§ 2.8.1
サイクルにおける状態量
1
周すれば元に戻るのだから
,始点と終点の間で
,状態量の変化はゼロである
.いいかえれば
,サイクルならば始点の状態量と終点の状態量は等しい
†321.§ 2.8.2
第一種永久機関
自動車のエンジン
(系
)が
,燃料
(入熱
)なしに永久に動き続ける
(仕事
†322をす る
)とすれば
,われわれがすべきことなど何もないだろう
.このような熱機関を
,第 一種永久機関
(perpetual motion machine of the first kind)とよぶ
†323.第一種永久機関は
,残念ながら理想に過ぎない
.これを直観的に理解するので はなく, 論理的に証明しよう
†324.道具はむろん第一法則
(2.8)以外にありえない.
問題
9.第一種永久機関が存在しないことを
,第一法則を
(数式を
)用いて証明せよ
.[
証明
] (i)外界からの入熱はゼロである
. (ii)サイクルゆえに
,状態量である内部エ
ネルギーの変化はゼロである
. (iii)熱力学第一法則
(2.8)から
,仕事を考察すると
,W = 0
あるいは
d′W = 0 (2.41)をうる
.ここで
(i)と
(ii)を使った
. [結論
]仕事は一切取り出すことができない
†325.外界からの熱の供給なしに
,仕事を得ることができて
,系は永久に動き続け
,われ
われが何も不自由しない
——それは理想にすぎないことを
, (2.41)が教えてくれた
.メージすることで深い理解を目指そう
†326.計算問題を解く際の注意すべき点
•
大原則は
,必ず
,熱力学第一法則を出発点とすることにある
.•
等号で結ぶ際には
,左辺と右辺の次元が等しいかにつねに気を配る
.さら に
,左辺と右辺がともに状態量か否か
,ともに微小量か否かの検討も重要 である
.•
式変形の最中に数値を代入すると, つまらない計算ミスによって水の泡 となるので
,厳禁である
.数値を代入するのは一番最後である
.式変形を 終えて
,各記号に数値を代入し
,単位をも確認するのである
.• J
や
Kなどのイメージしづらい単位は
, kgや
C◦などに換算して日常生 活と対応づけよう
.これによって
,計算ミスは大幅に防ぐことができる
.•
必要な公式は
,すべて導いてから用いよ
.むしろ
,公式を導きながら
,あ るいは導出過程を振り返りながら, 数値を代入することが望ましい.
問題
10.温度が一定の過程
†327において
,圧力
pと容積
Vのあいだに
,pV = const. (2.42)
が成立し, かつ, 内部エネルギー
Uに対して,
U = const. (2.43)
も成立する気体を考える
†328.熱平衡状態
1において
,圧力が
p1,容積が
V1であっ た気体を, 圧力が
p2になるまで準静的に圧縮すると, 気体は熱平衡状態
2に至った.
1)
熱平衡状態
2における気体の容積を求めよ
.問題文中の記号だけで表現せよ
. 2) p1と
p2の大小関係を不等式で表現せよ
.根拠も述べよ
.†326圧力も容積も温度もわれわれに身近な存在であるので, 日常生活の感覚と物理を対応づける意 味で,計算問題にも価値はある. しかしながら,イメージしにくい内部エネルギーは例外といえ る. このように, 熱力学の計算問題は,理解が深まる場合と,単なる電卓の叩き方の練習に終止 する場合に二極化されるので,注意を要する(闇雲に多数の演習に取り組むことはすすめない).
†327[用語]等温過程(isothermal process)とよぶ(§5).
†328[補足]このような気体を理想気体といい, (2.42)をBoyleの法則(§3で詳述), (2.43)をJouleの 法則とよぶ(熱力学IIで詳述). いま覚えなくともよい.
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3)
式
(2.42)右辺の定数を
,p1と
V1を用いて決定せよ
.4)
過程
1→2において
,外界から気体に「された」仕事を求めよ
.5)
圧縮に伴い, 外界と気体のあいだで熱の交換がなされた. 熱は, 外界から気体, 気体から外界
,どちらへ移ったか
.その量も含めて答えよ
.6) p1 = 1 atm†329, V1 = 1ℓ†330, p2 = 3 atm
のとき, 4) と
5)の数値を計算せよ. 単 位は
Jで答えよ. なお, 1 atm = 101325 Pa, 1
ℓ = 10−3m3, ln 3 = 1.1とする
†331.問題
11.大気圧下
†332 p0 [Pa]において
,質量
m [kg]†333,比容積
v1[m3/kg]の水に
, Q1→2 [J]の熱を加えて準静的に膨張させた. すると, 水の全てが水蒸気
†334に変わっ た
†335.変化前
(水)を熱平衡状態
1,変化後
(水蒸気)を熱平衡状態
2とする
†336. 1)水の容積を, 比容積と質量を用いて表現せよ.
