第二法則は
,その表現が
,科学者によっても
,文献によっても
,多岐にわたるこ とが
,初学者の理解の妨げとなっている
.§ 10.2.1
エントロピーによる数式表現
金川個人は
,エントロピーを使って数式表現することが最も易しいと感じる
.熱力学第二法則のエントロピーによる表現
任意の過程は
,外界からの入熱に関する量
d′Q/Tよりも大きくなる方向に
,す なわち, エントロピーが増大する方向に進む:
∆S ≥
∫ 2
1
d′Q
T ,
あるいは
, dS ≥ d′QT (10.1)
熱平衡状態
1から
2までの定積分である
†745.等号が可逆過程を
,不等号が不 可逆過程をそれぞれ意味する
. d′Q/Tの大きさこそが
,不可逆性の度合いを教え
†743無尽蔵の熱源といえる海水から熱をもらい,地球上の工場の機関を動かすことを考える. する と, 2000年間も働かせ続けて,はじめて,海水の温度が0.01 K低下するという計算結果がある.
†744§10.3で詳述する.
†745(9.20)から積分範囲の記号を変更したが,大きな意味はない.
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てくれる
.自発的に起こる
(自然界の全ての
)過程の全ては不可逆過程である
.こ れが第二法則の数式表現である
.§ 10.2.2
孤立系とエントロピー
外界と隔離された孤立系ならば
†746,外界と系の間で熱のやり取りはないので
dS ≥0 (10.2)
である
.すなわち
,エントロピーは増加する方向に過程は進む
.可逆過程ならばエ ントロピーは一定
(定数
)であり
†747,不可逆過程ならばエントロピーは増加する
.孤立系というと
,対象を狭めている印象を与えかねないが
,これは決して大胆 な仮定ではない
.たとえ
,系と外界の間で熱や仕事の授受をなす場合であっても
,過程に関与する全ての系を包含する巨大な系を考えれば, これを孤立系とみなすこ とが可能である
†748.このような巨大な系では, 系を構成する個々の系のエントロ ピーには増減はある
†749.しかしながら
,エントロピー変化の総和は増加する方向 に過程が進行する
†750.そして
,エントロピーの総和が最大値に到達したときに
,過 程が止まり
,熱平衡状態に至るのである
.†746もう少し一般的に言おう. 「孤立系あるいは孤立断熱系(isolated adiabatic system)において エントロピーが増大する」という表現が良く使われる. 孤立系とは系と外界が隔離された系で ある. 隔離ゆえに,系と外界の間で仕事と熱のやりとりがなく,それゆえ,内部エネルギーが一 定の系である.
[頻出ミス]決して内部エネルギーはゼロではない. 内部エネルギー“変化”はゼロであるが. 「内
部エネルギーがゼロ」という誤答に潜む致命的欠陥を指摘せよ.
†747エントロピーがゼロという誤答がある(矛盾を指摘せよ). エントロピー“変化”はゼロだが, エ ントロピーがゼロということはありえない.
†748[お金の例1]工学システム学類生140名でパーティを行う. このような場合, 10名程度のズボラ
な者が,決まって財布を忘れる. したがって,会費の貸し借りは免れない. しかしながら,宴会 会場の定員からすれば,あるいは140名という団体規模で眺めれば,数名の貸し借りなど,誰の 知る由もない——そのようなイメージである.
[ついでながら]趣味が少なく,財布の紐も固い金川は,財布を忘れることなどありえず,専ら貸 す側に回っている.
†749[お金の例2]財布を忘れたA君と金持ちのB君の間には, 亀裂が走る.
†750[お金の例3]金銭の貸し借りでいえば,エントロピーは「不信用」の度合いである. お金を借り
てばかりのA君は,たとえ,借金を返済したとしても, B君からの信用を失い続ける.「お金(内 部エネルギー)」は保存量である. しかしながら, 非保存量の「不信用度(エントロピー)」は, 増加するばかりであって, B君がどれほど改心しようとも,決して減少することはない.
§ 10.2.3
エントロピー増大の法則
エントロピーの増加量は
,過程の不可逆性の度合いを意味する
.そして
,第二 法則とは
,不可逆過程の存在を示すと同時に
,エントロピーが増加することを主張 するものである
†751†752.現実には
,可逆過程は起こりえないが
,可逆過程の実現可 能性を定量的に教えてくれるのがエントロピーである
.第二法則
(エントロピー増大則あるいは最大則)
孤立系のエントロピーは,
(i)
可逆過程ならば不変であるが,
(ii)不可逆過程が生ずれば増加する
.
§ 10.2.4
第一法則と第二法則の主張の融合
いかなる過程においても
,系を構成する全ての物質に対して
,次の主張が成立 する
:第一法則と第二法則
内部エネルギー
(熱と仕事を含む
)は一定である
(第一法則
).エントロピーは増加する
(第二法則
).
問題
61.エントロピーを縦軸にとり
, (i)何等かの状態量を横軸にとったグラフ
, (ii)過程の進行の度合い
†753を横軸に撮ったグラフをそれぞれ描け. dS
= 0あるい
は
dS > 0となるのは, それぞれ, どのようなときか. 過程が終わるのはどのよう
なときか
.†751ここでのエントロピーとは,過程に関与した全ての系(物体)の総和である.
†752いかなる場合でも,エントロピーが減少することはない.
†753たとえば,仮想的な時間でもよい. 熱力学には, 厳密には,時間の概念がないことに注意せよ.
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