2. 個々の試験結果の要約
2.9 標準的化学療法との併用を評価する試験
表題:レトロゾール療法で進行が認められたエストロゲン受容体陽性のホルモン療法に抵抗性 転移性乳癌患者を対象にアファチニブとレトロゾールとの併用投与を評価する第
II
相試験 資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.5.4-13(U -2018)]目的:本試験の主目的は,レトロゾール
2.5 mg/日にアファチニブ 50 mg
を16
週間併用投与 した後の無増悪生存率を評価することである。副次評価項目は,アファチニブとレトロゾール の薬物動態パラメータの測定である。方法:本試験は,エストロゲン受容体陽性転移性乳腺癌が組織診により確認され,ホルモン療 法に対して獲得治療抵抗性となった(レトロゾールにより一旦奏効後,疾患進行を示した)女 性患者を対象とした非盲検,単群,多施設共同試験である。アファチニブを
1
日1
回,開始用量
50 mg
で投与し,40,30 mgへの減量も可能とした。治験実施計画の変更に伴い,開始用量が
40 mg 1
日1
回に変更され,30,20 mgへ減量できることとなった。その後,治験実施計画が再度変更され,開始用量は
30 mg 1
日1
回に変更され,20 mgへ減量可能とされた。1コース28
日間の投与コース中,アファチニブをレトロゾール2.5 mg 1
日1
回投与と併用投与し,疾患 進行(RECIST 1.1版[CTD 5.4-5(R09-0262)]に従って新規骨病変,進行または新規病変の発生,
CA 15.3
のベースラインと比べた20%超の増加,または癌関連骨格イベントの発生と定義)
が認められるまで,または許容できない毒性が発現するまで継続した。主要有効性評価項目と して無増悪生存率を評価した。血漿中レトロゾール濃度測定のために,スクリーニング
Visit 1
(Day -14),スクリーニング
Visit 2(Day -7
日),第1
コースVisit 1,第 3
コースVisit 1,第 5
コース
Visit 1
の投与直前および投与後2
時間の時点で薬物動態試料を採取した。第4
コースVisit 1
では,レトロゾールの投与後24
時間までの薬物動態のフルプロファイルを評価した。血漿中アファチニブ濃度測定のために,第
1
コースVisit 1,第 3
コースVisit 1,第 5
コースVisit 1
の投与直前および投与後2
時間の時点で薬物動態試料を採取した。第4
コースVisit 1
では,ア ファチニブの投与後24
時間までの薬物動態のフルプロファイルを評価した。結果:
アファチニブ:得られた少ないデータから,定常状態における
C
max,ssとAUC
τ,ssは投与量の減量 と共に減少し,Day 57およびDay 85
の投与前の値についても同様の傾向が認められた。いずれのパラメータについても用量比例性からの乖離はみられなかった。これらのパラメータの固 体間変動は
40 mg
投与群では中程度,30 mg投与群では高かった。アファチニブの薬物動態パ ラメータはアファチニブの単剤療法試験[CTD 5.3.5.3-1(U -1153)]で観察された範囲内であ り,レトロゾール2.5 mg/日との反復併用投与によりアファチニブの薬物動態は大きな影響を受
けないことが示唆された。レトロゾール:アファチニブとの併用でレトロゾールの薬物動態パラメータが高くなる,ある いは低くなるといった傾向は認められなかった。このため,個々の患者のデータを併合し,全 アファチニブ投与群の患者をまとめて評価した。個体間変動は大きかった。観察されたレトロ ゾールの薬物動態パラメータは,文献[CTD 5.4-11(R10-4018)],[CTD 5.4-12(R10-4019)] に報告されている範囲内であり,アファチニブはレトロゾールの薬物動態に問題となるような 影響を及ぼさないことが示唆された。本試験で得られたレトロゾールの薬物動態データも少な かった。
