治験の標題:
1型糖尿病患者を対象としたNN1250の低血糖反応の検討試験 治験責任医師名:
治験実施施設:
Austria 公表文献(引用文献):
なし(治験総括報告書作成時)
治験期間:
2009年10月27日~2010年3月9日
開発のフェーズ:
第1相
目的:
主要目的:
1型糖尿病患者を対象として、インスリン デグルデク(IDeg)又はインスリン グラルギン(IGlar)によ り引き起こされる低血糖発作発生中の低血糖に関する症状を製剤間で比較する。
副次的目的:
IDeg及びIGlarにより引き起こされる低血糖発作発生中の自律神経反応、インスリン拮抗ホルモン反応、
認知機能及び低血糖に対する自覚を製剤間で比較する。
IDeg及びIGlarにより引き起こされる低血糖発作発生中の血漿中グルコース濃度(PG)推移プロファイ
ルを製剤間で比較する。
IDeg及びIGlarにより引き起こされる低血糖発作から回復中のインスリン作用、低血糖に関する症状、バ
イタルサイン、インスリン拮抗ホルモン反応、認知機能及び低血糖に対する自覚を製剤間で比較する。
IDeg及びIGlarにより引き起こされる低血糖発作発生前、発生中及び発生後の薬物動態プロファイルの特
性を検討する。
治験方法:
本治験は、1型糖尿病患者を対象とした、IDeg及びIGlar投与後の低血糖反応を比較する、無作為割り付 け、1施設、反復投与、二重盲検、2期クロスオーバー試験であった。各被験者は、被験者ごとにあらかじ め規定された用量でIDeg又はIGlarの1日1回投与を5日間受ける2通りの投与期間(IDeg/IGlar又は
IGlar/IDeg)のうちの一方に無作為に割り付けられた。最初の4回の用量は被験者の個々のBasalインスリ
ン投与量の80%とし、5回目の用量は被験者の個々のBasalインスリン投与量の3倍とした。
本治験は、スクリーニング来院(第1期の投与期間との間には2~21日間の期間を設けた。)、2期の投与 期間及び事後調査来院により構成された。なお、2期の投与期間の間には13~21日間のwash-out期間を設 け、その間被験者は通常のインスリン治療を受けた。各投与期間において、被験者は治験薬の初回投与か ら少なくとも24時間入院し、この間にIDeg又はIGlarの初回及び2回目の投与を受けた。被験者は治験薬 の投与を受けるために、day 3及びday 4に来院した。Day 5では、被験者は来院後少なくとも50時間治験 実施施設に入院した。治験薬の5回目及び最終投与終了後、被験者はPGを5.5 mmol/Lで維持するためにグ ルコース注入速度を変動させるグルコースクランプを実施した。正常血糖値に調整後7~9時間でPGを3.5 mmol/Lに低下させ、30分間維持し、その後2.5 mmol/Lの底値(nadir)レベルまで低下させた。PGを底値 レベルで15分間維持した後、グルコース注入を5.5 mg/kg/minで固定しPGを3.9 mmol/Lに戻した。PGを
3.9 mmol/Lで2時間維持した後、正常血糖値に再度調整した。当該クランプ実施中に、PG、インスリン拮
抗ホルモン及び薬物動態評価のための採血を実施した。さらに、低血糖症状に関する質問票、低血糖に対 Page 190 of 2204
する自覚、バイタルサイン及び認知機能を詳細に記録した。被験者は観察のために、治験薬の最終投与後 少なくとも46時間治験実施施設に滞在した。
計画及び解析された被験者数:
計26例の被験者が治験を完了するよう計画された。36例がスクリーニングを受け、28例が無作為割り付け され治験薬の投与を受けた。2例が有害事象のために治験を中止し、26例が治験を完了した。治験薬の投与 を受けた28例を最大の解析対象集団〔full analysis set(FAS)〕及び安全性解析対象集団に含めた。
診断及び主要な組入れ基準:
インスリン治療期間が12ヵ月以上(投与量:1.2単位/kg/日未満)、年齢18以上65歳以下、HbA1c6.7以上 10.0%以下、BMI(kg/m2)18.0以上28.0以下、空腹時Cペプチド0.3 nmol/L未満の1型糖尿病患者。
主な除外基準は、過去1ヵ月以内に血液又は血漿献血を実施した被験者、スクリーニング前3ヵ月に500 mLを超える血液又は血漿献血を実施した被験者、スクリーニングにおける仰臥位血圧(5分間安静後)が
収縮期90~140 mmHg又は拡張期50~90 mmHgの範囲から逸脱する被験者及び喫煙者(スクリーニング前
3ヵ月に喫煙した被験者)であった。
被験薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IDeg:3 mL Penfill®カートリッジ(100単位/mL)
IDegを1日1回、5日間単回皮下投与した。Days 1~4の用量は被験者の個々のBasalインスリン投与量の 80%とし、day 5の用量は被験者の個々のBasalインスリン投与量の3倍とした。
ロット番号:VCQ0013 投与期間:
2期の投与期間において、それぞれIDegの1日1回投与5日間及びIGlarの1日1回投与5日間を実施し た。各被験者の治験期間は、合計17~64日間であった。
対照薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IGlar(Lantus®):3 mLカートリッジ(100単位/mL)
IGlarを1日1回5日間単回皮下投与した。Days 1~4の用量は被験者の個々のBasalインスリン投与量の 80%とし、day 5の用量は被験者の個々のBasalインスリン投与量の3倍とした。
ロット番号:40U607 評価基準:有効性 薬力学的作用
低血糖症状スコア(HSS)
低血糖に対する自覚(HA)
バイタルサイン(収縮期血圧、拡張期血圧及び脈拍)
インスリン拮抗ホルモン濃度(アドレナリン、成長ホルモン、コルチゾール、ノルアドレナリン及びグ ルカゴン)
認知機能〔精神運動検査(digit symbol substitution test:DSST)、four-choice reaction time(4CRT)及びト レイルメイキングテストpart B(trail making B:TMB)〕
