2. 個々の試験結果の要約
2.7 薬物相互作用試験
表題:健康男性を対象としたリトナビル
200 mg 3
日間1
日2
回反復経口投与後のアファチニブ20 mg
単回経口投与とアファチニブ20 mg
単独投与との相対バイオアベイラビリティの比較(第I
相・非盲検・無作為化・2元配置クロスオーバー試験)資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.3.4-1(U -1163)]
目的:本試験の主目的は,リトナビル(200 mg,1日
2
回,3日間)の併用投与がアファチニ ブ(20 mg単回経口投与)の薬物動態に及ぼす影響を評価することであった。評価対象パラメ ータは,リトナビル3
回目投与の1
時間後にアファチニブを投与したときのAUC
0-∞,AUC
0-tz, およびC
maxであった。その他の薬物動態パラメータに対するリトナビルの影響,ならびに安全 性と忍容性についても評価した。方法:本試験は健康成人男性被験者
22
名を対象とした非盲検,無作為化,2元配置クロスオー バー第I
相試験である。リトナビル併用投与では,Day -1からDay 2
にリトナビル(200 mg)を
1
日2
回3
日間投与し,Day 1の朝,リトナビル投与の1
時間後にアファチニブ20 mg
を単 回経口投与した。対照投与では,Day 1の朝,アファチニブ20 mg
を単回経口投与した。アフ ァチニブ投与から120
時間後まで薬物動態試料を採取した。有害事象の発現率および重症度,忍容性,身体検査所見の変化,バイタルサイン,心電図所見,安全性臨床検査パラメータにつ
いて評価した。AUC0-∞,AUC0-tz,Cmaxは対数変換して
ANOVA
解析を行った。ANOVAモデル には,投与,時期,群,および群内被験者の影響を含めた。各主要評価項目について,試験投 与と対照投与の比およびその90%信頼区間を対数で算出し,点推定値および区間推定値を得る
ために元のスケールに逆変換して幾何平均値の比(試験投与/対照投与)を計算した。結果:リトナビルの併用により,アファチニブの最高血漿中濃度は
38.5%増加し,曝露量は AUC
0-∞が47.6%, AUC
0-tzが49.0%増加した。リトナビル併用の有無によるアファチニブの薬物
動態(幾何平均値)の比較を表2.7.1: 1
に示す。アファチニブの最高血漿中濃度到達時間(tmax) に変化はなかった(両群ともt
maxの中央値4.00
時間,範囲0.50~5.00
時間)。リトナビル併用 の有無でアファチニブの血漿中濃度-時間推移を比較すると,アファチニブの分布相と消失相は リトナビルの併用により影響を受けないと考えられ,終末相半減期に変化はなかった(アファ チニブ単独投与時は35.9
時間,リトナビル併用投与時は34.1
時間)。リトナビルの併用によるアファチニブの
t
max(中央値)と分布・消失相への顕著な影響はみら れず,吸収速度と吸収量を増加させたことから,リトナビルはアファチニブの吸収相におけるP-糖蛋白介在性薬物輸送に影響することが示唆された。以前の試験から,in vivo
のアファチニブ代謝における
CYP3A4
酵素を介した代謝反応は副次的であることが明らかにされているので(3.1.4項),リトナビル存在下でのアファチニブ曝露の増加は,アファチニブの吸収相で
P-糖
蛋白介在性薬物輸送が阻害されたことに起因する可能性が最も高いと考えられた。表
2.7.1: 1
リトナビルの併用(200 mg 3日間1
日2
回投与)の有無によるアファチニブ(20 mg単回投与)の薬物動態パラメータの比較(試験
1200.79)
アファチニブ+リトナビル
(N=22)
アファチニブ単独
(N=22)
パラメータ 単位 gMean gCV[%] gMean gCV [%]
AUC0-24 [ng・h/mL] 128 30.3 85.6 43.7
AUC0-∞ [ng・h/mL] 243 26.0 165 37.9
AUC0-tz [ng・h/mL] 228 27.1 153 39.7
%AUCtz-∞ [%] 5.61 39.3 6.21 46.3
Cmax [ng/mL] 10.7 30.0 7.71 47.4
tmax1) [h] 4.00 (3.98- 5.00) 4.00 (0.500- 5.00)
t1/2 [h] 34.1 16.8 35.9 25.1
MRTpo [h] 37.6 16.1 39.3 20.8
CL/F [mL/min] 1370 26.0 2030 37.9
Vz/F [L] 4050 35.5 6290 54.8
1)中央値と範囲を示す。
引用元:CTD 5.3.3.4-1(U -1163),Table 11.5.2.2: 1
