米国はシリア攻撃を実施も、対ロ追加制裁は回避か
4/9にシリアの反体制派地域で化学兵器が使用されたとの疑惑に対して、米英仏 軍は4/14未明、合同でシリアを攻撃した。昨年の攻撃の約2倍に上る105発のミサイ ルを発射、攻撃は成功したとされ、マティス国防長官は「アサド政権に化学兵器を再 び使わせないための、1回限りの攻撃だ」と述べた。
これに対してロシアのプーチン大統領は、「テロとの戦いの最前線にある主権国家 に対する、国連憲章や国際法の原則に反した行動」として強く非難する声明を発表 した。ただ、攻撃はロシア軍の駐留基地を避ける形で実施され、ロシアが防空ミサイ ルで反撃することもなく、懸念された米ロの直接衝突といった事態は回避された。
攻撃は単発にとどまる可能性が高く、シリアの混迷状態自体は変わらないものの、
緊張状態は取りあえず後退したとみられる。
米英仏が合同でシリ ア攻撃を実施、ロシ アは反撃せず。緊張 状態は緩和
米英仏軍は合同でシリアへの攻撃を実施、ロシアは反発するも反撃せず、攻撃は単発の可 能性が高まり、緊張状態はいったん緩和へ。
攻撃は事前に通告されていたこともあり、為替市場の反応は軽微。ルーブル相場の動きは小 幅なものにとどまっており、4/9以降の急落の反動から持ち直す動きに。
米国は対ロ追加制裁は回避、今後は追加制裁や国債購入禁止措置の有無等が焦点に。
金融市場も徐々に安定する動き、ルーブル相場は市場安定後には徐々に持ち直しへ。
マーケット・フォーカス
為替:ロシアルーブル
投資情報部 シニア
FX
ストラテジスト 五十嵐 聡日時 2017/4/6 2018/4/14
攻撃主体 米国 米国、英国、フランス
根拠 シリア政府軍による化学 兵器使用
シリア政府軍による化学 兵器使用
攻撃対象
シリアのシャイラト空軍基 地の格納庫や軍用機、燃 料タンク、防空システム
首都ダマスカス近郊の生 物・化学兵器の研究・開 発・製造施設、中部ホム スの化学兵器貯蔵施設、
作戦司令部
ミサイル 59発 105発
出所:各種報道等よりみずほ証券作成
米国のシリア攻撃
出所:各種資料よりみずほ証券作成
ロシア イラン
反体制派組織 過激派組織
(IS・シリア征服戦線等)
トルコ 米欧諸国等
支援 支援
空爆
クルド人勢力
アサド政権
空爆
支援 敵対 空爆
敵対
敵対 敵対
支援 シリア
2014/19/18
米国はすでに4/9の段階で、シリアにおける化学兵器使用疑惑に対して「すべて の選択肢を排除しない」として軍事行動の可能性を示唆しており、昨年4月のシリア 空爆時の経験則もあったため、シリア攻撃の実施に意外感はない。
また、今回は米ロ関係が一段と険悪化するなか、共通の敵であった過激派組織イ スラム国(IS)がほぼ壊滅状態となっていることから、米ロの直接対立につながること が懸念されたが、前述の通り事前通告により直接衝突が回避されたため、結果的に 軍事行動は限定的なものにとどまる模様である。トランプ米大統領はシリアからの米 軍撤退の方針を維持しており、ロシアとしても米国のシリアへの介入が強まることを 望んでいないことをふまえれば、対立の激化は両国ともに避けたいところだろう。
このため、為替市場においても早晩、シリアへの攻撃が実施されるであろうことは ほぼ織り込まれていたと言える。攻撃実施後の週明けの為替市場でも、ロシアルー ブルの対ドル相場は、いったんは1ドル=63.0ルーブル台まで下押す場面が見られ たものの、その後は反発に転じており、4/9以降の急落場面の反動もあり、4/17時点 では61ルーブル近辺まで値を戻す動きになっている。対円でも1ルーブル=1.70円 近辺まで下押す場面はあったが、その後は1.75円近辺まで値を戻している。
今後は、米ロ間の外交交渉の行方や米国による追加制裁の有無に注目が集まろ う。4/9以降のルーブル相場急落の背景には、トランプ米大統領が4/6に発表した 対ロ追加制裁で、プーチン露大統領に近い実業家が含まれており、その支配下に ある企業の株価が急落したことや、制裁がロシアのシリア内戦やサイバー攻撃に関 する工作資金を絶つ方向にシフトしたこと等を懸念して、海外投資家の資金逃避が 加速したこと等があるとみられている(4/10のマーケット・フォーカス為替「対ロ追加 制裁とシリア懸念からルーブル急落」を参照)。実際、4/6の制裁でロシアの富豪3人 が計75億ドルの損失を抱えた可能性があるとの報道もある。
事前通告もあり為替 市場の反応は軽微。
ル ー ブ ル は 急落の 反動もあり持ち直し
今後の 焦点は 追加 制裁の有無、ロシア 国債の 購入禁止措 置があるかに注目
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (年/月)
54 56 58 60 62 64 66
54 56 58 60 62 64 66
17/10 17/11 17/12 18/1 18/2 18/3 18/4
ドルルーブル相場4本値
(日次:2017/10/2~2018/4/16)
(1ドル=ルーブル)
20日移動平均線
1.6 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1
