FWS RWS
2.5 at roof height
RWS (Closed loop)
FWS +58.5/-60.8 deg
FWS (Closed loop)
(2) ⾞両運動シミュレーションツールを⽤いた開ループ⼊⼒による検討にて,後 輪操舵⾞の回避初期における⾞両後端の障害物側への迫り出し,横回避移動の 遅れが確認された.内傾挙動の影響に関しては,後輪操舵⾞の⼤きな横回避移動 の遅れ,前輪操舵⾞の回避後半における⾞両上部の横移動の滞留が確認された.
(3) 後輪操舵⾞の場合,回避遅れを挽回するために前輪操舵⾞に⽐べて極めて⼤
きな操舵が必要になる.今回の例では回避前半では 1.6倍,後半では 2倍程にも なっている.これは後輪操舵⾞での回避操作の難しさの表れだと⾔える.
(4) 開ループ,閉ループの両⾯から,障害物回避に対する前輪操舵⾞の優位性(後 輪操舵⾞の弱点)が明らかになった.
2) 社会受容性検討のために
新たなコンセプトとしての PMV の社会受容性を考えるために,次章にて,前 輪操舵⾞の障害物回避能⼒を,市場にて実績のある乗⽤⾞およびモーターサー クルと⽐較する.社会的に受容されるには,モーターサークルより有利なことが 最低条件であり,さらに乗⽤⾞に近い性能が望まれる.
3.3. 乗⽤⾞,モーターサイクルとの障害物回避性能⽐較
(13)(15)
3.1.節
(12)(15)
で述べたように,旋回時アクティブに内傾する PMV において,速 い操舵に伴う操舵輪の過渡的スリップ⾓(過渡的横⼒)で発⽣する⾞体へのロー ルモーメントが,前輪操舵ではその内傾を遅らせる⽅向に作⽤するため,前輪操 舵⾞は急操舵時の内輪浮きに対して不利(18)
である.しかしながら,3.2.節で明らかになったように,後輪操舵での障害物回避能⼒
には弱点があり
(11)(15)
,このため PMV の社会実装においては,前輪操舵の PMV を⽬指す必要がある.3.1.5.項で述べたように,前輪操舵⾞の急操舵時の内輪浮きを抑制するために は,ロール追従制御ゲインT
I
を緩和する必要がある(12)(15)
.ただしロール追従制 御ゲインTI
の緩和は,同時にその障害物回避能⼒を悪化させる可能性がある.新たなコンセプトとしての PMV の社会受容性を考えるためには,その回避能
⼒を,市場にて実績のある乗⽤⾞およびモーターサークルと⽐較する必要があ る
(1)
.そして PMV が社会的に受容されるには,その回避能⼒がモーターサーク ルより有利なことが最低条件であり,さらに乗⽤⾞に近い性能が望まれる.そこで本節では,旋回時にアクティブに内傾する PMV の社会受容性を確認す るために,マルチボディダイナミクス(MBD)シミュレーション⼿法を⽤いて,
その障害物回避能⼒を乗⽤⾞およびモーターサークルと⽐較する.さらにその 時の運動特性を原理的に考察するとともに,シミュレーション結果からその詳 細を確認する.
3.3.1. シミュレーションモデルと⽐較⽅法
1) ⾞両運動モデル
第 2 章の 2.3.節,2.4.節で述べたように,PMV と乗⽤⾞の⾞両運動シミュレ ーションツールとして,ドイツ IPG Automotive社のCarMakerを⽤いた.PMV については,3.2.節
(11)(15)
で⽤いた前輪操舵⾞と後輪操舵⾞のうち,本項では前輪 操舵⾞のモデルを⽤いる.なお乗⽤⾞モデルは第 2 章の 2.4.節で述べたように,CarMakerに付属する⼀般的乗⽤⾞のモデルである.
