ デリング過程にOPNが関係し ていることが示唆さ れた。3.除 負 荷後 の 麗組 織中 に おけ るOPN遺伝 子 の発 現変 化 の解 析。 除 負荷 後の 膝 蓋腱 組織 中 のOPN mRNAの経 時的 発 現変 化 を定 量的real‑time PCR解析 を行った。OPN mRNAの発現は除負荷 後3日目に 有意に増加し、そ の後 除 負荷 後5日 に かけ て急激な減少を示 し除負荷6週目まで抑制され た状態であった。 免疫組織化学染色 によ     ー621−

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るOPN蛋 白 質 の 発 現 変 化 も 同 様 の 結 果 で あ っ た 。4.OPNに 基 づ い た 腱 組 織 リ モ デ リ ン グ に お け る メ カ ニ ズ ム の 解 析 。 本 実 験 で 示 唆 さ れ た 除 負 荷 に よ る 腱 コ ラー ゲ ン 線 維 径 減 少 のメ カ ニ ズ ム の1っ と し て 、コ ラ ー ゲ ン 産 生 の 変 化 が 関 係 す る か ど う か 検 討 し た 。Real‑time PCR解 析 結 果 よ り 、除 負 荷3日 目 と14日 目の 腱 組 織 は そ れ ぞ れ 反 対 側 の コ ン ト ロ ー ル 腱 組 織 と比 較 し コ ラ ー ゲ ンmRNAの 発現 に 有 意 な 差 は 無 かっ た 。 さ ら に 、 除 負 荷 さ れ た 腱 組 織 中 に お け る 線 維 芽 細 胞 のア ポ ト ー シ ス の 程度 を 経 時 的 に 調 べた が ア ポ ト ー シ ス 陽性 細 胞 の 存 在 は 認 め ら れ な か っ た 。 以 上 よ り 、 本 モデ ル に よ る 腱 リ モデ リ ン グ 過 程 で コラ ー ゲ ン 産 生 変 化 の関 与 は 少 な い こ と が 示 さ れ た 。 次 に コ ラ ー ゲ ン 分 解に 関 係 す るMMP‑13 m心 岨 . の 経 時 的 発現 変 化 に つ い て 解析 を 行 い 、MMP‐13の 発 現 は 除 負 荷 後2週 目 に 有 意 な 増 加 を 示 し た 。 こ のMMP‐13の 発 現 の 増 加 はoPNの 発 現 が 一 過 性 に 増 加 し そ の 後 減 少 す る 頃 に 見 ら れ る た め 、 同 様 の 腱 リ モ デ リ ン グ 過 程 に お い て0PNの 有 無 に よ る MMP・13の 発 現 を 比 較 し た 。Wrマ ウ ス で は 、MMP‐13の 発 現 は 除 負 荷 後2週 目 で 平 均21倍 ま で 増 加 し た が、

0PNK0マ ウ ス で は 平 均4倍 の み の 増 加 で あ っ た 。 さ ら に 腱 線 維 芽 細 胞 に お け る0PNとMMP,13の 直 接 の 関 係 を 明 ら か に す る た め に 、 培 養 腱 細 胞 を 用 い た 実 験 を 行 っ た 。OPNと そ の 受 容 体の 結 合 を 阻 害 す るGRGDS の 合 成 ペ プ チ ド やOPNの 受 容 体 を 阻 害 す る 抗aVイ ン テ グ リ ン 抗 体 の 添 加 に よ りMMP‐13m心 帆 の 発 現 増 加 が み ら れ 、OPNは イ ン テ グ リ ン 受 容 体 を 介 し て MMP‐13の 発 現 を 調 節 す る こ と が 示 さ れ た 。 考 察 : 本 研 究 結 果 よ り 、OPN欠 損 で は 除 負 荷 に よ る 腱 組 織ル モ デ リ ン グ 過 程に お い て 有 意 な コ ラー ゲ ン 線 維 の 形 態 学 的 変 化 は な く 、OPNは 除 負 荷 に よ る 腱 リ モ デ リ ング 過 程 に 重 要 な 役割 を 果 た す 分 子 で ある こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 同 リ モ デ リ ン グ 過 程 に お い て0PNm心 岨 発 現 増 加 は 除 負 荷 後3日 日 ま で に 起 こ り 、 こ の 結 果 は 骨 ル モ デ リ ン グ 過 程 や 損 傷 筋 肉 再 生 過 程 に お ける0PNの 早 期 発 現 増 加を 示 す 過 去 の 報 告 と一 致 す る 。 筋 ・ 骨 格 系 軟 部組 織 リ モ デ リ ン グに お い て は 、 細 胞 外マ ト リ ッ ク ス 蛋 白質 の 合 成 と 分 解 の微 妙 な調 節を 行う。

