FBI長官解任で揺れるトランプ政権の今後を占う
トランプ政権がロシア問題に揺れている。9日には、ロシアによる昨年の米大統領 選挙への関与を捜査しているとした米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を突然解任。 捜査つぶしではないかとの見方から、ニクソン大統領の不正行為への関与を捜査し ていた特別検察官を解任し、正副司法長官を辞任させたウォーターゲート事件にち なみ、「ロシアゲート」という言葉も飛び出した。 さらに10日にホワイトハウスで会談したロシアのラブロフ外相とキスリャク駐米大使に 機密情報を漏えいしたとの報道も流れている。ただ、これについては大統領の機密 情報に関する広範な権限の範囲内であり、(元の情報を提供してくれた国に対する 信義的な違反ではあるが)違法ではないようだ。 焦点は2つ、①2016年の大統領選でトランプ陣営とロシアが結託していたかどう か、②9日の突然のコミーFBI長官解任は捜査の妨害、つまり司法妨害ではなかっ たか、という点となる。 この2つはつながっている。①に関連してFBIは、トランプ政権の安全保障担当補 佐官だったフリン氏が補佐官就任前にロシアに接触していたという疑惑に関して捜 査していた(民間人が外交交渉を行うことは禁じられている)が、トランプ政権側から 調査をやめるよう圧力があり、これに従わなかったため②の通り解任されたのではな いか、という流れだ。ロシアゲート疑惑が
台頭
トランプ大統領のロシアを巡る疑惑が拡大、過去のウォーターゲート事件にちなみ「ロシア
ゲート」という言葉も飛び出した
焦点は2つ「2016年の大統領選でトランプ陣営とロシアが結託していたかどうか」と「9日の突
然のコミーFBI長官の解任は司法妨害ではなかったか」
米国の政治に対する不透明感や停滞を嫌気して金融市場はリスク回避の反応をみせている
が、企業業績やファンダメンタルズを左右する事態にはならないだろう
大統領が政治経験豊かなペンス副大統領に交代する可能性が高まれば、逆に市場はこれ
を好感する可能性も
マーケット・フォーカス
米国:トピックス
投資情報部 チーフ FX ストラテジスト 鈴木 健吾トランプ政権側はコミー長官を解任した理由として、昨年のヒラリー・クリントン氏の 私用メール問題捜査に関するコミー長官の対応について、司法省のロッド・ローゼ ンスタイン副長官が懸念を示し、政権側はコミー長官では効果的にFRBを指揮でき ないという司法省の見解を受け入れた、としている。 ウォーターゲート事件とは1972年6月、何者かが民主党本部の入るウォーターゲー トビルに侵入して盗聴器を仕掛けようとしたところを発見されて逮捕されたことに端を 発する米国の政治スキャンダル。発覚直後、共和党のニクソン大統領とホワイトハウ スは事件と無関係を装ったが、次第に深く関係していることが明らかとなる。その過 程でニクソン大統領は特別検察官を解任し、正副司法長官を辞任させるなどの捜 査妨害を行うが、最終的には議会で大統領罷免のための弾劾裁判が行われ、ニク ソン大統領は裁決が行われる前に辞任した。 ちなみに罷免とは職を辞めさせること、弾劾とは罷免・処罰するための手続きのこと を指す。 疑惑を捜査中のFBIの長官が突然解任されるという、ニクソン大統領による特別検 察官解任をなぞるかのような展開に、報道は盛り上がりを見せ、金融市場は政治的 混乱を嫌気して5/17、大幅な株安、金利低下、ドル安で反応している。 目先は、その内容や捜査の見極めが必要となろう。もともと、米国株式市場は S&P500指数やナスダック指数が前日5/16にかけて史上最高値を断続的に更新し ており、調整するきっかけを探していたところに絶好の材料が舞い降りた形となっ た。目先調整入りするかもしれないが、この問題が米国企業の業績を押し下げるほ どの景気低迷につながるだろうか。 目先は来週半ば5/24にかけて、コミー元FBI長官が議会で証言を行う可能性があ り、重要経済指標の発表などに乏しいなかこの問題が市場の動揺を誘う場面もある とみられる。ただ、その後は5/25の石油輸出国機構(OPEC)総会(減産延長合意が 予想されている)や5/26-27にはイタリアでのG7、さらに翌週は月末月初にて雇用 統計をはじめとする米国の重要経済指標が目白押しとなる。6/13-14の米連邦公開 市場委員会(FOMC)での利上げ有無を巡り非常に注目度も高い。そのため今回の スキャンダルに対する注目度はいったん後退し、米国のファンダメンタルズなどに視 点が移ると共に、市場の急激な動きもいったん落ち着いていくのではないか。 さらにその先を考えると、政権に対する不安が金融市場の混乱や消費者心理の 悪化につながり、自己実現的に景気が悪化する可能性は否定できない。その場 合、FRBは利上げを停止し、リスク回避から金利は低下、ドルや株価も下落するだろ う。ただ、実際にトランプ大統領の弾劾・罷免ということになれば、その後はペンス副 大統領が大統領職を務めることになる。トランプ大統領は史上初めて、政治家経験 が全くない人物がいきなり当選したケースとなるが、その政策運営は人事や予算策