⽐較するモーターサイクルの障害物回避挙動については,第 2 章 2.4.節で述
べたように,⽶国Mechanical Simulation社のBikeSimによるシミュレーション
結果を⽤いており,モーターサイクルモデルは
BikeSim に付属する⼀般的なス クーターのモデルである.2) ⾞両諸元
PMV の⾞両諸元は 3.2.節
(11)(15)
と同様,第 2 章の図2-6及び表
2-4に⽰した基準諸元である.ロール追従制御ゲインは,急操舵時の内輪浮きに問題のないこと
が確認されたT I =50 とする (12)(15)
.使⽤タイヤモデルは第 2 章の図2-11 に⽰し た,モーターサイクル⽤タイヤモデルを流⽤している.⽐較対象の乗⽤⾞モデルとモーターサイクルモデルの基本諸元を第 2 章の表
2-7に⽰した.乗⽤⾞モデルは実質的に VWビートルの諸元であり,モーターサ
イクルモデルは,実質的に本⽥フォルツァ250 の諸元である.3) ドライバモデル
第 2 章の 2.3.節,2.4.節で述べたように,PMV と乗⽤⾞のシミュレーション では
CarMaker に付属する IPGDriver
による⾃動⾛⾏を⾏った.IPGDriver
は,仮想⾞両システムにおけるコンポーネントのひとつであり,⾞両運動特性を認
識した上で,前⽅ 2 次予測モデルを基本として,規制されたコース内での⾛⾏速度と⾛⾏軌跡を⾃律的に選択して⾛⾏する.
⼀般的に設定されるべきドライバモデルの,
本節で⽤いる標準パラメータを,
第 2 章 2.3.節の表 2-5 に⽰した.最⼤操舵⾓,最⼤操舵速度,最⼤操舵加速度 は,いずれも回避操作に対して⼗分に⼤きな値としている.インカット係数(ccc) は,PMV,乗⽤⾞とも 0.1 とした.表 2-5 以外のモデルパラメータとして,
PylonShiftFdCoefを 0.15 としている.いずれも
IPGDriver
が独⾃に定めている パラメータであり,パイロン規制レーンチェンジでのドライバの運転操作に影 響する.本節では,⾛⾏条件に応じて設定したマヌーバベースのドライバモデルの切
り替えを⾏なう.以下にその理由を述べる.800m余りの助⾛区間から,
コース規制シングルレーンチェンジコースに進⼊
する.
直線⾛⾏のドライバはレーン中央を⾛⾏するが, IPGDriver
による⾃動⾛⾏では狭い⾛⾏コース幅を設定しても可能な範囲で有利なコース取り(フェイ ント操舵)をしてしまう.これは障害物回避動作の模擬としては適切ではない.
そこで直進⾛⾏からフェイント操舵なしでコース規制シングルレーンチェン ジコースの回避区間に進⼊させるために,前後⽅向の速度制御は⼀貫して⾃動 で⾛⾏させるが,横⽅向の制御は回避区間進⼊直前に直線⾛⾏ドライバから IPGDriverによる全⾃動⾛⾏に切り替える.
切り替えるタイミングは,回避区間進⼊時に内側のパイロンを外さない程度 に早く,コース取りをする余裕がない程度に遅く設定する.回避幅により切り替 えるタイミングは変動する.表 3-1 に⽰す切り替え位置とすることでフェイン ト操舵することなく,⾃動⾛⾏で回避操舵を⾏わせることができた.
表3-1 ドライバモデルとその運転⾏動
モーターサイクルのシミュレーションでは,BikeSim 付属のライダモデルを
⽤いる.BikeSimの場合,与えられたコース内での⾃動的な最⾼速度⾛⾏をする 機能がないため,PMV 同様のコース規制シングルレーンチェンジコースを⾛⾏
するように,⾞両に⽬標⾛⾏軌跡を与えるという⽅法となる.
ライダモデルは主に2つのパラメータで調整される.⽬標コース追従におけ る予⾒時間と内傾挙動のゲインである.予⾒時間は PMV でのモデル切り替え距 離に合わせて設定する.内傾挙動のゲインは,最⼤通過速度が得られるように,
⽬標軌跡の設定と合わせて調整した.
4) ⾛⾏コース
通過最⼤速度が通常⾛⾏速度域となるよう,コース規制の厳しさを設定した.
その厳しさに⽔準を設けるために,回避区間距離を⼀定に保ち,横⽅向の回避幅 を 3⽔準設定した.
回避区間距離と横⽅向の回避幅に関して,事前にパラメータスタディを⾏っ
た上で,図3-32 のように,回避区間距離を 10m,横⽅向の回避幅を 1.5m,2.0m,
2.5mの 3⽔準に絞り込んだ.⼀般に,モーターサイクルでは横⽅向に 2mの回 避動作をするのは厳しい条件と⾔われている.
