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3. 全試験を通しての結果の比較と解析

3.2 アファチニブの基本的薬物動態

3.2.2 基本的な薬物動態特性

アファチニブの血漿中濃度-時間推移は試験を行った各用量グループ間で同様であり,用量の増 加に伴って上昇した。アファチニブの最高血漿中濃度到達時間は,単回および反復投与後約

2

~5時間であった。Cmax到達後,アファチニブの血漿中濃度は少なくとも

2

相性の消失を示し た。癌患者にアファチニブ 10~100 mgを単回および反復経口投与したときの血漿中濃度-時間 推移の幾何平均値を図

3.2.2: 1

に示す。癌患者にアファチニブ 50 mgおよび

40 mg

を単回およ

び反復経口投与したときの血漿中濃度-時間推移の個別値および幾何平均値をそれぞれ図

5.2: 1

および図

5.2: 2

に示す。また,健康被験者にアファチニブ 20,30 g,40 および

50 mg

を単回 投与したときの血漿中濃度-時間推移の幾何平均値[試験

1200.80;CTD 5.3.1.1-1(U -1164)

を図

5.2: 3

に示す。全被験者において,アファチニブは投与後

0.5

時間で検出された。血漿中

濃度はおおむね投与

5

時間後にピークに到達し,投与後

5~9

時間以内に最初の分布相での低下 がみられた。投与後約

9~24

時間には,第

2

相の減衰がみられた。血漿中濃度は,アファチニ ブの単回投与後

240

時間まで測定可能であった[試験

1200.86;CTD 5.3.3.2-11(U -1171)

]。

血漿中濃度には中程度から高度の変動が認められ,たとえばアファチニブ 40 mgの投与を受け た癌患者における

gCV

50.8%~221%の範囲であった。

反復測定モデルを用いて,薬物動態メタアナリシスの全投与量グループでの第

1

コースにおけ る癌患者の投与前の血漿中濃度(Cpre,ss)を比較することにより,定常状態への到達を評価した

[CTD 5.3.5.3-1(U -1153)]。

Day 8

におけるトラフ値とその後のトラフ値との対比較を表

5.1:

7

に示す。統計解析により,アファチニブ投与開始から遅くとも

8

日後には定常状態に達した ことが確認された。ただし,試験の来院スケジュール上の理由から,Day 8より前の投与前血 漿中濃度データが得られていないため,

Day 8

より前に定常状態に到達している可能性もある。

アファチニブの長期間投与による曝露について評価するために,アファチニブの投与前血漿中 濃度の解析を行った(CTD 5.3.5.3-1(U -1153))。40 mg投与群を例に,観察した全投与期間 の経時的な

C

pre,ss値(Cpre,ss,8,Cpre,ss,15,Cpre,ss,22および

C

pre,ss,28 をコースごとに要約)の記述統

計を図

3.2.2: 2

に示す。本データから,観察を行った最長

6

カ月の投与期間を通して,投与前

の血漿中濃度が安定していたことが示された。

この知見は,試験

1200.1

および試験

1200.2

の継続試験である試験

1200.17([CTD 5.3.3.2-3

(U -3059)],2.1.5 項)で得られた投与前の血漿中濃度によっても裏付けられている。試験

1200.17

では,投与

6

カ月後においてもアファチニブのトラフ値は同程度であった。

1

コースの

40 mg

投与群における

C

pre,ss値の個体内比較を図

3.2.2: 3

に示す。ほかの投与群で も同様の結果が得られた(CTD 5.3.5.3-1(U -1153))。全投与コースおよび全試験について,

被験者内の

C

pre,ss値の幾何変動係数を算出することにより,個体内変動を推定した。すべての 投与コースにおける

10,20,30,40,45,50,55,60,70,85

および

100 mg

投与群の

C

pre,ss 値の個体内の幾何変動係数(gCV(%))を表

3.2.2:1

に示す。個体内変動は多くの場合低~中程 度であった(gCV:22.19%~67.50%)。

上グラフ:普通軸,下グラフ:片対数軸

引用元:CTD 5.3.5.3-1(U -1153),Figure 7.2.1: 2

3.2.2: 1

癌患者にアファチニブ 10~100 mgを

1

1

回,単回および反復投与したと

きのアファチニブ(BIBW 2992 BS)の血漿中濃度-時間推移の幾何平均値(試 験

1200.1~4

および試験

1200.24

PK

メタアナリシス)

BIBW 2992 BS plasma conc. [ng/mL]

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

Time [hours]

0 4 8 12 16 20 24 480 484 488 492 496 500 504

10 mg (N=13/12) 20 mg (N=16/15) 30 mg (N=10/8) 40 mg (N=48/29)

45 mg (N=3/3) 50 mg (N=73/52) 55 mg (N=20/--) 60 mg (N=3/--)

65 mg (N=6/--) 70 mg (N=18/15) 85 mg (N=6/4) 100 mg (N=2/--)

