治験の標題:
日本人1型糖尿病患者を対象としたNN12501の薬力学的作用特性の検討試験 治験責任医師名:
治験実施施設:
Japan 公表文献(引用文献):
なし(総括報告書完成時)
治験期間:
2010年6月1日~2010年10月13日
開発のフェーズ:
第1相
目的:
主要目的:
定常状態における投与後0~24時間のグルコース注入速度(GIR)推移曲線下面積に基づき、インスリン デグルデク(IDeg)の薬力学的反応の特性を検討する。
副次的目的:
定常状態におけるIDeg及びインスリン デテミル(IDet)のその他の薬力学的作用の特性を検討する。
単回投与後及び定常状態におけるIDeg及びIDetの薬物動態の特性を検討する。
定常状態における薬物動態のトラフ値を評価する。
日本人1型糖尿病患者におけるIDegの安全性及び忍容性を評価する。
治験方法:
本治験は、日本人1型糖尿病患者を対象とした、IDeg及びIDetの定常状態における薬力学的作用の特性を 比較する、無作為割り付け、1施設、反復投与、二重盲検、2期クロスオーバー試験であった。各被験者 は、IDeg及びIDetを、2通りの順序(IDeg/IDet又はIDet/IDeg)のうち1つの順序で投与を受けるよう無作 為割り付けされた。本治験は、スクリーニング来院(来院1)、2期の投与期間(来院2~8及び来院9~
15)及び事後調査来院(来院16)により構成された。各投与期間は11日間であり、IDeg又はIDetの1日1 回投与を行う6日間及び最終投与後120時間まで採血を行う5日間で構成された(26時間グルコースクラ ンプを含む)。各投与期間の間にはwash-out期間〔第1期の投与期間における治験薬の最終投与後(来院5
のday 6)7~21日間〕を設け、その間被験者は通常のインスリン治療を受けた。第2期の投与期間におけ
る治験薬の最終投与後7~21日に、事後調査来院を実施した。
計画及び解析された被験者数:
計20例の被験者が治験を完了するよう計画された。24例がスクリーニングを受け、22例が無作為割り付け され治験薬の投与を受けた。1例が来院10にて治験参加の同意を撤回し(予定された来院日に被験者が来 院できなくなったため)、21例が治験を完了した。無作為割り付けされた22例を最大の解析対象集団
〔full analysis set(FAS)〕及び安全性解析対象集団に含めた。
診断及び主要な組入れ基準:
インスリン治療(1日投与量0.3単位/kg/日以上)期間12ヵ月以上、年齢20以上65歳以下、HbA1c10.0%以
1:NN1250は、インスリン デグルデク(IDeg)の旧称である。
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下、BMI(kg/m2)18.0以上28.0以下、空腹時Cペプチド0.3 nmol/L未満の1型糖尿病患者男女。
主な除外基準は、悪性腫瘍又は心疾患の既往を有するもしくは併発している被験者、スクリーニングにお ける仰臥位血圧(5分間安静後)が収縮期90~140 mmHg又は拡張期50~90 mmHgの範囲から逸脱する被 験者、増殖網膜症又は黄斑症、及び/又は重度の神経障害を有する被験者、重大な低血糖を繰り返し発現 する又は無自覚低血糖被験者及び喫煙者であった。
被験薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IDeg(M):3 mL Penfill®カートリッジ(100単位/mL) 0.4単位/kgのIDegを大腿部に1日1回6日間皮下投与した。
ロット番号:XCQ0001 投与期間:
2期の投与期間において、6日間のIDegの1日1回投与及び6日間のIDetの1日1回投与がそれぞれ実施さ れた。各被験者の治験期間は、合計27~74日間であった。
対照薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IDet:3mL Penfill®カートリッジ(100単位/mL)
0.4単位/kgのIDetを大腿部に1日1回6日間皮下投与した。
ロット番号:XQ50242
評価基準:有効性 薬力学的作用
GIR
血中グルコース濃度 薬物動態
血清中IDeg濃度
血清中IDet濃度 評価基準:安全性
有害事象
身体所見
バイタルサイン
心電図
低血糖
安全性に関する臨床検査項目 統計手法:
薬力学的作用及び薬物動態の解析はFASに基づき実施された。FASには無作為割り付けされたすべての被 験者を含めた。安全性の解析は安全性解析対象集団に基づき実施した。安全性解析対象集団には、少なく とも1回の被験薬又は対照薬の投与を受けたすべての被験者を含めた。
プライマリーエンドポイントの解析
