1.対象者の属性
58 人から回答があり(回答率 19.1%),そのうち有 効回答が得られた 50 人を分析対象とした(有効回答 率 16.4%).男性 28 人(56.0%),女性 22 人(44.0%)
であった.平均年齢は 29.4 歳(SD3.7)であった.
国籍はアジア圏が大半を占めており,中国(28.0%)
がもっとも多かった.5 段階尺度で日本語能力は中央
値が 2(平均 2.6),英語能力は中央値が 4(平均 4.1)
であった.日本語検定は未回答がもっとも多く(n=
17),続いて 0(n=11),N3(n=5)であり,分析に は使用しなかった.母語は中国語(30.0%)がもっと も多かった.在留期間は,平均 2.7 年(SD1.7)であ った.宗教は,無宗教(40.0%)がもっとも多く,仏 教とイスラム教が同数であった(表 1).
2.医療機関受診体験
日本で医療情報が手に入れやすいかという質問では,
「はい」と回答した対象は 22 人(44.0%)であった.
入手先は,友人がもっとも多かった.過去に病院にい
くべきだと思ったのに,病院にいかなかったことがあ るかという質問には,27 人(54.0%)が「はい」と回 答した.「はい」と回答した対象の病院にいかなかっ た理由としては,「言葉が通じないと思ったから」が 17 人(51.5%)ともっとも多かった(表 2).
日本での受診経験がある対象は,37 人(74.0%)で あった.受診した病院の中では,大学病院が 73.0%
ともっとも多かった.受診経験があると答えた 37 人 と,受診経験があると回答していなかったが,受診・
入院したときに感じたこと 14 項目に回答していた 1 名を加えた 38 人のうち,100% の対象がプライバシ ーは守られていると回答し,受診過程がスムーズであ 表 1.対象者の属性(n=50)
属 性 例数(%)
性別
男性 28(56.0)
女性 22(44.0)
年齢(平均値 ±SD) 29.4±3.7
国籍
中国 14(28.0)
ミャンマー 5(10.0)
ベトナム 5(10.0)
タイ 4 (8.0)
インド 4 (8.0)
台湾 3 (6.0)
韓国 2 (4.0)
ラオス 2 (4.0)
その他(サウジアラビア,バングラディッシュ,ブラジル,イ ラン,カンボジア,ウルグアイ,イラク,エジプト,スリラン カ,イエメン,ヨルダン,各 1 名)
11(22.0)
日本語能力(1~5)[中央値(平均値)] 2 (2.6)
英語能力(1~5)[中央値(平均値)] 4 (4.1)
母語
中国語 15(30.0)
アラビア語 5(10.0)
ビルマ語 5(10.0)
ベトナム語 5(10.0)
タイ語 4 (8.0)
タミール語 3 (6.0)
韓国語 2 (4.0)
ラーオ語 2 (4.0)
ウイグル語 2 (4.0)
その他(ベンガル語,ポルトガル語,テルグ語,ペルシア語,
クメール語,ウズベク語,シンハラ語,各 1 名)
7(14.0)
所属
大学院生 / 研究生 46(92.0)
学部生 4 (8.0)
在留期間(年)[平均値 ±SD] 2.7±1.7 宗教
無宗教 20(40.0)
イスラム教 12(24.0)
仏教 12(24.0)
ヒンドゥー教 4 (8.0)
キリスト教 2 (4.0)
る,衛生環境がよい,医療の質が高い,治療方法が適 切であるなどと,80% 以上の対象が回答していた.
一 方,言 葉 が 通 じ に く い と 感 じ た 対 象 は 28 人
(73.7%),医療通訳が不足していると感じた対象は 26 人(68.4%)であった.一方,文化の違いを感じると 回答した対象は 14 人(36.8%)であり,病院の食事 が合わないと答えた対象は,食べたことがないと答え た 23 人を除いた 15 人中 12 人であった(表 2).
3.医療満足度と関連していた要因
日本の病院での受診経験のある留学生の医療満足度
の中央値は 4(61〜80%)であった.性別,年齢,日 本語能力,英語能力,在日滞在年数と満足度との関連 については,性別のみに統計的有意差がみられ,女性 のほうが男性よりも満足度が低かった(男性の中央値 は 5,女性の中央値は 4,Z=-2.171,P=0.030).そ のほかの項目については,統計的に有意な関連はみら れなかった.
