2. 個々の試験結果の要約
2.5 肺癌以外の癌患者における薬物動態
表題:
2
レジメン以下の化学療法後に治療不応となったHER-2
陰性転移性乳癌患者の2
コホー トを対象としたアファチニブ50 mg
の1
日1
回経口投与の有効性および安全性を評価するため の非盲検第II
相試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-10(U -1598)]
目的:本試験の主目的は,HER-2 陰性転移性乳癌患者でのアファチニブ(50 mg)単独療法の 抗腫瘍効果を検討することであった。副次目的は,この患者集団でのアファチニブの
PK
特性 を明らかにすることであった。方法:本試験は非盲検,多施設共同試験であり,2 レジメン以下の化学療法(術後補助療法を 含む)に治療不応となった,あるいは再発した
HER2
陰性,エストロゲン受容体陰性,プロゲ ステロン受容体陰性(トリプルネガティブ)乳癌(コホートA)ならびに HER2
陰性,エスト ロゲン受容体陽性および/またはプロゲステロン受容体陽性乳癌(コホートB)の患者を対象
とした。アファチニブは開始用量50 mg
を1
日1
回投与し,RECIST[CTD 5.4-4(R01-0754)]に基づく臨床的疾患進行の判定,または治療の中止を要する治験薬との因果関係を否定できな い有害事象の発現まで投与を継続した。忍容できない有害事象が認められた患者では,
40 mg,
30 mg
への減量を可能とした。有効性の主要評価項目では,RECIST
に基づく客観的奏効を評価した。Day 1および
Day 15(第 1
コースのVisit 1
および2)の投与直前ならびに投与 1,2
およ び3
時間後にPK
試料を採取した。両visit
のアファチニブ投与後4~24
時間の間に任意の1
試 料を採取した。第1
コースのVisit 2
ならびに第2
コース以降の全コースのVisit 1
の投与直前に もPK
試料を採取した。結果:コホート
A
とコホートB
のアファチニブの血漿中濃度に明らかな違いは認められなかっ た(50 mg 投与群)。第1
コースのDay 1(単回投与)および第 2
コースのDay 15(定常状態)
での血漿中アファチニブの濃度は,投与後
3
時間まで上昇した。定常状態の血漿中濃度は単回 投与後よりも高かったことから,アファチニブの反復投与による軽微な蓄積が示唆された。遅くとも
Day 15
に定常状態に達し,投与前血漿中濃度は観察した治験薬投与期間を通して安定していた。50 mg投与群の定常状態における投与前血漿中濃度のばらつきは,中程度から高度で あり,gCVは
32.0~173%であった。幾何平均血漿中濃度-時間推移の比較から,40 mg
に減量 した患者のアファチニブの血漿中濃度は低いことが示された。結論:アファチニブ投与開始から遅くとも
Day 15
には定常状態に達し,投与前血漿中濃度は観 察した治験薬投与期間を通して安定していた。アファチニブ血漿中濃度のばらつきは中程度か ら高度であった。2.5.2
試験1200.11
表題:トラスツズマブ治療後に治療不応となった
HER2
陽性転移性乳癌患者を対象としたアフ ァチニブの第II
相試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-11(U -2463)]
目的:本試験の主目的は,トラスツズマブ(遺伝子組換え)(以下トラスツズマブ)を含む治療 法を受けた後,治療不応となった
HER2
陽性転移性乳癌患者を対象に,アファチニブ(開始用量
50 mg1
日1
回)の有効性を検討することであった。副次目的はこの患者集団におけるアファチニブの
PK
特性を明らかにすることであった。方法:本試験は非盲検,非対照,多施設共同試験であり,トラスツズマブを含む治療法を受け た後,治療不応となった
HER2
陽性転移性乳癌であることが組織診または細胞診により確認さ れている患者を含めた。アファチニブ50 mg
を1
日1
回投与し,RECIST
[CTD 5.4-4(R01-0754)]に基づく臨床的疾患進行の判定,または治療の中止を要する治験薬との因果関係を否定できな い有害事象の発現まで投与を継続した。忍容できない有害事象が認められた患者では,40 mg
および
30 mg
への減量を可能とした。有効性の主要評価項目では,RECISTに基づいて客観的奏効を評価した。第
1
コースのVisit 1
(Day 1)および第2
コースのVisit 2
の投与直前ならびに 投与1,2
および3
時間後にPK
試料を採取した。両Visit
のアファチニブ投与後4~24
時間の 間に任意の1
試料を採取した。第1
コースのVisit 2
ならびに第2
コース以降第7
コースまでの 全Visit 1
の投与直前にもPK
試料を採取した。結果:アファチニブは遅くとも
Day 15
には定常状態に達し,投与前血漿中濃度は観察した治験 薬投与期間を通して安定していた。全体的なばらつきは大きく,gCVは67.9~138%であった。
幾何平均血漿中濃度-時間推移の比較から,
40 mg
に減量した患者のアファチニブの血漿中濃度 は低いことが示された。結論:アファチニブ投与開始から遅くとも
Day 15
に定常状態に達し,投与前血漿中濃度は観察 した治験薬投与期間を通して安定していた。アファチニブ血漿中濃度のばらつきは高かった。2.5.3
試験1200.26
表題:
EGFR
および/またはHER2
遺伝子増幅あるいはEGFR
感受性変異を有することが事前 スクリーニングで検出された癌患者を対象としたアファチニブの非盲検第II
