利上げやトランプリスクの後退で堅調なペソ
メキシコ銀行(中央銀行、以下、中銀)は6/22、事前の市場予想通り、政策金利を 0.25%引き上げ、7.00%とした。全会一致とはならず、1名のメンバーが金利据え置き に投票した。7会合連続の利上げとなり、今回の利上げ局面が始まった2015年12月 以降の累計利上げ幅は4.00%となった。 中銀は声明文で、物価見通しについて、しばらく中銀のインフレターゲット(3.0% ±1.0%)の上限を上回って推移するものの、17年末頃から物価の伸びが鈍化し始 め、18年末には物価目標に達するとした。物価見通しが改善する要因として、①14 年半ば以降のペソ安を受けた輸入物価の上昇や、17年1月以降のガソリンや軽油 価格の自由化にともなう値上げ等の影響が一巡すること、②今までの利上げの効果 や需給ギャップのマイナス、等を挙げた。中銀は7会合連続の
利上げ実施、利上げ
打ち止めが近いこと
を示唆
メキシコ中銀は7会合連続の利上げも、利上げ打ち止めが近いことを示唆。国債利回りは低下
米利上げやバランスシート縮小が米金利の上昇を通じてペソに与える影響に留意しつつ、物価
が安定に向かうか見極める姿勢。年内あと1回程度の利上げを見込む
ペソはトランプリスクの後退やメキシコ州知事選挙における与党勝利を受けて堅調
今後はNAFTA見直し交渉の内容を確認し、内外金利差も下支えしペソは底堅い展開を見込む
マーケット・フォーカス
経済:メキシコ
投資情報部 シニアエコノミスト 折原 豊水6/23
1 2 3 4 5 6 7 8 9 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 メキシコの政策金利と消費者物価 (月次:2008/1~2017/6) 消費者物価 ターゲットレンジ 物価目標 政策金利 (注)2001年からはインフレ・ターゲット(3%±1%)、物価は5月まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 (%) (年) 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 15 16 17メキシコの消費者物価
(月次:2015/1~2017/5) その他サービス 教育・娯楽 運輸 医療ヘルスケア 家具 住宅 衣服・靴 食料・飲料・たばこ 消費者物価 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 (前年比:%) (年) ガソリン価 格自由化金融政策について中銀は、今後の物価見通しの改善に加えて、米国とメキシコ の金融政策のスタンス(が両国の市場金利やペソに与える影響等)に引き続き留意 していくとしたうえで、「政策金利の水準は物価見通しの達成と整合的」とした。 みずほ証券投資情報部では、物価見通しについては、ペソ安による輸入物価の 上昇やガソリン価格の値上げの影響は2017年10-12月期より前年比で和らぎ、18年 1月頃より一巡するとみているが、17年末時点では消費者物価はインフレターゲット のレンジ上限を上回るとみている。他方、米国の金融政策については、米連邦準備 制度理事会(FRB)は6月に利上げを実施し、年内あと1回の利上げや、バランス シートの縮小に着手する方針を示している。また、バランスシートの縮小は緩やかな ペースで進める方針であるため、米長期金利に与える影響は比較的限られることを 確認しながら、メキシコ中銀は年内あと1回の追加利上げを行い、17年末時点で政 策金利は7.25%程度を予想している(次回会合は8/10)。 金融市場ではメキシコの2年国債利回りは6月初めの7.25%程度から、6月下旬に かけて一時、6.8%台まで低下した。背景には、①6/1に発表された5月中銀会合の 議事録で一部の委員は利上げ打ち止めが近いと発言したことが明らかとなったほ か、カルステンス中銀総裁も6月上旬に消費者物価は17年下期に伸びがはっきりと 鈍化すると発言したこと、②中銀会合前日の6/21には、ミード財務公債相が、中銀 はおそらくあと2回程度利上げし、その後、利下げに転じるだろうと発言したこと、等 が挙げられる。6/22には利上げが決定されたものの、メキシコの利上げ打ち止めが 近いことが示されたことから、2年国債利回りは6.78%と前日の6.94%から低下した。今 後も、利下げ期待が一部で生じていることが債券価格を下支えし、金利上昇圧力は 限られるとみている。 米国の利上げペース をにらみ、追加利上 げ余地 国債利回りは利上げ 打ち止め観測を受け てやや低下 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 メキシコの政策金利と国債利回り (週次:2008/1/4~2017/6/22) メキシコ2年国債利回り メキシコ政策金利 メキシコ10年国債利回り 出所:ブルームバーグ、CEICデータよりみずほ証券作成 (年) (%) バーナンキショック トランプショック 欧州債務危機 リーマンショック