結論:アファチニブとレトロゾール(文献データとの比較)の間に薬物相互作用は認められな かった。レトロゾール併用時のアファチニブの薬物動態パラメータは,アファチニブ単剤療法 で得られた値と同程度であった。
2.9.2
試験1200.6
表題:ドセタキセル(21日ごとに投与)との併用でアファチニブを
20,13
または6
日間投与 するアファチニブの第I
相用量漸増試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.3.2-7(U -3208)]
目的:本試験の主目的は,ドセタキセル併用時のアファチニブの
MTD
を決定することである。副次目的は,検討した投与スケジュールにおける安全性と抗腫瘍効果に関するデータの収集お よびアファチニブとドセタキセルの薬物動態の評価である。
方法:本試験は,EGFR/HER2を発現することが知られる固形癌(進行性の切除不能および/
または転移性の固形癌)と組織診または細胞診により確認された患者を対象とした非盲検,非 対照,用量漸増,多施設共同試験である。
1
コース21
日間とし,RECIST
[CTD 5.4-4(R01-0754)] による疾患進行またはDLT
が認められまで,最大第6
コースまで投与した。Day 1にドセタキ セル(60 mg/m2,75 mg/m2)を投与し,アファチニブ(10~30 mg)を各投与コースにつき20
日間または13
日間投与した。表題にあるアファチニブの6
日間投与は実際には実施されなかっ た。アファチニブの24
時間までの薬物動態プロファイルと薬物動態パラメータを第1,2
コー スのDay 2
に評価し,ドセタキセルについても同じく第1,2
コースのDay 1
に評価した。第3
~6コースの
Day 10(Visit R2)と Day 21(Visit R3)の投与前にアファチニブの薬物動態試料
を採取した。結果:本試験の投与量範囲はアファチニブは
10, 20,および 30mg,ドセタキセルは 60 mg/m
2,75 mg/m
2であった。MTD群(アファチニブ20 mg+ドセタキセル 75 mg/m
2)について,以下の 結果が得られた。アファチニブ:アファチニブ経口投与後の吸収速度は中程度であった。血漿試料を投与後
24
時間までしか採取しなかったため,終末相半減期は本試験で過小評価された可能性がある。投 与開始から遅くとも10
日後には定常状態に到達したと考えられた。アファチニブの終末相での みかけの全身クリアランス(幾何平均値:第1
コース1430 mL/min,第 2
コース831 mL/min)
とみかけの分布容積(幾何平均値:第
1
コース2880 L,第 2
コース1930 L)は大きく,広範囲
に組織分布することが示唆された。コースを反復するドセタキセルとの長期併用投与中に,ア ファチニブの血漿中濃度の上昇や低下といった一定の傾向は概して認められなかった。ドセタキセル:患者数が少ないこと(MTD群
5
名,ドセタキセル75 mg/m
2の投与を受けた患 者13
名),また患者6013
および患者6400
によるバイアスのため,本治験においてドセタキセ ルの薬物動態特性に及ぼすアファチニブの影響について明確な結論を導くことは困難であった。しかし,第
1
コース(アファチニブ20 mg
の投与前)と第2
コース(同投与後)におけるドセ タキセル(75 mg/m2)の血漿中濃度の推移は同程度であった。第1
コースと第2
コースで,ド セタキセルのC
maxとAUC
0-∞の幾何平均値に差が認められたが,これは主に患者6013
と患者6400
に起因する。ドセタキセルの薬物動態に,アファチニブ併用による規則性のある変化は生 じないと考えられた。まず,ドセタキセルの個別のC
maxとAUC
0-∞の分布は,第1
コースと第2
コースで同じ範囲(患者6013
と患者6400
を除く)であった。第2
に,ドセタキセルのC
max とAUC
0-∞を第1
コースと第2
コースで比較したとき,規則性のある増加はなかった。第3
に,MTD
群だけでなくほかの投与群についても,ドセタキセルのC
