第 4 章 分子鋳型法を用いた分子認識吸着 剤の開発剤の開発
4.5 MIFA の作成
4.6.2 MIP と NIP フィルタの膜厚測定
基板の上のMIP層とNIP層の膜厚はエリプソメトリーによって評価される.表4.3に gold/glass基板に堆積したフィルムの厚さを示す.Layer番号は図4.3に描かれた番号と 一致している.また,溶液に浸漬した後の超音波とリンスの影響も表4.3には描かれてい る.PAAの物理吸着の度合いは超音波処理をしていないフィルムの厚さを測定すること
で評価できる.ポリマー溶液への浸漬時間に対するMIPとNIPフィルムの厚さの変化を 図4.14に示す.Layer Bの厚さにより,グラフでは浸漬時間0 h時の膜厚がおよそ1.5 nm になっている.
表4.3 エ リ プ ソ メ ト リ ー で 測 定 さ れ た TiO2/PAAの膜厚
図4.14 基板に修飾されたTiO2/PAA層の膜 厚変化
Layer A (-S-CH2-CH2-OH)とlayer B (-S-CH2-CH2-O-Ti-O-Bu)のフィルムの厚さはそ れぞれ,0.72 nmと1.63 nmになる.そのため,TiO2層の厚さは1 nm以下になる.この 結果から,表面ゾルゲル過程は親水化した基板の上にチタンゲルの単分子層を修飾でき,
分析ガスはTiO2層を十分に通過できると考えている.加えて,表4.3において,超音波 処理をしたLayer Cと超音波処理をしないLayer Cでは膜厚が大きく変わっている.PAA 複合体の物理吸着はポリマー溶液中に水が含まれていることで起こる.しかし,超音波 処理により物理吸着を十分に減らすことができることもわかった.
1時間以上ポリマー溶液に浸漬した後,およそ6 nmのMIPとNIPフィルムが基板に 形成できていることが確認された.また,浸漬時間が増えるにつれPAAの吸着は増加し,
それから,一定の膜厚に収束している.つまり,gold/glass表面にPAA/template複合体 の単層を化学的に結合させることに成功している.結論として,基板の上に均一なナノ
フィルムの形成が可能で,膜厚は堆積時間によって制御できる.
4.6.3 フィルター効果と非特異吸着の評価
SPME/GC-MS測定によって,様々な分子に対するPAA/TiO2層のフィルタリング効 果を評価した.はじめに,何も修飾していない(u-PDMS),超音波処理をしたNIFA,ガ ラス基板とgold/glass基板の上にMIPheptanoic acidフィルムで覆ったglass-MIPheptanoic acidと gold/glass-MIPheptanoic acidを用意した.MIPjは匂い物質jの認識サイトを持つMIPフィル ムを表す.図4.11と図4.12で示された方法で,これら4つのサンプルに表4.2の混合臭 1を吸着させた後,SPME/GC-MSにより得られたTIC値から,各サンプルの濃縮能力と フィルター効果を評価した.図4.15に示される結果はSPME/GC-MS測定により得られ たu-PDMSに対するNIFAのTIC値(フィルター比)を表す.フィルター比が1より小さ
ければu-PDMSに比べて匂い物質の吸着をブロックしたことを意味する.
図4.15 u-PDMSに対するNIPフィルムのフィルター効果
図4.15より,u-PDMSに比べて匂い物質の吸着量がいずれも減少しており,NIPフィル
ムは分子をブロックできていることがわかる.特に,salicylaldehydeは約90%がブロック され,どの匂い物質でも少なくとも30%,吸着を妨げていることが観察された.NIPフィ ルタに浸透した後に吸着層にトラップされるため,分子の吸着量はPAA材料と分子間の 親和性に依存し,フィルター比は分子間で異なってくる.一方,吸着層がないglass-MIP とgold/glass-MIPに吸着したガスはGC-MSでは検知できなかった.つまり,NIPもしく はMIP層は吸着能力がほとんど無視できるフィルタとして働くため,分子の非特異吸着 の影響を避けることができる.以上の結果から,ナノフィルムはVOCや匂いのフィルタ となり,PDMSは吸着層として働いていることが分かった.しかしながら,NIPフィル タはすべての分子を完璧にブロックできているわけではない.これは,TiO2やPAAに欠 損領域が存在していたり,数nmのフィルタであるので認識サイト以外も分子が通過し てしまった可能性が考えられる.しかし,平均重合度が大きなPAAを用いれば,膜厚の 大きなMIPフィルタが形成でき,フィルター効果を改善できると考えている.