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中国人日本語学習者の MC 発達の現状

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第4章 概念的流暢性の視点から見る中国人日本語学習者の MC 発達

4.3 結果と考察

4.3.1 中国人日本語学習者の MC 発達の現状

実験群 1(短期学習歴群)による作文 CN1〜CN33、実験群 2(長期学習歴群)による

作文CN34〜CN58、及び日本語母語話者からなる対照群による作文JP1〜JP44における

3種類のメタファー密度(MD、JC-MD、J-MD)の内訳は次のとおりである。

62 36ヶ月を境界線にグループ分けをしたのは、36 ヶ月前後の学習歴を持つ作文提供者がいなく、

短期学習歴群と長期学習歴群の間に約12ヶ月の学習歴の隔たりが存在しており、また、中国の日本 語学科の学習者は一般に約3年間日本語を集中的に勉強し学部4年生になると就職活動が中心にな るからである。

表9 各群による作文のメタファー密度

作文 MD JC-MD J-MD 作文 MD JC-MD J-MD

CN01 6.4 2.1 4.3 CN52 6.1 4.1 2.0

CN02 3.4 3.4 0 CN53 11.5 8.2 3.3

CN03 11.9 9.5 2.4 CN54 24.6 13.1 11.5

CN04 8.9 7.1 1.8 CN55 11.7 8.3 3.3

CN05 2.0 0 2.0 CN56 11.7 6.7 5.0

CN06 8.0 8.0 0 CN57 11.1 9.7 1.4

CN07 4.8 2.4 2.4 CN58 18.6 15.3 3.4

CN08 1.9 0 1.9 JP01 23.1 19.2 3.8

CN09 2.2 2.2 0 JP02 17.3 13.5 3.8

CN10 4.5 4.5 0 JP03 30.4 13.0 17.4

CN11 0 0 0 JP04 30.2 17.0 13.2

CN12 2.2 0 2.2 JP05 18.2 4.5 13.6

CN13 13.2 9.4 3.8 JP06 20.0 4.0 16.0

CN14 8.3 2.8 5.6 JP07 18.0 10.0 8.0

CN15 11.8 7.8 3.9 JP08 8.1 5.4 2.7

CN16 9.6 9.6 0 JP09 36.4 11.4 25.0

CN17 12.5 10.0 2.5 JP10 22.6 13.2 9.4

CN18 9.3 7.4 1.9 JP11 24.6 14.0 10.5

CN19 8.3 8.3 0 JP12 17.9 10.7 7.1

CN20 12.2 12.2 0 JP13 36.0 18.0 18.0

CN21 5.3 2.6 2.6 JP14 31.3 21.9 9.4

CN22 0 0 0 JP15 10.9 2.2 8.7

CN23 12.2 12.2 0 JP16 21.5 15.4 6.2

CN24 24.0 18.0 6.0 JP17 25.5 10.9 14.5

CN25 9.5 7.9 1.6 JP18 15.1 5.7 9.4

CN26 13.8 10.8 3.1 JP19 22.2 11.1 11.1

CN27 18.0 10.0 8.0 JP20 19.5 9.8 9.8

CN28 14.1 10.9 3.1 JP21 13.8 3.4 10.3

CN29 12.2 6.1 6.1 JP22 12.7 4.8 7.9

CN30 21.6 21.6 0 JP23 22.6 15.1 7.5

CN31 13.6 8.5 5.1 JP24 21.7 11.7 10.0

CN32 22.2 19.0 3.2 JP25 19.5 17.1 2.4

CN33 10.9 9.4 1.6 JP26 24.4 8.9 15.6

CN34 11.5 8.2 3.3 JP27 19.0 14.3 4.8

CN35 19.0 13.8 5.2 JP28 18.4 16.3 2.0

CN36 14.5 11.3 3.2 JP29 15.6 4.4 11.1

CN37 11.4 8.6 2.9 JP30 20.8 10.4 10.4

CN38 16.2 12.2 4.1 JP31 24.2 17.7 6.5

CN39 11.3 7.0 4.2 JP32 10.5 3.5 7.0

CN40 20.0 14.5 5.5 JP33 40.0 15.6 24.4

CN41 6.0 4.0 2.0 JP34 21.2 12.1 9.1

CN42 19.0 13.8 5.2 JP35 16.7 8.3 8.3

CN43 15.9 15.9 0 JP36 19.1 10.3 8.8

CN44 7.8 6.3 1.6 JP37 21.4 10.7 10.7

CN45 14.7 11.8 2.9 JP38 20.3 14.1 6.3

CN46 7.9 4.8 3.2 JP39 27.3 9.1 18.2

CN47 4.1 2.0 2.0 JP40 14.3 4.8 9.5

CN48 19.7 18.2 1.5 JP41 32.0 16.0 16.0

CN49 6.7 5.3 1.3 JP42 25.5 17.0 8.5

CN50 5.9 5.9 0 JP43 19.0 7.9 11.1

CN51 22.2 15.6 6.7 JP44 32.6 23.9 8.7

表9のデータをもとに記述統計を行ったところ、表10の結果が得られた。

表10 各群による作文のメタファー密度における記述統計の結果

グループ 度数 平均値 標準偏差

MD 実験群1(短期学習歴群) 33 9.661 6.1785

実験群2(長期学習歴群) 25 13.164 5.6843

対照群 44 21.850 7.0615

JC-MD 実験群1(短期学習歴群) 33 7.385 5.5236

実験群2(長期学習歴群) 25 9.784 4.4469

対照群 44 11.552 5.2607

J-MD 実験群1(短期学習歴群) 33 2.276 2.1667

実験群2(長期学習歴群) 25 3.388 2.3800

対照群 44 10.289 5.1256

一見して分かるように、MD、JC-MD、J-MD のいずれにおいても、短期学習歴群の平均 値がもっとも低く、対照群の平均値がもっとも高かった。作文の3種類のメタファー密度 における各群の平均値に有意差があるかどうかを調べるため、多変量分散分析を行った。

