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博士(医学)森田 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)森田 学位論文題名

甲状腺腫瘍の脈管造影診断に関する臨床研究 学位論文内容の要旨

緒  言

  甲状腺は本来血管に富む臓器であり,その脈管構築ならびに血行動態が腫瘍の性質,伸展範囲 に深く関与しており,甲状腺腫瘍の診断には脈管造影が最適と推定される。しかしながら甲状腺 の支配動脈は多重支配でその分岐は細く複雑多岐にわたり,また多血性小臓器であることから腫 瘍内脈管の重なりが多く微細病変の判定が困難で,還流静脈への移行が早く十分な実質像が得に くいという血管解剖上,造影像読影上の問題点を有している。これらのことより甲状腺動脈への 選 択的カテーテル挿入は極めて困難とされ,また造影像と組織所見の橋渡しとなるmlcroan‑

giogramの検討を欠いているため腫瘍の支配動脈,腫瘍内血管の形態的変化が不明瞭で造影診 断法として一般化していないのが現況である。本研究では選択的甲状腺動脈造影手技の確立をめ ざ すと共に,得られた動脈造影像の定性的,定量的検討,mlcroangiogramと組織所見の対比 を行って甲状腺腫瘍に対する脈管造影診断の診断成績,診断限界を明らかにし非侵襲性画像診断 法が普及した今日に於ける本法の適応にっいて述べる。

研究対象ならぴに研究方法

  1.研究対象: 1972年4月〜1992年4月迄の20年間に甲状腺腫瘍ならびに上皮小体腫瘍の造影 診断を目的として選択的甲状腺動脈造影か施行された169例を対象とした。これら症例のうち造 影手技に関しては169例を,造影診断に関しては手術により病理組織診断の確立した94例を,摘 出甲状腺腫瘍のmicroangiogramは19例を対象とした。  .

  2.研究方法:1)手技に関する事項:腫瘍の局在により左右上下に大別し左右上下甲状腺動 脈への選択的挿入率を求めた。っいで年令別では20才以下〜 60才以上迄を6段階に区別して各年 令層に於ける平均挿入率を,年代別には1972年〜 1975年,1976年〜1979年,1980年以降の3期に わけ挿入率の年次推移を検討した。

  2)読影に関する事項:甲状腺動脈造影所見の読影は@腫瘍の支配動脈,@甲状腺動脈本幹の

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性条,◎甲状腺動脈分枝の性条,@腫瘍内血管の性状,◎腫瘍実質像の性状,◎静脈相の出現時 間,◎甲状腺腺外動脈の性状の7項目にっいて検討した。このうち@に関しては頻度を,◎〜◎

に関しては所見と各疾患間でのェ 検定による定性的検討を行った。◎◎◎にっいてはX線フィ ルム上の所定の位置を計測し平均値,不偏標準偏差,標準誤差を求め各疾患間の計測値のェ 検 定による定量的検討を行った。

  3)摘出標本の組織学的 検索;mlcroangiogram所見の辺縁,内部濃染と,組織所見に於け る 血 管 腔 の 大 き さ , 分 布 状 態 と を 対 比 し 各 疾 患 に 於 け る 頻 度 を 求 め た 。   4)造影診断に関する事項;2),3)の結果を基礎に甲状腺腫瘍の良性・悪性と各疾患間の 識別要点をェ゜検定に求めてその診断成績,診断限界を検討した。

  5)適応に関する事項;1),4)の結果を基礎に非侵襲性画像診断法の普及した今日に於け る本法の適応を検討した。

研究成績

  1.手技に関する成績;1)甲状腺動脈への選択的挿入率;右上甲状腺動脈70.8%,右下甲状 腺動脈72.6%,左上甲状腺動脈66.7%,左下甲状腺動脈86.3%で平均挿入率は73.8%である。

  2)年令別挿入率;各年令層に於ける平均挿入率は右上甲状腺動脈90.O%,81.O%,88.9%,

73.9%,66.7%,21.1%,右下甲状腺動脈100%,96.2%,92.3%,68.O%,57.9%,23.5%,

左上甲状腺動脈88.9%,90.0%,65.2%,75.0%,49.2%,46.7%,左下甲状腺動脈100%,91.

