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PMV の基本諸元設定⼿順例

ドキュメント内 PMV の基本構成と運動特性解析⼿法 (ページ 77-83)

Turn over

4) ロール剛性の内輪浮き現象への影響

3.1.7. PMV の基本諸元設定⼿順例

本著のようにアクティブスタビライザーの機能を持つ場合,現実的な使⽤条 件下での安定性を確保するために,下記のような⼿順が想定される.

① できるだけロール慣性モーメントを抑制する

② 乗り⼼地や接地性への影響を考慮しつつ,できるだけ⾼いロール剛性を与 える(スタビライザーの捻り剛性を⼤きくする)

⽬標最⾼速度を決める(法定速度+α)

④ ロール振動,前内輪浮きが許される範囲内で,T

I 値を決める

⑤ モーターサイクル並以上の回避性能の確保を確認する

⑥ 回避性能不⾜時は③に戻り,⽬標最⾼速度を抑制して④以降を繰り返す

3.1.8. 3.1 節のまとめ

前輪操舵 PMV モデルにて,急操舵時の前内輪浮き現象に対する操舵⾓

MA,

操舵⼊⼒周波数

f

と⾛⾏速度

v

の影響を踏まえた上で,ばね上の

3 軸周りの回転

慣性モーメント

Ixx*, Iyy*, Izz*の影響を明らかにした.合わせてロール共振周波 数,ロール剛性の影響を考察した.

2500 2000

1000 (N)

V er ti ca l L oa d

500 0 1500

0 1.0 2.0 3.0 4.0 (sec)

Izz* = 51.14 Izz* = 102.28 Izz* = 205.56

FzFL FzFR

FzRr

・横⽅向の回避移動量 LD

は,操舵⾓

MA

と⾛⾏速度

v

の⼆乗に⽐例し,操舵周

波数 f

の⼆乗に反⽐例する.

・⾛⾏速度 v

の増⼤に⽐例し,必要な操舵周波数

f

が増⼤する.LD

維持のため

には,操舵⾓

MA

は維持される.急操舵時の前内輪浮きには不利となる.

・急操舵時の前内輪浮き現象は,ロール共振周波数

よりかなり低い操舵⼊⼒

周波数 f

で発⽣しており,⾞両のロール共振によるものではない.

ばね上のロール慣性モーメント

Ixx*の抑制とロール剛性

の確保で,前内輪 浮きを抑制できる.

ばね上のヨー慣性

Izz*, ピッチ慣性 Iyy*は,急操舵時の前内輪浮き現象に対し

てほとんど影響しない.

・アクティブな内傾追従(PDI)制御の T I 値低下で急操舵時の前内輪浮き現象

が抑制される.

更にアクティブに内傾を発⽣させる追従制御ゲイン(T

I 値)による,現実的な

使⽤条件下での安定性確保要件を検討した.3.3.節にて市場実績のある⼆輪⾞な

どと障害物回避性能を定量的に⽐較する.

3.2. 前輪操舵⾞と後輪操舵⾞の障害物回避性能⽐較

(11)(15)

パッシブな内傾機構では,モーターサイクル同様そもそも急操舵することが 困難だが,アクティブなシステムを有する場合,緊急的な障害物回避時などにお いて,ドライバは乗⽤⾞同様かなり急な操舵をする可能性がある.1.3.節で述べ たように,新たなコンセプトとしての PMV の社会受容性を考えるとき,その障 害物回避能⼒も検討されるべきである.

乗⽤⾞の緊急回避試験では,障害物を回避するために対向⾞線に出たあと,さ らに対向⾞を回避するために⾃⾞線に戻るという,きわめて厳しい「ダブルレー ンチェンジ」で性能⽐較することが多いが,モーターサイクルではそもそも最初 に障害物を避けきれないのが⼀般的だ.

本著では

「シングルレーンチェンジ」に て障害物回避⾛⾏を模擬する.

障害物回避能⼒を考えるとき,時間軸での⾞両挙動では障害物との位置関係 を⽰すことができないため,実際の⾛⾏状態を観察するがごとく距離軸での解 析が必要になる.そのために,マルチボデーシミュレーションモデルを⽤いて⾞

両挙動解析が実施されることが多い.

本節では,まず 2.3.節で⾔及した前輪操舵+後輪駆動と,後輪操舵+前輪駆動

の PMV を,その障害物回避能⼒の⾯から⽐較検討する.

3.2.1. ⾞両運動モデルと⽐較⽅法

1) ⾞両諸元

⾞両諸元は,第 2 章の図2-6

及び表

2-3,表2-4に⽰す基準諸元を⽤いた.前 輪操舵⾞,後輪操舵⾞とも,前⼆輪,後⼀輪の三輪⾞であり,旋回中には内傾し ながら⾛⾏する.

第 2 章 2.3.節で述べたように,後輪操舵⾞の場合は,⾼速域での安定性確保の ために,⾞両特性が⼀般的なアンダーステア特性と同様になるよう

(14)

に⼯夫す る.このため,操舵⾓⼀定でも⾞速上昇とともに旋回半径が⼤きくなるよう,操 舵⾓の伝達特性を図2-7のように定めた.

前輪操舵⾞両モデルでは,操舵⾓と前輪実舵⾓の⽐は低速時のギヤ⽐のまま 保ち,

簡単の為に,左右輪の軌跡の差を考慮した左右輪の切れ⾓差は与えない.

