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Isabelli & Nishida (2005)

ドキュメント内 ポルトガル語の接続法とその習得 (ページ 121-124)

第 3 章 第二言語接続法習得研究

3.1.2. 第二言語接続法習得研究

3.1.2.5. Isabelli & Nishida (2005)

当為判断表現 (願望表現) (表18中の13, 20) では非文を文法的であると評価する点数が 上級生で最も小さくなる。一方で真偽判断表現 (表18中の38) や感情表現 (表18中の29)46 では1年生で最も評価点が低いものの、2年生以降で文法的と判断する点数が高くなってお り、特に真偽判断表現では3年生において最も高くなっている。このことからも、Sanzは 中級学習者においてL1知識へ依存による後退が起こっていることが示唆されていると考察 している。

さらにSanz (2003b) では2年生と3年生を対象に自発的産出タスクを用いて追調査して いる。2年生には日本の昔話についての説明作文、3年生には個人的関心についてのエッセ イが課せられ、さらに絵や動画を見せて即時に状況を描写させるリアクションタスクも両 学年を対象に行われている。接続法産出はリアクションタスクにおいてわずかに報告され ている。

学期目を修了した16名の2グループからなる。SA環境、SH環境の被験者ともに、英語以 外の言語を母語とする者、家庭でスペイン語を話す者、既にスペイン語圏への留学を経験 している者は除外されている。

データ収集は10の題目を用いた自由形式の口述インタビューによって行われる。SA環 境の被験者のデータは滞在0か月、4か月、9か月の時点で、SH環境の学習者はそれぞれ 学期の終わりにインタビューが実施されている。なお、インタビューは接続法を産出させ るために特化されたものではない。また、全体のデータサイズ及びサブデータのサイズは 公表されていない。

分析の結果 (下表 19表 19)、SA環境の学生は滞在0か月から4カ月の間に飛躍的に接 続法を習得した。接続法要求表現の産出が全体で28例から56例へと倍増し、接続法産出 数も5例から21例と飛躍的に向上した。特に時間の副詞節における産出がともに激増して いる。また、4か月から9カ月の間も接続法使用、接続法要求表現産出ともに全体的になだ らかに向上を続けた。なお、Isabelli & Nishidaは被験者の接続法使用のうち、時制の誤り や形態の誤りも「接続法使用例」として含めている。接続法を使用した被験者数も、SA環 境での滞在月数が進むにつれて高くなっている。滞在0か月から4か月にかけて25%以上 の、また滞在4か月から9カ月にかけても18%増加している。

表 19 Isabelli & Nishida (2005) よりSA環境の学習者の接続法産出結果 (p.83, table.1, 和訳は本論筆者による)

接続法要求表現の産出 接続法使用 接続法使用率

0か月 4か月 9か月 0か月 4か月 9か月 0か月 4か月 9か月

名詞節 12 13 12 4 6 8 33% 46% 67%

副詞節 15 41 53 1 14 26 7% 34% 49%

形容詞節 1 2 4 0 1 0 0% 50% 0%

合計 28 56 69 5 21 34 19% 38% 49%

接続法が使用された構造は副詞節が圧倒的に多かったが、接続法が使用された文脈の種 類は名詞節に多かった (表 20)。

表 20 Isabelli & Nishida (2005) よりSA環境学習者の接続法産出被験者数と比率 (p.86,

table.8, 和訳は本論筆者による)

接 続 法 要 求 表 現 を 産 出 し た 被 験 者数

接 続 法 を 使 用 し た被験者数

接 続 法 使 用 被 験 者数比率

全体の被験者に 占める接続法使 用被験者比率*

0か月 14 3 21% 10%

4か月 22 11 50% 37%

9か月 21 16 76% 55%

*本論筆者による算出

また、意味的側面から考察すると、名詞節表現では quiero que (I want to) や es importante que (it is important that) などの当為判断表現とno creo que (I don’t believe that) やes possible que (it is possible that) などの真偽判断表現の産出に大きな差はない が、副詞節表現では時間表現や条件表現など真偽判断モダリティに分類される領域が目的 表現や譲歩表現と比較して圧倒的に多くなっている (表 21)。なお、関係詞節 (形容詞節) に おける接続法産出は確認できなかった。

表 21 Isabelli & Nishida (2005) よりSA環境学習者の文脈別接続法産出 (p.86, table.2-7 より本論筆者によるまとめ)

学習0か月 学習4か月 学習9か月 名詞節 英訳 要求表現 接続法使用 要求表現 接続法使用 要求表現 接続法使用

quiero que I want that 2 1 4 1 4 3

es posible que It is possible that 2 0 3 1 1 1

espero que I hope that 2 0

recomiendo que I recommend that 1 1

no creo que I do not think that 1 1 5 3 1 1

requiere que I require that 1 0

es difícil que It is difficult that 1 0

el mejor es que It is better that 1 0

es bueno que It is good that 1 1

diciendo que Saying that 1 1

para decirles que To say that 1 1

lo importante es que

The most important is that

1 0

no estoy segura que It is not sure that 1 0

no importa que

It does not matter that

2 1

siento que I am sorry that 1 1

副詞節 英訳

hasta que till 7 1 18 5 21 10

cuando when 6 0 15 4 20 7

si if 1 0 7 5 8 7

antes de que before 1 0 1 0

para que in order to 1 0 1 1

aunque although 1 1

合計 27 5 54 20 64 34

また、SH被験者集団の接続法産出はわずかに1例 (接続法要求表現産出12例) であり、

SA環境での学習者の接続法使用、接続法要求表現産出、接続法使用者数のそれぞれが圧倒 的に多いことがわかった。ただし、推測統計を用いた分析は特に行われていない。

ドキュメント内 ポルトガル語の接続法とその習得 (ページ 121-124)