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§ 6.1 熱力学第二法則とエントロピー

ドキュメント内 1.5.1 SI kg, m, s ,, (ページ 107-112)

困難である

.

しかしながら

,

数式表現だけならば

,

第一法則の延長線上であって

,

他 の物理学に比べても容易といってよい

.

その意味で

,

まずはエントロピーの数式表 現に慣れることに主眼をおく

563.

熱力学第二法則を出発点とするならば, エントロピーに辿り着くまでの道のり は, はるか遠く険しい. 事実, 類書に見られるそのような記述は, 熱力学の多数の初 学者を途中で脱落させてきた

.

だからといって

,

逆に

,

エントロピーの定義だけを 天下りに示すことも

,

あまりに味気ないだろう

.

そこで

,

本資料では

,

その中間をとる

.

以下の問題提起から出発しよう

.

§ 6.2 不完全微分の削除 —— 完全微分から見出されるエントロピー

準静的過程に対する熱力学第一法則

dQ

|{z}

不満!!

= dU+pdV|{z}

準静的

(6.1)

を改めて眺めると

,

強い不満を感じる

.

それは

,

非状態量である熱が不完全微分を 用いて

dQ

と表現されていることにある

.

右辺が完全微分で表現されているのに, 一体なぜ, 左辺にだけ不完全微分を含 むのだろうか. この奇妙なダッシュを削除することは叶わないだろうか.

実は

,

この要求は

,

いとも簡単に満たされる

.

そこで自然と現れる

,

熱力学を 象徴する新たな状態量こそがエントロピーに他ならない

.

§ 6.2.1

割り算と変数分離形への着目

あくまで簡単のため

,

理想気体を考える

.

内部エネルギー

dU

は一般市民の関 知するところではないので

,

老若男女誰でもわかるように

,

dU =mcVdT (6.2)

と温度

dT

を用いて書き換えてあげよう

.

続いて

,

理想気体の状態方程式

(3.7)

より

p= mRT

V (6.3)

563[もちろん]エントロピーの数学“だけ”に満足することは, 決して, 物理学の一分野である熱力

学の目的ではないし, 熱力学を利用する立場にあるわれわれの目的でもないことを強調してお きたい.

である

. (6.2)(6.3)

(6.1)

に代入すると

,

次式をうる

: dQ=mcVdT +mRTdV

V (6.4)

どこかしら

,

右辺が変数分離形の微分方程式に似ている気配を感じないだろう か

.

そのとおりである

.

両辺を

T

で割ればよい

——

これに気付くためには

,

さほ どの時間はかからない. しかしながら, 少しの工夫と注意が必要である

564.

絶対温 度は

T ̸= 0

ゆえに, 躊躇なく, (6.4) の両辺を

T

で割ることが可能であって

565,

dQ

T =mcV dT

T +mRdV

V (6.7)

をうる

.

右辺の定積分は容易い

.

熱平衡状態

1

から

2

までで定積分しよう

: mcV lnT2

T1 +mRV2

V1 (6.8)

§ 6.2.2

エントロピーの定義

ここで

, (6.7)

の左辺はわけがわからないと感じることが重要である

.

なぜか

.

(6.7)

の右辺が定積分できたのだから

,

右辺と等号で結ばれている左辺も

,

奇妙

なことに, 定積分可能とみなさざるを得ない. いいかえれば, 左辺は何らかの状態 量の微分とみなさざるを得ない. すなわち, d

を含んでいながら, 完全微分

d

で表 現されねばならないのである

.

ゆえに

dQ

T (6.9)

564[重要注意] (6.4)右辺第2項が積分可能だと思ったら,大間違いである. 積分可能なわけがない.

T

VdV (6.5)

をいかに積分するというのか. TV にどのように依存するのかがわからないではないか. は たまた, dV とdT2重積分でもなく,積分可能なはずがないではないか. 理想気体の場合を 考えているので,仮に,理想気体の状態方程式T =pV /(mR)を代入したとしても,

T VdV =

pV mR

dV V = 1

mR

pdV =? (6.6)

と元に戻ってしまった. ここで,p=mRT /V を代入しても,やはり元に戻り,堂々巡りとなる. [注意]以上の計算は軽視すべきでない. 打つ手なしの状況ではあるが, 式変形に誤りはないの で,この式変形のフォローを強くすすめる.

565[絶対温度の恩恵——T >0] T ̸= 0の恩恵の一つがここにあることを強調しておきたい. しか

しながら,最大の恩恵は,のちに現れる不可逆過程を記述する不等式の議論で現れる.

103 c 2017 Tetsuya Kanagawa

,

ある状態量の微分でかけねばならない

566.

そのような状態量を

,

ひとまず

S

と書こう

. S

の意味するところは未だ不明 ではあるものの, 次元が

[J/K]

であることを知ることは容易い. 実は, この

S

こ そが, エントロピーに他ならない. そして, エントロピーの定義は, 熱力学第二法則 の数式表現の一つでもある

567568:

エントロピー

S

の定義

dS dQ

T (6.12)

この定義は理想気体に限らない

.

