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国際金融
unit 4 外国為替のしくみ
貿易取引と為替
貿易決済における「外国為替」は、輸出入の手続き業務を指 している。
もともと、為替は、遠隔地との取引を円滑に行うために編み 出された決済システムである。
たとえば、江戸時代には、現在のようなATMもなく、江戸
(東京)と大坂(大阪)の商人の間で商取引が行われた場合、 その代金支払い毎回現金で行うことは大変であった。
しかも、江戸では金を中心とした貨幣体系、大坂では銀を中 心とした貨幣体系の時代が長く、同じ国のなかであっても、 異なる貨幣体系という、現在の外国と同様の側面があった。 江戸の金と大坂の銀の交換比率は変動し、まさしく現在の円 とドルのような関係にあり、そこで発達した決済手段を「為 替」と呼ぶようになったという歴史的経緯がある。
貿易取引と為替
そこで、出てきたのが両替商による立替払の方法であった。 たとえば、江戸の商人が三井などの江戸の両替商に代金を支 払い、大坂の商人は鴻池などの大坂の両替商から代金を受け 取る。
両替商は、多くの商人と取引を行っていたため、毎日、江戸 から大坂へ、または逆に大坂から江戸への支払いが発生する。 したがって、たとえば半年や1年など、一定期間の双方の支 払いを相殺して、その差額の決済を行うシステムが生まれた のである。
これが、為替システムである。
この方法では、大量の現金を常に持ち運ぶ必要もなく、安全 で効率的であった。(図2-1)
貿易取引と為替
貿易取引と為替
現在、この為替業務(両替商が行っていた業務)は銀行の役 割である。
日本の各銀行は、日本銀行に当座預金口座をもち、その口座 間で決済が行われている。
全銀システムと呼ばれている。
貿易取引と為替
たとえば、A銀行に口座を持っている田中さんが、家賃の振 込をするケースを考えよう。
田中さんのアパートの大家さんである鈴木さんは、B銀行に 口座を持っているとする。
田中さんの住むアパートのそばにはA銀行はあるが、B銀行 はとても遠いところにある。
田中さんは、毎月B銀行に行って、鈴木さんの口座に振込を してもよいが、時間もかかるし不便である。
実際には、A銀行の田中さんの口座から家賃が引き落とさ れ、B銀行の鈴木さんの口座に振り替えられる。
A銀行とB銀行との間では、このような取引が双方向で、毎 日大量に発生しているため、全銀システムを通じて決済が行 われるのである。
貿易取引と為替
外国の商品を買った場合の支払いは、購入者は自国銀行に商 品代金を振り込み、海外の事業者はそれぞれの海外の銀行か ら代金を受け取る。
この間に、自国と外国の銀行間で、代金の決済が行われる。 世界全体の銀行をカバーする全銀システムのようなネット ワークは存在しないが、多くの自国の銀行は、海外の銀行に 預金勘定を開設している。
この預金勘定を用いて為替決済を行っており、これをコルレ ス勘定(為替決済勘定)と呼ぶ。
このように、海外の銀行を通じた決済方法を外国為替と呼ぶ。
外国為替レート
ところで、海外との決済を行うためには、円と他国通貨との 交換が必要となる。
円と外国通貨の交換比率は、外国為替レートと呼ばれる。 為替レート、あるいは外国為替、などと呼ばれる場合もある。
「外国為替レートは1ドル=100円」というように表現され た場合、1ドルを100円で交換できるという意味である。 外貨との交換と言う意味でも「外国為替」という言葉が使わ れる。
外国為替レート
たとえば、東京の田中さんがインターネットでニューヨーク のABC会社の商品を買うと、日本のD銀行に日本円で代金 の振込をしたり、クレジットカードで日本円で支払うことが できる。
ABC会社は、取引をしているE銀行からドルで代金を受け 取る。
田中さんが支払った日本円の代金がABC会社に届くまでの 間において、支払いは、全銀システムやコルレス勘定を通じ て行われる。
その途中で、D銀行やE銀行で円からドルへの通貨の交換も 行われるのである。
外国為替市場
自国通貨と外国通貨の取引、すなわち、通貨の売買が行われ る場を外国為替市場(為替市場、外為市場)という。 外国為替市場の一番の特徴は、株式市場(東京証券取引所な ど)や築地の競市のように、決まった場所や建物で取引が行 われているわけではない点である。