1.6 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1
17/10 17/11 17/12 18/1 18/2 18/3 18/4
(1ルーブル=円) ルーブル円相場4本値
(日次:2017/10/2~2018/4/16)
20日移動平均線
今回も、シリア攻撃に続いて追加制裁が実施されるとの見方があったが、4/16に は一部報道で「トランプ米大統領はロシアへの追加制裁を見送ることを決定した」と されており、とりあえず目先の懸念は後退しているもようである。同報道によれば、直 ちに追加制裁を実施すれば、イスラム過激派の掃討やサイバー攻撃対策等を巡る ロシアとの交渉の妨げになることを、トランプ米大統領が懸念しているとされている。
今後、制裁がロシア国債の購入禁止等に広がれば、ロシア金利の急上昇とルー ブル急落を招くことも懸念されるが、今のところはそこまでの制裁が実施される可能 性は低そうだ。実際、米下院議員2人がロシア国債の購入を禁止する法案への支持 を呼び掛けているが、米財務省は「ロシア債をたたけば市場を不安定化させ、ロシ アを越えて世界の金融市場やビジネスに負の影響が波及する」として、ロシア債を 制裁対象としないよう勧告している。ムニューシン米財務長官もこれを支持する姿勢 を示している。
金融市場も足元では徐々に落ち着きを取り戻す動きを見せいている。ロシア10年 物国債の利回りは4/6の7.15%前後から4/10にかけて一時、7.67%まで急上昇した が、その後は7.52%前後に低下しており、資金流出加速の兆しはみられない。ロシア 債券の債務補償コストとされる5年物のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も一 時、2月下旬のボトムから48bp高い149bpまで上昇したが、その後は上げ渋る動きに なっている。
そもそも、ロシアの経常収支は黒字基調であり、公的債務残高のGDP比も17%程 度と他の新興国に比べると遥かに健全な状態で、財政収支のGDP比も現行の原油 価格が続けば2018年には黒字化が見込まれる。外貨準備高は対外短期債務の6 倍近くあり、対外的な支払いが問題となる状況には程遠い。
金融市場も徐々に安 定する動き、ルーブ ル相場は徐々に持ち 直しの動きへ
(注) ロシアRTS指数、米ドル建て (年/月) (注) 1bp(ベーシスポイント)は0.01% (年/月)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
900 1000 1100 1200 1300 1400
900 1000 1100 1200 1300 1400
17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4
(ポイント) ロシアの総合株価指数(4本値)
(日次:2017/1/2~2018/4/16)
50日移動平均線 100日移動平均線 200日移動平均線
総合株価指数
100 130 160 190 220 250
6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0
17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4
(bp)
(%) ロシアの10年国債利回りとCDSスプレッド
(日次:2017/1/2~2018/4/16)
10年国債利回り(左目盛)
ソブリンCDS5年(右目盛)
2014/19/18
ただ、ルーブル円相場の価格変動性(ボラティリティ、直近60日)は足元で17.3%程 度と、17年2月以来の高水準に上昇しており、長期金利水準と比較したリスク許容度 は低下している。このため、しばらくは様子見姿勢が必要な場面が続くとみられる が、市場が安定を取り戻してボラティリティも一定程度の水準に低下すれば、再び 投資妙味の高い状況に回帰すると予想される。
そうなれば、ルーブル相場も原油価格の水準等からみた割安感に市場の関心が 移り、徐々に持ち直しに向かう可能性が出てくるとみている。みずほ証券投資情報 部は、米国による一段の追加制裁の発動がないことを前提にすれば、ルーブル相 場は当面、対ドルで66~54ルーブル、対円で1.58~2.04円のレンジ内で全般に底 堅く推移すると予想している。
(注)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
ボラティリティは各通貨の対円レートで計算、過去60日間の数値。長期金利は年 初来の平均値、メキシコの国債利回りは3年国債
項目
経常収支 GDP比
(%)
財政収支 GDP比
(%)
公的債務 残高 GDP比
(%)
インフレ率
(前年 比、%)
外貨準備 輸入比
(ヵ月)
外貨準備 対外短期 債務比
(倍)
ブラジル ▲ 0.5 ▲ 8.9 83.4 3.5 30.4 2.8
中国 1.3 ▲ 3.7 47.6 1.6 20.5 4.9
インド ▲ 1.5 ▲ 3.7 68.7 3.3 10.4 2.6 インドネシア ▲ 1.7 ▲ 2.4 28.7 3.8 9.5 2.1 メキシコ ▲ 1.6 ▲ 1.1 53.3 6.0 4.9 2.2
