治験の標題:
1型糖尿病患者を対象とした定常状態におけるinsulin 454とインスリン グラルギン(IGlar)の薬力学的作 用の比較:無作為割り付け、1施設、二重盲検、反復投与、2期クロスオーバー試験
治験責任医師名:
治験実施施設:
Germany 公表文献(引用文献):
なし(治験総括報告書作成時)
治験期間:
2008年1月4日~2008年6月11日
開発のフェーズ:
第1相
目的:
主要目的:
定常状態におけるinsulin 454とIGlarのモル用量比を推定する。
副次的目的:
以下の項目を指標として、insulin 454とIGlar投与後の薬力学的作用を比較する。
42時間のグルコースクランプ施行下での作用持続時間
インスリン作用に対応する遊離脂肪酸(FFA)の抑制
定常状態における投与間隔24時間でのグルコース注入速度(GIR)のpeak-to-trough変化
Insulin 454とIGlar投与後の薬物動態パラメータを推定し、以下の項目を指標として、製剤間で比較す
る。
単回投与後及び定常状態の比
定常状態における投与後24時間までのpeak-to-trough変化
定常状態に達するまでのトラフ濃度
消失半減期(t1/2)
定常状態におけるinsulin 454とIGlarの薬物動態及び薬力学的作用プロファイルを検討する。
安全性及び忍容性を評価する。
治験方法:
本治験は、1型糖尿病患者対象とし、定常状態におけるinsulin 454とIGlarの薬力学的及び薬物動態特性を 比較するための、無作為割り付け、1施設、二重盲検、反復投与、不完備型ブロック法、2期クロスオーバ ー試験であった。各被験者は、3つの用量段階(低用量、中用量及び高用量)のいずれかに無作為に割り付 けられ、2回の投与期間(各8日間)にSIBA及びIGlarを無作為順に投与した。
本治験は、スクリーニング来院、7回の投与来院、投与とグルコースクランプのための来院(1回目)、
wash-out期間、7回の投与来院(来院10~16)、投与とグルコースクランプのための来院(2回目)及び事
後調査来院(最終投与来院より起算して7~21日以内)からなる、計18回の来院で構成された。スクリー ニング来院後、無作為割り付け及び初回投与前までに2~21日のスクリーニング期間を設けた。初回投与 来院の所要時間は24時間であった。初回投与来院終了後72時間まで〔3回の投与来院(各24時間)の合 計〕被験者は施設に滞在した。滞在期間終了後の4回の投与来院は外来とした。8回目の投与来院では42 時間のグルコースクランプを実施した。被験者は、最終投与後48時間に退院し、その後は24時間ごと(最 終治験薬投与後72、96、120及び144時間)に来院し、薬物動態評価のための採血を行った。治験薬の投与
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期間は8日間(1日1回投与)であった。第1期の投与期間終了後、10~20日のwash-out期間を設けた。こ の期間中、被験者は治験開始前に実施していた糖尿病治療を行った。wash-out期間終了後に第2期の投与期 間を開始した。なお、第1期と第2期の投与期間の構成は同一とした。各被験者の治験期間は27~83日で あった。
計画及び解析された被験者数:
計57例(各用量段階19例)の被験者が治験を完了するよう計画された。86例がスクリーニングを受け、
63例が無作為割り付けされ治験薬の投与を受けた。63例すべてが治験を完了し、薬物動態、薬力学的作用 及び安全性評価の解析対象集団に含められた。
診断及び主要な組入れ基準:
インスリン治療期間が12ヵ月以上(投与量:1.2単位/kg/日以下)、年齢18歳以上69歳以下、HbA1c10.0%
以下、BMI(kg/m2)18.0以上28.0以下及び空腹時Cペプチド0.3 nmol/L未満の1型糖尿病患者。
被験薬、用量及び投与方法、ロット番号:
SIBA(E):3.0 mL FlexPen®〔100投与単位/mL(600 nmol/mL)〕
1.7、3.4及び5.1 nmol/kgの治験薬を大腿部に単回皮下投与した。
投与期間:
SIBA又はIGlarの1日1回、8日間投与(2期)
対照薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IGlar(Lantus®):3.0 mL Optiset®(100単位/mL)
0.2、0.4及び0.6単位/kgの治験薬を大腿部に単回皮下投与した。
評価基準:薬物動態及び薬力学的作用 薬力学的作用
GIR
血中グルコース濃度
FFA
