2. 個々の試験結果の要約
2.10 Nintedanib併用療法試験
表題:進行固形癌患者を対象とした
nintedanib
とアファチニブの併用投与を評価する第I
相非 盲検用量漸増試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-3(U -3263)]
目的:本試験の主目的は,28 日コースでアファチニブと
nintedanib(ベーリンガーインゲルハ
イム社が開発中の薬剤)を併用投与したときの両剤のMTD
を決定することであった。副次目 的は抗腫瘍効果,nintedanib
とアファチニブの薬物動態パラメータおよびそれら相互の影響を評 価することであった。方法:本試験は,難治性または標準的治療法が適用できない悪性固形癌と組織診または細胞診 により確認された患者を対象とした非盲検,用量漸増,多施設共同試験である。アファチニブ は
1
日1
回経口投与し,nintedanib
は1
日2
回投与した。両剤をRECIST
[CTD 5.4-4(R01-0754)] の基準で疾患進行が認められるまで,またはDLT
が認められるまで連日投与した。アファチニ ブ10 mg+nintedanib 150 mg
コホート(コホート 1)に11
名,アファチニブ10 mg+nintedanib 200 mg
コホート(コホート 2)に13
名,アファチニブ20 mg+nintedanib 200 mg
コホート(コホー ト 3)に4
名,計28
名を3
投与コホートに組入れた。第
1
コースDay 1(単回投与)と Day 15(定常状態)に,アファチニブと nintedanib
の薬物動 態試料を投与後24
時間まで採取した。第1,2
コースのDay 8,15,22,28
に,アファチニブと
nintedanib
のトラフ薬物動態試料を採取した。重篤な有害事象の過剰な発現により全身状態が悪化した患者については,第
3~6
コースのDay 8, 15, 22,28
に採取予定であったトラフ試 料は採取できなかった。結果:アファチニブの血漿中濃度は投与後
2~6
時間にピークに到達した後,少なくとも2
相性 の消失を示した。MTD群(アファチニブ10 mg+nintedanib 200 mg)において,単回投与後と定
常状態におけるアファチニブのC
maxの幾何平均値は,それぞれ5.95 ng/mL
(gCV:85.5%),9.58
ng/mL(gCV:118%)であった。単回投与後と定常状態におけるアファチニブの曝露量の幾何
平均値は,それぞれ
AUC
0-24が128 ng・h/mL(gCV:77.7%), AUC
τ,ss が183 ng・h/mL
(gCV:97.1%)であった。AUC
に基づく累積係数は2.37(R
A,AUC)で,Cmaxに基づく累積係数は1.68
(RA,Cmax)であった。総じて,血漿中濃度と薬物動態パラメータのばらつきは大きく,消失よ
りむしろ吸収に関する差が原因のようであった。視覚的評価に基づくと,投与開始から
8
日後 にアファチニブの濃度は定常状態に達し,その後,観察期間中を通して安定していた。アファ チニブの血漿中濃度は投与量と共に増加した。Nitedanib
とその代謝物(BIBF 1202,BIBF 1202
グルクロニド)の薬物動態パラメータについて は,最終の治験総括報告書[CTD 5.3.5.4-3(U -3263)]を参照のこと。結論:アファチニブの薬物動態はこれまでの試験(薬物動態のメタアナリシス[CTD 5.3.5.3-1
(U -1153)],2.1.6項)で観察された結果の範囲内であり,検討した投与スケジュールで,ア ファチニブと
nintedanib
の間に薬物相互作用はないことが示唆された。2.10.2
試験1239.2
表題:進行結腸直腸癌患者を対象とした
nintedanib
とアファチニブを週ごとに交互に連続投与 する第II
相試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-4(U -2248)]
目的:本試験の主目的は,転移性結腸直腸癌患者に
nintedanib(250 mg 1
日2
回投与)(ベーリ ンガーインゲルハイム社が開発中の薬剤)とアファチニブ(50または70 mg 1
日1
回投与)を16
週間,1
週ごとに交互に連続投与したときの奏効率と無増悪生存率を評価することであった。副次目的は,
nintedanib
とアファチニブの血漿中薬物濃度を測定し,これらの薬剤の薬物動態特 性を評価することであった。方法:本試験は,進行転移性結腸直腸腺癌が組織診により確認された患者を対象とした非盲検,
多施設共同試験であった。Nintedanib(250 mg 1日
2
回)とアファチニブ(開始用量50
または70 mg 1
日1
回)を7
日間ずつ交互に投与した。アファチニブの投与は,RECIST[CTD 5.4-4(R01-0754)]の基準で疾患進行が認められるまで,または投与量減量で対処できない許容でき ない毒性が現れるまで継続した。アファチニブの開始用量は,当初