その結果、MD(F(2,99)=36.194、p<.01)、JC-MD(F(2,99)=6.139、p<.01)、J-MD

(F(2,99)=50.258、p<.01)のいずれにおいても主効果が有意であった。具体的にどの 群とどの群の間に有意差があるかを知るため、Levene の等分散性検定の結果に基づいて

それぞれScheffe法とTamhane の T2を用いた多重比較を適用した63。結果は表11に示

した。

表11 各群による作文のメタファー密度における多重比較の結果

グループ グループ 平均値の差 有意確率

MD 実験群1(短期

学習歴群)

対照群 -12.1894** .000

実験群2(長期

学習歴群)

対照群 -8.6860** .000

実験群1(短期

学習歴群)

実験群2(長期

学習歴群)

-3.5034 .130

JC-MD 実験群1(短期

学習歴群)

対照群 -4.1674** .003

実験群2(長期

学習歴群)

対照群 -1.7683 .396

実験群1(短期

学習歴群)

実験群2(長期

学習歴群)

-2.3992 .221

J-MD 実験群1(短期

学習歴群)

対照群 -8.0129** .000

実験群2(長期

学習歴群)

対照群 -6.9006** .000

実験群1(短期

学習歴群)

実験群2(長期

学習歴群)

-1.1122 .204

注:** p<.01

63 具体的には、Leveneの等分散性検定の結果、MD(p>.05)とJC-MD(p>.05)において分散が 等しかったが、J-MD(p<.01)において分散が等しくなかった。それゆえ、多重比較にあたっては、

MDとJC-MDにおいてScheffe法を、J-MDにおいてTamhane の T2を用いた。

上表から見れば、まず、全体的なMDについて、短期学習歴群と対照群、及び長期学習歴 群と対照群の間に有意差があった(p<.01)が、短期学習歴群と長期学習歴群には有意差 が見られなかった(p>.05)。この結果によれば、対照群の日本語母語話者に比べ、短期学 習歴群と長期学習歴群の両方の全体的なMCは十分に発達していないことや、日本語学習 歴が上がっても学習者の MC はあまり向上していないことなどが分かる。次に、JC-MD については、短期学習歴群と対照群に有意差が見られた(p<.01)が、長期学習歴群と対 照群には有意差がなかった(p>.05)。即ち、短期学習歴群のJC-MC はまだ日本語母語話 者よりやや低いが、長期学習歴群の JC-MC は既に母語話者とほぼ同様のレベルに達して いる、ということである。よって、中国人日本語学習者にとっては、日中両言語間で共有 するメタファー的概念体系の習得はそんなに難しくないと言っても良いだろう。また、

JC-MDについて短期学習歴群と長期学習歴群に有意差がなかった(p>.05)ことによれば、

学習者の JC-MC は比較的早い時期から大いに伸び、それ以降はあまり向上しなくなると

いうことが分かる。ただし、学習者の JC-MC は具体的にどの時期からどの時期まで大い に伸びたかについては本研究では解明することができておらず、今後の更なる研究が必要 である。最後に、J-MD に関しては、短期学習歴群と対照群、及び長期学習歴群と対照群 の間に有意差が認められた(p<.01)が、短期学習歴群と長期学習歴群には有意差が見ら れなかった(p>.05)。換言すれば、日本語学習歴が上がっても日本語独特のメタファー的 概念体系の習得はほとんど進んでおらず、短期学習歴群も長期学習歴群もJ-MCが低いレ ベルに留まっている、ということになる。日本語学習者にとっては日本語独特のメタファ ー的概念体系の習得が非常に困難であることが示唆される。事実上、表10に示している3 群のJ-MDの平均値から見れば、母語話者である対照群の平均値は学習者である短期学習 歴群や長期学習歴群の約3、4倍にもなっている。この結果からは、J-MCの発達において 母語話者と学習者の間に大きな差が開いていることが分かる。

その一方で、上述の分析と少し重なるが、中国人日本語学習者のMC発達と学習歴の関 係をより直接的に見るため、短期学習歴群と長期学習歴群の日本語学習歴(10〜165ヶ月)、 及び彼らによる作文データのメタファー密度(MD、JC-MD、J-MD)をもとに相関分析 を行った。結果は次頁の表12のとおりである。見て分かるように、日本語学習歴とMD、

JC-MD、J-MD のいずれとも相関が弱かった。即ち、10 ヶ月以上の学習歴を持つ中国人

日本語学習者のMC、JC-MCとJ-MCはほとんど学習歴が長くなってもそれに応じて伸び ていかない、ということである。これは先述した多重比較の分析結果とほぼ一致している。

表12 日本語学習歴とメタファー密度のPearsonの相関係数

MD JC-MD J-MD

日本語学習歴 .357** .317* .242 注:* p<.05、** p<.01

以上見てきたように、中国人日本語学習者の JC-MC は普段の授業によって早い時期に 大いに向上するが、彼らのJ-MCは簡単には伸びない。また、J-MCの発達の停滞により 学習者の全体的な MC もあまり向上しなくなってしまう。今後の日本語教育においては、

学習者のJ-MCに関わる日本語独特のメタファー的概念体系の習得についてより多くの力 を注ぐ必要があるのではないかと考えられる。

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