2)
本問に限らず
,一般に
,内部エネルギー
Uの微小変化が
,dU = d′Q−mpdv (2.44)
で与えられることを示せ
(mは定数とする
).第一法則に忠実に考えればよい
. 3)本問では, 内部エネルギーの増加量
∆Uが, 次式で与えられることを示せ.
∆U =Q1→2−mp∆v (2.45)
†329[補足] 1気圧のことを1 atmといい, 101325 Paに等しい(一般常識に属する数値ではあるが,暗
記しなくともよい. それよりも,この数値を知らずとも解答できることを確かめよ).
†330[基礎] 1ℓ= 1000 cm3 は一般常識といえるが,覚えなくても試験では困らない. 将来的に恥をか
くかもしれないが.
†331[重要]本資料では,記号lnはNapier数eを底とする自然対数,記号logは10を底とする常用 対数とする. 数学とは異なり,物理学においては, 記号 ln と log の定義と使い分けが, 書物や 科目によって異なることが多い. しかし,単に,底が何かをその都度確かめればよいだけである.
†332[重要]これを“定圧過程”と訳することが最重要である. 難しいのは, このような解釈だけであ
るといってよい(試験においては注釈を与える). 事実,大気圧にさらされているならば,それは 定圧に他ならない.
†333[重要] SI単位系では, gではなくkgを当たり前のように使うことに注意を要する. 念のため,本
問では単位を付すが,以後,省略するので自身で補完されたい.
†334[補足]この水を飽和水,蒸気を飽和蒸気とよぶことがある(熱力学II).
†335[発展]むろん,理想気体(§3)とは限らないことに注意せよ.
†336[指針]慣れるうちに, 諸君が,状態に番号を付ける作業を補完してほしい(今回は出題者側が与 えた). それによって,解答の方針を格段に定めやすくなる.
4) ∆U
がわかれば
,エンタルピーの増加量
∆Hを知ることもできる
.実際に
,∆Hを与える次式を導け
†337†338:∆H =∆U+mp∆v (2.46)
5) Q1→2 = 2257 kJ,m= 1 kg,p0 = 0.1013 MPa,v1 = 0.001 m3/kg,v2 = 1.673 m3/kg
であるとき,
∆Uおよび
∆Hを計算せよ
†339.6)
状態
1のエンタルピー
H1の値を計算せよ
.エンタルピーの
“増加量
”ではなく
,エンタルピー
“自体
”である点に注意せよ
†340.ただし
,U1 = 30 kJとして
†341,他 の量は
5)の数値を利用せよ
.7)
状態
2における内部エネルギー
U2およびエンタルピー
H2の値を計算せよ
†342.基礎
8.式
(2.45)や
(2.46)の右辺第
2項には質量を含むのに, 右辺第
1項に質量を 含まない
†343.この表記にどのような利点があるか. どのような動機か
†344.†337[重要]本問題においては成立するが,いつでも成立する式ではない(確かめよ).
†338(2.44)(2.45)とエンタルピーの定義式(2.34)の助けを借りよ. 定圧過程であることに注意せよ.
†339[意図]内部エネルギーとエンタルピーが, たしかに増加していることを確かめる意図の出題で ある. 単位換算の練習のため,あえて接頭辞をつけているので,注意せよ.
†340[重要]“変化量”についての理解が疎かであったり, ∆がついているか程度の軽微な点と軽視し
ていると致命傷に陥る. 熱力学は細部への理解が極めて重要である. なお,エンタルピーの定義 H =U+pV を用いる.
†341これは, 計算問題のための仮想的な数値である.
†342[ヒント]内部エネルギーの“増加量”を利用する.
†343[応用]いうまでもなく,第1項と第2項の次元は正しい(確かめよ).
†344工学的観点から考えてみよ(出題範囲外).
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