ロールモーメント⼊⼒
2.3.1. マルチボディダイナミクス(MBD)シミュレーション
⼀般に知られているように,旋回中には内傾(リーン)し停⾞すれば転倒する
⼆輪⾞のモデルは⾃動⾞のそれとはモデル構造が異なるため,⾃動⾞⽤の⾞両 運動シミュレーションツールと⼆輪⾞⽤のそれとは,全く別のシミュレーショ ンツールとして構成され,それぞれの上で構築された⾞両モデルに互換性はな い.本著では,
アクティブに内傾する PMV のモデル化に,⾞両運動シミュレー ションシステム(ドイツ
IPG Automotive 社の CarMaker)を⽤いた.ここでは,表
2-2 に基づき,第 3 章以降で使⽤する MBD モデルについて順に解説する.表
2-2アクティブに内傾する PMV モデル全体像
第3章3.1.節第3章3.2.節第3章3.3.節 車両構成 車両諸元 想定横加速度想定旋回半径 目標ロール角
前二輪・後一輪 前輪操舵・後輪駆動 表2-4 記)基準諸元 記)操舵角比16.0 図2-10, 式(2-1) 式(2-2) 式(2-3) T
P
=4000 TI
=100, 70, 50 TD
=0前二輪・後一輪 前輪駆動・後輪操舵 前輪操舵・後輪駆動 表2-3, 表2-4 記)基準諸元 記)操舵角比図2-7, 16.0 図2-9, 図2-10, 式(2-1) 式(2-2) 式(2-3) T
P
=4000 TI
=100 TD
=0前二輪・後一輪 前輪操舵・後輪駆動 表2-4 記)基準諸元 記)操舵角比 16.0 図2-10, 式(2-1) 式(2-2) 式(2-3) T
P
=4000 TI
=50 TD
=0 タイヤMC用図2-11MC用図2-11MC用 図2-11第4章4.4.節 前二輪・後一輪 前輪操舵・後輪駆動 表2-4 記)基準諸元 記)操舵角比16.0 図2-10, 式(2-1) 式(2-2) 式(2-3) T
P
=4000 TI
=50 TD
=0 MC用 図2-11第5章 前二輪・後一輪 前輪駆動・後輪操舵 表2-3 記)基準諸元 記)操舵角比図2-7 式(2-2)
図2-9, 式(2-1) 式(2-3) T
P
=4000 TI
=0 TD
=0 MC用 図2-11ロール角追従 制御定数(T
P
,TI
,TD
)2.3.2. モデルの基本構成
作成した PMV モデルは,前⼆輪,後⼀輪の三輪⾞であり,旋回中には内傾し
ながら⾛⾏する.本研究での実験では,PMV のモデルとして前輪操舵+後輪駆 動のものと,後輪操舵+前輪駆動のものを準備した.第5
章5.3.節 (14)
では,前 輪駆動+後輪操舵の PMV モデルを⽤いた.⼀般には前輪操舵+後輪駆動が想定 されるが,後輪操舵+前輪駆動の構成は,旋回中に内傾する PMV として社会実 証実験段階にある TOYOYA i-ROAD(図 2-2)が採⽤している.第3章 3.1.節
(12)(15)
,第 3 章 3.3.節(13)(15)
,第4
章4.4.節 (15)(16)
では,前輪操舵+後輪駆動の PMV モデルを⽤い,第 3 章 3.2.節
(11)(15)
では前輪操舵⾞と後輪操舵⾞を⽐較するために,両⽅のモデルを⽤いた.
⾃動⾞⽤の⾞両運動シミュレーションツール上で旋回中に内傾するモデルを 構築するために,少なからず⼯夫をしている.旋回中に内傾する PMV のモデル として,⾃動⾞モデルのスタビライザーに内傾側の捻りトルクを付加するアク ティブスタビライザーの機能を⽤いた.前輪操舵,後輪操舵を問わず,前⼆輪の サスペンションに設定した.これは必ずしもこのタイプの PMV として必要な要 件ではないが,今回⾞両機能を例⽰的に発現させるために,モデル製作の都合上 で採⽤した.
2.3.3. PMV の基本諸元
⾞両の基本諸元を図 2-7 および表2-3,表2-4に⽰す.
表
2-3 と表2-4は,操舵⾓⽐以外は同様である.
第 3 章 3.2.節
(11)(15)
と第5
章5.3.節 (14)
で⽤いる後輪操舵モデル(表2-3)では,オーバーステア傾向にある⾞両の安定性確保のために,図 2-8 に⽰すように,
⾞速上昇とともに後輪の実舵⾓を抑制される.操舵⾓から⾒ると⾞速上昇とと もに旋回半径が⼤きくなり,⼀般的なアンダーステア特性と同様の⾞両特性と なる.後輪操舵⾞は,必然的にステアバイワイヤとなるので,
実⾞構築の場合に
も,このような可変ギヤ⽐は容易に設定可能である.第 3 章 3.1.節
(12)(15)
,第 3 章 3.2.節(11)(15)
,第 3 章 3.3.節(13)(15)
,第4
章4.4.節
(15)(16)
で⽤いる前輪操舵⾞(表2-4)では,⼀般の⾃動⾞同様,に可変ギヤ⽐の必要がない.前輪操舵⾞両モデルでは,
操舵⾓と前輪実舵⾓の⽐は低速時のギヤ⽐
16.0 のまま保つこととした.なお操舵輪が左右⼆輪の前輪操舵⾞両では,左右 輪の軌跡の差を考慮し,左右輪に切れ⾓差を与えるが,今回は簡単の為に左右の 切れ⾓差を与えていない.
