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MC 養成の段階性

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 152-155)

第7章 中国人日本語学習者の総合的な MC の養成に向けての検討

7.2 中国人日本語学習者の総合的な MC の養成について

7.2.3 MC 養成の段階性

中国人日本語学習者のMC養成はまだ新しい試みであり、また、概念メタファーを初め て習う学習者にとってあまりなじみのないものであるため、学習者を一足飛びに総合的な MCを持つように養うことには無理がある。それでは、学習者のMCの養成にどのような

84 このメタファーの詳細な構造に関しては、第2章の2.2.3節を参照。

85 詳細な構造は第2章の2.2.3節を参照。

段階を設定すれば良いのか。本研究では、MCの定義や学習者の受容などの面を考慮し、

図10に示しているMC養成の4段階を提案したい(図の中のボックス枠の太さは重要度 または優先度を表す)。

第一段階 第二段階 第三段階 第四段階

図10 MC養成の4段階

第一段階では、授業への概念メタファーの体系的な導入に先立ち、学習者に目標言語の 中に多種多様なメタファーとメタファー表現が存在していることに気付かせる。具体的な 方法としては、簡単な言葉で概念メタファーとは何かについて説明したり、「時は金なり」、

「人生は旅である」などのような、日中両言語のいずれでもよく知られる表現に直接反映 されている《時は金》、《人生は旅》などのメタファー及びそれに基づいた日中両言語のメ タファー表現を紹介したり、更に、言語の中に直接反映されていない《楽しい状態は上、

悲しい状態は下》、《怒りは火》などの比較的分かりやすいメタファーについても解説した りすることが考えられる。このような方法によって言語の中に潜んでいる豊富なメタファ ーの存在をある程度学習者に意識させることができる。

第二段階では、概念メタファーの学習を体系的に導入することによって学習者のメタフ ァー表現理解力の養成を中心的に行う。具体的な養成法については、本研究の第5章と第 6 章における研究結果が大きな参考になる。即ち、概念メタファー理論と用法基盤モデル の知見を生かした応用認知言語学的な指導法(認知法)を用いながら、日中両言語間で言 語的に非共有の日本語メタファー表現や、隠喩基盤のメタファーに基づく日本語メタファ ー表現に対する理解を重要視し母語に基づく概念・言語の知識及び文化知識を活用する、

という方法が効果的ではないかと考えられる。また、第2章の2.4.1節でも検討したよう に、ある表現がある言語のメタファー表現として適切かどうかについては通常言語学習の 経験に根差した何らかの直観に頼って判断するしかなく、メタファー表現識別力は語感の ようなものだと考えられるがゆえに、第二段階では、メタファー表現理解力の中心的な養 成と同時に、メタファーやメタファー表現の理解に伴う日中両言語のメタファーの比較な

気付き 創造力養成

養成 理解力養成

識別力養成

産出力養成 識別力養成

どを通じて付随的に学習者のメタファー表現識別力を高める。

次に、第三段階では、様々なタスクを通して習得されたメタファーやメタファー表現を 作文やコミュニケーション活動の中に運用させたりすることにより、学習者のメタファー 表現産出力を中心的に養う。具体的な指導法としては、先行研究で紹介した Deignan, Gabrys & Solska(1997)の授業実践がある程度参考になるだろう。また、概念メタファ ーを活かした英文作成の実験を行った大森(2004)が有益な参考になると考えられる。具 体的には、大森は以下の方法で某大学の英文科の3年次生を対象に自由英作文の授業を実 施した。

テーマ:「最近あなたが経験し、印象に残ったできごとについて」

手 順:①上記テーマで英文エッセイを書くために必要な内容をメモにまとめさせる。

②英文による小エッセイを書かせる。

③『マクミラン英英辞典』の概念メタファーコラム86の資料を与え、解説する。

④資料を参照させながら、エッセイを改訂させる。

大森の実験では、メタファー資料提供前の作文と資料提供後の改訂版の作文を比較した結 果、概念メタファーの情報を与えることにより学習者の表現に多様性や具体性が生まれる ことや、学習者は概念メタファーを手掛かりにし、自分が述べたいと考えている内容に沿 った表現が可能になり、英文の流れもより円滑になることなどが分かった。大森(2004)

は直接的にMCの視点からの研究ではないが、実験に用いた授業法などは日本語学習者の メタファー表現産出力の養成法の開発に多くの示唆を提供している。次に、第三段階では メタファー表現産出力の養成と同時に、メタファー表現の運用を繰り返すプロセスを通じ て付随的に学習者のメタファー表現識別力をより一層高める。

最後の第四段階では、第三段階におけるメタファー表現産出力の養成の延長線として、

学習者に新しいメタファーとメタファー表現を創造させたり運用させたりし、彼らの創造 力を向上させることを試みる。また、第2章の2.4.1節でも議論したように、MC養成の 全体的なプロセスにおいては、メタファー表現理解力の養成がもっとも基礎的かつ重要で あり、メタファー表現理解力とメタファー表現産出力の両方の養成が日本語学習者にとっ

86 『マクミラン英英辞典』は2002 年に刊行され、言語学のさまざまな分野、とくに認知言語学、

談話分析、語用論、コーパス言語学の成果を取り入れて編纂されたものである。その中の概念メタ ファーコラムには、《精神は容器》や《楽しい状態は上、悲しい状態は下》などのさまざまな英語の メタファー及びそれに基づいた英語メタファー表現例が挙げられている。(大森 2004)

て比較的重要性が高いというように位置づける。

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