7%,95.8,90.9%,73.3%,64.3%である。

  3)施行年代別の挿入率;3期に分けた各年代別の平均挿入率は72.6%→57.3%‑ 86.9%であ る。

  2.造影に関する成績;1)腫瘍の支配動脈;甲状腺腫瘍の支配は上甲状動脈68.1%,下甲状 腺動脈18.1%,上下同時支配13. 8%で甲状腺腫瘍は腫瘍の局在に関係なく約80%の頻度で上甲状 腺動脈支配である。

  2)甲状腺動脈本幹の性状;5%危険率で有意差を認めた所見は拡張,壁硬化像でロ径計測値 では慢性甲状腺炎と全疾患間である。

  3)甲状腺動脈分枝の性状;5%危険率で有意差を認めた所見は圧排・伸展,拡張,壁硬化,

狭少,中絶像で,分枝間距離の計測値では嚢腫と乳頭状腺癌,腺腫,慢性甲状腺炎間である。

  4)腫瘍内血管の性状;5%危険率で有意差を認めた所見は多血性か乏血性か,正常・細小,

圧 排 ・ 伸 展 , 屈 曲 ・ 蛇 行 , 壁 硬 化 , 網 状 形 成 , 広 狭 不 整 ・ 断 裂 像 で あ る 。

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  5) 実 質 像の 性 状 ;5%危 険 率 で 有 意差を 認めた 所見は 辺縁 性状, 内部濃 淡,陰 影欠損 像で , 実 質 像 最 大 長 径 計 測 値 で は 嚢 腫 と 腺 腫 様 甲 状 腺 腫 , 悪 性 リ ン パ 腫 間 で あ る 。   6) 静脈相 の出現 時間 ;5% 危険 率で有 意差を 認めた 疾患は 無い 。

  7) 甲 状 腺腺 外 動 脈 の 性状 ;5% 危 険率で 有意差 を認め たの は腺外 動脈描 出率で は乳頭 状腺 癌 と腺腫 ,嚢腫 ,慢性 甲状 腺炎間 ,濾胞 状腺癌 と慢 性甲状 腺炎間 であり ,濃染 像描 出率で は乳頭状 腺癌と 全良性 疾患, 濾胞 状腺癌 間であ る。

  3. 組 織 学的 検 索 の 成 績; microangiogramと 組 織 所 見を 対 比 す る と, 乳 頭 状 腺癌 では 辺縁 不整(66.7%) ,内 部不均 一(100%) ,血管 腔の 大小不 同(88.9%) ,不均 一分布 (100%)を示 し,濾 胞状腺 癌では 辺縁 不整(50%) ,内部 不均一 (100%) ,血管 腔の中〜小(100%),均〜不 均一 分 布 (100% )であ る。こ れに対 して 腺腫で は辺縁 整(80%), 内部 不均一(60% ),血 管腔 の中〜 小(40%), 不均 一分布(60%),腺腫様甲状腺腫,嚢腫では辺縁整(100%),内部均一(10 0% ),血 管腔の 小(100% ),均 一分布 (100%) である 。

  4, 造 影 診断 に 関 す る 成績 ;1) 良 性・ 悪 性 の 識 別診 断 成 績; 良性・ 悪性疾 患間 で5% 危険 率 で有意 差を認 めたの は動 脈分枝 の性状 におけ る正常,中絶像,腫瘍内血管の性状に於ける全所見,

腫瘍実 質像の 性状に 於け る辺縁 ,内部 濃淡, ゛陰影欠損像ならびに腺外動脈性状の全所見である。

これ ら 所 見 に 基づ く良性 ・悪性 の正診 率は94例中87例,92.6% であ るが誤 診例をretrospectlve に 検 討 しmicroangiogram所 見 を 加 味 す ると 診 断 限 界 と 考え ら れ る 正 診率 は94. 7%で あ る。