70 mg 1
日1
回と治験実施 計画書に規定されたが,治験実施計画書を変更して,50 mg 1日1
回とした。投与開始から
16
週間後における客観的奏効率と疾患進行率をRECIST
に従って評価した。薬物 動態試料の採取を,第1
コースVisit 2,第 2
コースVisit 3,第 2
コースVisit 7,第 4
コースVisit
9
の投与直前に行った。第1
コースVisit 3
と第1
コースVisit 4
では,投与直前のほか,投与後1
時間と3
時間にも薬物動態試料を採取した。結果:
Day 14
のアファチニブ50 mg
最終投与から24
時間後の血漿中アファチニブ濃度の幾何平均値は
29.1 ng/mL
であった。検討した投与条件で,アファチニブの血漿中濃度のばらつきは大きかった。参加患者にアジア人が
2
名(患者2005,患者 2191)含まれたが,これらの患者の
アファチニブの血漿中濃度はこの投与グループのほかの患者と比べて違いはみられなかった。結腸直腸癌患者に対して
nintedanib
とアファチニブを長期間にわたって1
週ごとに交互に連続 投与している間,アファチニブのトラフ値に上昇または低下といった一定の傾向は認められな かった。Nintedanib
の薬物動態については,[CTD 5.3.5.4-4(U -2248)]に示した。結論:結腸直腸癌患者に長期にわたり
nintedanib
およびアファチニブを週1
回ごとに交互に連 続投与することにより,アファチニブのトラフ値が規則性のある上昇または低下することを示 す徴候はみられなかった。2.10.3
試験1239.3
表題:ホルモン不応性前立腺癌患者(HRPC)を対象とした,nintedanib投与,アファチニブ投 与,nintedanibとアファチニブの交互連続投与を比較する第
II
相3
群無作為化多施設共同試験 資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-5(U -1013)]目的:本試験の主目的は,ホルモン不応性前立腺癌患者(HRPC)を対象に,nintedanib(ベー リンガーインゲルハイム社が開発中の薬剤)単独療法,アファチニブ単独療法,nintedanibとア ファチニブを
1
週ごとに交互に投与したときの12
週間無増悪生存率を比較することであった。副次目的は,この患者集団で,nintedanib,アファチニブ,および
nintedanib
とアファチニブ併 用時の薬物動態を,血漿中薬物濃度を測定し評価することであった。方法:本試験は,アンドロゲン非依存性前立腺癌患者を対象とした非盲検,3 群無作為化,2 段階,探索的,多施設共同試験である。開始用量は
nintedanib
単独療法群500 mg/日,アファ
チニブ単独療法群40 mg/日とした。併用投与群では,nintedanib 500 mg/日を 7
日間投与後,アファチニブ
70 mg 1
日1
回を7
日間投与することとした(治験実施計画書の変更に伴い,併 用投与群におけるアファチニブの開始用量は40 mg
に減量された)。投与は
RECIST[CTD 5.4-4(R01-0754)
]に従って,疾患進行が認められない限り48
週間継続 した。主要有効性解析では12
週間投与後における無増悪生存率を検討した。無増悪生存率は前 立腺特異抗原(PSA),骨転移および疾患進行(RECISTに従う)についての複合エンドポイン トで定義した。薬物動態試料の採取を,第1
コースVisit 2,第 2
コースVisit 6,第 4
コースVisit
9,第 7
コースVisit 12,第 10
コースVisit 15,および最終投与の投与直前に行った。第 1
コー スVisit 3
と第1
コースVisit 4
では,投与直前のほか,投与1
および3
時間後にも薬物動態試料 を採取した。結果:アファチニブ単独療法群:投与
1,3
時間後の血漿中アファチニブ濃度の幾何平均値はDay 8
とDay 15
でほぼ同様であった。遅くともDay 8
には定常状態に達し,投与期間中を通し てトラフ濃度は安定していた(トラフ濃度の幾何平均値:Day 8は18.0 ng/mL,Day 15
は19.1 ng/mL,Day 29
は18.2 ng/mL)。しかしながら個体間変動は大きく,gCV
は58.5~110%であっ
た。交互連続併用療法群:Day 14のアファチニブ
40 mg
最終投与から24
時間後の血漿中アファチ ニブ濃度の幾何平均値は11.4 ng/mL(範囲:0.517~34.4 ng/mL)であった。血漿中濃度のばら
つきの大きさは中程度~高度で,gCVは33.8~216%であった。
Nintedanib
の薬物動態(単独療法および併用投与)については,[CTD 5.3.5.4-5(U -1013)] を参照のこと。結論:アファチニブ単独療法群では,遅くとも