グリセロール、乳酸塩、ピルビン酸塩、β-ヒドロキシ酪酸、尿素及びC反応性蛋白(CRP)
ヒトインスリン(HI)濃度及びインスリン注入速度(IIR)
尿中のグルコース、アルブミン及び尿素の定量評価
特定の代謝及びホルモンに関する血清マーカー 薬物動態
血清中insulin 454濃度
血漿中IGlar濃度 評価基準:安全性
注射部位反応を含む有害事象
安全性に関する臨床検査項目(血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、血液凝固因子及び脂質検 査)
バイタルサイン
身体所見
心電図
低血糖
統計手法:
プライマリーエンドポイント及びセカンダリーエンドポイント
本治験のプライマリーエンドポイントは、insulin 454及びIGlar投与後0~24時間におけるGIR推移曲線下 Page 182 of 2204
面積(AUCGIR,0-24h)である。
薬力学的作用に関するセカンダリーエンドポイントは、insulin 454及びIGlarの時間-作用プロファイルを 示す最大GIR(GIRmax)、GIRmax到達時間(tGIRmax)及びGIR推移曲線下面積(AUCGIR)、insulin 454及
びIGlarの作用開始時点、作用持続時間及び作用終了時点を示すエンドポイントならびにFFAの抑制効果を
示す投与後0~42時間におけるFFA推移曲線下面積(AUCFFA,0-42h)、投与後0~42時間におけるFFA推移 曲線上面積(AOCFFA,0-42h)、最低血中FFA濃度(FFAmin)及びFFAmin到達時間(tFFAmin)とした。
薬物動態に関するセカンダリーエンドポイントは、insulin 454及びIGlar単回投与後及び定常状態における 薬物動態プロファイルを示す最高血清中insulin 454/血漿中IGlar濃度(Cmax)、Cmax到達時間(tmax)及び血 中濃度推移曲線下面積(AUC)とした。さらに、単回投与後及び定常状態の投与後0~24時間における AUCの比(AUCSS,0-24h/AUCSD,0-24h)、単回投与後及び定常状態のCmaxの比(Cmax,SS,0-24h/Cmax,SD,0-24h)、PTF 0-24h、t1/2、見かけのクリアランス(CL/F)及び平均滞留時間(MRT)を求めた。
プライマリーエンドポイント及びセカンダリーエンドポイントの解析
プライマリーエンドポイントの解析において、定常状態におけるinsulin 454とIGlarのモル用量比、すなわ ちinsulin 454のIGlarに対する効力比を推定した。モル用量比は対数変換後のAUCGIR,0-24hを用いた線形混合 モデルの下で推定した。モデルには、インスリン製剤(insulin 454/IGlar)及び時期を固定効果、被験者を変 量効果、対数変換後の用量(nmol)を共変量として含めた。モデルにおける被験者内及び被験者間誤差は 独立で、すべての用量で等しいと想定した。
セカンダリーエンドポイントにおける製剤間の比は、治療(インスリン製剤及び用量)及び時期を固定効 果、被験者を変量効果として含めた線形混合モデルの下で推定した。モデルにおける被験者内及び被験者 間誤差は独立で、すべての用量で等しいと想定した。解析には対数変換値を用いた。解析モデルの下、用 量段階ごとの比及びinsulin 454及びIGlarについて、製剤ごとに全体の比を推定した。さらに、insulin 454 とIGlar(全体及び用量段階ごと)の対比較を行った。また、インスリン製剤(insulin 454/IGlar)ごとに用 量間の比較も行った。すべての推定値について95%信頼区間を算出し、各々のパラメータの治療間の比のp 値を示した。その他のセカンダリーエンドポイントについては、記述統計量を用いて要約した。
被験者背景:
1型糖尿病患者63例〔男性:54例(86%)、女性:9例(14%)〕が無作為割り付けされ、治験薬の投与を 受けた。被験者の人種は、白人58例(92%)、黒人4例(6%)及びその他1例(2%)であった。被験者の 平均年齢は39歳及び平均BMI(kg/m2)は24.1であった。糖尿病罹病期間は3~43年であり、HbA1cの範囲 は6.2~9.9%であった。
有効性の結果:
薬力学的作用
定常状態におけるAUCGIR,τ,SSに基づき、SIBA(E)及びIGlar間のモル用量比は0.81〔95%信頼区間[0.72;
0.93]〕であった。つまりSIBA(E)の1 nmolは、AUCGIR,τ,SSにおいてIGlarの0.81 nmolと同様の効果を 持つとされた。