  2) 各疾患 問の識 別要 点と診 断限界 ;各疾 患間の 診断 成績は 乳頭状腺癌93.9%,濾胞状腺癌91.7

%, 腺 腫 様 甲 状腺 腫O% , 腺腫83.3%,嚢 腫85.7% ,慢 性甲状 腺炎88.9%,悪 性リン パ腫O%で あり, 疾患間 の正診 率は94例中76例,80.9% であ る。

  5. 適 応 に関 す る 事 項 ;甲 状 腺 腫 瘍に 対する 本法 の適応 は,1)腫 瘍局在 が狭部 あるい は両 葉 に存 在 し 悪 性 が否 定 し え な い 。2) 慢 性甲状 腺炎に 性状の 異な る結節 が存在 する。3) 末分化 癌 が疑 わ れ る 。4) 原発 不明|Jン パ節転 移で甲 状腺原 発が疑 われ る。5)胸 腔内甲 状腺腫 あるい は 縦隔 浸 潤 が 疑 われ る 。6) 再発 甲 状 腺 癌で大 量出血 が予測 され る。7)周 囲大血 管浸潤 が疑わ れ る 。8) 甲 状 腺 動 脈 の 血 行 異 常 , 副 血 行 路 と し て の 機 能 が 疑 わ れ る 。 の8項 目 で あ る 。

考  察

  甲状 腺動脈 への選 択的挿 入率 を左右 する因 子は血 管解剖 ,年 令,カ テ―テルの形状,挿入手技 ならび に挿 入手順 である 。年令 では40代を境 に挿入 率が低 下し 上甲状 腺動脈では右側に比して左 側が, 下甲 状腺動 脈では 左側に 比して 右側 の挿入 率が低 下する 原因 はいず れも加令に伴う基幹動

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脈の 屈曲・ 蛇行, 延長 である 。この ためダ ブル リバー スを付 け先端 はさら に内 側方に屈曲させた cobra型 ,head・hu nter型 カ テ ー テル を 考 察 自 作 し, 挿 入 手 順 も解 剖 学 的 分岐走 行より 左下

→右 上→左 上→右 下の 順序で ,また 頚部を 中心 とした 体位転 換によ り基幹 動脈 が常に前方に向き 直線 化する 体位を 維持 するこ とによ り合理 的で かっ短 時間で 挿入可 能とな った 。したがって挿入 率も 諸家の 報告に よる60%前 後,著 者の初 期成績57.3%を 大幅に 改善し え,1980年以降は86.9% と十 分臨床 応用可 能な 挿入率 となっ ている 。

  甲状 腺 動脈 造影読 影要点 と診断 限界 を検討 する目 的で, 諸家の 報告 より7項目 の読影 要点を 上 げ自 験94例 の定量 的,定 性的検 討を行 った が,5%危 険率で 有意差 を認め たの は5項目であった。

良性 ・悪性 の識別 要点 は動脈 相にお ける広 狭不 整,断 裂とい った腫 瘍血管 の存 在と毛細管相に於 ける 腫瘍実 質像の 濃淡 不均一 ,辺縁 不整, 甲状 腺線外 動脈に 於ける 濃染像 の存 在でその診断率は 92..6%と高 率で ある。 疾患間 の識別 には 上記要 点を中 心に良 性,悪性を区別し,特徴的腫瘍内血 管像 を読影 するこ とに より診 断可能 で疾患間の正診率は80. 9100であったが,良性疾患内の腺腫様 甲状 腺腫と 腺腫は 極め て類似 しその 識別は 困難 であっ た。診 断限界 を検討 する ため誤診例をret‑

