博士(医学)信太 学位論文題名
知
ア ドレナリ ン作動性届受容体を介するモルモット心室筋 の細胞内Na +, K ゛, C1 一活動度と細胞内 pH の変化
学位論文内容の要旨
アドレナリン作動性ロ受容体刺激は、心臓の機能に大きな影響を及ぼすが、これと関連 があると考えられる、ロ受容体体刺激による心室筋細胞膜のイオン・チャネルと担体輸送 系の活性変化については、広く検討されている。ー方、これらの活性変化によって、細胞 内イオン活動度の変化と、それに起因する膜電位変化と細胞内pH(pHi)の変化が生じ、
興奮と収縮に影響するものと思われるが、これらロ受容体体刺激による心筋細胞内イオン 環境の変化に関する総合的な検討はない。そこで、本研究ではイオン選択性微小電極法に より、ロ受容体刺激によるモルモット右室乳頭筋の細胞内Na゛、K゛、Cl一活動度(aiN。、
a'K、aicI) 、 静 止 膜 電 位 、pHiの 変 化 及 び そ の 細 胞 内 機 構 に つ い て 検 討 し た 。
【方法】体重200―400gの雌雄のモルモットから右室乳頭筋を摘出し、重炭酸塩または HEPES緩衝タイロード液で表面l灌流した。ガラス微小電極とイオン選択性微小電極を同一 の標本に刺入し、静止状態での細胞内電位を記録した。得られた諸値は、平均値土標準 誤差 で表 した 。統 計学的 検討 は、t検定及び分散分析を行って検討し、危険率(p)が 0.05より低いものを有意とした。
【実験結果】
@ モ ル モ ッ ト 乳 頭 筋 に お け る ロ 受 容 体 刺 激 に よ る 静 止 膜 電 位 の 脱 分 極 重炭酸塩緩衝タイロード液濯流下において、モルモット右室乳頭筋の静止膜電位は、
−93.1土0.5 mVであ った 。Isoproterenol(ISO)1皿Mを 投与 する と、 静止膜 電位 は 投 与 開 始 後2分 で7.2土1.4mVの 最 大 脱分 極を示 し、 その 後は 再分 極し た。ISOに よ る静止膜電位脱分極は、選択的ロ1遮断薬atenolol 10 11Mで抑制されたが、選択的ロ2 遮 断 薬ICI 118,551 0.1 uMでは 抑制 され なかっ た。 また 、forskolin 10 UMやdi− butyryl cAMP 10 mMでも静止膜電位の脱分極が観察された。
◎ISOに よ る 静 止 膜 電 位 脱 分 極 に 対す るイ オン ・チ ャネ ル及 び輸 送系 遮断薬 の影 響 Na゛チ ャネ ル遮 断薬tetrodotoxin 10 uM、Ca2゛チャネル遮断薬nifedipine 10 11M 過 分 極 誘 発性 内 向 き 電 流 (If) を 抑 制す るCs゛5mM、内 向き 整流K+電 流を抑 制す る Ba2゛0.3 mM、Na゛/H゛交換系とNa゛/Ca2゛交換系を抑制するamiloridelmMは、ISOに よる脱分極には影響しなかった。これに対して、Cl―電流を抑制するanthracene−9− caboxylic acid(9AC,lmM) によ って 、ISOによ る脱 分極 は2.5土0.6mVへと 有意 に 減弱した。
◎声受容体 刺激による静止膜電位脱分極時のa'K、aiN|、aicIの変 化
aiKはISOに よ っ て127.2土5.9 mMか ら138.0士7.9 mMへ と 増 加 し た 。a'N。 は ISOに よ っ て3.0土1.1 mMか ら0.8土0.2 mM減 少 し た 。Ouabain 10 uMでNa゛ /K pumpを 抑 制 す る と 、a'Nユ は 徐 々 に 増 加 し た 。Ouabain存 在 下 にISOを 投 与 し て も 一 過 性 脱 分 極 が 観 察 さ れ 、aiN。 の 増 加 傾 向 はISO投 与 前 後 で 変 化 し な か っ た 。a'clはISO に よ っ て24.6土3.7 mMか ら17.9土3.3 mMヘ 滅 少 し た 。aiclの 減 少 は 、9ACに よ って著明に 抑制された。
@ロ受容体 刺激によるPHiの変化