2) ⾞両運動モデル

実舵⾓と旋回半径の関係を,第 2 章の図2-9,図2-10 に⽰した.操舵輪の実 舵⾓と前後⾞軸間距離から,幾何学的な単純計算で仮の旋回半径を求め,式(2-3)に⽰すように,その仮の旋回半径と⾛⾏⾞速から導出される仮の横加速度に

釣り合うように,⽬標内傾⾓が定められる (14)

この⽬標内傾⾓となるよう,⾞両モデルのスタビライザーに内傾のための捻 りトルクが付加される.この捻りトルクは,

⽬標内傾⾓に合わせ込むように PID

制御によって導出される.

本節では,前輪操舵,後輪操舵とも,制御ゲインは第

2 章の表2-2 に⽰すように,T

P = 4000, T I =

100, T

D =

0 とする.

3) ドライバモデル

閉ループにおいては,操舵⼊⼒がドライバモデルの影響を受ける.ドライバモ

デルは,第 2 章 2.3.7.項で述べたように,CarMaker

に付属する

IPGDriver

を⽤

いた.そのモデルパラメータを表2-5 に⽰した.

最⼤操舵⾓, 最⼤操舵速度, 最

⼤操舵加速度は,いずれも回避操作に対して⼗分に⼤きな値としている.インカ ット係数(ccc)は,前輪操舵⾞,後輪操舵⾞とも 0.2 とした.表 2-5 以外のモデ ルパラメータとして,PylonShiftBkCoefを 0.3,PylonShiftFdCoefを 0.2 として いる.いずれも

IPGDriver

が独⾃に定めているパラメータであり,パイロン規 制レーンチェンジでのドライバの運転操作に影響するが,前輪操舵⾞と後輪操 舵⾞とも同じ値としているため,相対的な⽐較結果には影響しない.

4) ⽐較⽅法

まず前輪操舵⾞と後輪操舵⾞における⾞両の⾛⾏姿勢を簡単に理解した上で,

⾞両運動シミュレーションシステムにて,開ループでシングルレーンチェンジ を⾏なう.次に図3-21 に⽰すシングルレーンチェンジコースを閉ループにて⾛

⾏させ,前輪操舵⾞と後輪操舵⾞を⽐較する.

図3-21 障害物回避評価のためのシングルL/C コース

3.2.2. 前輪操舵⾞と後輪操舵⾞の⾛⾏状態の簡単な理解

1) 旋回姿勢の基本的理解

まず⾞両運動の基本性能

(20)

として,定常円旋回時の釣り合いを記述した式(3-6)においては,前輪操舵⾞と後輪操舵⾞による差はないものの,図3-22 に⽰す ように,その旋回姿勢においてはRWS⾞が明確に内側を向いた姿勢(⾞両後部 が迫り出した姿勢)をとるという特徴がある.

・・・(3-6)

ρ

; Turning Radius

m

; Vehicle Mass

l

; Wheel Base

l f

; Front Wheel Base

K f

; Front Cornering Power

l r

; Rear Wheel Base

K r

; Rear Cornering Power

v

; Velocity

δ

; Tire Steer Angle

2) 回避時⾞両姿勢の基本的理解

直線路を⾛⾏中の障害物あるいは対向⾞回避を想定した左へ

1/2

⾞線ほどの

回避の様⼦を,静的な重ね合わせにて作図し⿃瞰図として図

3-23

に⽰す.後輪 操舵⾞の場合,回避初期に⾞両後端が右へ移動し⾞両の左への回避が遅れる.

ρ = 1 m l f K f l r K r l v 2 2l 2 K f K r δ

( )

1.2 m

12 m

1.2 m 1.82 m

Driving direction

3-22 定常円旋回時の⾞両ヨー⾓姿勢

図3-23 後輪操舵⾞における障害物回避時の横移動遅れ

1.82m

Comparison Lateral avoidance

1.82m 1.82m

D is ta nc e t o c ol li si on = 12 m

Obstacle

FWS RWS

RW S FWS

v = constant

v = 0 v = constant

v = 0

FWS RWS

3.2.3.

開ループ⾛⾏による⾛⾏状態の⽐較

1) ⾛⾏条件

まず操舵⾓⼊⼒(図3-24)による開ループ⾛⾏を⾏った.⾛⾏速度は 36km/h

⼀定とし,3.3.2.項 2)で作図的に求めた横回避移動量 1.82m を,正弦波操舵⼊

⼒にて達成するものとした.レーンチェンジ開始時と戻し時の操舵⾓が等しい と,必ずしもレーンチェンジ後の⾞両進⾏⽅向が保たれないため,両者の操舵⾓

には多少の差が必要になる.CarMakerでの Maneuver 設定においては,1/2波

⻑ずつの⼊⼒に分けて設定した.

前輪操舵⾞では,+58.5deg/-60.8deg の⼊⼒にて,概ね横移動量 1.82m とレ ーンチェンジ後の⾞両進⾏⽅向維持が得られた.

後輪操舵⾞では 36km/h での⾛⾏において,後輪の実舵⾓が 1/1.2 に抑制さ れるため,操舵⼊⼒から実舵⾓への伝達率(係数)を 1.2倍とし,前輪操舵⾞と 条件を合わせたが,前輪操舵⾞の場合と同じ操舵⾓(+58.5deg/-60.8deg)を⼊

⼒したところ,横移動量がやや不⾜した.1.82mの横移動量を得るために,後輪 操舵⾞ではやや⼤きめの操舵⾓(+61.0deg/-62.5deg)を与えることとした.

図3-24 開ループ⾛⾏での操舵⾓⼊⼒条件

ドキュメント内 PMV の基本構成と運動特性解析⼿法 (ページ 77-83)