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外国語学習者の MC 発達に関する研究

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第2章 先行研究及び本研究の課題

2.4 MC 研究

2.4.4 外国語学習者の MC 発達に関する研究

外国語教育におけるMCの重要性が高まるにしたがい、学習者のMC発達に関する考察 が年々増えている。その中で、特にMCの構成要素とCFの2つの視点からのものが盛ん である。前者はMCの主な構成要素であるメタファー表現識別力、メタファー表現理解力 やメタファー表現産出力などの一部または全部に注目し、テストを作成して学習者の MC 発達やMCとそれに関連する変数との相関関係などについて調べている。後者は主に産出

力に重点を置き、作文や発話の中のメタファー表現の使用頻度などについて分析しながら 学習者のMC発達を把握している。他には、数少ないが両方の視点からのものも存在する。

以下では、各視点からの研究について詳しく見ていく。

(1)MC の構成要素の視点からの考察

構成要素の視点からの考察として、まず Trosborg(1985)は、子供を研究対象とした

Gardner et al.(1974)の手法を参考に外国語学習者のMC発達について調べることを試

みた。具体的には、彼女は12の未完成のストーリー29を用いて新しいメタファー表現の産 出力と使用嗜好度を測るテストを作り、5つのグループに分かれている70名のデンマーク 人英語学習者と 28 名のカナダ人英語母語話者をそれぞれ実験群と対照群としてテストを 実施し、彼らのメタファー表現の産出力や使用嗜好度について考察した。その結果、全体 的な傾向としては、学習者のMCは言語能力と正の相関関係にあったが、英語母語話者が 学習者より新しいメタファー表現を愛用したり多く産出したりする傾向は、見られなかっ た。それゆえ、Trosborgは、MCという能力は新しいメタファー表現の産出力のみならず 慣習的なメタファー表現の産出力も含めるべきであると結論付けた。

次に、Johnson & Rosano(1993)は英語学習者30名と英語母語話者15名を対象に、

メタファー表現(“My shirt was a butterfly.”など)の主題と媒体の意味を口頭で説明させ るタスク、教師による語用能力の評価、立方体組み合わせテスト(block designs test)30及 び言語能力テスト(Woodcock Language Proficiency Battery test)を用いて彼らのメタ ファー表現理解、コミュニケーション能力、場依存的・場独立的(field dependence

/independence)31の認知スタイル及び言語能力の関係について分析した。結論としては、

主に次の3点がある。①母語話者は学習者より言語能力が高いが、両者にはメタファー表 現理解力とメタファー表現理解の流暢性の面においてあまり差がない。②学習者のメタフ

29 例えば、“Peter came sneeking into the room. It was clear that he had experienced something unusual. His voice was as quiet as. . .”など。

30 立方体組み合わせテストは、一定の制限時間内に、様々な色に塗り分けられた立方体を組み合わ せて、要求された模様を作る課題である。この研究では、被験者の分析力と場依存的・場独立的認 知スタイルを測るテストとして用いられている。

31 場独立的・場依存的はWitkinら(1977)が研究を積み重ねてきた認知スタイルの1種である。

場独立的・場依存的の測定に関しては、普通埋没図形テストを用いるが、Johnson & Rosano(1993)

は立方体組み合わせテストを用いて測定を行ったため、実験の妥当性には少し問題があると考えら れる。

ァー表現理解の流暢性とコミュニケーション能力の間に正の相関が認められる。③学習者 の場独立型スタイルはメタファー表現理解の流暢性とコミュニケーション能力のいずれと も負の相関関係にある。

