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国際金融
unit 2 国際収支表の見方
国際収支とは、一定期間において、ある国(たとえば日本) が外国と経済取引を行なった取引額を記録したものである。 多くの国で、国際収支統計を作成する際に、IMF(国債通貨 基金)の国際収支マニュアルを基にしている。
したがって、国際収支を読むことができるようになると、日 本の対外経済取引を知ることができるだけでなく、世界各国 の経済取引もわかるようになり、とても便利である。 日本では財務省と日本銀行が国際収支表を作成し、公表して いる。
国際収支の定義
国際収支は、大きく分けて、 経常収支
資本収支 外貨準備増減
からなっている。
国際収支の定義
経常収支は、海外との財・サービスの取引を記録したもので ある。
経常収支には、 貿易収支 サービス収支 所得収支 経常移転収支
が含まれる。
「貿易収支」とは、財の輸出額と輸入額をFOB価格で計算 したものである。
FOBとはFree On Board の略で、本船渡し、本船甲板渡し、 本船積込渡し、などといわれる。
FOBでは、売り主(輸出者)は、荷物を港で船に積み込むま
での費用やリスクを負担し、その後に発生するさまざまな費 用(輸送料、海上保険、輸出先国での輸入関税や通関手数料) やリスクは買い主(輸入者)が負担する。
「サービス収支」とは、居住者と非居住者との間における サービスの取引を金額で表したものである。
サービスには、輸送、旅行、通信、情報、保険、金融、建設、 文化活動、などが含まれる。
国際収支の定義
「所得収支」には、海外での雇用に対する報酬(外国で労働 した場合の給料の受取りなど)や投資収益(海外への投資に よる利子や配当など)が含まれる。
「経常移転収支」には、政府間の無償資金援助、国際機関へ の拠出金など、資産の一方的な移転が含まれる
資本収支は、投資など海外との金融取引を記録したもので ある。
資本収支には、 投資収支 その他資本収支
という2つの項目が含まれる。
国際収支の定義
「投資収支」には、海外への直接投資(経営への支配を目的 とした投資のこと。原則としては日本企業の出資比率が 10%以上)、証券投資、金融派生商品、その他投資(貿易信 用、現預金の動き等)などの資金のやりとりが含まれている。
「その他資本収支」には、資本移転(固定資産の取得・処分 にかあかる資金のやりとり)やその他の資産の動きが含ま れる。
外貨準備増減は、中央銀行などの当局が保有している外国通 貨資産の変化を記したものである。
為替レートの安定などを目的として、政府や中央銀行が外国 為替市場において、市場介入を行なった結果、外貨が増加あ るいは減少したり政府が保有している外国債券の利子率や、 為替レートの変動によって、政府や通貨当局が保有している 外国通貨の価値が変化することによって、増減する。
国際収支統計の特徴
国際収支統計は、複式簿記の形式をとっている。
取引を記録する場合に、貸方と借方の両方に同額の記録を行 なう。
国際収支統計では、貸方(資産の減少、負債の増加、資本の 増加、収益の発生)を左側に、借方(資産の増加、負債の減 少、資本の減少、費用の発生)を右側に書く。
簿記会計では、借方(資産の増加、負債の減少)を左側、貸 方(資産の減少、負債の増加)右側に書く。
国際収支の各項目と簿記形式の関係を詳しく見る。
経常収支の貿易収支のうち、輸出は、その国で生産された財 などの実物資産が輸出によって外国に移転することを意味 する。
したがって、この金額を貸方(左側)に書く。
その代金を外貨で受け取る場合は、日本の対外資産の現金が 増加するので、資本収支の投資収支の借方に記録される。 同様に、輸入は実物資産の増加なので、経常収支の貿易収支 の借方(右側)に、その支払いは資本収支の投資収支の貸方
(左側)に記録する。
国際収支統計の特徴
所得収支では、所得の支払いは借方(右側)に、所得の受取 りは貸方(左側)に記録する。
経常移転収支も、所得の支払いは借方(右側)に、所得の受 取りは貸方(左側)に記録する
直接投資、証券投資、現預金などの資本収支項目は、金融資 産の減少や金融負債の増加を貸方(左側)に、金融資産の増 加や金融負債の減少を借方(右側)に記録する。
外貨準備増減は、外貨準備の減少を貸方(左側)に、増加を 借方(右側)に記録する。
国際収支統計の特徴
国際収支の各項目は、貸方がプラス、借方はマイナスとして 表現する。
資本収支がプラスの場合、「資本流入量が資本流出量を越え ている、すなわち流入超」である。
資本収支がマイナスの場合、「流出超」である。
外貨準備が増加した場合、その金額は借方(左側)に記録さ れ、「マイナス」、外貨準備が減少した場合、その金額は借方