アファチニブの主要薬物動態パラメータの調整幾何平均値の比(リトナビル併用投与/対照投 与)とその
90% CI
ならびに個体内変動(gCV)を表2.7.1: 2
に示す。表
2.7.1: 2
リトナビル200 mg
の3
日間1
日2
回投与の有無によりAUC
0-∞,AUC
0-tz,C
maxを比較した場合のアファチニブ20 mg
の相対バイオアベイラビリティ(試験
1200.79
) アファチニブ20 mg 調整幾何平均値の比[%]
リトナビル併用/対照1)
両側90% CI [%]
個体内変動 gCV[%]
パラメータ 下限値 上限値
AUC0-∞ 147.6 133.7 162.9 19.2
AUC0-tz 149.0 134.5 165.1 19.9
Cmax 138.5 120.6 158.9 27.0
1) リトナビル併用:アファチニブ+リトナビル(N=22),対照:アファチニブ単独投与(N=22)
引用元:CTD 5.3.3.4-1(U -1163),Table 11.5.2.3: 1
リトナビル
200 mg
の3
日間1
日2
回投与により,リトナビルの血漿中濃度はP-糖蛋白と CYP3A4
の阻害に十分な濃度に到達していた。結論:アファチニブ
20 mg
をリトナビル200 mg
の1
日2
回投与と併用すると,アファチニブ を単独投与した場合と比べて,アファチニブのAUC
0-∞は47.6%, AUC
0-tzは49.0%, C
maxは38.5%
増加した。この影響は,アファチニブの吸収相で
P-糖蛋白介在性薬物輸送が阻害されたことに
起因する可能性が最も高いと考えられる。2.7.2
試験1200.151
表題:アファチニブ
40 mg
単回経口投与による相対バイオアベイラビリティ - 単独投与とリト ナビル反復経口併用投与(同時および時間差)の比較(健康男性を対象とした非盲検,無作為 化,3元配置クロスオーバー試験)資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.3.4-2(U -1170)]
目的:本試験の主目的は,リトナビル(200 mg,1日
2
回,3日間)投与がアファチニブ40 mg
単回経口投与の薬物動態に及ぼす影響を評価することであった。リトナビルはアファチニブと 同時またはアファチニブの6
時間後に投与し,評価パラメータはAUC
0-∞,AUC
0-tz,およびC
max であった。その他の薬物動態パラメータに対するリトナビルの影響,ならびに安全性と忍容性 についても評価した。方法:本試験は健康男性
24
名を対象とした非盲検,無作為化,3元配置クロスオーバーの第I
相試験である。対照投与では,アファチニブ40 mg
を朝,単回経口投与した。試験投与には同 時併用投与と時間差併用投与があり,いずれもDay -1~2
にリトナビル200 mg
を1
日2
回投与 した。同時併用投与ではDay 1
の朝のリトナビルの3
回目投与と同時にアファチニブ40 mg
を単回経口投与し,時間差併用投与では
Day 1
の朝にアファチニブ40 mg
を単回経口投与した6
時間後にリトナビルの3
回目投与を行った。アファチニブ投与の間隔が
21
日以上になるようウォッシュアウト期間を設定した。アファチニ ブ投与後120
時間まで薬物動態試料を採取した。リトナビル濃度測定のための血漿試料をリトナビルの
1,3,4,5,6
回目の投与前と3
回目の投与後1,2
時間後に採取し,リトナビルの曝露を確認した。有害事象の発現率と重症度,忍容性,身体検査所見の変化,バイタルサイン,
心電図所見,安全性臨床検査パラメータについて評価した。
AUC
0-∞,AUC
0-tz,C
maxは対数変換してANOVA
解析を行った。モデルには,投与,時期,群(順 序),および群内被験者の影響を含めた。各主要評価項目について,試験投与と対照投与の比およびその
90%信頼区間を対数で算出し,点推定値および区間推定値を得るために元のスケール
に逆変換して幾何平均値の比(試験投与/対照投与)を計算した。
結果:リトナビルの同時投与および
6
時間の時間差投与と対照投与で,アファチニブの血漿中 濃度-時間推移に違いはなかった。いずれの投与でも,アファチニブの血漿中濃度はアファチニ ブ投与の6
時間後にピークに到達した。同時投与のみ,吸収相でのアファチニブの濃度は若干 高かった(投与6
時間後まで)。ノンコンパートメント薬物動態解析の結果,曝露のパラメータ(AUC,Cmax)の幾何平均値はいずれの投与法においても大きな違いはなく,終末相半減期,
平均滞留時間,みかけの分布容積についても類似していた(表
2.7.2: 1)。
表
2.7.2: 1
アファチニブ40 mg
単独投与およびリトナビル 200 mg(1日2
回3
日間投与,3 回目のリトナビル投与はアファチニブと同時またはアファチニブの