Littlemore(2001a)は英語学習者のMC発達とコミュニケーション能力や認知スタイ

ルの関連性などについて調査した。具体的には、まず Gardner et al.(1974)、Pollio &

Smith(1979)及びJohnson & Rosano(1993)を参考に、①新しいメタファー表現の意

味を識別する能力と、新しいメタファー表現の意味を識別する速度を測るテスト、②新し いメタファー表現の理解流暢性を測るテスト、③新しいメタファー表現の産出力を測るテ ストから構成されるMCテストを作成した。そのうち、①と②のテストは英語とフランス 語の新しいメタファー表現(“A smile is a knife.”、“Le ciel est un ordinateur. ”など)が テスト項目であり32、①では被験者に各項目の表現がメタファー表現かどうかを判断させ、

②では与えられた各メタファー表現の意味について説明させる。また、③のテストは一定 の文脈がある、英語とフランス語の未完成の小段落からなり33、被験者にその続きをでき るだけ創造的に完成させる問題である。Littlemoreは出来上がったMCテストを用いてフ ランス人英語学習者(N=82)の MC を調べるとともに、インタビューや認知スタイルテ スト(Cognitive Styles Analysis)34で彼らのコミュニケーション能力と包括的・分析的 の認知スタイルも測定し、MCの各構成要素間の関連性及びMCとコミュニケーション能 力や認知スタイルの関連性などについて分析した。その結果、①全体的にMCの構成要素 間(新しいメタファー表現の産出力、メタファー表現理解の流暢性、メタファー的な意味 の識別力、メタファー的な意味を識別する速度)の相関性が強くないこと、②全体的に包 括的認知スタイルの学習者が分析的認知スタイルの学習者よりMCテストの得点が高いこ と、③MCの各構成要素とコミュニケーション能力の間にほとんど相関が見られないこと、

32 ①にはいくつかのナンセンスなメタファー表現が混ざっている。

33 例えば、“In Winter, the weather in Scotland is extremely cold. As soon as you go out of the house your face starts to feel . . . .”、“Pierre était dans la salle. Il était évident qu’il avait vu quelque chose d’effrayant. Il tremblait comme . . . .”などのテスト項目がある。

34 “Cognitive Styles Analysis”はコンピューターによる、包括的・分析的(holistic /analytic)の認 知スタイルを測定するテストである(Riding 1991)。包括的・分析的は場独立的・場依存的に似て いる認知スタイルの1種である。包括的認知プロセスはばらばらの情報を1つのゲシュタルトとみ なし、類似性と同一性を知覚するのに対し、分析的認知プロセスは独立性と相違性を重視する。

④MCと学習者の性別や外国語学習時間数の間に有意な相関がないことなどが明らかにさ れた。

その後、趙(2003)はLittlemore(2001a)のMCテストを参考に①新しいメタファー 表現の意味を識別する能力を測るテスト、②新しいメタファー表現の理解流暢性を測るテ スト、③新しいメタファー表現の産出力を測るテストを作成し、65名の中国人英語学習者

(学部3年生)のMCについて測定した。それと同時に、学習者のCET4 (College English

Test 4)35の成績を用いて言語能力と MCとの相関性について分析した。結果としては次

の2点を得た。①ほとんどの学習者のMCは低い。②MCと言語能力の間に正の相関があ る。

王謹(2006)も、Littlemore(2001a)のテストをもとにしたMCテストとTEM4(Test for English Majors 4)36の成績により 60名の中国人英語専攻3年生のMC発達、及び MCと言語能力の相関性について調査した。その結果、①学習者のMCは十分に高くなく、

向上する余地があること、②MCと言語能力全体、及びMCと作文力、書き取り能力、文 法・語彙力、文章読解力の間に正の相関があるが、MC と聴解力や穴埋め読解力の間に有 意な相関が見られないことなどが解明された。

更に、Azuma(2005)と東(2006)は直接的にMCの発達における考察ではないが、

日本人英語学習者の比喩能力(メタファー表現とメトニミー表現の両方を理解し運用する 能力)の発達及びそれと言語能力の相関性について考察した。比喩能力の測定にあたって は、①パッセージに組み込まれたテスト項目(“Wake not a sleeping lion”、“to hold one’s head high”など)の意味が理解できるかどうかを調べるための比喩表現理解テストに加え、

