問題
23.理想気体の準静的過程の第一法則から出発して
†449, (4.21)を導け
†450.問題
24. (4.21)の結果に頼ることなく
†451,定圧比熱と定容比熱の差をとって
,cP −cV =R (4.22)
を導け
.本資料では
,これを 「比熱差の式」とよぶ
†452.等号で結ばれているが
,cP, cV, Rは
,本当に同じ次元なのかを常に確認すべきである
†453.[
意図
]導出過程を振り返れば
,これも
,第一法則に他ならないことに気づく
(本当 か. 確かめよ)
†454.§ 4.4 比熱比 κ
比熱比
(ratio of specific heats†455) κとは
†456,定圧比熱
cPを定容比熱
cVで 割ったものであり
,つぎのように定義される
(定義ゆえに要記憶
):κ≡ cP cV
(4.23)
ついでながら
,熱容量
C [J/K]と比熱
c [J/(kg·K)]の間には
, C =mcなる関係が あったのだから
, κ≡CP/CVと考えてもよい
.ここまでは
,単なる定義ゆえに
,理想気体に限らない
.†449[指針] (4.21)だけを“なんとなく”眺めていると, 熱力学第一法則とは無関係に思えるかもしれ
ない. もしもそう感じてしまった者は, 良い機会であるので, もう一度, 出発点に立ち戻るべき である. 繰り返すが, 第一法則を出発点として考えれば後は枝葉にすぎない. このように,頭の
中に“構造型”の理解を伴った知識を構築できているかを,自己点検することをすすめる.
†450[復習]現時点で,準静的過程の微小仕事d′W =pdV の導出過程を頭の中で再現できない者,紙 に書き下せない者は,この機会にぜひ再導出してみよ. 逆に,これを当たり前のものとして理解 できているレベルの者は,次のステップとして,この表式を使いこなすことに専念すべきである.
†451(4.21)の両辺を質量mで割っても,題意が導かれるが,それでは練習問題の体をなさない.
†452[用語] Mayer (マイヤー)の式とよばれることもあるが(熱力学II),そこまでは頻用されない. お
そらくは,「比熱の差は気体定数」なる意味の簡潔さゆえに,用語を作るまでもないからではな
かろうか(推測にすぎない). いずれにせよ,式を見て意味が説明できれば,それでよい.
†453[注意]質量mの有無に十分に注意せよ. このような地道な作業を軽視する者は,左辺と右辺が 等号で結ばれているにもかかわらず次元が一致しないというありえない答案を提出する.
†454[重要]高校物理においては(おそらく)第一法則とは無関係な公式として暗記していたであろう 式に,第一法則すなわち保存則という物理的意味を持ち込むことに成功したのである.
†455[英語]比熱が複数個(定圧比熱と定容比熱)なので, heat“s”である.
†456[余談]流体力学では,カッパ(kappa)ではなくガンマ(gamma)の小文字γを用いることが多い (金川の専門は流体力学である).
79 ⃝c 2017 Tetsuya Kanagawa
§ 4.4.1
理想気体の比熱比
理想気体の比熱差の式
(4.22)を眺める
. Rも
cPも
cVも
,全て正値だから
, cP =cV +R =⇒ cP > cV (4.24)がわかる. したがって, 理想気体の比熱比は, 気体の種類によらず常に
1より大きい:
κ≡ cP
cV = cV +R
cV = 1 + R
cV >1 (4.25)
さて
, (4.22)は第一法則に基礎をおくものであった
.その意味で
, (4.22)を根拠と
する式
(4.25)をも, 第一法則の一部と言及することすら可能だろう
†457.問題
25. κ >1の根拠, すなわち
(4.25)の不等号の成立の根拠を説明せよ.
§ 4.4.2
理想気体の比熱を計算する式
理想気体の比熱差の式
(4.22)に
,比熱比の定義
cP =κcVを代入すると
, κcV −cV =cV(κ−1) = R (4.26)をうる
.ここから
,速やかに
,理想気体の比熱を与える式が導かれる
†458†459:cV = R
κ−1, cP =κcV = κR
κ−1 (4.28)
比熱比の値は
, (理想
)気体の種類に依存する
. “気体の物性値表
”や
Wikipediaをみれば, われわれが日頃接するレベルの理想気体に対する, 比熱比
κと質量ベー ス気体定数
Rの値が検索可能である
†460.それらを
(4.28)に代入すれば, 知りたい 理想気体の定圧比熱
cPと定容比熱
cVの値を自由自在に計算することができる
.†457[重要]奇妙かつ驚くべき事実だろう. もはや,内部エネルギーも熱も仕事も跡形すらないのに, 第一法則が引き合いに出されるのである. これほどまでに, 全てが第一法則と密接に関係づけ られるのである. これが,しつこいまでに,第一法則と連呼してきた理由である.
†458[指針]計算問題を解く際に多用する. あっという間に導けるので, 覚える必要はない. しかし, 比較的簡潔な表式であるので,保険の意味で記憶しておいてもよいだろう.
†459[熱容量] (4.28)の両辺に質量mをかけると,熱容量を与える式をうる:
CV = mR
κ−1, CP = mκR
κ−1 (4.27)
†460[指針]たとえ,質量ベース気体定数 Rの値が不明な状況下におかれても,分子量M とモルベー ス気体定数 R0 の値が不明であることはありえないので, (3.18)すなわちR =R0/M を介し
しかしながら
,いま自身が考えている系の質量
mは
,物性値表に載っているは ずもなく
†461,測ることも容易とはいえない
†462.その意味で
,単位質量あたりで考 えるべく
,熱容量よりも比熱
(“比
”熱容量
)の方が
(すなわち
(4.27)よりも
(4.28)の方が) 良く使われる
†463.問題
26. (4.28)を導け. 比熱差の式
(4.22)を既知としてよい
†464.§ 4.4.3