グルコース注入速度
PG 薬物動態
血清中IDeg濃度
血清中IGlar濃度 評価基準:安全性
有害事象(局所投与部位反応を含む)
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安全性に関する臨床検査項目
身体所見
バイタルサイン
心電図
低血糖(薬力学的作用で検討する項目以外)
統計手法:
プライマリーエンドポイント
プライマリーエンドポイントは、ベースラインで調整した底値PGにおけるHSS(HSSPG,nadir)である。低 血糖症状の評価は、autonomic symptoms(sweating、palpitations、shaking及びhunger)、neuroglycopenic symptoms(confusion、drowsiness、odd behaviour、speech difficulty及びincoordination)及びgeneral malaise
(headache及びnausea)からなるEdinburgh Hypoglycaemia Scaleに基づき行った。上述の11症状の各々に ついて1(not at all)~7(a great deal)の尺度で被験者が評価をした。
プライマリーエンドポイントの解析
IDeg及びIGlarにより引き起こされる低血糖発作発生中の低血糖に関する症状を製剤間で比較するために、
ベースラインで調整したHSSPG,nadirを、製剤及び時期を固定効果、ベースラインのHSSを連続変数の共変 量、被験者を変量効果として含めた線形混合モデルを用いて解析した。
セカンダリーエンドポイント
低血糖反応の評価及び個々のPG推移プロファイルから算出される、段階的な低血糖発作発生に関連した 薬力学的作用に関するセカンダリーエンドポイント:HSSPG decline、PulsePG decline、DBPPG decline、SBPPG decline、Chormone,PG decline、AUChormone, PG decline、TMBPG decline、DSSTPG decline、4CRTPG decline、tPG decline、HAPG decline、 PGΔHSS、PGHA=yes、PGΔTMB、PGΔDSST、PGΔ4CRT、tPG 5 5 - 3 5 mmol/L、tPG 3 5 - 2 5 mmol/L、PGHA=yes – PGnadir、tPG 3 9 mmol/L – PG nadir end、tPG 3 1 mmol/L - PG nadir end、tPG nadir - PG nadir end、AUCGIR PG 5 5 mmol/L及びAUCGIR, PG 3 5 mmol/L
いくつかの低血糖反応の評価から算出される、底値PGに関連した薬力学的作用に関するセカンダリーエ ンドポイント:PulsePG nadir、DBPPG nadir、SBPPG nadir、Chormone,PG nadir、TMBPG nadir、DSSTPG nadir、4CRTPG nadir、 PGnadir及びAUCGIR, PG nadir
いくつかの低血糖反応の評価から算出される、低血糖発作からの回復に関連した薬力学的作用に関する セカンダリーエンドポイント:tPG nadir - 3 9 mmol/L、AUCGIR,0-2h,recovery、AUCGIR,PG nadir end - 2h、HSSrecovery、 Pulserecovery、DBPrecovery、SBPrecovery、Chormone,recovery、TMBrecovery、DSSTrecovery、4CRTrecovery及びHArecovery
治験薬最終投与後のインスリン濃度推移曲線から算出される、標準的な薬物動態に関するエンドポイン ト
セカンダリーエンドポイントの解析
IDeg及びIGlarにより引き起こされる低血糖発作発生中の自律神経反応、インスリン拮抗ホルモン反応、
認知機能及び低血糖に対する自覚を製剤間でさらに比較した:
HSSPG decline、PulsePG decline、DBPPG decline、SBPPG decline、Chormone,PG decline、TMBPG decline、DSSTPG decline及び
4CRTPG declineは、製剤(IDeg又はIGlar)、PG(4.5、4.0、3.5、3.0及び2.5 mmol/L)、製剤とPGの交
互作用、時期を効果、各エンドポイントのベースライン値を連続変数の共変量、被験者を変量効果と して含めた線形混合モデルを用いて解析した(ただし、Chormone,PG declineは対数変換し、ベースライン値 で調整しなかった)。変量効果である被験者及び誤差項は独立を仮定した。
PulsePG nadir、DBPPG nadir、SBPPG nadir、Chormone,PG nadir、TMBPG nadir、DSSTPG nadir及び4CRTPG nadirをプライマ リーエンドポイントと同様の方法で解析した(ただし、Chormone,PG nadirの解析には、ベースライン値を連 続変数の共変量としてモデルに含めなかった)。
HAPG decline、PGΔHSS、PGHA=yes、PGΔTMB、PGΔDSST及びPGΔ4CRTは、記述統計量で要約した。
Post hocな解析として、対数変換したPGnadir、AUChormone,PG decline、AUCGIR, PG 5 5 mmol/L、AUCGIR, PG 3 5 mmol/L
及びAUCGIR, PG nadirをプライマリーエンドポイントと同様の方法で解析した(ベースライン値による調
整は実施しなかった)。AUCGIR, PG nadirについては、0でなかった最も低い観測値を0値とした。さら に、PG 5.5 mmol/LにおけるChormone,PG declineをpost hocな解析として同様の方法で解析した。
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