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運動特性解析

ドキュメント内 PMV の基本構成と運動特性解析⼿法 (ページ 60-65)

2) ヨー慣性モーメントの影響(思考実験)

⾞体のヨー慣性モーメントにより,操舵初期には⾞両の旋回運動の発⽣が遅 れる.このため前輪操舵⾞の場合,過渡的に前輪のスリップ⾓が増⼤する.この スリップ⾓による横⼒は旋回内向きであり,⼀般的な⾃動⾞と同様,旋回外側⽅

向へのロールモーメントとなる.このロールモーメントが⾞体の内傾応答を遅 らせる.後輪操舵⾞の場合,過渡的に後輪のスリップ⾓が増⼤する.このスリッ プ⾓による横⼒は旋回外向きであり,前輪操舵⾞とは逆に,旋回内側⽅向へのロ ールモーメントとなる.このロールモーメントは⾞体の内傾応答を助⻑する.前 輪操舵⾞では過渡的な接地荷重移動が⼤きく,後輪操舵⾞では⼩さくなる.

3) ピッチ慣性モーメントの影響(思考実験)

内傾応答の遅で旋回内輪が浮き上がった場合,⾞体は旋回外輪のリバウンド ストロークにより持ち上げられる.⾞体の前部のみが持ち上げられるので,⾞体 には後ろ回り⽅向のピッチ運動が発⽣することになる.逆⽅向に転舵しても,同 様に後ろ回り⽅向のピッチ運動が発⽣する.つまり,ロール運動,ヨー運動とは 異なり,その2倍の周波数でピッチ運動が発⽣すると理解できる.⾞体のピッチ 慣性モーメントにより,このピッチ運動にも遅れが発⽣する.

本節では,前輪操舵モデルにおいて,急操舵時の前内輪浮き現象に対する操舵

MA,操舵⼊⼒周波数 f

と⾛⾏速度

v

の影響を踏まえた上で,3軸周りの回転

慣性モーメントの影響を整理し,現実的な使⽤条件下での安定性確保要件を導 出する.合わせて,回転慣性モーメントと関連づけて,アクティブに内傾を発⽣

させる追従制御ゲイン(PIDの中の特にI制御ゲイン)の影響を検討する.

3.1.1. 基本的理解

1) 接地荷重と⾞両の転覆の基本原理

(13)(15)

旋回中の⾃動⾞とモーターサイクルを後⽅から⾒た様⼦を図 3-1 に⽰す.簡 単のために⾃動⾞のサスペンションはストロークせず,横加速度に伴うロール 発⽣もないと仮定している.

⾃動⾞の運動において,重⼼⾼さに作⽤する横加速度とこれを⽀える地⾯上

の横⼒が,⾞両にロール⽅向のモーメントを与える.このモーメントと釣り合う のが左右輪の荷重移動による反対⽅向のロールモーメントだ.この釣り合い⾓

を式で表すと式(3-1)となる.

図3-1 乗⽤⾞とモーターサイクルのロールモーメントの釣合い

tan φ e = tan φ t = d t / G.C.H.

・・・(3-1)

φ e : Equivariant roll angle

d t : Moment arm length on lateral transfer of load

G.C.H. : Gravity Center Hight

旋回内輪の接地荷重が残っている間,釣り合い上は転覆しない.旋回内輪の接 地荷重がゼロ,すなわち荷重移動反⼒が旋回外輪位置まで移動すると,これが転 覆限界となる.これを超えても旋回内輪の接地荷重は負にならないので,ロール モーメントがバランスすることはなく,旋回内輪の浮き上がりで重⼼が持ち上 がり,留まることなく旋回内輪が浮き上がる.これが転覆だ.

⾞両内での左右荷重移動概念のないモーターサイクルでは,重⼼⾼さに作⽤

する横加速度によるロールモーメントは,上下⼒と⾞両⾃体が内傾することで

⽣じる左右⽅向のモーメントアーム⻑によって打ち消される.これが⾃転⾞や モーターサイクルなど,シングルトラック⾞両の釣り合い⾓となる.これを式で 表すと式(3-2)となる.

シングルトラック⾞両には⾃動⾞のような転覆はなく,タイヤの接地荷重に 対する発⽣横⼒の限界や,⾞体や乗員の接地などが旋回の限界となる.

Moment arm length on lateral transfer of load (d t )

Lateral transfer of load

Moment arm length on actual roll (d a )

G .C.H . G .C.H .

φ e φ e

tan φ e = tan φ a = d a / G.C.H.

・・・(3-2)

φ a : Actual roll angle

d a : Moment arm length on actual roll

旋回時に内傾する PMV の場合を図3-2 に⽰す.アクティブにロール⾓を与え る PMV では,ロール⾓を得るために左右輪に上下変位を与える.これは積極的 に左右輪に接地荷重移動を発⽣させることと等価でもある.モーターサイクル と同等のロール⾓が得られれば,結果的に接地荷重は左右均等に落ち着くが,ロ ール⾓の応答が遅れている間は,乗⽤⾞のように左右輪の間で接地荷重移動を 発⽣する.

図3-2

PMV のロールモーメントの釣合い

tan φ e = tan φ a + tan φ t

= (d a +d t ) / G.C.H.