プライマリーエンドポイントは、定常状態におけるIDegの各投与間隔(0~24時間)のGIR推移曲線下面
積(AUCGIR,τ,SS)である。
AUCGIR,τ,SSは、スムージング化されたGIR推移曲線下面積として、線形台形法によって算出した(補間され
た点を使用)。評価区間の終わりに欠測値がある場合、last observation carried forwardを用いた。対数変換
したAUCGIR,,SSは、すべてのデータに基づき、製剤(IDeg/IDet)及び時期を固定効果、被験者を変量効果
として含めた分散分析を用いて解析した。不等分散の可能性を考慮し、誤差項は製剤に依存するものとし Page 101 of 2204
た。
薬力学的作用に関するセカンダリーエンドポイントの解析
各被験者の定常状態におけるGIR推移曲線及び血中グルコース濃度プロファイルにより算出される薬力学 的作用に関するセカンダリーエンドポイント:定常状態における最大GIR(GIRmax,SS)、GIRmax,SS到達時間
(tGIRmax,SS)、AUCGIR,τ,SS(IDetについて)、投与後0~12時間のGIR推移曲線下面積(AUCGIR,0-12h,SS)、
GIR推移曲線下面積の比(AUCGIR,0-12h,SS/AUCGIR,τ,SS)、各投与間隔のGIR推移曲線の変動(AUCFGIR,τ,SS)、
投与後0~12時間のGIR推移曲線の変動(AUCFGIR,0-12h,SS)、投与後12~24時間のGIR推移曲線の変動
(AUCFGIR,12-24h,SS)、作用持続時間及び投与後24時間における最後の10分間の平均血中グルコース濃度
(BG24h,SS)
作用持続時間はKaplan-Meierプロットで示した。薬力学的作用に関するその他のセカンダリーエンドポイ ントについては、製剤別に記述統計量で要約した。
薬物動態に関するセカンダリーエンドポイントの解析
血清中インスリン濃度推移曲線より算出される単回投与後及び定常状態におけるIDeg及びIDetの薬物動態 に関するセカンダリーエンドポイント〔IDeg及びIDetのいずれも「インスリン(ins)」で示す〕:
単回投与後:単回投与後の投与後0~24時間における血清中インスリン濃度推移曲線下面積(AUC
ins,0-24h,SD)、最高血清中インスリン濃度(Cmax,ins,SD)、Cmax,ins,SD到達時間(tmax,ins,SD)及びIDegのonset of
appearance
定常状態:定常状態における各投与間隔の血清中インスリン濃度推移曲線下面積(AUCins,τ,SS)、投与後0
~12時間の血清中インスリン濃度推移曲線下面積(AUCins,0-12h,SS)、血清中インスリン濃度推移曲線下面積
の比(AUCins,0-12h,SS/AUCins,τ,SS)、最高血清中インスリン濃度(Cmax,ins,SS)、Cmax,ins,SS到達時間(tmax,ins,SS)、
インスリンの消失半減期(t½,ins,SS)、各投与間隔の血清中インスリン濃度推移曲線の相対的な変動
(AUCF%ins,τ,SS)、投与後0~12時間の血清中インスリン濃度推移曲線の相対的な変動(AUCF%
ins,0-12h,SS)、投与後12~24時間の血清中インスリン濃度推移曲線の相対的な変動(AUCF%ins,12-24h,SS)、各投与
間隔の最後のインスリントラフ濃度(ITCins)、定常状態のAUCins,0-24hと単回投与後のAUCins,0-24hの比 (AUCins,τ,SS/AUCins,0-24h,SD)、定常状態のCmax,insと単回投与後のCmax,insの比(Cmax,ins,SS/Cmax,ins,SD)、インスリ ン濃度の消失速度定数(z,ins,SS)
対数変換したAUCins,τ,SS及びCmax,ins,SSの平均及び95%信頼区間を、正規分布を仮定して推定した。平均と 95%信頼区間は、もとのスケールに逆変換した。薬物動態に関するその他のセカンダリーエンドポイントに ついては、製剤別に記述統計量で要約した。
安全性に関するエンドポイントの解析
安全性に関するエンドポイントは、有害事象、身体所見、バイタルサイン、心電図、低血糖及び安全性に 関する臨床検査項目である。
すべての安全性に関するエンドポイントについて、一覧表を作成し、記述統計量で要約した。
被験者背景:
無作為割り付けされ、治験薬の投与を受けた被験者はすべて日本人であり、大部分が男性であった。平均 年齢は42歳、平均BMIは22.3 kg/m2であった。糖尿病罹病期間の平均は18年であり、HbA1cの平均は 7.5%、Cペプチドの平均は0.04 nmol/Lであった。
有効性の結果:
薬力学的作用
