購買力平価
このunitでは、為替レート決定理論の1つである購買力平 価について解説する。
商品裁定取引とは、同質な財が、異なる場所で異なる価格で 販売されているときに、この財を価格の安い場所で購入し、 高い場所で売却することによって利益を得る取引である。 たとえば、同質のリンゴが、東京では1個110円、大阪では 1個90円で販売されているとしよう。
このとき、輸送費などの取引費用が無視できるならば、大阪 でリンゴを購入し、東京で売却するという、商品裁定取引を 行えば、リンゴ1個当たり20円の利益を得られる。
国内における商品裁定取引と一物一価の法則
しかし、このような裁定機会はいつまでも存在しない。 大阪では、リンゴに対する需要が増大するため、需要曲線は 右方にシフトする。
結果として、大阪ではリンゴの価格が上昇する。
一方、東京では、リンゴの供給が増大するために供給曲線が 右方にシフトする。
その結果、東京では、リンゴの価格が下落する。 図3-1参照
最終的には、たとえば、リンゴ1個当たり100円と言う価格 で東京と大阪の価格が均等化するであろう。
同質な財であれば、同一の価格づけが行われることを一物一 価の法則という。
図3-1
国内における商品裁定取引と一物一価の法則
日本とアメリカという国境を越えた商品裁定取引を考える。 日本とアメリカで同一のn種類の財が取引されていると する。
日本人とアメリカ人の消費バスケットを構成する財の種類が 同一であることを意味する。
これらの財は、すべて持ち運び可能であるとする。 このような財を貿易財と呼ぶ。
いま、日本における第i財価格をPi,t(円建て)、アメリカに おける第i財価格をP∗
i,t(ドル建て)とする。
商品裁定取引が成立しているとすると、 Pi,t = etPi,t∗ となる。
すべてのi = 1, · · · , nについて成立する。
絶対的購買力平価
第i財という個別の財における一物一価の法則を表す式を導 いた。
これを一般物価水準における一物一価の法則に拡張したもの が購買力平価である。
以下では、消費バスケットを構成する各財の割合が、日本と アメリカで同一であると仮定する。
この仮定は、日本人とアメリカ人の嗜好が同一であるため、 総消費額に占める各財への支出額の割合が同一となること意 味する。
一般物価水準Ptを、消費バスケットに占める各財の割合で ウェイトづけした加重平均として定義する。
法則は、
Pt= etPt∗
と展開できる。 したがって、
et=
Pt
Pt∗
である。
これは、為替レートは自国と外国の一般物価水準の比率に よって決定されることを意味しており、絶対的購買力平価
相対的購買力平価
絶対的購買力平価は、輸送費などの取引費用が存在しないこ とを前提としている。
しかし、現実的には、アメリカから日本へ財を輸送すると、 無視できない輸送費が生じ、さらに関税等が付加される場合 もある。
輸送費や関税などは、貿易障壁と呼ばれる。
貿易障壁を反映したパラメータをθで表すと、絶対的購買力 平価式は、
Pt= θetPt∗
と変更される。
もし、θ = 1.1 ならば、取引額の 10%の貿易障壁が発生するこ とを意味する。
相対的購買力平価
この式を変化率の形に書き直すと、 et+1− et
et =
Pt+1− Pt
Pt −
Pt+1∗ − Pt∗ Pt∗ と表される。
これは、為替レートの変化率は、自国と外国のインフレ率格 差に等しくなることを意味しており、相対的購買力平価式と 呼ばれる。
アメリカのインフレ率が不変であることを仮定すると、日本 のインフレ率が上昇(下落)するならば、為替レートも同率 で上昇(下落)し、円安・ドル高(円高・ドル安)となるこ とを意味している。