治験の標題:
1型糖尿病患者を対象としたNN12501の定常状態における薬力学的反応の評価試験 治験責任医師名:
治験実施施設:
Germany 公表文献(引用文献):
なし(総括報告書完成時)
治験期間:
2010年5月3日~2010年8月10日
開発のフェーズ:
第1相
目的:
主要目的:
各投与間隔(0~24時間)のグルコース注入速度(GIR)推移曲線下面積に基づき、臨床用量範囲内の3 用量におけるインスリン デグルデク(IDeg)の定常状態における薬力学的作用に関する用量反応関係を 評価する。
副次的目的:
IDeg及びインスリン グラルギン(IGlar)の各3用量における定常状態の薬力学的作用の特性を検討す る。
IDegの定常状態における薬物動態に関する用量-血中濃度関係を評価する。
IDeg及びIGlarの各3用量における単回投与後及び定常状態における薬物動態の特性を検討する。
定常状態に達するまでの薬物動態に関するトラフ値を評価する。
3用量のIDegの安全性及び忍容性を評価する。
治験方法:
本治験は、1型糖尿病患者を対象とした、IDeg及びIGlarの定常状態における薬力学的反応を評価する、無 作為割り付け、1施設、反復投与、二重盲検、不完備型ブロック法、クロスオーバー試験であった。各被験 者は、IDeg及びIGlarの各3用量(0.4単位/kg、0.6単位/kg及び0.8単位/kg)のうち1用量を、2通りの順 序のうち1つの順序で投与を受けるよう無作為割り付けされた。本治験は、スクリーニング来院(来院 1)、2期の投与期間(来院2~10及び来院11~19)及び事後調査来院(来院20)により構成された。スク リーニング来院及び第1期の投与期間の間には2~21日間の期間を設けた。各投与期間は13日間であり、
IDeg又はIGlarの1日1回投与を行う8日間及び最終投与後120時間まで採血を行う5日間で構成された
(42時間グルコースクランプを含む)。各投与期間の間には7~21日間のwash-out期間を設け、その間被 験者は通常のインスリン治療を受けた。第2期の投与期間における治験薬の最終投与後7~21日に事後調査 来院を実施した。
計画及び解析された被験者数:
計60例の被験者が治験を完了するよう計画された。77例がスクリーニングを受け、66例が無作為割り付け され治験薬の投与を受けた。2例が重篤な有害事象のため治験を中止し、64例が治験を完了した。無作為割 り付けされた66例を最大の解析対象集団〔full analysis set(FAS)〕及び安全性解析対象集団に含めた。
1:NN1250は、インスリン デグルデク(IDeg)と同義であり、旧称である。
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診断及び主要な組入れ基準:
インスリン治療期間12ヵ月以上、現在のインスリン治療の1日投与量1.2単位/kg/日未満、年齢18以上65 歳以下、HbA1c10.0%以下、BMI(kg/m2)18.0以上28.0以下、空腹時Cペプチド0.3 nmol/L未満の1型糖尿 病患者男女。
主な除外基準は、悪性腫瘍又は心疾患の既往を有するもしくは併発している被験者、スクリーニングにお ける仰臥位血圧が収縮期90~140 mmHg又は拡張期50~90 mmHgの範囲から逸脱する被験者、増殖網膜症 又は黄斑症、及び/又は重度の神経障害を有する被験者、重大な低血糖を繰り返し発現する又は無自覚低 血糖被験者及び喫煙者であった。
被験薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IDeg:3 mL Penfill®カートリッジ(100単位/mL)
0.4単位/kg、0.6単位/kg又は0.8単位/kgのIDegを大腿部に1日1回8日間皮下投与した。
ロット番号:XCQ0001 投与期間:
2期の投与期間において、8日間のIDegの1日1回投与及び8日間のIGlarの1日1回投与がそれぞれ実施 された。各被験者の治験期間は、合計28~79日間であった。
対照薬、用量及び投与方法、ロット番号:
IGlar:3mLカートリッジ(100単位/mL)
0.4単位/kg、0.6単位/kg又は0.8単位/kgのIGlarを大腿部に1日1回8日間皮下投与した。
ロット番号:40U163
評価基準:有効性 薬力学的作用
GIR
血中グルコース濃度 薬物動態
血清中IDeg濃度
血清中IGlar濃度 評価基準:安全性
有害事象
身体所見
バイタルサイン
心電図
低血糖
安全性に関する臨床検査項目 統計手法:
薬力学的作用及び薬物動態の解析はFASに基づき実施された。FASには無作為割り付けされたすべての被 験者を含めた。安全性の解析は安全性解析対象集団に基づき実施した。安全性解析対象集団には、少なく とも1回の被験薬又は対照薬の投与を受けたすべての被験者を含めた。
プライマリーエンドポイントの解析
