ハリケーンの影響で雇用者数は下振れ
9月の非農業部門雇用者数は、大型ハリケーンの影響により前月比▲3.3万人と7 年ぶりの減少、市場予想(ブルームバーグの集計では同+8.0万人)も大幅に下回る 結果となった。また、過去2ヵ月分の雇用者数は合計3.8万人の下方修正となった(7 月分は同+18.9万人から同+13.8万人に下方修正となる一方、8月分は同+15.6万人 から同+16.9万人に上方修正)。この結果、7月~9月までの3ヵ月間の雇用者の増加 数は月平均+9.1万人となった。
内訳では、雇用者数のうち、財生産部門は前月比+0.9万人、民間サービス部門は 同▲4.9万人、政府部門は同+0.7万人となった。業種別にみると、雇用者数はレ ジャー・接客(飲食店等)で同▲11.1万人と大幅な減少となったほか、小売、情報通 信、製造業で減少する一方、教育・ヘルスケア、運輸・倉庫、専門・企業向けサービ ス、金融・不動産・リース等では増加となった。
9月の失業率は4.2%となり、2001年2月以来となる水準まで低下した。失業率の変 化の内容をみると、労働参加率(16歳以上人口に占める労働力人口の割合)が 63.1%と8月の62.9%から上昇するなかで、就業者数(家計調査ベース)が前月比 +90.6万人の大幅な増加となった。また、経済的理由によるパートタイマーが同▲
13.3万人となり、広義の失業率(失業者に加え、経済的理由によるパートタイマーや 職探しを断念した人等を加味)は8.3%と8月の8.6%から低下した。雇用の質的な改善 は維持されており、労働需給の緩みは解消に向かっている。
雇用者数はハリケー ンの影響で7年ぶり の減少
9月の非農業部門雇用者数は前月比▲3.3万人と7年ぶりの減少、市場予想も大幅に下回る 結果となった。一方、失業率は4.2%となり、2001年2月以来となる水準に低下。平均時給は前 年同月比+2.9%と伸び率を高めている。
今回の雇用統計の結果は、大型ハリケーンの影響等による一過性の動きであり、米国経済 の成長や労働市場の改善傾向に変化はないと判断している。米連邦準備理事会(FRB)とし ても、ハリケーンの影響は一時的とみなしているため、今回の結果は重要視されないだろう。
みずほ証券投資情報部では、労働市場の改善傾向が続き、インフレ率が+2%に向かって上 昇していく動きが見通せるようであれば、先行きを見据えた判断にもとづき、12月の米連邦公 開市場委員会(FOMC)で追加利上げが決定される可能性が高いと引き続き考えている。
マーケット・フォーカス
経済:米国
投資情報部 シニアエコノミスト 宮川 憲央
なお、失業率等を調査する家計調査はもともと振れの大きな動きを示すものの、今 回の結果に関しては、家計調査は調査期間中(12日を含む週)に雇用されていれ ば、仕事をせず、給与の支払いを受けていなくても就業者数にカウントされるのに 対し、非農業部門雇用者数等を調査する事業所調査では調査期間中(12日を含む 給与支払期間)に給与の支払いがなければ雇用者数とはカウントされないため、こう した調査方法の違いが両調査での雇用者数における対照的な結果につながって いるとみられる。実際、家計調査における「悪天候によって就業不能になった就業 者数」は147.4万人と9月としては1976年の統計開始以降で最高を記録している。
米産業別雇用者数の推移
(万人)
雇用者数の前月差 17/07 17/08 17/09
雇用者数
非農業部門 13.8 16.9 ▲ 3.3 14,665.9
民間 13.3 16.4 ▲ 4.0 12,432.2
財生産 ▲ 2.0 6.6 0.9 2,007.9
鉱業 0.0 0.6 0.2 72.1
建設業 ▲ 0.9 1.9 0.8 691.1
製造業 ▲ 1.1 4.1 ▲ 0.1 1,244.7
民間サービス 15.3 9.8 ▲ 4.9 10,424.3
卸売 0.4 0.2 0.7 593.3
小売 ▲ 1.1 ▲ 0.7 ▲ 0.3 1,580.9
運輸・倉庫 0.8 0.8 2.2 511.1
公益 ▲ 0.1 ▲ 0.0 0.0 55.3
情報通信 ▲ 0.3 ▲ 0.4 ▲ 0.9 270.7
金融・不動産・リース 1.1 0.8 1.0 847.3
専門・企業向けサービス 4.3 4.3 1.3 2,080.7
教育・ヘルスケア 5.1 4.5 2.7 2,321.7
レジャー・接客 5.0 0.0 ▲ 11.1 1,587.3
その他サービス 0.1 0.4 ▲ 0.5 576.1
政府部門 0.5 0.5 0.7 2,233.7
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
3 4 5 6 7 8 9 10 11
▲ 100
▲ 80
▲ 60
▲ 40
▲ 20 0 20 40 60