理想気体を議論の出発点としたが

,

一般に

, dS = dQ/T

とおくことには何の問題もないからである

569.

したがって, 以下の 議論も, 理想気体に制限されるものではない. 要点をまとめておこう:

(i)

不完全微分

d

とは

,

積分できないことを意味する

.

(ii)

第一法則は

d

を含むので

,

何かの工夫なしには積分できない

.

(iii)

第一法則を絶対温度

T

で割る

——

この魔法のような操作から

,

第一法則が

積分可能となり

,

同時に

,

エントロピーが自然と定義される

.

(iv)

微積分できない熱そのままよりも, 微積分可能なエントロピーに変換した方

566奇妙と感じることは百も承知だが,熱力学第一法則がそう物語っているのだから,仕方がない.

567[正確には] この定義式(6.12)は「可逆過程」という過程に限定される. その意味で「“可逆過

程”におけるエントロピー」なる呼び方が正しい. しかしながら,まだ可逆過程を導入していな いため, 当面は「可逆」を強調しない.

[先取り] (i)可逆過程とは,一言でいえば,逆行可能な(元通りに戻すことができる)過程である.

準静的過程と類似する部分があるが,同値ではないので同一視してはならない. (ii)可逆過程の

対義語の“不”可逆過程においては,エントロピーSは,等式ではなく,“不”等式で表現される:

dS > dQ

T (6.10)

568[注意]以下のような致命的な誤記が見受けられる:

dS =dQ

dT (6.11)

なぜ誤りか. 左辺は微小量(微分)で,右辺は有限量(微分“係数”)である. 微小量と有限量が等 号で結ばれることはありえない. [ついでながら]右辺は(厳密な意味での)微分係数ですらない.

569S が状態量であること,すなわち,完全微分記号dを用いて表現できることは,「理想気体の仮 定のもとで判明したではないか」という反論があるかもしれない. しかしながら, 本資料では,

「エントロピーが状態量であることは理想気体に限定されない」と天下りに認めて,当面の議論 を進める.

,

少なくとも数学的には扱いやすい

570.

§ 6.2.3

エントロピーの

変化

”∆S

有限量では

,

エントロピーの表現はどうなるだろうか

.

定義式

(6.12)

を定積分 すれば

2

1

dQ

T =

2

1

dS = [S]21 =S2−S1 =∆S (6.13)

をうる

. ∆S

,

エントロピーの変化という

571.

エントロピーを論ずる際には

, S1

S2

といった各状態における量そのもの よりも

,

変化

量を求めることが多い

.

§ 6.2.4

エントロピー

(specific entropy)

エントロピーの次元

[J/K]

を見れば

,

エントロピーが示量変数であることに 気づく

.

すると

,

単位質量あたりのエントロピー

——

すなわち比エントロピー

s

を定義することができる

572:

s S

m [J/(kg·K)] (6.14)

570あくまで数学的にはである. 物理学としては,工学としてはどうだろうか. 工業現場ともな れば,熱の方がわかってもらえやすいのではなかろうか. 日常会話「熱がある」のように, “ は幼稚園児でも知っているが,一般市民はエントロピーの存在など知るはずもないからであ る. このような答えのない問を考えることは非常に重要である.

571[重要(基礎)]エントロピー変化∆Sは,一目瞭然の有限量(finite value)である. なぜならば,被

積分関数の微小dQ/T有限の区間で積分しているからである. [例]微小量dxを,有限の区間1x3で定積分した結果は,

3 1

dx= 2という有限量となる.

572エントロピーの次元は熱容量と同じで,比エントロピーの次元は比熱や気体定数と同じである ことに注目しよう.

105 c 2017 Tetsuya Kanagawa

§ 6.2.5

等温過程と断熱過程のエントロピー変化

エントロピー変化

(6.13)

について

, 2

つの特殊な例を考えよう

573. (i)

等温過程

,

すなわち温度が一定値

T0

ならば

, T0

が積分記号の外に出て

∆S =

2

1

dQ T0 = 1

T0

2

1

dQ= Q12

T0 (6.15)

と書ける. したがって, 系への入熱

Q12

と温度

T0

がわかれば, エントロピー 変化

∆S

を求めることができる

574.

(ii)

断熱過程ならば

575, dQ= 0

であるがゆえに

, dS = 0

がしたがう

.

すなわち

,

エントロピーは一定である

†576:

∆S = 0 ⇐⇒ S1 =S2 = const. (6.16)

これは重要である

.

定圧ならば

p

一定

,

定容ならば

V

一定

,

等温ならば

T

——

これら

3

つに並列して

,

断熱ならば

S

一定と明示できる状態量が導

入できたからである

.

ドキュメント内 1.5.1 SI kg, m, s ,, (ページ 107-112)