3. 全試験を通しての結果の比較と解析
3.2 アファチニブの基本的薬物動態
3.2.4 対象患者集団であるNSCLC患者における薬物動態
母集団薬物動態解析
NSCLC
患者の対象集団におけるアファチニブの薬物動態特性を記述するため,母集団薬物動態解析を実施し,あらかじめ規定した共変量の影響を評価した([CTD 5.3.3.5-3(U -1394)],
2.6.3
項を参照のこと)。解析には,NSCLC
患者764
名を含む癌患者927
名[試験1200.22
;CTD 5.3.5.2-4
(U -3047),試験
1200.23
;CTD 5.3.5.1-2
(U -3048),試験1200.32
;CTD 5.3.5.1-1
(U -1199)および試験
1200.33
;CTD 5.3.5.2-1
(U -2226)]から得られた4460
時点の血漿中濃度を用いた。アファチニブの血漿中濃度-時間推移は一次吸収過程と線形の消失過程を有する
2-コンパート
メントモデルによって適切に記述できた。個体間変動は,相対バイオアベイラビリティ(F1)と吸収速度定数(KA)に組込まれた。分布動態は,中央コンパートメントから末梢コンパート メントへの移行速度定数(K23)とその逆の移行速度定数(K32)でパラメータ化した。アファ チニブの曝露量が用量比をわずかに上回る割合で増加する特徴を記述するため,第
I
相試験デ ータの母集団薬物動態解析[CTD 5.3.3.5-4(U -1393)]から相対バイオアベイラビリティが用 量依存的に変化することを表す関数を取り入れた(2.6.4 項参照)。この関数では,相対バイオ アベイラビリティは,投与量70 mg
まではべき関数に従い用量と共に増大し,70 mgを超える と一定に保たれた。図3.2.4: 1
に,投与量と40 mg
を基準に,線形を仮定したときの理論上の 曝露とアファチニブの投与量に対する実際の曝露量の変化との比較を示す。基準値=40 mg
引用元:CTD 5.3.3.5-3(U -1394),Figure 10.1.4: 2
図
3.2.4: 1
第II
相および第III
相試験の併合データを用いて構築した母集団薬物動態最終モデルに組込まれたアファチニブの薬物動態の非線形性
たとえば,現モデルに組込まれた非線形薬物動態における
20 mg
投与時の曝露は,相対バイオ アベイラビリティが線形であると仮定した場合の14 mg
の曝露に相当することになる。比例性 を上回る曝露量増加を記述するべき指数の推定値は,第I
相試験データの母集団薬物動態解析(CTD 5.3.3.5-4(U -1393),2.6.4項参照)で得られた推定値と良好な類似性を示した。
最終モデルおよび該当するパラメータ推定値を表
5.1:8
に示す。モデルによって予測される対象患者集団の定常状態における薬物動態パラメータ
AUC
τ,ss,C
max,ss,t
max,ss,CL/F,V
z/F
および終末相半減期t
1/2(β相)の母集団平均値を投与量別に表3.2.4:
1
に示す。表
3.2.4: 1
母集団薬物動態モデルから予測されるNSCLC
患者の投与量別のアファチニブ薬物動態パラメータの母集団平均値
アファチニブ 20 mg 30 mg 40 mg 50 mg
NSCLC患者 モデルによって予測される母集団の平均値1)
AUCτ,ss [ng·h/mL] 329 600 920 1280
Cmax,ss [ng/mL] 17.7 32.3 49.6 69.0
tmax,ss [h] 4.25 4.25 4.25 4.25
t1/2, [h] 45.4 45.4 45.4 45.4 CL/F [mL/min] 1010 833 725 651 Vz/F [L] 3990 3280 2850 2560 1)モデル予測は,試験1200.22,試験1200.23および試験1200.32でアファチニブを1回以上投与された全患 者における,各ベースライン共変量の中央値/最頻値によって規定した典型的な患者(女性,62 kg(女性患者 の中央値),クレアチニンクリアランス:77 mL/min,ECOG パフォーマンス・スコア:1,AP:104 U/L,LDH: 252 U/LおよびTPRO:72 g/L)に基づいて実施した。