(右側)に記録され、「プラス」となる。
外貨準備の増減と、直感と逆になる言葉(「プラス」、「マイナ ス」)であることに注意。
経常収支と資本収支、そして外貨準備増減の和は、常にゼロ となる。
経常収支+資本収支+外貨準備= 0 これを国際収支の恒等式と呼ぶ。
しかし実際の統計では、経費の計算の仕方などで合計額が完 全にゼロとはならないので、「誤差脱漏」という項目によっ てゼロとの差を処理している。
国際収支の具体例
企業が製品を輸出し、輸出代金3000万円を受け取った→貿 易収支のプラスに3000万円、投資収支のマイナスに3000万 円が記入される
企業が製品を輸入し、輸入代金2400万円を支払った→貿易 収支のマイナスに2400万円、投資収支のプラスに2400万円 が記入される。
上記の輸出入が行なわれたときの貿易収支→輸出額3000万 円と輸入額がマイナス2400万円を合わせて、貿易収支は600 万円となる。
日本人が海外旅行先にてホテル宿泊費5万円を支払う→サー ビス収支のマイナスと投資収支のプラスに5万円が記入さ れる。
政府が途上国に無償資金援助3億円を行なう→経常移転収支 のマイナスと投資収支のプラスに3億円が記入される。 政府・日銀が円売り・ドル買い介入2000万円を行なう→外 貨準備増減のマイナスと投資収支のプラスに2000万円が記 入される。
日本の国際収支の推移
日本の国際収支の推移を1985年からみていく。(表1-1) 経常収支は一貫して黒字(プラス)、資本収支も2003年と 2004年を除いて、一貫して赤字(マイナス)であることがわ かる。
また、外貨準備増減は年によって異なり、プラスの年もあれ ば、大きくマイナスの年もある。
日本の国際収支の推移
経常収支の内訳は次のようになっている。
貿易・サービス収支は黒字、所得収支は黒字、経常移転収支 は赤字である。
貿易・サービス収支をみると、貿易収支が一貫して黒字であ るのに対して、サービス収支は赤字である。
しかし、貿易収支の黒字幅がサービス収支の赤字をはるかに 上回っているため、貿易・サービス収支は黒字になっている。 つまり、日本は貿易収支や所得収支で大きな黒字を出してい る国であることがわかる。
資本収支の内訳は次のようになっている。 資本収支のほとんどは投資収支である。
投資収支は2003年と2004年に黒字になっているが、それ以 外はすべて赤字である。
資本収支が赤字であるということは、海外投資が一貫して続 いているということである。
日本は、基本的に、経常収支の黒字でお金を稼ぎ、海外に資 本を提供するという構造であることが理解できるであろう。
日本の国際収支の推移
外貨準備増減は、プラスの値が外貨準備の減少を、マイナス の値が外貨準備の増加を表す。
1985年∼1991年は、外貨準備の増加と減少が数年後とに変 わっている。
1992年から、1998年を除いて、一貫して外貨準備は増加し ている。
とくに、2003年と2004年には大きなマイナス(外貨準備の 増加)を示している。
これは、円高防止のために、財務省・日本銀行が積極的に外 国為替市場介入(円売り・ドル買い介入)を行なったためで
が理解できた。
貿易収支で稼いだお金を海外に投資するという形で還元する ことによって、お金が世界中を回り、世界の経済が成り立っ ている。
一時的に(数年程度)には、経常収支も資本収支も黒字、あ るいは両方とも赤字という状況があるかもしれない。 しかし、1つの国だけが経常収支と資本収支の両方で黒字を 続け、他の国は両方で赤字を続けるという状況は長続きし ない。
なぜなら、赤字を続けているとその国の経済が成り立たなく なってしまうからである。
経常収支も資本収支も赤字である状況が続くと、貿易で財・
国際収支のバランス
日本のように経常収支の黒字の大きい国では、海外に資本を 提供して資本収支が赤字となる。
逆に、経常収支が赤字の国では、海外から資本を受け入れる ことで資本収支が黒字となる。
このように、一国の中で、貿易・サービス収支の黒字(また は赤字)と資本収支の赤字(または黒字)がちょうど均衡す ると、世界経済もバランスしているのである。
一般に、発展途上国は、
海外から直接投資などの形で資本提供を受け、国内の工業化 を推進することが多いため、資本収支黒字となりやすい。 一方、輸出では比較的単価の安い農産物などの 1 次品が多く 占めるため、貿易赤字、経常収支赤字となっていることが 多い。
先進国では、
貿易収支が黒字である場合が多い。
海外への投資が多いために、資本収支が赤字となっている ケースが多いとされる。
しかし、個別の国を見ると、必ずしも先進国や発展途上国の パターンに区分けできるとは限らない。