1 10 100 1000

Time [hours]

0 4 8 12 16 20 24 480 484 488 492 496 500 504

N=120/54/32/19/14/10

引用元:CTD 5.3.5.3-1(U -1153),Figure 7.2.1: 3

3.2.2: 2

投与

1~6

コースにおいて癌患者にアファチニブ(BIBW 2992 BS)40 mgを

1

1

回反復経口投与したときの

C

pre,ss 値の箱ひげ図(試験

1200.1~4

およ び試験

1200.24

PK

メタアナリシス)

outlier P10 Q1 MEDIAN Q3 P90

BIBW 2992 BS Cpre,ss [ng/mL]

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

Cycle 1 Cycle 2 Cycle 3 Cycle 4 Cycle 5 Cycle 6

引用元:CTD 5.3.5.3-1U -1153),Figure 7.3.2: 1

3.2.2: 3

癌患者にアファチニブ 40 mgを

1

1

回,反復経口投与したときの第

1

ースでのアファチニブ(BIBW 2992 BS)の投与前値の個体内比較(試験

1200.1

4

および試験

1200.24

を併合した

PK

のメタアナリシス)

表 3.2.2: 1 全投与コースにわたる投与量群ごとのアファチニブの

C

pre,ss値の個体内幾何 変動係数(%)(試験

1200.1~4

ならびに試験

1200.24

を併合した

PK

のメタ アナリシス)

投与群 N 個体内gCV [%]

10 mg 89 36.88

20 mg 127 35.72

30 mg 62 35.38

40 mg 275 33.20

45 mg 28 54.40

50 mg 174 30.95

55 mg 134 37.32

60 mg 10 22.19

65 mg 13 24.87

70 mg 92 36.92

85 mg 23 51.16

100 mg 6 67.50

引用元:CTD 5.3.5.3-1(U -1153),Table 7.3.2: 1,Appendix 10, Table 5.1

BIBW 2992 BS Cpre,ss [ng/mL]

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

Cpre,ss,8

Cpre,ss,14

Cpre,ss,15

Cpre,ss,21

Cpre,ss,22

Cpre,ss,27

Cpre,ss,28

治療用量範囲である

20~50 mg

において,アファチニブの

C

maxおよび

AUC

0-∞は用量比を上回 る増加を示した。健康男性被験者を対象として

20,30,40

および

50 mg

の単回投与後のバイ オアベイラビリティを比較した用量比例性試験[試験

1200.80;CTD 5.3.1.1-1(U -1164

]に おける主な薬物動態パラメータを表

3.2.2: 2

に示す。用量比例性の統計学的評価については,

[CTD 2.7.1_2.3項]を参照のこと。

表 3.2.2: 2 アファチニブ 20,

30, 40

および

50 mg

を単回投与したときのアファチニブ 薬物動態パラメータの比較(試験

1200.80)

20 mg

(N=12)

30 mg (N=12)

40 mg (N=11)

50 mg (N=12) パラメータ 単位 gMean gCV

[%]

gMean gCV [%]

gMean gCV [%]

gMean gCV [%]

AUC0-∞ [ng h/mL] 189 35.1 327 35.5 549 32.1 724 48.7

AUC0-∞,norm [ng h/mL/mg] 9.43 35.1 10.9 35.5 13.7 32.1 14.5 48.7

Cmax [ng/mL] 7.78 42.3 13.7 44.7 24.3 33.1 37.1 37.4

Cmax,norm [ng/mL/mg] 0.389 42.3 0.457 44.7 0.608 33.1 0.741 37.4

tmax 1 [h] 5.00 (2.00-

8.00)

5.00 (1.00- 6.00)

5.00 (5.00- 6.00)

5.00 (4.00- 5.00) t1/2 [h] 30.7 10.6 32.9 24.8 29.6 12.6 28.5 15.5 MRTpo [h] 36.8 12.3 36.1 22.8 33.6 10.1 32.0 13.4 CL/F [mL/min] 1770 35.1 1530 35.5 1210 32.1 1150 48.7 Vz/F [L] 4700 43.9 4350 42.7 3110 39.1 2840 54.8 1)中央値および範囲を示す。

引用元:CTD 5.3.1.1-1(U -1164),Table 11.5.2.3:1

癌患者の非線形薬物動態挙動の特性を評価するため,試験

1200.1,試験 1200.2,試験 1200.3,

試験

1200.4

および試験

1200.20

における

10~160 mg

の用量範囲での単回および反復投与時の 薬 物 動 態 デ ー タ を 併 合 し , 非 線 形 混 合 効 果 モ デ ル に よ り 解 析 を 行 っ た ([

