第 4 章 分子鋳型法を用いた分子認識吸着 剤の開発剤の開発
4.5 MIFA の作成
4.5.2 MIP フィルタの堆積
MIPフィルタの特性に応じて,ポリマー/template層の堆積のプロセスは変わってく る.接着層であるTiO2層の堆積プロセスはすべて同じである.典型的な金属酸化物のゲ ルフィルムの作成手順160)は以下になる(図4.9(a)).
100mMのチタンアルコキシド(Ti(O-n-Bu)4)を含む,体積比が1:1のトルエン/無水エ タノール溶液に表面を親水化した基板を20分浸漬し,物理吸着しているチタンアルコキ シドを除去するため無水エタノールでリンスする.チタンアルコキシドは水分の存在下 では,加水分解によってTi-OHが形成されてゾルゲル化が進む161)161).その結果,厚い TiO2が形成されてしまう.本研究では,TiO2の単分子層の堆積を目的としているため,
無水エタノールを表面ゾルゲルプロセスでは用いている.以下に,本研究で作成した3 種類のMIPフィルタの堆積手順について説明する.
図4.9 表面ゾルゲル過程によるMIPフィルタの作成プロセス
PAAを用いたMIPフィルタ
図4.9(b)に金属酸化物のゲルフィルムの上にPAA/template複合体を含むMIPフィ ルムを形成させるプロセスを示している.10mMのPAA(平均重合度が約5000),
5mMのtemplate,5mMの塩化水素(HCl)をエタノール中で混合し,室温で10時間 撹拌することで用意されたポリマー溶液の中に,チタンゲルフィルムを堆積させた 基板を30分間浸漬させる.それにより,PAA/template複合体がTi(O-n-Bu)4層で覆
われた基板に固定化される.ここで,PAAのpKaが4.3であるため,ポリマー溶液 のpHを2.3になるようにHClを加えている.これにより,PAAのほとんどのカル ボキシル基を非解離の-COOHに状態に保つことができ,templateと水素結合を形 成できるようになる.それから,エタノールで超音波洗浄した後,窒素ガスで表面 を乾燥させる.ここで,PDMS基板の場合には,バルク内に侵入しているtemplate 溶液を除去するため,作成したMIFAを80◦Cの真空下で1 h加熱している.
以上により,templateの形状に相補的な結合サイトを持つMIPフィルムが基板表 面に堆積される.同様に,NIP(Non-imprinted polymer)フィルムもtemplateの入っ ていないポリマー溶液に浸漬することで基板に堆積できる.
cross-linkerを用いたMIPフィルタ
Cross-linkerを用いた共重合によるタフなフィルタは次のように作成される.MAA
のエタノール溶液(pH=2.3)中に,Ti(O-n-Bu)4層で覆われた基板を浸漬し,MAA の単分子層を基板の上に固定化する.それから,3.4 mmolのMAA,20.2 mmolの divinylbenzene (cross-linker),0.85 mmolのtemplate分子,ラジカル開始剤のAIBN をアセトニトリル(MeCN)の中で混合したポリマー溶液中に,その基板を浸漬させ る.この混合物をラジカル重合させるために,60◦CでゆっくりとMAAの単分子 層の上にMIPフィルタを成長させる.この工程で作成されるMIPフィルムを本研 究ではcross-linked MIF (cMIF)と呼ぶ.最後に,エタノールで超音波洗浄した後,
窒素ブローで乾燥させる.図4.10(a)にcMIFの作成プロセスを示す.
ペプチドを用いたMIPフィルタ
ペプチド(peptide)を材料としたMIPフィルタ(pMIF)を吸着剤に堆積したペプチ
ドMIFA (以下pMIFA)の開発を行う.ペプチドの構成アミノ酸としてアスパラギ
ン酸を用いたpMIFAの合成手順は次のようになる.10mMのアスパラギン酸を含 むエタノール溶液(pH=2.3)中で,アスパラギン酸の単分子層をTi-O層に結合させ た後,縮合剤を注入することで,ポリアスパラギン酸層が形成かつ堆積していく.
それから,Layer-by-Layer法により,別のポリマー溶液に浸し,縮合剤を入れるこ とでペプチド層を累積させる.最後に,template溶液に10h浸すことでpMIFが形 成される.pMIFにも可塑性があり,reconfigurableフィルタを形成可能である.図 4.10(b)にpMIFの作成プロセスを示す.
図4.10 cMIFとpMIFの作成プロセス