rospectiveに 検 討す る と そ の 原因は 腫瘍血 管な ど悪性 所見の 見落と し, 良性腫 瘍にお ける血 管 など 二次変 性によ る腫 瘍実質 像での 辺縁不 整, 濃淡不 均一の 出現, 被包化 悪性 腫瘍に於ける辺縁 整, 濃淡均 一像の 三っ に大別 しえた 。特に 問題 となる 実質像 に於け る辺縁 の整 ・不整,濃淡の均 一 はmicroangiogramと 組 織所 見 対 比 か ら腫 瘍 内 血 管 腔の 拡 張 程 度 と分 布 密 度によ るこ とが判 明 し , 見 落 と し 例 を 除 く 良 性 ・ 悪 性 の 正 診 率 は94.7% と さ ら に 向 上 し た 。   甲状 腺腫 瘍に対 する放 射線学 的診断 法は 非侵襲 的画像 診断法 が主 体とな ってい る現在,手技の 工夫 と習熟 により 挿入 率が向 上した とはい え手 技の煩 雑さ, 侵襲度 ,重篤 な合 併症を考慮すると 本 法 は誰 にで も施 行可能 で安全 な検査 法とは 言い 難い。 しかし なから 先述 した8項目 の適応 に従 えぱ 手技も 用意で 合併 症の発 生率, 危険率 も低 下し, 加えて 現在脈 管造影 に広 く応用されている digital subtraction angiographyを 併用 す る こ と によ り診断 精度が 向上し 診断 法とし てより 一般 化する と考え る。

結  語

  1)甲 状腺腫 瘍の支 配動脈 は約80%の頻 度で上 甲状 腺動脈 である が下甲 状腺 動脈, 上・下 甲状 腺動脈 同時 支配も 存在す るので 造影診 断に 当たっ ては一 側同時 選択 的上・ 下甲状腺動脈造影法が 基本的 手技 である 。

  2)選 択 的上 ・ 下 甲 状 腺動 脈への 挿入率 は年令 ・血 管解剖 のほか ,カテ ーテ ルの形 状,挿 入手

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技 ,挿 入手順 による が,研 究期 間に於 ける改 良,工 夫によ り施 行初期57.3%から86.9%に改善し え ,臨 床検査 手技と しての 有用 性を確 立した 。

  3)造 影所見 の読影 要因は 動脈 相に於 ける腫 瘍内血 管の 性状, 毛細血 管に於 ける腫 瘍実 質像の 辺 像な らびに 濃染の 性状で あり これに より甲 状腺腫 瘍の良 性・ 悪性の 正診率94.7%,疾患間の正 診 率80.0% を得 た。

  4) 造 影 所見 に よ る 診 断 限界 を 検 討 す る目 的 で 摘 出 腫瘍 のmicroangiogramな ら び に 組 織学 的 検討 を行い ,診断 困難の 原因 は出血 ,壊死 ,嚢胞 形成と いっ た二次 的変性 のほか,腫瘍内血管 腔 の拡 張程度 や分布 密度に よる ことが 判明し た。

  5)選 択的上 ・下甲 状腺動 脈造 影法は 甲状腺 腫瘍に 対す る最も 優れた 診断法 ではあ るが ,その 侵 襲 性 を 考 慮 し , 非 侵 襲 性 診 断 法 が 発 達 し た 今 日 に 於 け る8項 目 の 適 応 を 提 言 し た 。

学位論文審査の要旨

I研 究目的

  選択 的甲状 腺動脈 造影 手技の 確立をめざし,申状腺腫瘍に対する脈管造影診断の診断成績,

断限 界を明 らかに し,本 法の 適応に っいて 検討し た。

n対象 ならび に方法

  1. 研究 対 象 ; 1972年4月‑1992年4月 迄 の20年間に 甲状 腺腫瘍 ならび に,上 皮小 体腫瘍 の造 影 診 断 を 目 的 と し て 選 択 的 甲 状 腺 動 脈 造 影 が 施 行 さ れ た169例 を 対 象 と し た 。   2.研 究方法 ;

  1) 手技に 関する 事項; 腫瘍 の局在 により 左右上 下に 大別し ,左右 上下甲 状腺動 脈へ の選択 的 挿 入 率 を , っ い で 年 代 別 に は 3期 に わ け 挿 入 率 の 年 次 推 移 を 検 討 し た 。   2) 読影に 関する 事項; 甲状 腺動脈 造影所 見の読 影は 腫瘍の 支配動 脈,甲 状腺動 脈本 幹・分 枝 の 性状, 腫瘍内 血管 ・実質 像の性 状,静 脈相 の出現 時間, 甲状腺 外動脈 の性状等にっいて検討し

