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国際金融
unit 3 国際資本移動はなぜ起こるのか
先進国のみならず、発展途上国、とりわけ新興市場(エマー ジング・マーケット)国においても国際金融取引の規制緩和 が進むなか、グローバルに国際資本移動が増大しつつある。 このような国際資本移動は、世界の経済に大いに貢献する一 方で、通貨危機・金融危機が世界に発生するとともに、ある 国で発生した通貨危機・金融危機が隣国や類似の新興市場国 に伝染する傾向を高めつつもある。
このunitでは、まず、金融グローバル化の意味を考察する。 そのうえで、国境を越えた(クロスボーダーの)異時点間取 引として特徴づけられる国際金融取引について、現在と将来 という2期間のフレームワークでモデル化して、国際金融取 引を特徴づける。
金融グローバル化
近年、世界各国で資本移動に対する規制が緩和する一方、IT が急速に発達したことから、金融グローバル化が進展して いる。
金融グローバル化とは、国境を越えた金融取引が先進諸国間 にとどまらず、発展途上国、とりわけ新興市場国にまで拡大 してきたことを意味する。
金融グローバル化には、国際資金移動と金融サービスという 2つの側面がある。
国際資金移動とは、国際証券投資や国際銀行融資を通じて、 資金が地球規模で(グローバルに)移動していることをいう。 とりわけ、新興市場国への証券投資および銀行融資が急増し てきた。
金融サービスについては、WTO におけるサービス貿易の自 由化を反映して、銀行業や証券業などの金融サービスが、国 境を越えて提供されている。具体的には、先進諸国の金融機 関が新興市場国に進出、あるいは地元金融機関を買収する形 で進められている。
金融グローバル化
国際間の予想収益率の比較を通じて予想収益率の低い国から 予想収益率の高い国へ資金を移動させることによって、利鞘
(りざや)を求める金利裁定が国際的に行われている。 このような金利裁定のほか、資産価格や為替レートの変化の 思惑による投機によって国際的に資金が移動している。 金利裁定では、予想収益率が高い国へ資金が流出するが、 いったんその国の予想収益率が相対的に不利になると、資金 は他の有利な国を求めて、流出することになる。
利子率や為替レートの変動により相対的な予想収益率が変動 することによって、容易に資金が流出入を繰り返すことに なる。
さらに、投機は国際資金移動の不安定性に拍車をかけること がある。
1994年末に発生したメキシコ通貨危機、および1997年に発 生したアジア通貨危機では、金融グローバル化が進展したな かで、金融リスク管理能力が十分ではない脆弱な国内金融部 門がバランスシートを悪化させたため、その危機を金融危機 まで深刻化させた。(第6章参照)
また、日本でも起こっていることであるが、金融危機によっ て破綻した地元金融機関が欧米の金融機関や投資ファンドに 買収され、金融サービスの側面でもグローバル化が進展して いる
たとえば、1998 年に経営破綻した日本長期信用銀行は、リッ プルウッド・ホールディングスに売却され、新生銀行と なった。
金融グローバル化
金融グローバル化の進展に伴って、非居住者が利用できるオ フショア金融センターを通じて活動しているために直接的な 規制や監督を免れ、ディスクロージャー(情報開示)の義務 をほとんど負わないヘッジファンド(少人数の私募形式の投 資信託、あるいはその投資集団)が世界的にその活動を活発 化させてきた。
1998年6月のロシア危機に関連して、LTCM(ロング・ター ム・キャピタル・マネジメント)が破綻に瀕するとともに、 LTCMに融資していた金融機関が損失を被った。
そのため、ヘッジファンドに対する規制・監督当局やディス クロージャーについて、バーゼル銀行監督委員会で検討さ れた。
バーゼル銀行監督委員会とは、先進諸国の銀行監督当局と中 央銀行の上席代表者によって構成され、金融監督の世界標準 を定めている機関である。
そこで、銀行とヘッジファンドとの取引に関する報告書が提 出され、ヘッジファンドに対する銀行融資の問題点とその改 善が指摘されている。
異時点間取引としての国際金融取引
国際資本取引・国際金融取引は国際的な貸借を意味するの で、何が国際資本取引・国際金融取引を決めるのかを考える ときには、どのような要因によって国際的な貸借が起こるか を考えることがひつようである。
一般に、貸借はある時点における所得と支出(消費や投資) との間に差が生じたときに行われる。
ある時点において、所得が支出を上回ると、その超過所得分 を誰かに貸すことになる。
ある時点において、所得が支出を下回ると、その不足所得分 を誰かから借りることになる。
さらに、現在時点で貸せば必ず将来時点で返済されることを 期待し、現在時点で借りれば必ず将来時点で返済しなければ ならない。
このように、貸借取引は、ある一時点の取引ではなく、異な る時点の間の取引となる。
したがって、国際的な貸借の決定要因を考えるときには、あ る一国における異なる時点の間に渡って所得と支出の動向に 注目しなければならない。
そこで、これらの動向をもっとも単純化して、現在と将来と いう2期間のみで表現する2期間モデルを利用して、国際貸 借取引について考える。
異時点間取引としての国際金融取引
時間選好率にもとづく主観的割引率
選好(効用関数の形状)に影響を与えるもの
利子率
消費の時間的パターンの決定
現在の消費をあきらめて、将来の消費が増加することで、満 足できるか、否か?
選好の問題
現在の消費をあきらめると、将来の消費がどれだけ増加す るか?
利子率の問題
資本の限界生産力 利子率
投資の決定
現在、投資を実行すると、将来の生産量をどれだけ増やすこ とができるのか?
投資の限界生産力の問題
現在、借金をすると、将来どれだけの返済が必要か。 利子率の問題
消費の時間的パターン
投資および現在と将来のGDP