なお、カルステンス中銀総裁(2010年就任)は国際決済銀行(BIS)の幹部(GM) に就任するため、17年11月末に、2期目の途中で退任することがすでに決まってい る。同総裁はリーマンショック以降、物価安定に近づける等、金融政策の運営に対 する内外の評価が高く、当初は今年7月頃に退任予定だったが、政府の慰留により 11月末まで延長していた。後任にはミード財務公債相の名前が挙がっている。同氏 はカルデロン前政権時代から、エネルギー相や外務相、社会発展相、財務公債相 を歴任した有力政治家であり、原油開発の外資開放や財政規律の維持、等に貢献 した。米イエール大学で経済学の教鞭をとったこともあるエコノミスト。このため、同 氏の就任が決まれば市場に与える影響は限定的とみている。なお、中銀は法律で 政府からの独立性が保障されており、総裁の任期は6年、副総裁は8年と長く、法律 違反等がなければ任期途中で罷免されることはない。 メキシコペソは、2018年大統領選挙を占う6/4のメキシコ州知事選挙において、与 党・制度的革命党(PRI)候補が左派・国民再生運動(MORENA)候補を接戦の末、 破ったことで、1ドル=18.6ペソ台から6月中旬には17.9ペソ台までペソ高となった(な お、野党が選挙結果に異議申し立て中)。その後、原油価格の下落を受けて6/21 には一時、18.3ペソまで下落したものの、中銀の利上げを受けて6/22は18.11ペソ 台までペソ高となった。 18年7月の大統領選挙ではMORENAのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドー ル(通称、AMLO)氏が3度目の出馬の可能性がある。同氏は北米自由貿易協定 (NAFTA)や石油開発の外資開放に反対し、過去の大統領選挙では与党候補と接 戦を演じた。今回の州知事選挙でMORENAが勝利するようだと、大統領選挙でも左 派が再び台頭する可能性があり、市場は警戒していた。 18年の大統領選挙に関する今年4月の世論調査では、AMLO氏や市場寄りの国 民運動党(PAN)の候補が与党候補をややリードしており、与党は今後の景気浮揚 市場の 評価が 高い 中銀総裁の 退任近 い。後任は財務公債 相等が挙がる ペソはトランプリスク の 後退や 州知事選 挙での与党勝利を受 けて堅調
や米国のNAFTA再交渉をまとめることで、支持率回復につなげることができるか注 目される。与党やPANが勝利すれば市場にポジティブだろう。仮にAMLO氏が勝利 しても、メキシコに対する過度の悲観論に対しては、慎重にみている。背景には、① 同氏が過去に連邦直轄区の首長として財政規律の維持や住宅やインフラ投資の促 進等、現実的な政策を行った実績がある、②大統領選挙と同時に行われる連邦上 下両院の議会選挙では、MORENAが全国的な地盤がなく、議会における少数与党 となる可能性が指摘されており、そうした場合、連邦議会における政策の推進には その他の政党との政策協調の必要性があること、③ペニャニエト政権のもとでメキシ コが与野党協調して構造改革を精力的に推進してきた、といったことが挙げられる。 今後のペソについては、2017年末にかけて底堅い展開を見込んでいる。背景に は、①NAFTA見直し交渉は早ければ8月下旬以降に開始され、大幅な修正は行わ ないことを確認し、通商政策を巡るトランプリスクがさらに後退する、②18年以降のメ キシコ景気が浮揚する、③メキシコ中銀は利上げ打ち止めが近いことを示唆したも のの、米国との内外金利差が引き続き高いことがペソを下支えする、④中期的に は、購買力平価等からみて割安感がある、等が挙げられる。①については、直近で はメキシコ産砂糖の米国向け輸出に関する協定見直しで合意した。NAFTAのもと でメキシコ産の安価な砂糖輸出が増加し貿易摩擦に発展、14年には輸出枠を設け ることで合意、協定は毎年見直されているが、トランプ政権の通商担当者の決定が 遅れていたことで交渉が長引いていた。協定が延長されなければ、メキシコ産砂糖 への高関税が課される可能性があった。今回の合意はNAFTA見直し交渉に先立っ て幸先良いニュースと言えよう。
ペソはNAFTA見直し
交渉の具体的な内容
を確認し、底堅い動
きを見込む
▲ 10 ▲ 5 0 5 10 15 20 8 10 12 14 16 18 20 22 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17メキシコペソ相場と為替先物ポジション
(週次:2007/1/5~2017/6/22) ペソ為替先物・ネットポジション(右目盛) メキシコペソ(左逆目盛) (注)ポジションは6/16まで 出所:ブルームバーグ、CEICデータよりみずほ証券作成 (1ドル=ペソ) (年) ↑ペソ高、 ペソ買い越し (万枚)商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-170623-32 リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料を ご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込 み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。