maxとAUC
0-∞を第1
コースと第2
コースで比較したとき,基本的に規則性のある変化は認められなかったことも考慮されるべ きである。結論:本治験の結果から,アファチニブ(20 mg)の
20
日間投与によるドセタキセル(75 mg/m2) の薬物動態への影響はないことが示唆された。2.9.3
試験1200.20
表題:進行固形癌患者を対象としたドセタキセル投与後にアファチニブを
3
日間1
日1
回経口 投与するアファチニブの第I
相非盲検用量漸増試験資料番号(報告書番号):[CTD 5.3.3.2-8(U -1339)]
目的:本試験の主目的は,ドセタキセル(60 mg/m2,75 mg/m2)投与後にアファチニブを
3
日 間投与したときのMTD
を決定することであった。副次目的は,安全性と抗腫瘍効果に関する データの収集,アファチニブとドセタキセルの薬物動態,およびバイオマーカーの薬力学的変 化の評価とした。方法:本試験は,悪性固形癌と組織診または細胞診により確認された難治性または標準的療法 が適用できない悪性固形癌患者で,標準的なドセタキセル治療が適用可能な患者を対象とした 非盲検,用量漸増,多施設共同試験である。
21
日間の各投与コースのDay 1
にドセタキセル(60mg/m
2,75 mg/m2)を単回投与し,Day 2~4にアファチニブ(10~160 mg)を1
日1
回経口投 与した。この投与コースを,RECIST[CTD 5.4-4(R01-0754)]の基準で疾患進行またはDLT
が認められるまで,最大第8
コースまで反復した。ドセタキセルの薬物動態試料を第1, 2
コー スのそれぞれのDay 1
投与後48
時間まで採取した。またアファチニブの薬物動態試料を第1,
2
コースのそれぞれDay 2
に投与後24
時間まで採取した。第3,4
コースのDay 2,3
にトラフ 評価用の薬物動態試料を採取した。結果:
アファチニブ:アファチニブの用量範囲は
10~160 mg
について検討した。本試験で,MTDは ドセタキセル75 mg/m
2,アファチニブ90 mg
であった。アファチニブの吸収速度は中程度であ った。各コースのDay 2
におけるアファチニブの最高血漿中濃度と曝露量は,第1
コースと第2~4
コースで用量と共に増加した。視覚的な評価では用量比例性からの顕著な乖離は認められなかった。アファチニブの血漿試料 の採取は投与後
24
時間までしか採取されなかったため,終末相半減期は過小評価された可能性 がある。18日間のウォッシュアウト後に当たるコース2~4
のDay 2
における投与前血漿検体 でも,患者の半数においてアファチニブが検出可能であった。MTD
群におけるアファチニブのCL/F
とV
z/F
は大きく,アファチニブが広範囲に組織分布することが示唆された。ただし,ヒ トにおけるアファチニブの絶対バイオアベイラビリティ(F)は明らかになっていないため,これらの値の解釈には注意が必要である。ドセタキセルとアファチニブの併用投与
4
コース中 に,アファチニブの血漿中濃度の上昇や低下といった一定の傾向は概して認められなかった。。ドセタキセル:第
1
コースDay 2~4
のアファチニブ投与前(第1
コース)と投与後(第2
コー ス)におけるドセタキセル(75 mg/m2)の血漿中濃度-時間推移は,同程度であった。Cmax とAUC
はほぼ同じ値を示し,第1
コースと第2
コースにおけるドセタキセルの曝露量に違いは認 められなかった。第1
コースと第2
コースで,ドセタキセルの終末相半減期,全身クリアラン ス,分布容積はほぼ同じ値を示した。結論:本治験の結果から,
21
日間の各投与コースのDay 1
にドセタキセル75 mg/m
2を投与し,その後,Day 2,3,4にアファチニブを
3
日間1
日1
回投与しても,アファチニブはドセタキ セルの薬物動態に対して臨床的に問題となるような影響を及ぼさないことが示唆された。2.9.4
試験1200.36
表題:再発性悪性神経膠腫患者を対象としたテモゾロミド