GIR推移プロファイルは、IDetと比較しIDegでより平坦で安定していた。
IDegの平均AUCGIR,τ,SSは1446 mg/kgであった(記述統計量に基づく)。
IDegのAUCGIR,0-12h,SSとAUCGIR,τ,SSの比は0.48であり、各投与間隔(0~24時間)における投与開始後~
12時間及び投与後12時間以降の血糖降下作用は同様であった。しかしIDetではこの値は0.66であり、
IDetの血糖降下作用は投与後12時間以降と比較し投与開始後~12時間で大きかった。
GIRの変動は、IDetと比較してIDegでより小さかった(IDeg:0.28 mg/kg*min、IDet:0.49 mg/kg*min)
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GIRmax,SSは、IDeg及びIDetで同様であった(IDeg:1.7 mg/kg*min、IDet:1.8 mg/kg*min)。tGIRmax,SSの 中央値は、IDegでは投与後約10.6時間、IDetでは投与後8.9時間であった。
IDeg投与後では21例すべての被験者で作用持続時間が26時間を越えたが、IDet投与後では7例の被験 者で投与後26時間より前に効果の終了(end of action)が認められた。
BG24h,SSはIDegで5.6 mmol/L、IDetで7.3 mmol/Lであり、IDet投与において、グルコースクランプ実施
中に目標とする血中グルコース濃度を維持できない被験者がみられた。
薬物動態
薬物動態プロファイルは、IDetと比較しIDegでより平坦であった。
AUC0-12h,SSとAUC,SSの比はIDegでは0.53、IDetでは0.65であった。各投与間隔(0~24時間)における
投与開始後~12時間及び投与後12時間以降のIDegの曝露量は同様であり、IDetでは投与開始後~12時 間でより大きいことが示された。
血清中インスリン濃度推移曲線の相対的な変動は、IDetと比較してIDegでより小さかった(IDeg:
11.6%、IDer:39.1%)。
終末相の消失半減期(調和平均)は、IDetと比較しIDegでより長かった(IDeg:18.3時間、IDet:6.3時 間)(記述統計量に基づく)。
IDegでは投与後約48~72時間、IDetでは投与後約24時間で定常状態に達した。AUCτ,SSとAUC0-24h,SDの 比はIDegでは1.7、IDetでは1.1であった。
IDegのonset of appearanceは投与後約49分であった。
安全性の結果:
IDegを投与された被験者で3例(14%)に計3件、IDetを投与された被験者で1例(5%)に計1件の有 害事象が報告された。有害事象はすべて軽度に分類され、治験薬との因果関係は「なし」と判定され た。
2件以上発現した有害事象はなかった。
重篤な有害事象及び死亡例は報告されなかった。
注射部位反応は報告されなかった。
治験薬投与下で発現した低血糖がIDegで21例195件、IDetで20例143件報告された。IDegでは195件 中112件が無症候性低血糖であり、IDetでは143件中71件が無症候性低血糖であった。このうち、IDeg では30件、IDetでは23件の低血糖は夜間低血糖であった。重大な低血糖は報告されなかった。
スクリーニングから事後調査のバイタルサイン、心電図及び安全性に関する臨床検査項目に、臨床的に 問題となる変化は認められなかった。
結論:
日本人1型糖尿病患者を対象として、臨床用量(0.4単位/kg)におけるIDeg及びIDetの定常状態における 薬力学的作用及び薬物動態の特性を評価する、無作為割り付け、1施設、反復投与、二重盲検、2期クロス オーバー試験で得られた結論は以下のとおりである。
臨床用量において、IDegは26時間を越える血糖降下作用を有する。
IDegはIDetと比較し作用持続時間が長い。
IDegはIDetと比較しより平坦で安定した血糖降下作用を有する。
IDegはIDetと比較しより平坦で安定した薬物動態プロファイルを有する。
本治験において、IDegの忍容性は良好であり、安全性に関する問題は認められない。
2.7.6.16.2 症例数設定の根拠
1型糖尿病患者を対象としたIDegの反復投与後のlog(AUCGIR,τ,SS)の標準偏差は、0.23であった
(NN1250-1876)。この推定値を用い、症例数を20例とすると、IDegにおけるlog(AUCGIR,τ,SS)の平均 の推定値の標準誤差は0.051であった(すなわち、95%信頼区間幅は、幾何平均のおよそ20%と期待さ
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