HEPES緩 衝 タ イ ロ ー ド 液 濯 流 下 で は 、ISOに よ っ てpHlは7.16土0.03か ら 0.08 士0.01 pH単 位 低 下 し た 。 重 炭 酸 塩 緩 衝 タ イ ロ ー ド 液 濯 流 下 で は 、pHiは7.13土0.08 か ら0.08土0.01 pH単 位 低 下 し 、 両 者 の 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。Atenololに よ っ てISOに よ るpIItの 低 下 は 抑 制 さ れ た が 、ICI 118,551で は 抑 制 さ れ な か っ た 。HEPES 緩 衝 タ イ ロ ー ド 液 灌 流 下 でf orskolin,dibutyryl cAMP,epinephrine 10 uM,nor― epinephrine 10 11MもpHlを低下させた 。
◎Na゛ /H゛ 交換 系、Cl―/HC03―交 換系 、Na゛/HCOヨ ―共 輸送 系及 び解糖 系阻害薬とISOに よるpHiの低下
HEPES緩 衝 タ イ ロ ー ド 液 濯 流 下 で 、amilorideに よ っ てpHiは7.17土0.05か ら 7 .11土0.04へ と 低 下 し た 。Amilo ride存 在 下 で は 、ISOに よ るpHiの 低 下 は 、0.14 士0.02 pH単 位 へ と 増 強 し た 。 重 炭 酸 塩 緩 衝 タ イ ロ ー ド 液 濯 流 下 で は 、CI−/HC03一 交 換 系やNa /HC03―共輸送系を抑制する4,4 ―diiso thiOCYan.atostilbene−2,2 ‑disulf onic acid(DIDS,lmM) は 、pH,の 変 化 を 来 さ な か っ た 。ISOに よ るpHi低 下 はDIDSで は 影 響 を 受 け な か っ た 。2ーdeOXY91ucose 5.5 mMやiodoacetec acid 0.3 mMで 解 糖 系 を 抑 制 す る と 、HEPES緩 衝 タ イ ロ ー ド 液 濯 流 下 で のISOに よ るpHi低 下 は 抑 制 さ れ た 。 【考 案】 静止 モル モ ット 乳頭 筋が ロ受 容体 刺激 によ って 、一 過性 に脱 分極することが明ら か に な っ た 。ISOに よ る 一 通 性 脱 分 極 はCs゛ に よ っ て 影 響 を 受 け な か っ た の で 、 モ ル モ ッ ト 乳 頭 筋 の 一 過 性 脱 分 極 は 、 ヒ ツ ジPurkinje線 維 で 報 告 さ れ たCs゛ に よ り 抑 制 さ れ る 脱 分 極 反 応 (Glitsch HG,et al.(1986)Pflugers Arch 406: 144−150,TerrisS,et al.(1986)AmJPliysiol 251: H1056―H10 61) とは 明ら かに 異な るも のと 思わ れる 。 了過 性 脱 分 極 と 脱 分 極 の 際 に 観 察 さ れ たaiclの 減 少 が 、9ACに よ っ て 抑 制 さ れ た こ と か ら 、 こ の 現 象 はCl− を 担 体 と す る 内 向 き 電 流 が 活 性 化 し 、Cl− の 流 出 が 生 じ た こ と に よ る も の と 思 わ れ る 。a'Kの 増 加 とafN。 の 減 少 は 、Na゛/K pumpの 活 性 化 に よ る も の と 思 わ れ る 。Plliの 低下 は.A→kinaseの活 性化 によ る解 糖系 の亢 進に よる もの であ り、Na゛/H゛交 換 系 は 、pHi低 下 に 対 し て 補 償 的 に 働 いて いる 可能 性が あ るも のと 思わ れた 。Cl−/HC03‑
交 換 系 とNa゛/HC03ー 共 輸 送 系 は 、pHi調節 にあ まり 関与 して いな いも のと 思わ れた 。 .‐
【 結 諭 】 モ ル モ ッ ト 静 止 乳 頭 筋 に お いて ロ受 容体 を刺 激す ると 、内 向きCl― 電流 の 活性 化 に よ る 静 止 膜 電 位 脱 分 極 とa'cl減 少 、Na゛ /K゛pump活 性 化 に よ るa'K増 加 とa'Na 減 少 、 解 糖 系 の 活 性 化 に よ るPHiの 低 下 が 生 じ る こ と が 明 か と な っ た 。 こ れ ら の 変 化 に よ っ て ロ 受 容 体 刺 激 に よ る 電 気 カ 学 的 反 応 が 修 飾 さ れ て い る も の と 思 わ れ た 。
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学 位 論 文 審 査の 要旨
主査 教授 松本脩三 副査 教授 斎藤秀哉 副査 教授 剱持 修
学 位 論 文 題 名