表
2-3,表2-4に⽰したように,この PMV は普通乗⽤⾞に⽐べ全⻑と全幅が 約1/2 で,実は図 2-9
に⽰すように全⻑と全幅の⽐は普通乗⽤⾞と変わらない.ところが全⾼は普通乗⽤⾞並であり,等価的に全⾼が 2 倍⾼いことになる.転 倒を防ぐために,旋回中は⾞両を内傾させることが必要になる所以である.
図 2-7 モデル⾞両の⼨法諸元
表
2-3 後輪操舵PMV の⾞両諸元 (1 名乗⾞)item unit value
Total length m 2.645
Total width m 0.88
Total height m 1.445
Wheel base m 2.02
Front distance from GC m 0.807 Rear distance from GC m 1.213
Front tread m 0.85
Gravity center height m 0.358 Steering Gear Ratio 16.0
item unit value
Total mass kg 369.79
Front mass distribution kg 222.057 Rear mass distribution kg 147.733 Roll inertia moment kgm 2 58.776 (Sprung inertia moment) kgm 2 42.996 Pitch inertia moment kgm 2 197.328 (Sprung inertia moment) kgm 2 118 Yaw inertia moment kgm 2 187.280 (Sprung inertia moment) kgm 2 102.28 Fig. 2-8
Total length Wheel base
Gravity center height Front distance from GC Rear distance from GC
Tota l he ight
Total width
Front tread
表
2-4 前輪操舵PMV の⾞両諸元 (1 名乗⾞)図 2-8 ⾞速と後輪操舵⾓の関係
⾃動⾞技術会「⾃動⾞諸元表」データなどに基づき作成
図 2-9 旋回時に内傾する PMV は従来とは異なる位置づけ
item unit value
Total length m 2.645
Total width m 0.88
Total height m 1.445
Wheel base m 2.02
Front distance from GC m 0.807 Rear distance from GC m 1.213
Front tread m 0.85
Gravity center height m 0.358 Steering Gear Ratio 16.0
item unit value
Total mass kg 369.79
Front mass distribution kg 222.057 Rear mass distribution kg 147.733 Roll inertia moment kgm 2 58.776 (Sprung inertia moment) kgm 2 42.996 Pitch inertia moment kgm 2 197.328 (Sprung inertia moment) kgm 2 118 Yaw inertia moment kgm 2 187.280 (Sprung inertia moment) kgm 2 102.28
1/16 (5deg)
1/32 (2.5deg)
(0deg) (7.5deg)
0 30 60 90
Gear ratio (Rear Steer Angle δ at e.g. Steering Wheel Angle = 80deg)
Vehicle speed km/h
20km /h e.g.
Veloc
ity 30km /h 40km /h Spe cifi
ed
=
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
Crown Prius
Demio Smart Alto
i-ROAD
Study Case
Total Length (mm)
Tot al W idt h ( m m )
Equa l R atio Small cars Short
⭐
Tilting PMVs
2.3.4.
仮旋回半径,仮横加速度,⽬標内傾⾓の設定1)
仮旋回半径第
5
章(14)
と第 3 章 3.2.節(11)(15)
で⽤いる後輪操舵モデルの場合,図 2-10 に⽰すように,前後輪は地⾯に略垂直でスリップ⾓も無視できるとして,後輪の実舵
⾓と前後⾞軸間距離から,
幾何学的な単純計算で仮の旋回半径を求める.同様に 第 3 章 3.1.節(12)(15)
,第 3 章 3.2.節(11)(15)
,第 3 章 3.3.節(13)(15)
,第4
章4.4.節 (15)(16)
で⽤いる前輪操舵⾞は,図 2-11 に⽰すように,前輪の実舵⾓を⽤いる.前輪操舵,後輪操舵とも,仮旋回半径(PTR)は,式(2-1)で求まる.
2)
仮横加速度仮旋回半径(PTR)が,
式(2-1)で求まったので,⾞両速度(v)を⽤いて,式(2-2)のように仮の横加速度(PLA)が求まる.前輪操舵,後輪操舵とも,この関係 は同様である.3)
仮旋回半径,仮横加速度,⽬標内傾⾓の設定そこで,この仮横加速度にバランスするように,式(2-3)に⽰す⽬標内傾⾓
(TRA)を設定する.
式(2-3)における値 A
により,この⽬標内傾⾓(TRA)を任意に変更できる. 式(2-3)から明らかなように, ⽬標内傾⾓
(TRA)が,モーター サイクルのリーンウィズのように,仮の横加速度(PLA)とちょうど釣り合う時 が,A=1.0 である.前輪操舵,後輪操舵とも,この関係は同様である.なおこ の内傾⾓は,⾃動⾞の運動では通常ロール⾓と呼ばれ,モーターサイクルではリ ーン⾓,あるいはチルト⾓と呼ばれる.正負の記号に注意すれば,いずれも同じ意味と理解して問題ない.
PTR = l / sin(δ) ・・・(2-1)
・・・(2-2)
・・・(2-3) PLA = sin(δ) v 2
l
( )
TRA = A tan -1 sin(δ) v 2
l g
PTR ; Provisional Turning Radius δ ; Tire Steered Angle PLA; Provisional Lateral Acceleration v ; Vehicle Speed TRA ; Target Roll Angle l ; Wheel Base A ; User Amplification Factor
図 2-10
実舵⾓と⾞軸間距離から幾何学的に仮旋回半径を求める(後輪操舵)
図 2-11