②パッセージを作成しその中にテスト項目としてのターゲット表現(“The bird has flown

away”、“to keep one’s head down”など)を埋め込むテストと、③概念メタファー(A IS B)

の文型を用い比喩的な意味を持つ形容詞(“bright”、“high”など)を文中に埋め込むテスト

(A is an adjective B test)の2つの比喩表現運用テストを使った。言語能力の測定には、

Schmitt et al.(2001)による語彙レベルテストと自作の多義語テストを利用した。研究結

果としては、主に次のことが分かった。①メトニミー表現はメタファー表現より理解度、

35 CET4は中国で行われている英語専攻ではない大学生の英語能力を測る統一試験の4級のことで

ある。中国の多くの大学では、CET4の合格が非英語専攻の卒業要件となっている。また、CET に はCET4と CET6の2種類があり、CET6はCET4よりレベルが高い。

36 TEM4は中国で行われている英語専攻生の英語能力を測る統一試験の 4 級のことである。TEM

にはTEM 4とTEM 8の2種類があり、TEM 8はTEM 4よりレベルが高い。

運用度ともに高い。②全体的には学習者の比喩表現理解力は比喩表現運用力より高い。③ 学習者の比喩表現理解力と比喩表現運用力は語彙力と多義語力と高~中程度の正の相関関 係にある。④3 つの比喩能力テストの間に正の相関が認められ、比喩表現理解力と比喩表 現運用力に一定の関連性がある。

他には、姜(2006)は英語レベルの高い大学院1年生47名(高レベル群)と比較的英 語レベルの低い英語専攻2年生71名(低レベル群)を実験群に、学部2、3年生の英語母 語話者(N=36)を統制群に、メタファー的な語彙とそうでない語彙の産出率を測るオリ ジナルなMCテストにより両群のMCを測定した。結果として、高レベル群の学習者は低 レベル群よりMCが高いが、両方ともMCの発達が限られているという結論に至った。

丁(2007)は、75 名の非英語専攻の中国人英語学習者、57名の英語専攻生及び 41名 の英語を母語とする留学生を研究対象に、メタファー表現の理解力と産出力を測るMCテ ストを用いて彼らの MC発達に関して調査した。その結果、次の3点が明らかになった。

①学習者と母語話者のMCには一定の開きがある。②非英語専攻生と英語専攻生のいずれ もメタファー表現の理解力と産出力が不十分であるが、理解力のほうが産出力より少し高 い。③全体的には、英語専攻生は非英語専攻生よりMCが発達している。

(2)CF の視点からの考察

CFの視点からの考察はDanesi(1992)に始まった。彼は2つの実験を報告している。

1つ目の実験では、イタリア語学習者12名と対照群としてのイタリア語母語話者12名を 対象に、選択肢問題、翻訳や口頭説明を通して両グループが目標言語にあるメタファー表 現を理解できるかどうかについて考察した。その結果、学習者のほうはメタファー表現の 翻訳において大きな困難を感じていることなどが分かった。2つ目の実験では、学部3年 生以上のスペイン語学習者25名と対照群としてのスペイン語母語話者25名を対象に、両 グループにスペイン語で提示された3つのテーマのいずれかに基づいて作文を書かせ、提 供された作文のメタファー密度(Metaphorical Density、以降 MD)を計算し学習者の MC発達について調査した(ここで言うMDとは、メタファー表現を含めた文の数を総文 数で割って 100を掛けて得た値を指す)。結果としては、スペイン語学習者は 3、4年間 の勉強を経ても、母語話者に比べてまだあまり目標言語の概念体系を習得しておらず、目 標言語の産出の際に母語の概念体系に大いに依存しているという結論が得られた。

次に、Russo(1997)は、イタリア語母語話者と比べながら、イタリア語学習者が産出 した作文と会話のMDを分析し彼らのMC発達について考察した。それと同時に、適切な

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