相試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-9(U -3474)]
目的:本試験の主目的は,EGFRおよび/または
HER2
遺伝子増幅あるいはEGFR
感受性変異 を有する癌患者にアファチニブを投与し,客観的奏効率を推定することであった。副次目的は この患者集団におけるアファチニブのPK
特性を明らかにすることであった。方法:本試験は非盲検,非対照,多施設共同試験であり,EGFRおよび/または
HER2
遺伝子 増幅あるいはEGFR
感受性変異を有することが認められた組織学的に異なる腫瘍の患者を含め た。疾患進行または死亡のいずれかが発生するまで,患者の追跡調査を行った。RECIST[CTD5.4-4(R01-0754)]によって客観的奏効率および PFS
を評価した。アファチニブの開始用量を50 mg
とし,忍容できない有害事象が発現した患者では,40 mgおよび30 mg
への減量を可能とした。第
2
コースのVisit 1
の投与直前ならびに投与1
時間後および3
時間後にPK
試料を採 取した。アファチニブ投与後4~24
時間の間に任意の1
試料を採取した。第3
コースのVisit 1
の投与直前ならびに投与2
時間後,さらにアファチニブ投与後3~24
時間の間に任意の1
試料 を採取した。第1
コースのVisit 1
および2,第 2
コースのVisit 2
ならびに第4
コースのVisit 1
の投与直前にもPK
試料を採取した。結果:本試験は,スクリーニング時の選択基準との不適合率が高く,患者の募集が困難で,目 標症例数の達成が見込めなかったため本治験を中止したが,安全性および有効性の結果はこの 決定に影響しなかった。中止時点で患者
20
名にアファチニブを投与していた。得られた少ないデータの評価から,アファチニブは遅くとも
Day 15
には定常状態に達し,投与 前血漿中濃度は観察した治験薬投与期間を通して安定していることがわかった。全般にトラフ 血漿中濃度のばらつきは大きく,gCVは65.1~82.3%であった。
結論:少ない
PK
データの評価から,Day 15には定常状態に達したと考えられた。投与前血漿 中濃度は観察期間を通して安定していた。血漿中濃度の全体的なばらつきは中程度から高度で あった。2.5.4
試験1200.28
表題:プラチナ製剤治療に治療不応を示した転移性または再発性の頭頚部扁平上皮癌患者を対 象とし,疾患進行を示したする患者に対するクロスオーバー期を設けたアファチニブとセツキ シマブ(遺伝子組換え)(以下セツキシマブ)の無作為化非盲検比較第
II
相試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-14(U -3254)]
目的:本試験の主目的は,プラチナ製剤を含む化学療法に治療不応となった転移性または再発 性頭頸部扁平上皮癌患者を対象に,アファチニブの有効性および安全性をセツキシマブと比較 評価することであった。さらに,本試験では治療レジメンの腫瘍縮小効果に対する
EGFR
遺伝 子型の影響を明らかにすることを目指した。副次目的として,この患者集団でのPK
特性を調 べた。方法:本試験は非盲検,無作為化,クロスオーバー,多施設共同試験であり,2 レジメン以下 の化学療法による治療歴があり,EGFR または
HER2
標的療法の前治療のない転移性または再 発性頭頸部扁平上皮癌患者を対象とした。アファチニブ50 mg
を1
日1
回経口投与,あるいは 胃瘻チューブより投与した。忍容できない有害事象が認められた患者では,40 mg
および30 mg
への減量を可能とした。セツキシマブは初回投与量400 mg/m²を最初に静脈内投与し,続いて 250 mg/m²を週 1
回静脈内投与した。RECIST[CTD 5.4-4(R01-0754)]に基づく臨床的および/または
X
線画像診断による疾患進行の判定まで治療を継続した。本試験のStage 1
にセツキ シマブ投与中に進行が認められた患者には,Stage 2
でアファチニブを投与することとし,Stage 1
にアファチニブ投与中に進行が認められた患者には,Stage 2でセツキシマブ治療を投与する こととした。Stage 1でアファチニブまたはセツキシマブに忍容性を示さなかった患者は,治験 責任医師の判断で,他方の治療にクロスオーバーすることができた。Stage 2
に参加した患者は,RECIST
(CTD 5.4-4(R01-0754))に基づく臨床的疾患進行および/またはX
線画像診断による 疾患進行の判定,あるいは治験薬との因果関係が否定できない有害事象の発現まで,治療を継 続した。以下の検体採取スケジュールに従って,Stage 1およびStage 2
(セツキシマブからアフ ァチニブへのクロスオーバー後)にアファチニブを投与した患者から薬物動態試料を採取した。第
1
コースのVisit 2
および第2
コースのVisit 1
の投与直前ならびに投与1
時間後および3
時間 後にPK
試料を採取した。アファチニブ投与後4~24
時間の間に任意の1
試料を採取した。第1
コースおよび第3
コースのVisit 1
の投与直前にもPK
試料を採取した。投与経路の比較がで きるように,アファチニブの投与方法(錠剤の経口投与,懸濁液での経口投与または胃瘻チュ ーブによる投与)についても情報を収集した。結果:血漿中アファチニブ濃度の個々の値および幾何平均値のいずれも,Stage 1と
Stage 2
の 患者に明らかな違いは認められなかった。全般に,アファチニブの50 mg
から40 mg
への減量 によって,血漿中濃度の個々の値および幾何平均値は減少した。血漿中アファチニブ濃度は遅くとも