引用元:CTD 5.3.3.5-3(U -1394)より改変
モデルによって予測される対象患者集団の薬物動態パラメータは,試験
1200.1~4
および試験1200.24
のメタアナリシス(表3.2.2: 3)で得られたノンコンパートメント解析の薬物動態パラ
メータと類似しており,第
I
相試験の進行固形癌患者集団と対象患者集団であるNSCLC
患者 の薬物動態に違いがないことが示唆された。対象患者集団における用量調節と薬物動態の関連
ピボタル試験
1200.32
[CTD 5.3.5.1-1(U -1199)]では,NSCLC患者のアファチニブの投与量は
40 mg
であったが,忍容性が良好であれば50 mg
まで増量し,忍容できない有害事象が発現した場合は
30,20 mg
まで減量した。個別の血漿中トラフ濃度から,40 mg投与群の平均曝露 と比較して,元々曝露がより高い患者は減量し,より低い患者が50 mg
に増量したことが示唆 された。このことは,最も多く発現した有害事象(下痢および発疹/ざ瘡+)に対する血漿中ト ラフ濃度の相関性が認められたことと合致している(3.7 項参照)。表3.2.4: 2
に示すとおり,薬物動態の最終観察日である
Day 43
における血漿曝露量は,アファチニブ全投与群で同程度で あった。さらに,40 mg
投与群の変動は小さくなり,gCV
は85%
(第2
コースVisit 1, Day 22)
から
66.5%
(第3
コースVisit 1, Day 43)まで低下した。以上より,用量調節スケジュールは,
薬物動態の変動を抑え,患者の曝露を同程度の忍容されるレベルにするために有効な投与方法 であることが示唆された(図
3.2.4: 2
参照)。表
3.2.4: 2
アファチニブ40 mg
の1
日1
回反復投与時,ならびに50 mg
への増量後および
30 mg
への減量後におけるアファチニブの血漿中濃度の幾何平均値(試験
1200.32)
アファチニブ30 mg 1日1回 アファチニブ40 mg 1日1回 アファチニブ50 mg 1日1回 visit N gMean gCV [%] N gMean gCV [%] N gMean gCV [%]
第2コースVisit 1 11 21.8 36.6 165 28.0 85.0 3 29.9 46.1 第2コース Visit 2 25 28.0 82.4 143 25.8 69.5 16 29.6 79.2 第3コース Visit 1 38 24.4 64.1 126 23.7 66.5 14 27.5 64.4 略語:gCV:幾何変動係数,gMean:幾何平均値
アファチニブ20 mg投与群の患者は2名のみ(患者3204007および3701057)であるため,本表には含まれて いない。
引用元:CTD 5.3.5.1-1(U -1199),Table 11.5.2: 1
試験
1200.22[CTD 5.3.5.2-4(U -3047)
]のTKI
未治療の患者集団においても,このように用 量調節後の血漿中濃度が同程度になる傾向が認められている。Day 57
の最終薬物動態観察日の 血漿中トラフ濃度の幾何平均値は,全投与群で同程度の約25 ng/mL
であり,試験1200.32
[CTD5.3.5.1-1
(U -1199)]と同程度であった。NSCLC
患者を対象とした試験1200.23
[CTD 5.3.5.1-2(U -3048)]と,特に国内試験
1200.33
[CTD 5.3.5.2-1(U -2226)]でも,用量調節後に血漿 曝露量が同程度になる傾向が認められた。ただし,当該患者集団では平均曝露量がより高い傾 向がわずかに示唆された。引用元:CTD 5.3.5.1-1(U -1199),Figure 11.5.2: 2
図
3.2.4: 2
アファチニブ20,30,40
および50 mg
を1
日1
回反復投与時したときのDay 43
における血漿中トラフ濃度(Cpre,ss)の個別値および幾何平均値の比較(試験