§ 10.4 Kelvin と Clausius の原理の等価性
2) 低温熱源は , Q L の熱を奪われ続けるだけである
3)
高温熱源については注意を要する
. QHの熱を第二種永久機関に与えると同時 に
,低温熱源から汲み上げた
QLと第二種永久機関から得た仕事
QH(=W)の 和, すなわち,
QL+QHの熱を受け取り続ける. すると,
QH分の授受が相殺さ れて, 高温熱源には, 正味の熱として,
QLだけが流れ込む.
以上をまとめると
,低温熱源から高温熱源へと自然に
QLなる熱が流れること となる
.これは
, Clausiusの原理の否定そのものである
.したがって
, Kelvinの原理の否定を認めるならば
, Clausiusの原理の否定が示 された
.この対偶をとろう
. Clausiusの原理が成立するならば
, Kelvinの原理が成 立することがわかった
.また
, Kelvinと
Clausiusの両原理が等価であることが示さ れた.
§ 10.4.4
ヒートポンプ
Carnot
サイクルは準静的かつ可逆的に進む. ゆえに, 逆行することが可能で
ある. そのとき, 作動流体は, 低温熱源から熱を奪い, 外界から仕事をされて, 高温 熱源へと熱を捨てる
†785このようなサイクルを
,ヒートポンプという
.†783[ヒートポンプ(逆サイクル)]日常生活でいえば,冷凍庫やクーラーと思えばよい. すなわち,低 温熱源から熱を吸い取り,それを高温熱源に捨てるのである. そのためには, (たとえば電気的 な)仕事を要するので, する仕事ではなく,される仕事が必要となる. ついでながら, Carnotサ イクルは可逆サイクルであるので,逆Carnotサイクルとして回せば,ヒートポンプになりうる.
†784やはり,ヒートポンプサイクルでは,状態量たる内部エネルギー変化がゼロであることを用いた.
†785[エアコン]涼しい室内から熱を奪い,電源から仕事をもらい,蒸し暑い屋外に熱を捨てる. エア
コンは, 電気なしでは動かない. すなわち,必ず外界からの仕事を要することが重要である.
155 ⃝c 2017 Tetsuya Kanagawa
§ 10.5 Carnot の定理の証明 , そして第二法則
†786§ 10.5.1
謎のエンジン
Aと少年
熱力学を履修中の少年が, 道端で, ある謎のエンジン
(サイクル) Aを拾っ た
†787†788.少年は,
Aの正体, とくにその熱効率
ηAに課される制約に興味を抱い た
. Aの優劣を客観的に評価するためには
,まず
,比較対象としての何らかのサイ クルが必要である
†789.いったいどのようなサイクルならば
,比較対象として適切 だろうか
.可能な限りその正体が明らかになっている
,代表的で権威のあるサイク ルが望ましい
.少年は苦悩に陥った
†790.やがて
,少年の脳裏に
,既習の
Carnotサイクル
Cが比較対象に適切ではない かと浮かんだ
†791.そこで,
Cとその熱効率
(Carnot効率)
ηCを準備した
†792.§ 10.5.2
合成サイクルへの着眼
結論からいおう
——少年は
,謎のサイクル
Aと
“逆
”Carnotサイクル
C¯の 組み合わせを考えたのである
†793.これを, 合成サイクルといい,
A+ ¯Cと書く
†794.任意のサイクル
Aは, 高温熱源から
QHAの熱をもらい,
Wの仕事をなし, 低 温熱源に
QLA(>0)の熱を捨てる
.なお
,本節では
,熱は全て正値であるとする
†795.†786Carnotサイクルの熱効率が理論最大熱効率であること(Carnotの定理(§7.4))は,これまで天
下りに認めてきたが,そろそろ, これを示さねばならない. これが本節の目的である.
†787[記号]本節では,このように, サイクルに記号をつけてAとよぶ. むろん,その都度,「サイク ル A」のようによんでもよい.
†788少年が入手したAは,われわれにとっては,任意のサイクル A(arbitrary cycle)に他ならな い. A の正体を探ることがわれわれの目的でもある.
†789比較にはAだけでは無理である. 相対評価が必要だからである.