日本語能力が低いと回答していた対象ほど⑤言葉が 通じにくい(z=-3.225,P=0.001),⑥説明がわか りにくい(z=-3.582,P<0.001)と感じていたが,
英語能力が高いと回答していた対象ほど⑥説明がわか 表 2.日本での医療機関受診体験
体 験 例数(%)
医療情報を手に入れやすい(n=50) 22(44.0)
どこで医療情報を手に入れているか(複数回答)[n=50]
友人 37(74.0)
大学 33(66.0)
インターネット 29(58.0)
市区役所 16(32.0)
新聞・雑誌 2 (4.0)
大使館 1 (2.0)
その他 2 (7.4)
過去病院にいくべきだったのに,いかなかったことがある(n=50) 27(54.0)
病院にいかなかった理由(複数回答)[n=33]
言葉が通じないと思ったから 17(51.5)
医療費が心配だったから 5(15.2)
どこの病院にいけばいいのか,わからなかったから 5(15.2)
忙しかったから 4(12.1)
面倒だったから 2 (6.1)
日本で病院を受診したことがある(n=50) 37(74.0)
受診した医療機関の種類(複数回答)[n=37]
大学病院 27(73.0)
個人病院 15(40.5)
総合病院 11(29.7)
専門病院 4(10.8)
その他 1 (2.7)
日本の病院を受診したときに以下のようなことを感じたことがある(n=38)
プライバシーが守られている 38(100.0)
受診過程がスムーズである 37(97.4)
衛生環境がよい 34(89.5)
医療の質が高い 34(89.5)
治療方法が適切である 33(86.8)
言葉が通じにくい 28(73.7)
医療通訳サービスが不足している 26(68.4)
待ち時間が長い 22(57.9)
医療費が高い 22(57.9)
診療時間が短い 19(50.0)
説明がわかりにくい 18(47.4)
文化の違いを感じる 14(36.8)
病院の食事が合わない 12(31.6)
(食べたことがない) 23(60.5)
(37 例:欠損回答 1 名)
病院スタッフの対応がわるい 4(10.8)
日本の医療の満足度(1~5)中央値(平均値) 4.0(4.2)
りにくい(z=-2.175,P=0.030)と感じていた.対 象者の英語能力と日本語能力は有意に負の相関がみら れた(r=-0.412,P=0.003).
4.日本の病院のよい点と改善点
自由記述における日本の病院のよい点としては,ス タッフの対応がもっとも多くあげられていた.たとえ ば “hospitalityandcareisgood(親切で,とても温 かく迎え入れてくれた)”,“excellentnursing(看護 がとてもよかった)”,“doctorcommunicationisex-cellentandprofessional(医師のコミュニケーション がすばらしく,専門的だった)” など.続いて日本の 医療システムがよかったとする意見が多かった.たと
えば,“receptiontimeisshort(payingforthebill)
(受付と支払いがスムーズだった)”,“Japanesehealth caresystemappearedveryefficientingeneralhos-pital(日本の一般病院での医療システムは効率的だ った)”.改善点としては,言語の問題がもっとも多く あ げ ら れ て い た.た と え ば “onlycommunication issue(コミュニケーションの問題のみ)”,“onlydoc-torscanspeakEnglish(医師しか英語が話せなかっ た)”,“language barrier(言葉の壁)”,“doctors shouldbeabletocommunicateinEnglish(医 師 は 英語でコミュニケーションがとれるべきだ)”.医療シ ステムについては,とくに待ち時間に対する意見がも っ と も 多 か っ た.つ ま り “itwillbebetterifthe 表 3.日本での医療体験からみたよい点と改善点(自由記述)
よい点 回答数
スタッフの対応(13) 親切で,とても温かく迎え入れてくれた 3
待遇がよかった 2
コミュニケーションの問題が発生しても根気強く対応していた 2
看護がとてもよかった 2
ケアがよかった 1
医師が患者に時間を割いてくれた 1
医師のコミュニケーションがすばらしく,専門的だった 1
スタッフがよく教育されていた 1
システム(11) 医療システムが効率的だった 2
よく順序立てられていた 2
ほとんど予定どおりにすすんだ 2
受付と支払いがスムーズだった 2
受診の過程がスムーズだった 1
再検査の待ち時間が短かった 1
保険のシステムがよかった 1
環境(7) 病院が静かで,きれいだった 2
衛生環境がよかった 2
すべての検査ができ,設備が整っていた 2
食事がよかった 1
医療の質(3) 適切な診断をするのに時間がかからなかった 1
素早く治療がすすめられていた 1
医療の質がよい 1
医療費(1) 医療費が安い 1
改善点
言語(15) コミュニケーションの問題 5
英語を話せるスタッフが少なかった 3
言語に問題があった 2
通訳が不足している 2
言語の壁により,ときどき誤解が生まれることがあった 1
医師が言語を理解できなかった 1
日本語で専門用語を理解するのがむずかしかった 1
システム(9) 待ち時間が長い 5
どこの病院にいけばよいのかわからない 2
診察を受けるまでに 1 ヵ月かかった 1
土・日,祝日,夜間診療がない 1
医療の質(2) 間違った診断をされた 1
いくつかの薬剤を取り扱っていなかった 1
医療費(2) 特定のものが高い 1
初診料が高い 1
waitingtimeisshorter(待 ち 時 間 が 短 い と よ か っ た)”,“waitingtimeistoolong(待ち時間が長すぎ る)”など(表 3).