ウォーターゲート事
件とは
市場の混乱は続くか
市場の 混乱は 不透
明感を嫌気したもの
定が大幅に遅れるなど、必ずしもうまく機能しているとは言い難い状況だった。30年 近い政治キャリアを持つペンス氏に舵(かじ)とりが移ることで、上下両院とも共和党 が過半数を握る米国の政治が一気にスムーズに動き出す可能性もある。疑惑をめ ぐってさまざまな報道が飛び交い、政治が停滞する間はこれを嫌気してリスク回避 的な動きもみられるだろうが、トランプ大統領が辞任するか、罷免となれば、リスクオ フに傾いていた各市場は一気に反発に転じる可能性も高い。 米国のリーディング・ブローカーであるストラテガス社(ディスクレーマー参照)は、ト ランプ大統領の去就をめぐって以下の4つのシナリオを提示している。 シナリオ ポイント 共和党による特別検察官の任命 ケース① 共和党がコミー前 FBI 長官の更迭を巡る調査を担当する特別検察官を任命 →時間稼ぎが可能になり、その間に他の政策を実行に移して信頼を回復する ケース②共和党がロシアの調査を担当する特別検察官を任命 →これまでに高まった不透明感の後退につながる トランプ大統領が辞任し、 ペンス副大統領が政権引き継ぐ 弾劾案が採決される場合、採決前に共和党が大統領に辞任を勧告する →政権移行が最もスムーズに進み、最も好ましいシナリオ 議会共和党が大統領弾劾に動く トランプ大統領が辞任を拒否した場合、弾劾案の採決に進む(上院で 2/3 の賛成が必要) →議会共和党にも厳しいシナリオとみられる 憲法修正第 25 条*の活用 大統領以外の現政権が維持される →議会共和党の一部に同案を推す声も *大統領が職務上の権限と義務を遂行することができない場合の対処法を規定。死亡や病気等のケースを 想定しており、拡大解釈との指摘も 出所:ストラテガス社資料よりみずほ証券作成 ウォーターゲート事件は45年も前の話であり、国際情勢などをはじめ金融市場を 取り巻く環境は大きく違ううえ、オイルショックがほぼ同時に起きており、今回のケー スの参考とするには少し苦しい。比較するならば、前回弾劾裁判が行われたクリント ン元大統領のケース(19年前)が現実的であろう。この時もロングタームキャピタルマ ネジメント(LTCM)危機が起きた後だったことを考慮に入れる必要があるが、米株や 米ドルは弾劾裁判を嫌気する形でいったん下落するものの、1ヵ月~3ヵ月程度の比 較的短期間で元の水準を回復している。なお、それぞれの値動きの起点は、ウォー
ストラテガス社の見
解
過去の例との比較
ターゲート事件はウォーターゲートビルに侵入事件があった1972/6/17、クリントン 元 大 統 領 の 問 題 に つ い て は 下 院 が こ の 問 題 に 関 す る 公 聴 会 を ス タ ー ト し た 1998/11/19においている。 ドル円は1974年1月21日に事件前の水準を回復 NYダウは翌73年にかけて下落後、年後半に回復 65 70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 72/6 72/9 72/12 73/3 73/6 73/9 73/12 74/3 74/6 (1972/6/16=100) (年/月) ウォーターゲート事件時のドル円と米株指数化グラフ (日次:1972/6/16~1974/8/31) ドル円 ダウ 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 ドル円は99年3月に回復 NYダウはもみ合い後99年2月以降に上昇 85 90 95 100 105 110 115 98/11 98/12 99/1 99/2 99/3 (1998/11/18=100) (年/月) クリントン政権時のドル円と米株指数化グラフ (日次:1998/11/18~1999/3/31) ドル円 ダウ 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 ウォーターゲート クリントン政権 1972/6/17 1998/11/19 1972/6/16 1998/11/18 303.95 121.98 1973/3/14 1999/1/11 254.45 108.89 ▲ 16.3 ▲ 10.7 1974/1/21 1999/3/4 305.34 123.44 416 76 1972/6/16 1998/11/18 945.06 9041.11 1973/8/22 1998/12/14 851.90 8695.59 ▲ 9.9 ▲ 3.8 1973/9/26 1998/12/22 949.5 9044.46 321 29 出所:ブルームバーグ等、各種資料よりみずほ証券作成 米 国 株 ( N Y ダ ウ ) 直前の水準 (ポイント) その後の安値と直前の水準からの騰落率 (ポイント、%) 安値を付けた後、直前の水準を回復した 日と発生日からの経過営業日数