†790少年は,A の効率に興味を抱き,ひとまず作動させることを考えた. しかし, いくら A の特性 に関心があろうとも, 暴走や爆発などの危険性を秘めたエンジンを安易に分解すべきではない ことを,少年は理解していた. エンジンの素人に過ぎない少年は,一体,Aをどのように動かし, どのように効率を評価すればよいか, 途方に暮れた.
†791少年は,すでに, Carnotサイクルが可逆サイクルであることを利用するという発想にも至って いた.
†792[用語]本節では, 熱効率と効率を区別しない.
†793[記号]サイクルX の逆サイクルをX¯ と書く. これは,命題における,条件の否定と同じである.
†794[用語・記号]単に議論を簡潔にするための用語であって, 必ずしも一般的な用語や表現ではな い. 諸君は使わなくてもよい.
†795表現の簡潔性のため,入熱ならば正で,放熱ならば負という規則は定めない. 以下の証明には支 障をきたさないからである. むろん,符号のルールにこだわりたければ,自身で定めてもよい.
仕事
(力学的エネルギー
)は熱に比べて高級品であると述べた
.ならば
,せっ かくの仕事
Wを使って
,何かおいしいことができないだろうか
†796——そう
,少 年は
,サイクルを逆に回した
(ヒートポンプを駆動させた
)のである
†797.すなわち
, Wの仕事をもらって駆動する, 逆
Carnotサイクル
C¯を考えたのである
†798.ここ で, ¯
Cは, 低温熱源から
QLCの熱をもらい,
Wの仕事を受け取り
†799,高温熱源へ と
QHC(>0)の熱を捨てる
.熱力学の講義の教えにしたがって
,少年も
,熱力学第一法則を必ず立てること が習慣付いていた
.合成サイクル
A+ ¯Cとして
,正味の量で考えれば
,仕事は相殺 するので
,高温熱源から低温熱源へと
QHA−QHC =QLA−QLC(>0) (10.9)
の正味の熱が絶えず流れ続けている
†800†801.これは
, Clausiusの原理を満たしてい る
†802.いいかえれば
,熱力学第二法則を満たす
.§ 10.5.3
問題設定
これで舞台設定が整ったので
,まとめておこう
. 1)高温熱源と低温熱源を各
1つずつ用意した
†803.2) 2
つの熱機関を用意した
. 1つは謎の
(任意の
)サイクル
Aで
,もう
1つは逆
†796低質な熱ならばともかく, 高質な仕事を何にも使わずに捨てるのは惜しすぎる.
†797[用語]ここも,たとえば「ヒートポンプ」という用語や言い回しはどうでもよい. ヒートポンプ でも,冷凍庫でも,逆熱機関でも,逆サイクルでもよい.
†798[用語]逆Carnotサイクルを, Carnotヒートポンプということもある. ヒートポンプのように,
工業製品を思わせる用語の出現に少なからず戸惑っている受講生がいるようだが, 軽微な用語 の差異は, 現時点では気にしなくてよい. 逆にいえば, Carnot冷凍庫でも, Carnotクーラーで も,逆向きに回すことが伝わるならば(本講義内では)何でもよい.
†799[日常生活]これは,クーラーや冷凍庫における電源と対応づけてよい.
†800一見,第一法則ではないように見えるが,本当に第一法則なのか. (10.9)で一見省略されたかの ように見える内部エネルギーと仕事を復活させよ. すなわち,AとC¯ それぞれに対して第一法 則を立ててみよ. なお,このような根源的な観点を試験で問う可能性は極めて高い.
†801本当に正値か.
†802逆ならばClausiusの原理に反する. 本当か. これを,注意深く細部まで確かめよ.
†803[ポイント]高温熱源は熱を渡すだけでなく受け取るし, 低温熱源は熱を受け取るだけでなく渡
す. しかし,トータルで考えれば, 高温熱源は熱を渡し, 低温熱源は熱を受け取る(本当か).
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Carnot
サイクル
C¯である
†804.3) A
がする仕事
Wの全てを
C¯が
(される仕事として)受け取る. ゆえに, 合成サ イクル
A+ ¯Cがする正味の仕事はゼロである.
4) A
と
C¯はそれぞれ熱力学第一法則を満たす
†805: A: |{z}∆Uゼロ
= (QHA−QLA)−W =⇒ W =QHA−QLA (10.10) C¯ : |{z}∆U
ゼロ
= (QLC−QHC) +W =⇒ QHC =W +QLC (10.11)
5) A