図3-32 ⾛⾏コース⼨法の設定
コース幅は⾞両幅に⼀定の余裕を持って設定されるため,PMV と乗⽤⾞では コース幅は異なるが,回避幅の⽔準は同じとし,通過最⾼速度で⾞両の障害物回 避性能の良否を判断することとした.
この回避条件は,⾞両が道路の右端を⾛⾏中に道路右端に⼀定幅の障害物が 現れた状態を模擬している.⾞両中央の障害物を回避する場合,⾞幅の狭い⾞両 の⽅が回避幅は⼩さくて済むが,PMV の社会的受容性を検討するという主旨か ら,乗⽤⾞に⽐べて回避幅の⽔準に差を設けず,PMV とモーターサイクルにと っては厳しい側の条件とした.
PMV ではコース幅を 1.5mとし,その全幅 0.88mに対し⽚側0.31mの余裕を 持たせた.レーンチェンジ試験としてはかなり厳しい条件と⾔える.なお IPGDriver はコース幅にて⾞両全幅を⾃動設定(⽚側 0.5m の余裕)するため,
この余裕以下のコース幅に設定すると,回避時に本来の限度以上にインカット してしまう.このため,回避区間直前と直後のみコース幅を旋回外側に拡幅し,
最⼤ 1.88mとした.これによりイン側のパイロン位置を保ったまま,全幅 0.88m という PMV の条件での回避⾛⾏が達成される.
乗⽤⾞の場合も同様に設定した.全幅 1.70mに対し,同様に⽚側0.31mの余 裕を持たせ,コース幅を 2.32m とした.そして回避区間直前と直後のみコース
D l Lateral offset W l Lane width
PMV, Motorcycle : W l =1.5m D l =1.5m, 2.0m, 2.5m Passenger Car : W l =2.32m D l =1.5m, 2.0m, 2.5m
D l
W l W l
10 m
Widened Transition Section
Widened
835m
850m
860m
885m
幅を最⼤ 2.70m に拡幅した.回避区間距離と横⽅向回避幅の⽔準は PMV と共 通である.
モーターサイクルでも 3 ⽔準の回避幅の⾞線移動を⾃動で⾛⾏させた.ただ し 3.3.1.項 3)で述べたように,与えられたコース内の⾃律的な最⼤速度⾛⾏が できないため,結果として PMV 同様のコースを⾛⾏するよう,ライダモデルに
⽬標軌跡を与えた.⾛⾏速度を徐変して,最⼤通過速度が得られるように,内傾 挙動のゲインと⽬標軌跡の設定を調整した.その⾛⾏軌跡から回避成功か否か を判断したので,結果として,モーターサイクルも PMV と同様の規制されたコ ース内を⾛⾏したことになる.
3.3.2. 障害物回避時のロールモーメントの釣り合い
乗⽤⾞とモーターサイクル,PMV の,横加速度による旋回外側へのロールモ ーメントの釣り合い条件を原点に⽴ち返って整理し,その後の障害物回避能⼒
の⽐較に進む.
1) 乗⽤⾞とモーターサイクルのロールモーメントの釣り合い
乗⽤⾞の運動において,重⼼⾼さに作⽤する横加速度とこれを⽀える地⾯上 の横⼒が,⾞両にロール⽅向のモーメントを与える.3.1.1.項 1)の図3-1 に⽰す ように,このモーメントと釣り合うのが左右輪の荷重移動による反対⽅向のロ ールモーメントだ.この釣り合い⾓を式で表すと式(3-1)となる.
⾞両内での左右荷重移動概念のないモーターサイクルでは,重⼼⾼さに作⽤
する横加速度によるロールモーメントは,上下⼒と⾞両⾃体が内傾することで
⽣じる左右⽅向のモーメントアーム⻑によって打ち消される.これが⾃転⾞や モーターサイクルなど,シングルトラック⾞両の釣り合い⾓となる.これを式で 表すと式(3-2)となる.
2) アクティブに内傾⾓を与える PMV のロールモーメントの釣り合い
アクティブに内傾⾓を与える PMV では,内傾⾓を得るために左右輪に上下変 位を与える.これは積極的に左右輪に接地荷重移動を発⽣させることと等価で もある.モーターサイクルと同等の内傾⾓が得られれば,結果的に接地荷重は左 右均等に落ち着くが,内傾⾓の応答が遅れている間は,乗⽤⾞のように左右輪の