大統領弾劾裁判に対する金融市場の反応
事案 現地時間発生日 ド ル 円 直前の水準 (ドル) その後の安値と直前の水準からの騰落率 (ドル、%) 安値を付けた後、直前の水準を回復した 日と発生日からの経過営業日数アメリカ合衆国憲法に大統領の弾劾・罷免手続きが明記されている。
合衆国憲法 第2章 第4条に「大統領、副大統領および合衆国の全ての文官は、反 逆罪、収賄罪、その他の重大な犯罪または軽犯罪について弾劾の訴追を受け、有 罪判決を受けた場合には、その職を罷免される」(The President, Vice President and all civil Officers of the United States, shall be removed from Office on Impeachment for, and Conviction of, Treason, Bribery, or other high Crimes and Misdemeanors.)と記されている。具体的な手続きとしてはまず、第1章 第2条 第5 項「…弾劾の追訴権限は下院に属する」(The House of Representatives shall… have the sole Power of Impeachment.)としており、弾劾裁判を行うかどうかは下院が 判断・決定することになる。下院が弾劾裁判を行うと判断すると次の手続きとして、 第1章 第3条 第6項「弾劾裁判を行う権限は上院に属する」「合衆国大統領が弾劾 裁判を受ける場合…何人も出席議員の3分の2の賛成がなければ有罪となることは ない」(The Senate shall have the sole Power to try all Impeachments. … When the President of the United States is tried, … no Person shall be convicted without the Concurrence of two thirds of the Members present.)とされている。
つまり、まとめると、 ① 大統領は何らかの犯罪行為があった場合、弾劾裁判を受け罷免される可能 性がある ② 弾劾裁判を行うかどうかは下院が審議し、賛成多数で可決される ③ 弾劾裁判は上院で行われ、3分の2以上の賛成をもって罷免が決定される ということになる。 司法妨害などトランプ大統領の犯罪行為が認定されるか、注目したい。
大統領罷免を巡る手
続き
Strategas Research Partners について
Strategas Research Partners(以下ストラテガス社)は、マクロ分析、投資助言、資本市場 サービス等の提供にフォーカスした機関投資家向けのリーディング・ブローカーです。 世界中の債券・株式の機関投資家や企業経営者を顧客にしています。
2006 年、Jason DeSena Trennert、 Nicholas Bohnsack、Don Rissmiller の 3 人によって 設立されたストラテガス社は、旧来からの伝統が強く支配するウォール街において、卓 越したサービスの提供に注力する独立系のプライベート・パートナーシップです。経営 および顧客に対するコミットメントの両方における指針として、Bonitas、Probitas, Fides – 品格、信頼、誠実 –をモットーに掲げています。 ニューヨーク、ワシントン DC、オハイオ州コロンバスの 3 拠点に、計 50 名のリサーチ・ア ナリスト、機関投資家向けセールス、セールストレーダーを擁しています。世界有数の大 手ミューチュアル・ファンド、投資顧問会社、年金基金、ヘッジファンド等を顧客としてい ます。 ストラテガス社はまた、100%出資の機関投資家向けブローカー・ディーラーStrategas Securities, LLC の名前で証券ビジネスを行っています。 みずほ証券は、2015 年 6 月 1 日に、ストラテガス社と、調査サービス提供に関する契約 を締結しました。本契約により、みずほ証券はストラテガス社から定期的に米国のマクロ 経済等の情報提供を受けており、当該情報やデータ等を利用することが可能になって おります。本資料においても、一部市場見通しや経済情勢等につきまして、ストラテガス 社から提供を受けた情報、データ等を使用しております。
米国みずほ証券について
米国みずほ証券は、米国銀行持株会社米州みずほ LLC の傘下にあり、主として証券・ 投資銀行業務に従事し、FINRA/SIPC のメンバーです。商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-170518-16 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。