§ 7.3 Carnot サイクル
問題 45. Carnot サイクルの p–V 線図および T –S 線図を描け † 636
4) 断熱圧縮過程 4 → 1—— 断熱膨張ゆえに, やはり, 放熱はゼロである:
Q4→1 = 0 (7.33)
問題
50.断熱圧縮過程
4→1において
,内部エネルギー変化とされる仕事を求 めよ. それらの正負を数式だけを根拠に判定せよ.
[略解]
放熱がゼロであることに注意して, 有限量で第一法則を立てる:
∆4→1U(=U1−U4) = −W4→1 (7.34)
†667[重要!!]さらにいうと,κ−1>0, 1−TL/TH >0,m >0,R >0 の全てが根拠として必要で ある. とにかく,細部の細部まで確認を怠ってはならない. 相当数の者が,これらの記載なしに, 試験において失点している. 正負の判定は,一切の感情や感覚を捨てて,機械的に行うべきもの である.
[同時に・・・]直感的あるいは感覚的理解も重要といえる. なぜなら,機械的に判断した正負の検
算になるからである. 膨張時には仕事をすること,すなわち,仕事が正であることに違和感を感 じないか. 丁寧に確かめよ.
†668[重要]この計算で安易に満足せず,内部エネルギーが減少した, 温度が低下したというところま でを,踏み込んで理解しておくべきである.
†669符号も含めて,入熱とする仕事とみなしてもよい. 符号が相殺される.
†670したがって,QL>0,W3→4<0,Q3→4<0 などがわかる.
“
する
”仕事
W4→1の積分計算を行うと
,次式をうる
: W4→1 = mRTLκ−1 (
1− TH TL
)
<0 (7.35)
する仕事は負値であるから
†671,便宜上
,改めて
“される
”仕事を
^W4→1 ≡ −W4→1とおくと
W^4→1 = mRTL κ−1
(TH TL −1
)
>0 (7.36)
となり
,正の
“される
”仕事をなすことがわかる
.さらに
,第一法則より
,^W4→1 =∆4→1 =U1−U4 >0 =⇒ U4 < U1 (7.37)
したがって
,される仕事が正で
,内部エネルギーは
“増加
”し
†672,される仕事と 内部エネルギーの増加量は等しい
.問題
51. p–V線図を利用して得られた以上の情報から
, Carnotサイクルの熱効率
ηを求めよ
. T–S線図から求めた熱効率
(7.15)との一致を示せ
.[解]
求めた入熱
QLと放熱
QHを, 任意のサイクルに対して成立する
(7.7)に代入 する
†673.放熱を正値
(QL>0)と定義した点に注意すると
η = 1− QL
QH = 1− mRTLln(V3/V4)
mRTHln(V2/V1) = 1− TLln(V3/V4) THln(V2/V1)
| {z }
ここの処理に尽きる
(7.38)
いかにも題意を満たしそうな予感がする. 残された課題は, 容積比が
†674V3 V4 = V2
V1 (7.39)
を満たすか否かを確かめることに尽きる
.基本に立ち戻って
†675,過程
2→3および過程
4→1が断熱過程であることを思い
†671根拠を数式だけから述べよ(題意).
†672仕事をされて気体が圧縮されるのだから,気体は高温になり,内部エネルギーが増加するという イメージが対応する.
†673本当に任意であったか. 余計な仮定を持ち込んではいなかったか. これらを1つ1つ注意深く 確かめよ.
†674とくに内燃機関工学の分野においては,圧縮比あるいは膨張比ということがある.
†675[指針]このようなときには,各過程に対する状態方程式をまず書き下し,それを基に検討すると
127 ⃝c 2017 Tetsuya Kanagawa
返す
.両断熱過程においては
,理想気体の
Poissonの状態方程式
(5.26)が成立した
:T Vκ−1 = const. (5.26)
これを
,実際に両過程に適用する
:T2V2κ−1 =T3V3κ−1 (
断熱膨張
2→3) (7.40) T4V4κ−1 =T1V1κ−1 (断熱圧縮
4→1) (7.41)温度の添え字を
, T1 =T2 =THおよび
T3 =T4 =TLとおき直す
:THV2κ−1 =TLV3κ−1 (7.42) TLV4κ−1 =THV1κ−1 (7.43)
両式を組み合わせ, 除算によって,
(V2 V1
)κ−1
= (V3
V4 )κ−1
=⇒ V2 V1 = V3
V4 (7.44)
がわかる
.これを
(7.38)に代入すれば
,題意をうる
: η= 1− TLln(V3/V4)THln(V2/V1) = 1− TLln(V2/V1)
THln(V2/V1) = 1− TL
TH (7.15)
問題
52. “サイクル全体”における内部エネルギーの“変化”がゼロであること
†676†677,すなわち,
∆1→2→3→4→1U =∆1→2U+∆2→3U +∆3→4U +∆4→1U|{z}= 0
題意
(7.45)
となることを
,計算によって示せ
†678.いう戦法が有効であったことを思い返そう.
†676[誤答]決して, “過程1→2”ではゼロにならないし,微小過程においてdU = 0となることもあり えない. あくまで,サイクル全体——すなわち1周すれば元通りに戻るという主張なのである.
†677[厳重注意]これまでの答案で,内部エネルギーがゼロになる—— U = 0などといったありえな い誤答が目につく. 絶対零度を除いて,内部エネルギーがゼロになることはありえない(熱力学 II).内部エネルギーがゼロになるならば,系は存在しえない. ただし,内部エネルギー“変化”が ゼロになることはある(理想気体の準静的な等温過程).
†678[記号]これを微分記号と積分記号を用いて書くこともできる(次節):
I
dU = 0.