2. 個々の試験結果の要約
2.8 QT試験
2.8.1
試験1200.1,試験 1200.2,試験 1200.3,試験 1200.4
の心臓安全性報告 表題:第I
相試験の心臓安全性報告(4試験)試験
1200.1:進行固形癌患者を対象としたアファチニブの 1
日1
回14
日間経口投与による第
I
相非盲検用量漸増試験試験
1200.2:進行固形癌患者を対象としたアファチニブの 1
日1
回21
日間経口投与による第
I
相非盲検用量漸増試験試験
1200.3:進行固形癌患者を対象としたアファチニブの 1
日1
回連日経口投与による第
I
相非盲検用量漸増試験試験
1200.4:進行固形癌患者を対象としたアファチニブの 1
日1
回連日経口投与による第
I
相非盲検用量漸増試験心臓安全性報告
第
I
相試験4
件(試験1200.1,試験 1200.2,試験 1200.3,試験 1200.4)の併合
資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.3.2-6(U -1136)]目的:本解析の主目的は,様々な投与量のアファチニブを患者に投与したときの
QTc
間隔の変 化を評価すること,およびQTcF
間隔とC
maxの相関を検討することであった。方法:本心臓安全性報告では,第
I
相試験4
試験[試験1200.1;CTD 5.3.3.2-1(U -2055)
,試 験1200.2;CTD 5.3.3.2-2(U -3025)
,試験1200.3;CTD 5.3.3.2-4(U -1023)
,試験1200.4;
CTD 5.3.3.2-5(U -3128)]から得られた心電図データを用いた後ろ向き解析の結果を示す。解
析はバリデートされたECG
中央測定施設で,より特異的で頑健性の高い統計解析計画に従って 実施した。固形癌患者を対象に実施したこれら4
つの非盲検試験を併合し,心臓の安全性にか かわる問題が心電図に認められないか検討した。4 試験のいずれでも,心電図検査は抗癌剤試 験で一般に行われている頻度で実施し,心電図データの頻回のサンプリングは行わなかった。薬物動態/薬力学評価のための試料採取は限定的であった。心電図データはバリデートされた
ECG
中央測定施設が解析した。QTc間隔では自発的変動が大きいこと,および対照群が設定さ れていないことを踏まえ,心電図上のシグナルに対して検出感度を適宜上げるため,4 試験の データを併合して投与群を確立し,各群の患者数を最大化した。その結果,10~40 mg
群(N=76),45~65 mg
群(N=37),70 mg群(N=17),85 mg超群(N=7)の4
群が得られた(本解析に関 係するのは最初の3
群のみ)。結果:
4
試験を併合した心電図データに,アファチニブによる心拍数,房室伝導(PR 間隔),脱分極(QRS間隔)への影響を示すシグナルは認められなかった。5~12%の患者で,
T
波にベ ースラインと比較して新たな形態学的変化が現れたが,これは合併症および併用薬の多い癌患 者では十分あり得ることである。ただし,アファチニブの影響も排除できない。アファチニブが再分極に及ぼす影響は,Fridericia補正した
QT
間隔を用いることで最もよく分析できる。上 記3
投与群におけるQTcF
間隔のベースラインからの平均変化量はそれぞれ1,8,6 ms
であっ た。非特異的な外れ値(ベースラインから30~60 ms
の変化)も,上記3
投与群のそれぞれ8,
16, 24%に認められた。これらの心電図データから,アファチニブは再分極を誘発するが(QTcF
間隔の平均変化量
10 ms),用量反応関係はみられず,平坦であった。しかし,薬物動態/薬力
学解析から,推定最高血漿中濃度C
maxにおける変化量3 ms,上限値 6 ms
未満,濃度変化によ る傾きゼロが示され,アファチニブは再分極に影響しないことが示唆された。補正QT
間隔(QTcB,QTcF)をアファチニブの血漿中濃度と相関させる累積薬物動態/薬力学解析におい て,線形回帰の結果は,治療域の濃度,MTD,および
MTD
を超えて投与量100 mg
まで,傾き がほぼゼロであった(図2.8.1: 1)。
引用元:CTD 5.3.3.2-6(U -1136),Figure 7
図
2.8.1: 1 QTcF
間隔のベースラインからの変化量と血漿中アファチニブ濃度(心臓安全性報告試験
1200.1~4)
結論:
4
試験を併合した心電図データに,アファチニブによる心拍数,房室伝導(PR 間隔),脱分極(QRS間隔)への影響を示すシグナルは認められなかった。5~12%の患者で,
T
波にベ ースラインと比較して新たな形態学的変化が現れた。これは合併症が多く,併用薬を使用して いる可能性の高い癌患者では十分考えられることである[CTD 5.4-9(R08-2174)]。治験薬の影 響も完全には排除できないが,4 試験の併合データから,心拍数,房室伝導,脱分極,再分極 に臨床的に重要な影響はないことが示唆された。アファチニブが心筋の再分極に影響をもたら すか否かは,4 試験のデータからは明確に判断できない。アファチニブの心臓安全性をより綿 密に検討するための試験を実施し,さらにデータを収集する必要がある。2.8.2
試験1200.24
表題:他の治療法が適用できない再発性または難治性固形癌患者(脳転移患者および神経膠芽 細胞腫患者を含む)を対象に,アファチニブ
50 mg
連日経口投与の有効性とQTcF
間隔への影 響を評価する第II