プライマリーエンドポイントは、定常状態におけるIDegの各投与間隔(0~24時間)のGIR推移曲線下面
積(AUCGIR,τ,SS)である。
AUCGIR,τ,SSは、スムージング化されたGIR推移曲線下面積として、線形台形法によって算出した(補間され
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た点を使用)。評価区間の終わりに欠測値がある場合、last observation carried forwardを用いた。対数変換
したAUCGIR,,SSは、すべてのデータに基づき、時期及び治療と用量との交互作用を固定効果、被験者を変
量効果として含めた線形混合モデルを用いて解析した。
さらに探索的解析として、用量反応関係をある関数形式(例えば対数変換したAUCGIR,,SSと用量との線形 関係)で記述し、検討した。はじめに、用量反応関係の関数形式が治療に依存すると仮定した。次に、用 量反応関係が治療に共通のいくつかのパラメータで簡略化できるかどうかを検討した。
薬力学的作用に関するセカンダリーエンドポイントの解析
各被験者の定常状態におけるGIR推移プロファイル及び血中グルコース濃度プロファイルにより算出され る薬力学的作用に関するセカンダリーエンドポイント:AUCGIR,τ,SS(IGlarについて)、定常状態における投 与後0~12時間のGIR推移曲線下面積(AUCGIR,0-12h,SS)、GIR推移曲線下面積の比(AUC
GIR,0-12h,SS/AUCGIR,τ,SS)、最大GIR(GIRmax,SS)、GIRmax,SS到達時間(tGIRmax,SS)、各投与間隔のGIR推移曲線の変
動(AUCFGIR,τ,SS)、投与後0~12時間のGIR推移曲線の変動(AUCFGIR,0-12h,SS)、投与後12~24時間の
GIR推移曲線の変動(AUCFGIR,12-24h,SS)、作用持続時間及び投与後24時間における最後の10分間の平均血 中グルコース濃度(BG24h,SS)
作用持続時間はKaplan-Meierプロットで示した。薬力学的作用に関するその他のセカンダリーエンドポイ ントについては、治療別及び用量別に記述統計量で要約した。
薬物動態に関するセカンダリーエンドポイントの解析
血清中インスリン濃度推移曲線より算出される単回投与後及び定常状態におけるIDeg及びIGlarの薬物動 態に関するセカンダリーエンドポイント〔IDeg及びIGlarのいずれも「インスリン(ins)」で示す〕:
単回投与後:単回投与後の投与後0~24時間における血清中インスリン濃度推移曲線下面積(AUC
ins,0-24h,SD)、最高血清中インスリン濃度(Cmax,ins,SD)、Cmax,ins,SD到達時間(tmax,ins,SD)及びIDegのonset of
appearance
定常状態:定常状態における各投与間隔の血清中インスリン濃度推移曲線下面積(AUCins,τ,SS)、投与後0
~12時間の血清中インスリン濃度推移曲線下面積(AUCins,0-12h,SS)、血清中インスリン濃度推移曲線下面積 の比(AUCins,0-12h,SS/AUCins,τ,SS)、最高血清中インスリン濃度(Cmax,ins,SS)、Cmax,ins,SS到達時間(tmax,ins,SS)、
各投与間隔の最後のインスリントラフ濃度(ITCins)、インスリンの消失半減期(t1/2,ins,SS)、各投与間隔の 血清中インスリン濃度推移曲線の相対的な変動(AUCF%ins,τ,SS)、投与後0~12時間の血清中インスリン濃 度推移曲線の相対的な変動(AUCF%ins,0-12h,SS)、投与後12~24時間の血清中インスリン濃度推移曲線の相 対的な変動(AUCF%ins,12-24h,SS)、定常状態のAUCins,0-24hと単回投与後のAUCins,0-24hの比
(AUCins,τ,SS/AUCins,0-24h,SD)、定常状態のCmax,insと単回投与後のCmax,insの比(Cmax,ins,SS/Cmax,ins,SD)、インスリ
ン濃度の消失速度定数(z,ins,SS)
定常状態における血清中インスリン濃度推移曲線より算出されるAUCins,τ,SS及びCmax,ins,SSを解析した。対数
変換したAUCins,τ,SS及びCmax,ins,SSに対して、用量及び時期を固定効果とした線形混合モデルを用いて治療ご
とに解析した。
さらに探索的解析として、用量反応関係をある関数形式(例えば対数変換したAUCGIR,,SSと用量との線形 関係)で記述し、検討した。薬物動態に関するその他のセカンダリーエンドポイントについては、治療別 及び用量別に記述統計量で要約した。
安全性に関するエンドポイントの解析
安全性に関するエンドポイントは、有害事象、身体所見、バイタルサイン、心電図、低血糖及び安全性に 関する臨床検査項目である。