従 一

正 純

舘 野

古 内

授 授

教 教

査 査

主 副

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た。

  3)摘出標本の組織学的 検索;microangiogram所見と,組織所見を対比し各疾患に於ける 頻度を求めた。

  4)造影診断に関する事項;甲状腺腫瘍の良性・悪性と各疾患間の識別要点,診断成績,診断 限界を検討した。

  5)適応に関する事項;非侵襲性画像診断法の普及した今日における本法の適応を検討した。

m成  績

  1.手技に関する成績;平均挿入率は77.8%である。

  2.造影所見に関する成績;1)甲状腺腫瘍の支配動脈は腫瘍の局在に関係なく約80%の頻度 で上甲状腺動脈支配である。2)甲状腺動脈本幹の性状;拡張,壁硬化像等である。3)甲状腺 動脈分枝の性状;圧排,伸展,拡張,壁硬化,狭少,中絶像等である。4)腫瘍内血管の性状;

多血性か乏血性か,細少,圧排,伸展,屈曲,蛇行,壁硬化,網状形成,広狭不整,断裂像等で ある。5)実質像の性状;辺縁性状の異常,内部濃淡,陰影欠損像等である。6)静脈相の出現 時間;有意差を認めた疾患は無い。7)甲状腺外動脈の性状;腺外動脈描出と濃染像描出である。

  3.組織学的検索の成績;乳頭状腺癌・濾胞状腺癌では辺縁不整,内部不均一,血管腔の大小 不同・不均一分布を示した。これに対して腺腫では辺縁整が多く,内部不均一,血管腔の狭小・

不均一分布等は比較的少なかった。腺腫様甲状腺腫,嚢腫では辺縁整,内部均一,血管腔の狭小

・均一分布を示した。

  4. 造 影診断に関する成績 ;1)良性,悪性の正診率は94例中87例,92.6%であるがmi‑

croangiogram所見を加味す ると正診率は94.7%でる。2)各疾患間の正診率は94例中76例,8 O.9%である。

IV考  察

  甲状腺動脈への選択的挿入率を左右する因子は血管解剖,年令,カテーテルの形状,挿入手技 ならびに挿入手順である。年令では40代を境に挿入率が低下し上甲状腺動脈では右側に比して左 側が,下甲状腺動脈では左側に比して右側の挿入率が低下する。原因はいずれも加鈴に伴う基幹 動脈の屈曲,蛇行,延長である。このためダブルリバースを付け,先端はさらに内側方に屈曲さ せたcobra型,head ‑ huter型カテーテルを考案自作し,挿入手順も解剖学的分岐走行により 左下→右上→左上→右下の順序で,また頚部を中心とした体位転換により基幹動脈が常に前方に

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向き直線化する体位を維持することにより合理的でかつ短時間で挿入可能となり,挿入率を大幅 に改善し得た。

V結  語

  1)造影診断に当たっては一側同時選択的上,下甲状腺動脈造影法を基本的手技とすべきであ る。2)選択的上,下甲状腺動脈への挿入率を改善し得,臨床検査手技としての有用性を確立し 得た。3)甲状腺腫瘍の良性,悪性の正診率を改善した。4)造影所見による診断困難の原因は 出血,壊死,嚢胞形成といった二次的変性のほか,腫瘍内血管腔の拡張程度や分布密度によるこ と が 判 明 し た 。5)選 択 的 上 , 下 甲 状 腺 動 脈 造 影 法 の 適 切 な 適 応 を 提 言 し た 。   本研究の価値判定;選択的上,下甲状腺動脈への挿入率を改善し得,臨床検査手技としての有 用性を確立し,造影所見による診断困難の原因を解明し,選択的甲状腺動脈造影法の適切な適応 を提言した。よって,本研究は学位授与に値すると考えられる。

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