相非盲検試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.4.2-1(U -2519)]
目的:本試験の目的は,神経膠芽細胞腫患者と脳転移患者を含む難治性固形癌患者を対象に,
アファチニブ単独療法(50 mg/日)の単回投与後および定常状態における有効性,安全性,
QTcF
間隔を評価することであった。副次評価項目は,単回投与後および定常状態におけるア ファチニブの薬物動態であった。方法:本試験は非盲検,探索的,多施設共同試験である。対象患者は,EGFR/HER2を発現す ることが知られている固形癌が組織診または細胞診により確認され,標準的治療に抵抗性の患 者,標準的治療が適用できない患者(脳転移患者を含む)または再発性神経膠芽細胞腫患者の いずれかとし,心電図に関する特定の選択基準と除外基準を満たすこととした。アファチニブ を
50 mg
開始用量で1
日1
回投与し,疾患進行(膠芽腫と脳転移の患者についてはMacdonald
基準[CTD 5.4-10(R08-1053)],そのほかの患者についてはRECIST[CTD 5.4-4(R01-0754)
] に従って)が認められるか,許容できない有害事象が認められるまで6
カ月間継続した。主要 安全性解析では心臓の安全性に焦点を当て,単回投与後および定常状態におけるQTcF
間隔を 評価した。有効性はMacdonald
基準またはRECIST
に基づく客観的奏効率により評価した。そ のほか,顕著なQT
延長,PR間隔とQRS
間隔の異常,心拍数およびT
波とU
波の形態的評価 を行った。有害事象の発現率と重症度を特に皮膚および消化管関連事象に焦点を当てて評価し た。単回投与後24
時間までと第1
コースの定常状態(Day 14)で,薬物動態評価のための採血 を頻回に行った。定常状態への到達の評価のために,第2,3
コースのVisit 2(Day 14)のアフ
ァチニブの投与直前に薬物動態測定用に採血を行った。結果:
薬物動態:アファチニブ
50 mg
の単回投与と1
日1
回反復投与後で体内動態に大きな違いはな かった。アファチニブの血漿中濃度-時間推移は2
相性の薬物動態を示し,この特徴は定常状態 の方が顕著であった。単回投与後と定常状態のいずれにおいても,固体間変動は中程度であっ た。薬力学(QT間隔への影響):主要評価項目は,
QTcF
間隔のベースラインから第1
コースDay 14
までの変化量(時間をマッチさせて比較;以下同様)のアファチニブ投与後1~24
時間におけ る平均値である。この変化量の平均値は無視できる大きさ(0.3 ms短縮)の短縮を示し,両側90% CI
の上限値(2.3 ms)は10 ms
を十分に下回った。QTcF
間隔の投与後1~24
時間での平均値は,Day 1ではベースラインからわずか(1.0 ms)に 短縮し,両側90% CI
の上限値は0.2 ms
であった。QTcF
間隔のベースラインからの平均変化量 の調整後の値は,Day 1
とDay 14
のすべての評価時刻で小さかった(Day 1の範囲:2.6~0.4 ms,
Day 14
の範囲:2.5~1.6 ms)。90% CIの上限値はDay 1
およびDay 14
のいずれでも10 ms
を十 分に下回り,90% CIの上限値の最大値は,Day 1は3.8 ms(投与 7
時間後),Day 14は5.2 ms
(投与
1
時間後)であった。これらの結果は,進行癌患者において,アファチニブの14
日間連 日投与が臨床的に重要なQTcF
間隔延長を引き起こさないことを示している。QTcF
間隔のデータから得られた知見は,心拍数と未補正QT
間隔のデータからも示された。実 際,心拍数(時間をマッチさせて比較;以下同様)の投与後1~24
時間の平均値はDay 1
とDay 14
のいずれでもベースラインからわずかに増加したのみであり(それぞれ1.3 bpm,0.1
bpm),投与後 1~24
時間の平均未補正QT
間隔も,この心拍数増加に応じて短縮した(Day 1:2.8 ms,Day 14:0.4 ms)。90% CI
の上限値(それぞれ-0.7 ms,4.0 ms)は10 ms
を十分に下回 った。QTcF,心拍数, QT
の平均変化量から,Day 14
でDay 1
よりばらつきが大きいことが示された。この知見は健康被験者を対象とする「Thorough QT試験」における観察と一致し,本試験での 重症患者集団とも一致する。
男女別の解析を行ったが,QTcF間隔,心拍数,QT間隔の各変化量に,臨床的に問題となる性 差は認められなかった。
各患者の心電図データを個別に解析しても,懸念される所見は得られなかった。QTcF 間隔が 著しく延長した患者,および
QT
間隔が極端な値であった患者は,極めて少数であった。1 名(患者
440211)のみに注目すべき所見(QTcF
間隔がDay 1
とDay 14
にベースラインから閾値[60 ms]を超えて延長)が認められた。これらの所見は臨床的に問題があるとは判断されなか った。
また,独立委員会が認定した心臓病専門医による心電図記録の解析からも,投与期間中に臨床 的に問題となるような新たな異常は認められなかった。
アファチニブの血漿中濃度,ならびに
QTcF,QT,心拍数の測定時点で対応させた平均変化量
を解析した結果,アファチニブの曝露とQT
の延長に関連性は示されなかった。結論:アファチニブの最高血漿中濃度到達時間(tmax)の中央値は,単回投与後(Day 1)と定 常状態(Day 14)でいずれも約