SIBA(E)及びIGlarの血糖降下作用は用量に依存して増大した。さらにtGIRmax,SSはIGlarに比べて SIBA(E)で大きかった(約6時間及び10時間)。
検討した用量範囲内〔SIBA(E)1.7~5.1 nmol/kg〕では、定常状態においてAUCGIR,τ,SS及びGIRmax,SSの いずれでも用量線形性が示された。
1型糖尿病患者において、SIBA(E)及びIGlarの作用プロファイルは、定常状態で24時間を超えて維持 された。
SIBA(E)の中用量及び高用量では、グルコースクランプ実施中の平均血中グルコースプロファイルは
ほぼ水平であったことから、定常状態において42時間近く一定した薬力学的作用を有することが示され た。
GIRにおけるpeak-to-trough変化はIGlarに比べてSIBA(E)で小さかった(推定比:約0.7)。
遊離脂肪酸(FFA)はIGlarに比べてSIBA(E)で良好に抑制された。
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薬物動態
単回投与後のtmax,SDの中央値はinsulin 454及びIGlarのいずれでも15時間であった。一方、定常状態にお
けるtmax,SSの中央値はinsulin 454で10時間、IGlarで4~9時間であった。
8日間投与の最終投与後、insulin 454は144時間まで検出された。しかしながら、総曝露量の95%以上が 120時間までに認められた。IGlarは最終投与後48時間から120時間まで検出された。
検討した用量範囲内〔SIBA(E)1.7~5.1 nmol/kg〕では、定常状態においてAUCτ,SS及びCmax,SSのいずれ でも用量比例性が示された。
t1/2,SSの平均はinsulin 454で約26時間、IGlarで約14時間であった。用量依存性は認められなかった。
SIBA(E)及びIGlarのいずれでも1日1回投与開始後2~4日で定常状態に達した。
グルコースクランプにおける採血法の影響により、insulin 454の累積係数を推定することはできなかっ た。しかしながらSIBA(E)の反復投与により、定常状態において安定した薬物動態プロファイルが得 られたことは明らかであった。
安全性の結果:
投与を受けた63例のうち30例に計64件の有害事象が報告された。報告された有害事象のうち、35件で 治験薬との因果関係が「あり」又は「可能性あり」と判定された。ほとんどの有害事象(64件中46件)
の重症度は中等度であり、18件が軽度であった。
有害事象は、低用量群10例19件、中用量群11例21件、高用量群9例24件と3用量群でほぼ同様に発 現した。
最も多く報告された有害事象は頭痛であった(64件中35件)。その他の有害事象は各用量群で1件又は 2件のみの発現であった。
重篤な有害事象又は死亡は報告されなかった。
臨床検査、バイタルサイン、心電図又は身体所見において臨床的に問題となる所見は認められなかっ た。
注射部位の評価において問題となる所見は報告されなかった。
SIBA投与後において、63例中56例に371件の低血糖が発現した。IGlar投与後においては63例中57例 に272件の低血糖が発現した。低血糖の発現件数は用量に依存して増大した。報告された低血糖のほと んどは重大でない低血糖であり、日中に報告された。
結論:
定常状態におけるAUCGIR,τ,SSに基づき、SIBA(E)及びIGlar間のモル用量比は0.81〔95%信頼区間[0.72;
0.93]〕であった。
SIBA(E)に関して、定常状態におけるAUCGIR,τ,SS及びGIRmax,SSで用量線形性が示された。
SIBA(E)及びIGlarの薬力学的作用プロファイルは、定常状態で24時間を超えて維持された。
SIBA(E)の中用量及び高用量では、グルコースクランプでみられたほぼ水平の平均血糖値プロファイ ルより、定常状態において42時間近く一定した薬力学的作用があることが示された。
SIBA(E)に関して、定常状態におけるAUCτ,SS及びCmax,SSで用量比例性が示された。
薬物動態を検討した結果、SIBA(E)及びIGlarのいずれでも1日1回投与開始後2~4日で定常状態に 達した。
SIBA(E)及びIGlarの忍容性は良好であることが示され、安全性の問題は報告されなかった。さらに注
射部位の評価において問題となる所見は報告されなかった。SIBA(E)は薬力学的作用が高いことか
ら、IGlarに比べて低血糖の発現は多かった。
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