ロシア 2.2 ▲ 1.7 17.4 3.7 18.3 6.1
南アフリカ ▲ 2.4 ▲ 4.4 53.0 5.3 6.2 1.8 トルコ ▲ 5.2 ▲ 2.1 27.9 11.1 4.3 0.8
(注)インフレ率は年間平均値、財政収支のインドとインドネシアは2016年、トルコは市場予想値、
公的債務残高はIMFによる推計値、経常収支の南アフリカとトルコは市場予想値、外貨準備 輸入比の輸入額は月当りの平均値、外貨準備対外短期債務比は2016年末値。赤丸は8ヵ 国中で最も数値が良好な国
出所:国際通貨基金(IMF)、世界銀行、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
主要新興国の経済の耐性を示す指標(2017年)
13.6
8.1 8.3 8.5 12.4
17.3
13.5 10.9 7.4
3.2
6.9 5.5
7.4 6.6 6.9 13.5
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22
(%) 主要新興国通貨ボラティリティと国債利回り
(2018/1/2→2018/4/16)
2018/1/2 2018/4/16 2年国債利回り
(注) 原油価格は北海ブレント先物第1限月 (年/月) (注) (年/月)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
相関係数は1~▲1の間で動き、0が最も相関が低く、1、▲1に行くほ ど相関が高くなる
44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 84 25
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1
(1バレル=ドル) 原油価格とルーブル相場
(日次:2015/1/1~2018/4/16)
原油価格(北海ブレント)(左目盛)
ドルルーブル(右逆目盛)
(1ドル=ルーブル)
▲ 1.2
▲ 1.0
▲ 0.8
▲ 0.6
▲ 0.4
▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6
15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1
原油価格とルーブル相場の相関
(日次:2015/1/1~2018/4/16)
ドルルーブルと原油価格の相関係数(90日)
商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第
94
号加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-180418-04
等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。
■国内株式の手数料等諸費用について
○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。
○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。
○保護預かり口座管理料は無料です。
■外国株式のリスク
○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。
○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。
○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。
○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。
○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。
■外国株式の手数料等諸費用について
○外国委託取引
国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。
詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、
約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。
○国内店頭(仕切り)取引
お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。
○国内委託取引
当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。
○外国証券取引口座
外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。
外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。
商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。