・・・(3-3)

接地荷重移動によるロールモーメントは乗⽤⾞のそれと同じであり,⾞体の ロール⾓によるロールモーメントはモーターサイクルのそれと同じだ.これを 式(3-3)に⽰す.

⾃動⾞では旋回内輪の浮き上がりはすなわち転覆だが,旋回時に内傾してい

る PMV では,⾃動⾞とは逆の内向きのロール運動を伴っているので,そのまま 転覆する訳ではない.ロール慣性モーメントにより特に⼤きく内傾応答が遅れ ると,内傾⾓が追いつくまで旋回内輪が浮き上がることになる.スキーのスラロ ームで内板を浮かせているのと同様と理解すれば体感的にも分かりやすい.

2) タイヤ接地点移動と作⽤⼒

図3-1,図3-2 では,⾞体(タイヤ)が内傾しても,接地点は不動のごとく図

⽰したが,実際の接地点は旋回内側へ移動する.その移動量は幾何学的にはタイ ヤトレッドの半径に依存し,もしトレッド半径が⾞両の重⼼⾼と同じ場合,いく ら内傾しても内傾に伴うロールモーメントは発⽣しない.

正確には接地点の横移動を考慮すべきだが,本著では簡単のためにこれを考 慮していない.

3.1.2. PMV の⾞両運動モデル

第 2 章で述べたように,⾞両運動シミュレーションツールとして,ドイツ IPG Automotive社のCarMakerを⽤いた.⾃動⾞⽤のツールで旋回中に内傾するモ デルを構築するために,スタビライザに強制的な捻りトルクを作⽤させている.

⾞両は,前輪操舵⾞にて検討を進める.

PMV の基本諸元は,第 2 章の図2-6及び表2-4に⽰した値を基準とし,本節 の中でこの基本諸元の影響を検討する.タイヤも,図2-11 で⽰したモーターサ イクル⽤タイヤモデルを流⽤している.

本節での内傾⾓追従の制御ゲインはT

P

=4000, T

I

=100, T

D

=0 を初期値とし,

第 2 章の表2-2 に⽰すように,T

I

=100, 70, 50 の⽔準にて,T

I

値の影響を検討 する.

3.1.3. 実験条件の設定

1) 意図的操舵なしでのロール振動

⾞両の 3 軸周りの慣性モーメントが急操舵時の前内輪浮き現象に及ぼす影響 を⾒るためには,意図的な操舵⼊⼒なしで⾞両がロール⽅向に不安定な現象(例

えばロール振動)を起こすと都合が悪い.

3-3 に⽰すように,ばね上のロール 慣性モーメント(Ixx*)を増⼤すると⾞両はロール⽅向に不安定となり,Ixx*を 2

倍にすると直進⾛⾏しているだけでロール⽅向の振動が始まる. Ixx*を 4 倍に

すると図3-4に⽰すように直進⾛⾏を続けられずに転倒してしまう.

3-3

Ixx*

増⼤によるロール⽅向の不安定振動現象 (T

I =100)

3-4 さらに⼤きな

Ixx*

では直進できず転倒 (T

I =100)

11325374961738597109121133145157169181193205217229241253265277289301313325337349361373385397409421433445457469481493505517529541553565577589601613625637649661673685697709721733745757769781793805817829841853865877889901913925937949961973985997100910211033104510571069108110931105111711291141115311651177118912011213122512371249126112731285129713091321133313451357136913811393140514171429144114531465147714891501151315251537154915611573158515971609162116331645165716691681169317051717172917411753176517771789180118131825183718491861187318851897190919211933194519571969198119932005201720292041205320652077208921012113212521372149216121732185219722092221223322452257226922812293230523172329234123532365237723892401241324252437244924612473248524972509252125332545255725692581259326052617262926412653266526772689270127132725273727492761277327852797280928212833284528572869288128932905291729292941295329652977298930013013302530373049306130733085309731093121313331453157316931813193

0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 (sec)

-0.2 0.2 0

-0.6 -0.4 (deg)

R ol la ngl e

-0.8

-1.0 0

4.0 6.0 12.0 (m)

V ehi cl e S pe ed

10.0

2.0 8.0

-1 -0 .8 -0 .6 -0 .4 -0 .2 0 0 .2

Ixx*=42.996 Ixx*=85.992

Vehicle Speed

Roll angle

-2 0 0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00

0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 (sec)

60 100 80

20 40 (deg)

R ol l a ngl e

0

-20 0

4.0 6.0 12.0 (m)

V ehi cl e S pe ed

10.0

2.0 8.0

0 2 4 6 8 1 0 1 2

1611162126313641465156616671768186919610110611111612112613113614114615115616116617117618118619119620120621121622122623123624124625125626126627127628128629129630130631131632132633133634134635135636136637137638138639139640140641141642142643143644144645145646146647147648148649149650150651151652152653153654154655155656156657157658158659159660160661161662162663163664164665165666166667167668168669169670170671171672172673173674174675175676176677177678178679179680180681181682182683183684184685185686186687187688188689189690190691191692192693193694194695195696196697197698198699199610011006101110161021102610311036104110461051105610611066107110761081108610911096110111061111

Vehicle Speed

Roll angle

Ixx*=171.984

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