6
時間後)を併用投与したときの比較(試験1200.151)
アファチニブ
(N=22)
アファチニブ+
リトナビル(同時)
(N=24)
アファチニブ+
リトナビル(アファチニブ の6時間後)
(N=22)
パラメータ 単位 gMean gCV [%] gMean gCV [%] gMean gCV [%]
AUC0-∞ [ng h/mL] 426 22.8 515 27.5 475 19.4
AUC0-tz [ng h/mL] 3922) 26.2 478 27.9 438 20.3
Cmax [ng/mL] 19.5 33.5 20.7 29.4 20.7 24.4 tmax1) [h] 6.00 (4.00- 8.00) 6.00 (3.00- 8.00) 6.00 (0.500- 8.00)
t1/2 [h] 33.0 25.8 32.5 18.2 33.9 24.5
MRTpo [h] 37.9 23.7 37.5 17.5 38.4 18.3
CL/F [mL/min] 1570 22.8 1300 27.5 1400 19.4
Vz/F [L] 4480 39.6 3640 29.4 4120 25.4
1)中央値と範囲を示す。
2)N=21
引用元:CTD 5.3.3.4-2(U -1170),Table 11.5.2.2: 1
曝露のパラメータを統計解析した結果,いずれのリトナビル併用投与についても,Cmax,
AUC
0-∞,AUC0-tzの調整幾何平均値の比は80.0~125.00%の範囲内であった。C
maxについては,いずれのリトナビル併用投与の
90% CI
もこの範囲内であった。AUCの90% CI
については,同時投与でごくわずかにこの範囲内を外れ,時間差投与では範囲内であった(表
3.4.4: 1)。し
たがって,アファチニブ40 mg
とリトナビル(同時投与およびアファチニブの6
時間後投与い ずれでも)の間に問題となるような薬物相互作用はないと結論付けた。リトナビル
200 mg
の3
日間1
日2
回投与で,血漿中リトナビル濃度の幾何平均値は公表文献[CTD 5.4-6(R07-4575)]と一致し,P-糖蛋白[CTD 5.4-7(R06-2665)]と
CYP3A4
[CTD 5.4-8(R03-2636)]の阻害に十分な濃度に到達していたと考えられた。
結論:
P-糖蛋白阻害剤リトナビルをアファチニブと同時投与しても,アファチニブの 6
時間後に投与しても,アファチニブ
40 mg
単回投与の薬物動態に臨床的に問題となるような影響はな かった。2.7.3
試験1200.152
表題:アファチニブ
40 mg
を単独で投与したときとリファンピシン反復投与後に投与したとき のアファチニブ40 mg
単回経口投与の相対バイオアベイラビリティの比較(健康男性を対象と した非盲検,2期,投与順序固定,第I
相試験)資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.3.4-3(U -1140)]
目的:本試験の主目的は,アファチニブ投与前にリファンピシンを
7
日間1
日1
回投与したと きの,アファチニブ40 mg
単回経口投与後の薬物動態に及ぼすリファンピシンの影響を評価す ることである。評価対象パラメータは,AUC0-∞,AUC0-tz,およびC
max であった。その他の薬 物動態パラメータに対するリファンピシンの影響,ならびに安全性と忍容性についても評価し た。方法:本試験は健康男性
22
名を対象とした非盲検,2期,投与順序固定,第I
相試験である。1
期(対照投与)では,アファチニブ40 mg
を朝に単回経口投与し,2期(試験投与)では,Day −7~−1
の夕方にリファンピシン600 mg
を1
日1
回投与した後,Day 1
の朝にアファチニブ40 mg
を単回投与した。1期と2
期のアファチニブ投与の間は21
日以上のウォッシュアウト期間を設けた。アファチニブ投与後
120
時間まで薬物動態試料を採取した。有害事象の発現率と 重症度,忍容性,身体検査所見の変化,バイタルサイン,心電図所見,安全性臨床検査パラメ ータについて評価した。AUC0-∞,AUC0-tz,Cmaxは対数変換後にANOVA
を用いて解析した。ANOVA
モデルには,投与および被験者の影響を取り入れた。各主要評価項目について,試験投与と対照投与の比とその
90%信頼区間を対数で算出し,点推定値および区間推定値を得るた
めに元のスケールに逆変換して幾何平均値(gMean)の比(試験投与/対照投与)を計算した。結果:リファンピシン
7
日間投与の後では,アファチニブの最高血漿中濃度(Cmax)は21.6%
低下し,アファチニブの曝露量(AUC0-∞,AUC0-tz)は