そ の り モ デ リ ン グ 過 程 を 行 う 主 要 な 因 子 は 、 コ ラ ー ゲン 合 成 に 関 し て は タイ プIコ ラ ー ゲ ン で あ り 、分 解 に 関 し て は コ ラ ゲ ナ ー ゼ で あ る 。 コ ラ ー ゲ ン 合成 に 関 し て は 、 本研 究 結 果 よ り 除 負荷 に よ る 腱 組 織 リ モデ ル ン グ 過 程 に コ ラ ー ゲ ン 産 生 抑 制 や ア ポ ト ー シ スの 関 与 は み ら れ なか っ た 。 コ ラ ー ゲン 分 解 に 関 し て は 、本 研 究 モ デ ル に お い て は マウ ス に お け る 有 カな 組 織 コ ラ ゲ ナ ーゼ で あ るMMP‐13の 遺 伝 子 発 現 変 化 の解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 力 学 的 負 荷 減 少 に よ る 腱 ル モ デ リ ン グ 過 程 に お い てMMP‐13の 有 意な 発 現 変 化 に 先 行し てOPNの 発 現 変 化 が 起 き て い る こ と が 示 さ れ 、0PN欠 損 で は こ のMMP.13の 有 意 な 発 現 変 化が 抑 制 さ れ た 。 これ ら の 結 果 はOPNが 腱 線 維 芽 細 胞 の カ 学 負 荷 を 感 知 す る ト ラ ン ス デ ュ ― サ ー と し て 機 能 し て い る 可 能 性 が 示 さ れ 、 さ ら に 同 リ モ デ リ ン グ 過 程 でOPNがMMP.13を 調 節 し て い る こ と を 示 し た 。 ま た 、 培 養 腱 線 維 芽 細 胞 に よ る0PNとMMP‐13の 関 係 を 示 す 実 験 か ら 、0PNはR(mを 介 しaVinteg血 に 接 着 す る こ と に よ り 腱 細 胞 か ら のMMP.13遺 伝 子 発 現 を 調節 し て い る こ と が示 唆 さ れ た 。

  以 上 よ りoPNは カ 学 的 負 荷 減 少 に よ り 一 過 性 に 発 現 変 化 が 起 き 、 そ の 発 現 変化 か らMMP・13の発 現 が 誘 導 さ れ 腱 組 織 リ モ デ リ ン グ 過 程 の 形 態 学 的 改 変 に 関 与 する こ と が 示 唆 さ れ た。 今 後 、OPNの 局 所 発現 を 操 作 し た り 、0PNと そ の 受 容 体 の 相 互 作 用 を 制 御 し た り す る こ と に よ り 、 筋 ・ 骨 格 系 軟 部 組 織 の り モデ リ ン グ 過 程 を コ ン ト ロ ー ル で き る 可 能 性 が あ り 、 病 的 な 組 織 リ モ デ リ ン グ 過 程 を 含 め てさ ま ざ ま な 筋 ・ 骨 格系 軟 部 組 織 疾 患 に 対 する 新 し い 治 療 戦 略に 有 効 で あ る と 考 えら れ る 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

力学的負担減少による腱組織リモデリングにおける      オステオポンチンの役割

   骨 や 筋 肉 が カ 学 的 負 荷 感 受 性 組 織 で あ る こ と と 同 様 に 、 こ れ ま で 腱 に 対 す る カ 学 的 負 荷 減 少 の 効 果 は 腱 の カ 学 的 強 度 の 低 下 や 腱 の 構 成 成 分 で あ る コ ラ ー ゲ ン 線 維 径 を 減 少 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 力 学 的 負 荷 に よ る 腱 組 織 リ モ デ リ ン グ 過 程 に お け る 分 子 レ ベ ル の メ カ ニ ズ ム は 十 分 に 解 明 さ れ て い な い 。 オ ス テ オ ポ ン チ ン ( 以 下 OPN :  osteopontin) は 、 元 来 骨 組 織 中 に 存 在 す る 非 コ ラ ー ゲ ン 性 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス 蛋 白 質 と し て 同 定 さ れ て い る が 、 力 学 的 負 荷 よ る 骨 リ モ デ リ ン グ の 引 き 金 と な る 重 要 な 因 子 で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。 筋 ・ 骨 格 系 組 織 の 細 胞 で あ る 骨 芽 細 胞 、 筋 芽 細 胞 、 皮 膚 や 腱 の 線 維 芽 細 胞 は 間 葉 型 幹 細 胞 か ら 分 化 し て お り 、 骨 ・ 腱 ・ 靭 帯 ・ 筋 肉 は 多 能 性 幹 細 胞 か ら 分 化 し た 同 一 の 機 能 的 な ユ ニ ッ ト で あ る と 考 え ら れ る 。 こ れ ら の 理 論 的 背 景 と 分 子 レ ベ ル に お け る OPN の 役 割 か ら 、 学 位 申 請 者 は 腱 に 対 す る カ 学 的 負 荷 減 少 の 効 果 は 骨 同 様 に OPN の 存 在 に よ っ て 調 節 さ れ る と い う 仮 説 を 考 え た 。 本 研 究 目 的 は カ 学 的 負 荷 減 少 に よ る 腱 組 織 リ モ デ リ ン グ 過 程 に お け る オ ス テ オ ポ ン チ ン の 役 割 を 解 析 す る こ と で あ る 。