すべての安全性に関するエンドポイントについて、一覧表を作成し、記述統計量で要約した。
被験者背景:
無作為割り付けされ、治験薬の投与を受けた被験者はすべて白人であり、大部分が男性であった。平均年 齢は37歳、平均BMIは24.9 kg/m2であった。糖尿病罹病期間の平均は18年であり、HbA1cの平均は 8.1%、Cペプチドの平均は0.02 nmol/Lであった。
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有効性の結果及び結論:
薬力学的作用
IDegの血糖降下作用(AUCGIR,τ,SS)は用量の増加に伴い用量比例的に増加した。用量(対数変換後)に対 する対数変換されたAUCGIR,τ,SSの傾きの推定値は1.35(95%信頼区間:[0.94; 1.75])であった。
GIRmax,SSは用量の増加に伴い増加した。
検討された3用量において、tGIRmax,SSはIDegでは投与後約12時間、IGlarでは投与後6~9時間であっ た。
検討された3用量すべてにおいて、IDegのAUCGIR,0-12h,SSとAUCGIR,τ,SSの比は0.5であり、各投与間隔(0
~24時間)における投与開始後~12時間及び投与後12時間以降の血糖降下作用は偏りがないことが示
された。IGlarでは0.6であり、IDegと比較し投与後前半及び後半の薬力学的作用に偏りがみられた。
検討された3用量(0.4単位/kg、0.6単位/kg及び0.8単位/kg)すべてにおいて、IDegは42時間を越える 血糖降下作用を有することが示された。42時間グルコースクランプ施行中に血中グルコース濃度が8.3
mmol/Lを超えた(効果の終了と定義される)被験者は、0.6単位/kg及び0.8単位/kgでは認められず、
0.4単位/kgでは3例のみであった。
検討された3用量において作用持続時間はIGlarと比較しIDegで長く、治療間で統計的な有意差がみら れた(p<0.0001)。
GIR推移プロファイルは、IGlarと比較しIDegでより平坦で安定していた。GIRの変動は、IGlarと比較 してIDegでより小さかった(IDeg:0.2~0.4 mg/kg*min、IGlar:0.2~0.7 mg/kg*min)。
AUCGIR,τ,SSに対するpost hocな解析の結果、IDeg及びIGlar間のモル用量比の推定値は1.03〔95%信頼区
間:[0.95; 1.12]〕であった。
薬物動態
IDegの総曝露量は用量の増加に伴い用量比例的に増加した。用量(対数変換後)に対する対数変換され
たAUCτ,SS及びCmax,SSの傾きの推定値は、それぞれ0.99〔95%信頼区間:[0.76; 1.22]〕及び0.85〔95%信
頼区間:[0.63; 1.08]〕であった。
検討された3用量すべてにおいて、AUC0-12h,SSとAUC,SSの比はIDegでは0.5、IGlarでは0.6であった。
各投与間隔(0~24時間)における投与開始後~12時間及び投与後12時間以降のIDegの曝露量は同様
であり、IGlarでは投与開始後~12時間でより大きいことが示された。
薬物動態プロファイルは、IGlarと比較しIDegでより平坦であった。相対的な変動は、IGlarと比較して IDegでより小さかった(IDeg:10~14、IGlar:11~24)。
終末相の消失半減期(調和平均)は、IGlarと比較しIDegでより長かった(IDeg:25.4時間、IGlar:12.5 時間)。
IDegのonset of appearanceは投与後22~40分であり、高用量でより早かった。
IDeg及びIGlarのいずれも、投与後48~72時間で定常状態に達し、各投与間隔(0~24時間)における
定常状態及び単回投与後の曝露量の比は約2であった。
安全性の結果及び結論:
IDegを投与された被験者で7例(11%)に計11件、IGlarを投与された被験者で13例(20%)に計23件 の有害事象が報告された。大部分の有害事象は軽度に分類された。治験薬との因果関係が「可能性あ り」と判定された有害事象は、IDegで7件、IGlarで15件であった。
最も多く報告された事象は頭痛(IDegで6件、IGlarで10件)であった。
2件の重篤な有害事象(脊髄内膿瘍及び胃腸出血)がIGlarの投与を受けた被験者で報告された。これら の事象はいずれも重度に分類され、治験薬との因果関係は「なし」と判定された。被験者はこれらの事 象より回復したが、治験を中止した。
注射部位反応は報告されなかった。
治験薬投与下で発現した低血糖がIDegで191件、IGlarで248件報告された。1件の重大な低血糖が報告 された(0.4単位/kgのIGlar投与群)。
スクリーニングから事後調査のバイタルサイン、心電図及び安全性に関する臨床検査項目に、臨床的に Page 136 of 2204