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
米雇用関連指標
(月次:2005/1~2017/9)
非農業部門雇用者数・前月差(左目盛)
失業率(右目盛)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
(万人) (%)
(年)
9月の時間当たり賃金(平均時給)は前月比+0.5%となり、市場予想(同+0.2%)を大 きく上回った。また、前年同月比では+2.9%となり、2016年12月以来となる水準を回 復した。飲食店等、低賃金業種における雇用の減少が賃金にもいくらか影響した可 能性はあるものの、労働需給が引き締まるなかで、足元にかけて賃金上昇率は再 び高まってきている。
もっとも、賃金上昇率は金融危機以前に比べて低い伸びにとどまっている。労働 生産性上昇率の低下、グローバル化や技術革新による労働需要の変化、それにと もない小売やレジャー・接客といった低賃金の業種や職種において雇用が増加す る傾向等、さまざまな要因によって構造的に賃金が上昇しづらくなっている面はあ る。このため、今後の賃金上昇ペースは緩やかなものとなる可能性が高い。
以上のように、9月の雇用統計はハリケーンの影響によって雇用者数が落ち込ん だほか、家計調査も振れの大きな結果となっている。ただ、個人消費や設備投資等 を中心に米国経済の成長が続いていることからすると、今回の動きは一過性のもの であり、労働市場の改善傾向は続いていると判断している。いずれにせよ、労働市 場の基調を見極めるうえでは、翌月以降の動きをあわせてみていく必要があろう。
金融市場でも、今回の雇用統計はあまり弱い材料とはみなされていない。10/6の 雇用統計発表直後は、失業率の低下や賃金上昇率の高まりを受けて、米10年国債 利回りやドルが上昇する場面もみられた(ただし、北朝鮮がミサイル発射準備を進め ているとの報道もあって、一時的な動きにとどまった)。一方、フェデラルファンド
(FF)金利先物を用いてブルームバーグが算出する12月の利上げ確率は、雇用統 計が発表された10/6時点で78.5%となり、前日の73.3%から上昇した。
賃金上昇率は足元で 上向く動き
12 月利上げ に 向 け て、今後の指標を見 極めへ
3 4 5 6 7 8 9 10 11 0.5
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
米失業率と賃金の推移
( 月次:2008/1~2017/9)
平均時給・前年同月比(左目盛)
失業率(右逆目盛)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
(%) (%)
(年)
米連邦準備理事会(FRB)としても、ハリケーンの影響は一時的とみなしているた め、今回の結果は重要視されないだろう。とはいえ、失業率がさらに低下し、賃金上 昇率が高まったことは明るい動きであり、翌月以降もこうした動きが維持されるかどう かを見極めていくことになろう。みずほ証券投資情報部では、労働市場の改善傾向 が続き、インフレ率が+2%に向かって上昇していく動きが見通せるようであれば、先 行きを見据えた判断にもとづき、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加の 利上げが決定される可能性が高いと引き続き考えている。
2
4
6
8
10
12 0
2 4 6 8 10
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
米失業率とインフレ率、フェデラルファンド(FF)金利誘導水準目標の推移
(月次:2000/1~2017/9)
FFレート(左目盛) インフレ率(左目盛) 失業率(右逆目盛)
(%)
(注) FFレートは2008/12以降、レンジの上限値としている(1.00%~1.25%のレンジであれば、1.25%)
インフレ率は個人消費支出デフレーター(食料・エネルギーを除く)の前年同月比変化率、2017/8まで 出所:米連邦準備理事会(FRB)、労働省のデータよりみずほ証券作成
(年)
(%)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
米インフレ率と賃金上昇率(前年同月比)
(月次:2008/1~2017/9)
賃金上昇率(左目盛) インフレ率(右目盛)
(%)
(注) 賃金上昇率は平均時給、インフレ率は個人消費支出デフレー ター(食料・エネルギーを除く)の前年同月比変化率 インフレ率は2017/8まで
出所:米商務省、労働省のデータよりみずほ証券作成
(年)
(%)
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