取引する人々や会社の間が電話線やインターネットでつな がっていて、そのネットワークを外国為替市場と呼ぶ。 したがって、外国為替市場は、基本的に24時間365日オー プンしている。
しかし、世界の為替市場の取引の多い活発な時間帯は、およ そ午前9時から午後4時の間である。
外国為替市場
世界でもっとも大きな市場、つまり、多くの金融機関が集 まっている地域は、東京、ロンドン、ニューヨークである。 これらのほかにも、ウェリントン、シドニー、香港、シンガ ポール、ヨーロッパの各市場がある。
外国為替市場は、毎日シドニーから始まり、東京市場の開始 とともに1日のなかでもっとも活発な取引の時間のひとつと なる。
東京に続き、香港やシンガポールなどのアジア市場が開いた のち、ロンドンを中心としたヨーロッパ市場での取引が中心 となる。
アジアとヨーロッパでは時差があるために、東京市場の午後 とロンドン市場の朝の取引時間が重なるため、この時間も取 引の活発な時間のひとつとなる。
外国為替市場
そして、最後にニューヨーク市場が開く。
ロンドン市場の午後とニューヨーク市場の午前が重なるた め、この時間帯の取引も非常に大きい。
ニューヨーク市場の午後の時間帯は、大きな市場と重なって いないため取引は少なくなっていく。
そして、再び、シドニー、そして東京と市場が開いていくの である。
外国為替市場
外国為替市場
外国為替市場とは、通常、銀行間で為替の売買が行われるイ ンターバンク市場(銀行間市場)を指す。
対顧客市場は、銀行と顧客との間での取引が行われる市場を 指す。
商社や各種事業会社が取引を行うための為替取引や、海外旅 行などのために円と外国通貨を交換する個人の取引が含ま れる。
外国為替市場
銀行間で取り引きされるインターバンク市場の為替レート と、対顧客市場の為替レートは違うものである。
インターバンク・レートが時々刻々と変化するのに対して、 対顧客市場の為替レートは、インターバンク・レートを基に 決められる。
東京市場では、朝9時55分頃に対顧客市場の為替レートが 決定されるため、朝9時の開始からこの時間帯にかけての約 1時間は取引が非常に活発になる。
インターバンク市場
インターバンク市場に参加できるのは、銀行、外国為替ブ ローカー、通貨当局である。
外国為替ブローカーとは、銀行間取引の仲介業者である。 通貨当局とは、各国の中央銀行や財務省などである。
インターバンク市場
インターバンクでの取引は、銀行間同士で直接行う直取引
(ダイレクト・ディーリング)とブローカーを経由する取引 がある。
ダイレクト・ディーリングでは、主に電話を使って銀行の為 替担当者同士が取引を直接行う。
最近は、各金融機関がロイターなどと契約して、専用モニ ターを用いてスクリーン上での入力によって取引を行う、電 子ブローキングと呼ばれる取引の割合が増えている。
インターバンク市場
オフショア市場
為替市場を含む金融市場には、さまざまなものがある。 多くは国内居住者同士、国内居住者と国外居住者が取引を行 う場である。
一方、オフショア市場は非居住者同士が取引を行う市場で ある。
オフショア市場
規制や課税方式が国内市場とは異なり、比較的規制が緩く、 無税か、非常に低い税率が課せられる、優遇された市場と なっている。
タックス・ヘイブンと呼ばれ、ケイマン諸島などが有名で ある。
香港やシンガポール、タイのバンコックにもオフショア市場 がある。
タイのバンコックのオフショア市場は、非居住者間だけの取 引にとどまらず、国内への資金流入もあり、1997 年のアジア 通貨危機の一因になったといわれている。
日本では、東京オフショア市場が1986 年に創設され、海外投 資家による円での資金取引を活発化させ、円の地位を高める ことを目的としている。
巨大な市場
世界全体での外国為替取引量は、国際決済銀行(BIS) が3年 おきの4月の取引について、各国中央銀行や当局を通じて各 国の為替取引のアンケート調査を行い、まとめたものを報告 している。
2004年の4月の報告書によると、1日で、世界全体で取引さ れている直物レートの額は約1兆9000億ドル近くに達して いる。(表2-1参照)
直物レートとは、為替取引が成立した2 営業日後に、実際の 通貨の受渡しが行われる取引のレートである。
日本の2004年のGDP(1年間の国内総生産)が約500兆円
(2004年の平均為替レート1ドル108円で換算して、約4兆 6000億ドル)と比較すると、外国為替市場が、以下に巨大な 市場であるかわかるであろう。