   結 果 は 、 ま ず 腱 組 織 に OPN 発 現 と OPN 蛋 白 の 局 在 を 確 証 し た 。 次 に 除 神 経 に よ る マ ウ ス 膝 蓋 腱 除 負 荷 モ デ ル を 作 成 し 、 こ の モ デ ル に よ る 腱 組 織 リ モ デ リ ン グ 過 程 6 週 に お け る 超 微 細 構 造 解 析 に お い て 、 WT マ ウ ス は コ ラ ー ゲ ン 線 維 径 が 統 計 学 的 に 有 意 に 減 少 し た の に 対 し 、 OPN KO マ ウ ス で は コ ラ ー ゲ ン 線 維 径 の 変 化 が な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 OPN は 除 負 荷 に よ る 腱 組 織 リ モ デ リ ン グ 過 程 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 分 子 で あ る こ と を 示 唆 し た 。 ま た 、 WT マ ウ ス に お い て 同 リ モ デ リ ン グ 過 程 で は OPN 遺 伝 子 発 現 増 加 は 除 負 荷 後 3 日 目 ま で に 認 め ら れ 、 さ ら に 組 織 コ ラ ゲ ナ ー ゼ で あ る MMP‑13 の 遺 伝 子 発 現 増 加 が 除 負 荷 後 2 週 目 に 認 め ら れ た 。 OPN の 遺 伝 子 発 現 変 化 が MMP‑13 の 有 意 な 発 現 変 化 に 先 行 し て 起 き て い る こ と か ら 、 OPN 欠 損 マ ウ ス に お い て 同 様 な 実 験 を 行 っ た と こ ろ 、 WT マ ウ

男 光

明 利

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

ス で観察され た除負荷 2 週目の MMP‑13 の 有意な発現 増加は OPN 欠損では抑制 さ れ て いるこ とが明らか になった。 さらに培養 腱線維芽細 胞による OPN と MMP‑13 の直 接の関係を 示す実験で は、OPN は RGD を介 し av integrin に接着 することにより腱細胞からの MMP‑13 遺伝子発現を調節していることも示唆さ れた。

   以上より、 OPN はカ学的負荷減少により一過性の発現増強が起き、その一過性 刺激からMMP‑13 の発現増強が起こり腱組織リモデリング過程の形態学的改変 に関与することが示唆された。

   審 査に あ たり 、 山本 有 平教 授 から 、 (1) 除 負荷による OPN とMMP‑13 遺伝 子の経時的発現変化に関して両者のピークにタイムラグが起きている理由につ いて、 (2) OPN のオートクライン、パラクラインによる機序による差が血vitro と in vivo の結果の違いに影響しているかどうかについて、三浪明男教授から(3) ワイヤーで腱の周囲を締結し固定する完全な除負荷モデルと本研究モデルであ る 除神経によ る除負荷モデルとの違いについて、 (4) 骨代謝に関係している BMP とOPN の 関連性につ いて、 (5) 本研究結 果から治療 薬への発展 性につい て 、 上 出 利 光 教 授 か ら (6) MMP 切 断 OPN 、 ト 口 ン ピ ン 切 断 OPN で は av イ ンテグリン以外の受容体に相互作用することによる影響について、(7) 本研究 の実験動物であるマウスのようなclear な実験系ではなくヒトのような複雑な 場合の影響について、(8) in vivo のようにin vitro においてもカ学的負荷刺激 による細胞培養実験は可能であるかについて、以上これら(1 )〜(8 )の質問 に対して学位申請者は今回行った実験結果と過去の文献を引用し、適切に回答 した。

   この論文は、力学的負荷減少による腱組織リモデリング過程にオステオポン

チンが関係することを面vivo 及び血ガぬりで証明したことは高く評価され、今

後 腱 組 織 の 研 究 発 展 や 腱 劣 化 予 防 剤 の 開 発 に 大 い に 期 待 さ れ る 。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得

単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有する

ものと判定した。

参照