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第 4 章 分子鋳型法を用いた分子認識吸着 剤の開発剤の開発

4.4 MIFA の特性評価技術

本研究で作成したMIPフィルタとMIFAの特徴を様々な測定法で評価した.以下に,

MIPフィルタの基本性質と可塑性を評価するために本研究で使用した手法について説明 する.

4.4.1 フーリエ変換赤外分光スペクトル (FT-IR: Fourier transform in-frared spectroscopy)

FT-IRは化合物分子の赤外線吸収スペクトルを利用して化合物を定性・定量する測定

法で,測定時間が短く,感度,精度ともに優れた性能をもっていて,微量の試料や低透 過率の試料を測定することもできる152)153)

 試料に赤外線を照射すると,分子が光のエネルギーを吸収する.それから,分子中の 電子が励起され,分子の振動あるいは回転の状態が変化する.そのため,透過率もしく は反射率を測定することで,分子に吸収されたエネルギー,つまり,分子の振動・回転 に使用されるエネルギーを検出できる.ここで,振動・回転のエネルギーは,分子の化 学構造によって決まるため,吸収度から得られる赤外吸収スペクトルは,物質ごとで固 有のスペクトルになる.これにより,試料の分子構造がわかるため,定性分析が可能に なる154)

 赤外スペクトル測定には透過法や測定反射法などがあるが,本研究では,全反射法 (ATR: Attenuated total reflection)を用いている.ATR法は表面分析や材料分析でよく用 いられる.試料とそれより屈折率の大きいATR結晶板を用い,媒質と試料間の界面で全 反射を起こさせる.試料に対して吸収のない波数領域では全反射し,吸収のある領域で は吸収の強さに応じて全反射光の強度が落ちる.この反射エネルギーを測定することで,

透過スペクトルに類似した全反射スペクトルが得られる155)

4.4.2 エリプソメトリー

エリプソメトリーは試料表面から反射される光の偏光状態の変化から,誘電関数の フィッティング解析によって試料膜厚などを高感度に測定することができる技術または 装置を指す156).本研究では,Au基板の上に堆積したTiO2層やMIPフィルムの膜厚を 測定するために用いている.図4.7にエリプソメトリーの測定原理を示す.反射光は,入 射面dに平行な偏光成分(p偏光)と,垂直な偏光成分(s偏光)に分解される.直線偏光 を入射すると,物質による光の反射によって,p,s偏光はそれぞれ独立に変化し,結果,

反射光のベクトル和は入射光とは異なる形状を示す.その際,試料での光反射によりp,

s偏光のそれぞれの振幅及び位相は大きく変化するため,試料の屈折率が計算できる.最 後に,測定値をフィッティング処理することで,最適なパラメータを計算している.一 般にこの反射光の偏光状態が楕円になるためエリプソメトリーと呼ばれている.

 本研究では,Mikropak社のSpecEL-2000-VLS,解析ソフトはSCOUT2を使用した.測

定波長は450 nm-900 nm,入射角は70.2で金基板表面での偏光を観測し,表面に修飾さ

れた薄膜の膜厚を測定している.フィティング解析で用いる透明有機薄膜の誘電関数は

Cauchyモデルなどでモデル化したものを用いている.

4.7 エリプソメトリー測定の原理

4.4.3 固相マイクロ抽出法 (SPME: Solid phase microextraction)

SPMEは,Pawliszynらにより開発された固相抽出法の一種で,従来の固相抽出法と 比べて,ポータブル性に優れ,安価かつ高精度な分析法になる157).このSPMEはサン プリング,抽出,濃縮,そしてGC-MS等の測定器へのサンプル注入というすべての機能 をたった一つの小器具に集約したものであり,GCとの併用により,高い精度での測定が 可能となる158).図4.8にSPMEの構造と使用されるファイバーの種類を示す.SPME先 のサンプリング用ファイバーによって,測定する物質を吸着・濃縮させている.

 ファイバーに使用される吸着剤の中には,PDMSがあり,この事実からもPDMSが高 い吸着能力を有する材料であることがわかる.ファイバーの仕組みには,PDMSやPEG などのように,コーティングの表面から物質を吸収し,コーティング相の内部に濃縮,拡 散させるファイバーもあれば,複数のコーティング剤を合成させ,表面に吸着されるファ イバーもある.

4.8 SPMEの構造と吸着ファイバー158)

4.4.4 質量分析器 (MS: Mass spectrometry)

159)

MSはイオン源,質量分析部,検出部から構成され,測定されたマススペクトルから 化合物を分析する方法である.まず,導入された試料は加熱気化され,電子ビームより化 合物をイオン化する.このイオンは加速され,電場や磁場によって偏向される.この場の 中では質量電荷比の小さなイオンは大きく曲げられるため,これを利用してイオン分離 を行う.分離されたイオンは検出器で信号に変換され,マススペクトルという化合物の 分子構造に関係する情報が多く含まれた応答が出力される.マススペクトルは横軸に質 量,縦軸に検出強度をとったスペクトルである.本研究ではGCと組み合わせたGC-MS として,MIFAの吸着特性の測定の際に使用している.