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国際金融
unit 9 購買力平価は本当に成立するのか
購買力平価は本当に成立するのか
このunitでは、購買力平価が現実に成立しているか、また成 立しないのであれば、その原因は何なのかについて解説する。 特に購買力平価から乖離する原因の1つとして、非貿易財の 存在を指摘し、非貿易財部門の生産性格差が実質為替レート に与える影響を分析したバラッサ=サミュエルソンの定理を 解説する。
円ドル為替レートの動向をみる
購買力平価から計算された為替レートは図3-2のように なる。
実線は、1973 年から 2005 年の実際の円ドル為替レート 破線は、消費者物価指数から購買力平価で計算された為替 レートと卸売物価指数から購買力平価で計算された為替レー トである。
円ドル為替レートの動向をみる
円ドル為替レートの動向をみる
実質為替レート
eP∗ P
は、購買力平価が成立していれば、常に1である。
円ドル実質為替レートのデータを示したものが図3-3である。 円ドル実質為替レートは、通時的に1を下回っていることが わかる。
円ドル為替レートの動向をみる
購買力平価パズル
購買力平価は長期的な為替レートの動向を説明できる。 その一方で、購買力平価から乖離すると、その乖離が半分に 減少するためには、5∼7年という期間を要することが分かっ ている。
購買力平価からの乖離をもたらすショックとして実物ショッ クと名目ショックが考えられる。
実物ショックとは、消費者の嗜好、企業の技術に対する ショック
名目ショックとは、貨幣ショックなど
購買力平価パズル
実物ショックが断続的に発生している状況は考えにくい。 したがって、名目ショックが購買力平価からの乖離の要因と 考えられる。
しかし、名目ショックは5∼7年という長期間持続するとは考 えにくい。
この現象を、購買力平価パズルと呼ぶ。
購買力平価から乖離する原因
購買力平価から乖離する原因として、以下の要因がある。 日本と外国の消費者の嗜好の差異
財の質や価格に関する情報が完全でないことや、非貿易財が 存在することによって、商品裁定取引が完全には行えない こと
不完全競争市場の存在による市場指向価格形成 オーバーシューティングの可能性
バブルの存在
バラッサ=サミュエルソンの定理
ここでは、購買力平価からの乖離の原因として、非貿易財の 存在が、実質為替レートに与える影響を考える。
バラッサ=サミュエルソンの定理
以下の仮定が満たされる開放経済を想定する。 小国開放経済。
貿易財と非貿易財が存在し、貿易財については一物一価の法 則が成立している。
貿易財、非貿易財ともに労働のみから生産され、労働に関し 収穫一定である。
貿易財部門と非貿易財部門で労働移動が自由である。 貿易財部門と非貿易財部門は完全競争市場である。
バラッサ=サミュエルソンの定理
貿易財部門の労働生産性の上昇が実質為替レートeP∗/Pに 与える影響を分析する。
小国の仮定より貿易財価格は所与であるため、労働生産性の 上昇は貿易財部門の賃金を上昇させる。
その結果、非貿易財部門から貿易財部門へ労働移動圧力が生 じるため非貿易財部門においても賃金が上昇する。
しかし、非貿易財部門においては労働生産性が上昇していな いため、実質賃金を一定に保つように非貿易財価格が上昇 する。
P
バラッサ=サミュエルソンの定理
このように、「貿易財部門の生産性上昇率の高い国では、一 般物価水準が外国と比べて上昇すると同時に、実質為替レー トが増価する」ということをバラッサ=サミュエルソンの定 理と呼ぶ。