3. 全試験を通しての結果の比較と解析
3.3 内因性要因および特別な集団
3.3.6 そのほかの臨床検査値
複数の第
II
相および第III
相試験で得られたデータを併合し,アルカリホスファターゼ(AP),LDH
およびTPRO
の臨床検査値がアファチニブの薬物動態特性に与える影響を,非線形混合効 果モデリングにより評価した([CTD 5.3.3.5-2(U -1592)
],2.6.2 項および[CTD 5.3.3.5-3(U -1394)],2.6.3項参照)。
3.3.6.1
乳酸脱水素酵素値LDH
値がみかけのクリアランス(CL/F)および相対バイオアベイラビリティに及ぼす影響を探 索した。LDHは腫瘍量および身体機能に対する病態の影響を示す代替マーカーとみなしうる。ベースラインの
LDH
値の中央値は解析母集団全体で241 U/L
であったのに対して,対象患者集 団[試験1200.22; CTD 5.3.5.2-4(U -3047),試験 1200.23;CTD 5.3.5.1-2(U -3048)およ
び試験1200.32
;CTD 5.3.5.1-1
(U -1199)]では252 U/L
であった(CTD 5.3.3.5-3(U -1394),Table 1.2.4.2: 1 )
。LDH
値はアファチニブの曝露量に対して統計的に有意な影響を与えた。この影響は,LDH を 相対バイオアベイラビリティの共変量として組込むことにより,適切に記述された。母集団薬 物動態最終モデル(表 5.1: 8,図1.1.5: 1
も参照のこと)に組込まれたLDH
が,曝露量AUC
τ,ss の変化率に与える影響を図3.3.6.1: 1
に示す。基準値=LDH値241 U/L
解析対象集団で認められたベースライン値の95%区間(2.5パーセンタイル=126 U/L,97.5パーセンタイル=893 U/L)を示した。
引用元:CTD 5.3.3.5-3(U -1394),Figure 10.1.4: 3
図
3.3.6.1: 1 LDH
値に依存したアファチニブのAUC
τ,ssの変化率LDH
がアファチニブの曝露量に与える影響は線形関数によってよく記述されたが,解析された 値の範囲外のLDH
値に対する外挿は困難である。特に893 U/L(97.5
パーセンタイルに相当)を超える値については,効果曲線の傾きが大幅に小さくなる,またはプラトーに達するという 可能性も考えられる。
3.3.6.2
アルカリホスファターゼアルカリホスファターゼ(AP)値が
CL/F,V
ss/F
および相対バイオアベイラビリティに及ぼす 影響を探索した。AP 値はアファチニブの曝露量に対して統計的に有意な影響を与えた。この 影響は,AP を相対バイオアベイラビリティの共変量として組込むことにより,適切に記述さ れた。AP
値が251 U/L(解析対象集団のベースライン値の約 85
パーセンタイル)以下の場合,アファチニブの曝露量は
AP
値の上昇に伴って直線的に増加したが,AP値が251 U/L
を超えると,曝露量のさらなる有意な増加は認められなかった。母集団薬物動態最終モデル(表 5.1: 8,
図
1.1.5: 1
も参照のこと)に組込まれたAP
値が,AUCτ,ssの変化率に与える影響を図3.3.6.2: 1
に示す。ベースラインの
AP
値の中央値は解析母集団全体で106 U/L
であったのに対して,対象患者集 団(試験1200.22[CTD 5.3.5.2-4(U -3047)
],試験1200.23[CTD 5.3.5.1-2(U -3048)
]およ び試験1200.32[CTD 5.3.5.1-1(U -1199)
])では104 U/L
であった。基準値=AP値106 U/L
解析対象集団で認められたベースライン値の95%区間(2.5パーセンタイル=49 U/L,97.5パーセンタイル =509 U/L)を示した。
引用元:CTD 5.3.3.5-3(U -1394),Figure 10.1.4: 3
図
3.3.6.2: 1 AP
値に依存したアファチニブのAUC
τ,ssの変化率癌患者に単回経口投与したとき,アファチニブは主に未変化体として糞便中に排泄された
(3.2.2項参照)。AP 値は肝機能および胆管機能と相関性を有するため,AP 値は患者が胆汁中 排泄によりアファチニブを排出する能力の指標である可能性も考えられる。
3.3.6.3
総蛋白値総蛋白(TPRO)値が
CL/F
および相対バイオアベイラビリティに及ぼす影響を探索した。TPRO
値はアファチニブの曝露量に対して統計的に有意な影響を与えた。この影響は,TPROをCL/F
の共変量として組込むことにより,適切に記述された。母集団薬物動態最終モデル(表 5.1: 8,図
1.1.5: 1
も参照のこと)に組込まれたTPRO
値が,AUCτ,ssの変化率に与える影 響を図3.3.6.3: 1
に示す。対象患者集団[試験
1200.22
;CTD 5.3.5.2-4
(U -3047),試験1200.23
;CTD 5.3.5.1-2
(U -3048)および試験
1200.32;CTD 5.3.5.1-1(U -1199)
]におけるベースラインのTPRO
値の中央値は72 g/L
であり,解析母集団全体での中央値と同じである。基準値=TPRO値72 g/L
解析対象集団で認められたベースライン値の95%区間(2.5パーセンタイル=60 g/L,97.5パーセンタイル =85 g/L)を示した。
引用元:CTD 5.3.3.5-3(U -1394),Figure 10.1.4: 3
図
3.3.6.3: 1 TPRO
値に依存したアファチニブのAUC
τ,ssの変化率TPRO
は従来から肝機能障害の代替マーカーになりうると考えられていたので,肝機能が低下 し,TPRO が低値であればみかけのクリアランス(CL/F)は低くなることが想定される。実際の 最終モデルでは,TPRO が大きくなるとクリアランスが低くなる関係性が示された。この影響 の大きさは中程度であることも考慮すると,TPRO が大きくなることで血漿中のアファチニブ の遊離画分が低下し,総血漿クリアランスが低下するという関係性があるのかもしれない。アファチニブの曝露量と