CTD 5.3.3.5-4

(U -1393)],2.6.4 項)。用量比をやや上回る曝露の増加は,用量依存的な相対バイオアベイ ラビリティを用いることで適切に記述された。分布過程および消失過程については,非線形性 は認められていない。相対バイオアベイラビリティは,70 mgまでの投与量では,べき関数に 従い用量の増加に伴って増加した。70 mgを超える投与量ではデータはやや限定的であったも のの,相対バイオアベイラビリティに有意な増加は認められず,線形の薬物動態が示唆された。

20~50 mg

の用量範囲における非線形性の程度は,用量比例性試験

1200.80(CTD 5.3.1.1-1

(U -1164))で得られた結果と合致していた。比較として,用量比例性試験では,

50 mg

投与 時に対する

20,30

および

40 mg

投与時の用量補正後の

AUC

0-の幾何平均値の比はそれぞれ

0.650,0.752

および

0.945

であり,それに該当する母集団薬物動態解析での推定値はそれぞれ

0.626,0.770

および

0.892

であった。

治療用量域における上記の非線形薬物動態は,アファチニブの

P-糖蛋白介在性輸送過程におけ

る飽和に起因する可能性が考えられる。この仮説と合致して,P-糖蛋白阻害剤であるリトナビ ルがアファチニブ 40 mg のバイオアベイラビリティに与える影響は無視できる程度であった

(試験

1200.151[CTD 5.3.3.4-2(U -1170)

])一方で,アファチニブ 20 mgの曝露量はリトナ ビルによって

38.5%(C

max)および

47.6 %(AUC

0-∞)増加した[試験

1200.79;CTD 5.3.3.4-1

(U -1163)],より詳細な情報については[CTD 2.7.1_3.4項]を参照)。

進行固形癌患者を対象とした用量設定試験および

QT

試験の薬物動態メタアナリシス[CTD

5.3.5.3-1(U -1153)

]で得られた,アファチニブ 20,30,40および

50 mg

の単回および反復 投与時,ならびに全投与群(10~100 mg)にわたる薬物動態パラメータの幾何平均値を表

3.2.2:

3

に示す。薬物動態のメタアナリシスで評価を行った全投与量群(10,20,30,40,45,50,

55,60,65,70, 85

および

100 mg)に関するより詳細なデータについては,表 5.1:6

を参照の こと。アファチニブの薬物動態パラメータには,中程度から高度の変動が認められた(gCV:

12.9%~139 %)。

全体(10~100 mg)での

t

maxの中央値は,単回投与時と定常状態のいずれにおいても

3

時間であ った。全体での終末相半減期の幾何平均値は,単回投与後では

21.4

時間,定常状態では

37.2

時 間であった。定常状態での半減期が長い理由は,定常状態では薬物動態用検体の採取期間がより 長かったことである。したがって,37.2時間という値の方が信頼性があり,健康被験者における 単回投与後の値(表

3.2.2: 2)に類似している。しかし, 240

時間まで薬物動態サンプリングを実 施した肝障害を有する被験者を対象とした試験では,半減期の幾何平均値は

60~75

時間であり,

終末相半減期が

100

時間を超えた被験者も存在した([CTD 5.3.3.2-11(U -1171)],2.4.1項)。

この極めて長い半減期は,血漿蛋白との共有結合でアファチニブが約

128

時間の半減期で放出さ れることによって説明されうる(3.1.2項)。

AUC

に基づく累積係数は

2.53~3.40

であり,Cmaxに基づく累積係数(幾何平均値の範囲:2.00

~2.67)よりも高かった。薬物動態的な特徴を表す半減期は式

t

1/2

=τ·ln2/ln(R

A,AUC

/(R

A,AUC

-1))

によって算出され[CTD 5.4-16(P09-09363)],AUCの全体(10~100 mg)での累積係数の幾何 平均値(2.77)を用いて算出した半減期は

37

時間となる。したがって,アファチニブの蓄積に は,肝障害を有する被験者を対象とした試験(試験

1200.86;CTD 5.3.3.2-11(U -1171),2.4.1

項)で得られた終末相半減期との相関は認められず,全般的な蓄積に対する共有結合の寄与は 無視できると考えられる。

全体(10~100 mg)での

CL/F

の幾何平均値は,単回投与後(1050 mL/min)と定常状態(898 mL/min)

で同程度であり,アファチニブのクリアランスは中程度から高度であることが示唆された。し かし,アファチニブの絶対バイオアベイラビリティが不明であるため,クリアランス値の解釈 には注意が必要である。同様に,分布容積

V

z

/F

の値の解釈にも注意が必要である。全体の

V

z

/F

の幾何平均値は,単回投与時で

1940 L,定常状態で 2770 L

であり,高い組織分布が示唆された。

このことは,動物試験においてアファチニブの分布容積が大きかったことと合致している

([CTD 2.6.4_4.1項]参照)。しかし,アファチニブの絶対バイオアベイラビリティが不明であ ること以外に,蛋白共有結合からのアファチニブの放出が緩徐であることも,分布容積の高さ に寄与している可能性がある。