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§ 5.3 等温線と断熱線の比較

ドキュメント内 1.5.1 SI kg, m, s ,, (ページ 104-107)

p–V

線図において

543,

等温過程を表す曲線を等温線, 断熱過程を表す曲線を 断熱線とそれぞれよぶ

.

等温線の傾きよりも断熱線の傾きの方が急となる

.

§ 5.3.1

等温線の傾き

等温過程の理想気体の状態方程式は

, Boyle

の法則に他ならない

: p(V) = C

V =CV1 (5.39)

これが等温線という

曲線

を記述する

544.

ここに

, C

は任意定数であって

545,

任 意の状態の状態量を用いて

,

などと書くことが可能である

546547:

C =pV =p1V1 |{z}=

過程1→2

p2V2 =· · · (5.40)

543[注意]例年,V–p線図を描いてしまう者が一定数いる. もちろん,グラフの軸に何をとるかは個 人の勝手であって,たとえば縦軸にpではなくV を選んだグラフは,決して非難されるもので はない. しかしながら, V–p線図を描いてしまうと, 仕事の幾何学的計算という p–V 線図の 最大の効用において,何ら威力を発揮しないこと,うまくゆかないことに気づくはずである. 何 らかの意図や利点に即してV–p線図を描いているのならば理解できるが,もしもそうでないな

らば(単なるうろ覚えや深い考えがないのならば),「縦軸にpを,横軸にV をとる」と覚えて

しまう方がダメージは少ない. むろん,なぜ縦軸にpをとるのか,なぜ横軸に V をとるのかの 意義と利点を理解した上で覚えるべきである. その意味で,深い考えもなく,受動的に縦軸にp を,横軸にV をとっているだけの者がいるならば,それはV–p線図を描いている者と同レベル であって,p–V 線図の意義を見直すべきである.

544[重要(誤記あり)] “直線”ではなく“曲線”である. なぜならば,関数形が反比例だからである. 実

際に描いてみよ.

545C の任意性ゆえに,p–V 線図を無数の等温線で埋め尽くすことができる(微分方程式の解と曲 線群の議論と対応づけられる).

546Boyle–Charlesの法則より,pV /T が一定であるが,T も一定である. ゆえに,T も任意定数C

の中に吸収される. これは, Boyleの法則がBoyle–Charlesの法則の一部であることと等価であ る.

547[考え方]もちろん, これ以外の形を用いてもよい. 理想気体の状態方程式の表式は無数にある

から(状態量が無数にあるから)である. 自身が一番便利と考える形を用いれば, あるいは, 変

形すればよいだけのことである. いまの場合, pV 導関数(変化率)に興味があるのだから (p–V 線図を考えるのだから),気体定数や温度を含まない形を望むのが自然であろう.

傾きは

,

以下のように計算される

: dp

dV = d

dV CV1| {z }CV2 =

C=pV を代入

−p

V (5.41)

このように

,

任意定数を消去し

,

傾きを状態量だけで表現することが重要である

548.

§ 5.3.2

断熱線の傾き

計算の処方箋は何ら変わらない. 断熱過程の状態方程式は,

p(V) = D

Vκ =DVκ (5.42)

であるが

,

断熱過程の任意定数

D

は等温過程の任意定数

C

とは異なり

549, D=pVκ =p1V1κ =p2V2κ =· · · (5.43)

とかけるがゆえに, 断熱線の傾きは次のように導かれる:

dp

dV =−DκVκ1 =−pVκκVκ1 =−κp

V (5.44)

等温線と同じく

,

断熱線も直線ではなくて曲線である

(

理由を考えよ

).

注意すべきは

,

圧力

p

も容積

V

ももちろん正値であるが

,

傾き

dp/dV

は負 値をとることにある

.

§ 5.3.3

断熱線の傾きの方が急

——

断熱過程とエネルギーの有効利用

(5.41)(5.44)

の差異は比熱比

κ

の有無だけである

.

その簡潔さゆえに

,

これ だけを根拠に

,

安直に傾きを比較したくなるのは自然な感情といえるが

,

もちろん ナンセンスである

.

なぜならば

,

右辺の

p

V

も変数であって

,

縦横無尽にその 値を変えるからである

.

548等温線と断熱線の比較において,任意定数を含めてはならない. 理由はすぐ先に分かる.

549[注意(誤答多数)]等温と断熱は異なる過程である. ゆえに, 同じ任意定数を用いては元も子も

ない. しかしながら,例年,pV =CpVκ=C のように同じ記号を使う者が一定数見受けら れる. CD を区別せねばならない. 当たり前のこととはいえ,初学者が陥りやすい罠である であるので, 軽視すべきではない. もし,ここで注意喚起されなければ,この誤答を自身が回避 できていたか,などを検討することをすすめる. これは,「任意定数」の意味をはき違えた者の 誤答であるが,この誤答に限らず,諸君は,「任意定数とは何か」を正確に理解できているだろ うか.

99 c 2017 Tetsuya Kanagawa

そこで

, p–V

線図内の

1

,

すなわち定数として

,

ある熱平衡状態

0

の状態量

p0

V0

を考えてみる

.

これらを

(5.41)(5.44)

に代入し

,

その絶対値をとると

550,

p0 V0

|{z}

等温

< κp0 V0

|{z}

断熱

(5.45)

なる大小関係がわかる. なぜか. (4.25) すなわち比熱比

κ > 1

を用いたのであ る

551.

したがって

,

等温線よりも断熱線の傾きの方が急と結論づけられる

552.

問題

40.

熱平衡状態

1 (圧力 p1,

容積

V1)

にある理想気体を, 熱平衡状態

2 (容積 V2)

まで, 準静的に膨張させる方策として, 等温膨張と断熱膨張の

2

通りを考える.

つぎの諸量を

,

断熱と等温の

2

通りに対してそれぞれ計算し

,

断熱と等温での大小 を比較せよ

: (i)

状態

2

の圧力

p2, (ii)

気体がする仕事

W12, (iii)

内部エネルギー の変化

U2−U1, (iv)

気体への入熱

Q12.

[

ヒントと出題意図

]p–V

線図に等温線と断熱線を描き

,

両過程での仕事と熱の大き さを正負も含めて比較する

.

第一法則に基づいて

,

理想気体の状態方程式

(

理想気 体の断熱過程の状態方程式も含む

)

の助けを借りながら

, 1

1

つを丁寧に調べる

. [略解] (i)

等温の方が高圧

553. (ii)

等温の方が大きい

554. (iii)

等温はゼロ. 断熱は 減少

(U1 > U2)

する

555. (iv)

断熱はゼロ. 等温は, する仕事と同じだけの熱を外界 から受け取る

556.

550絶対値をとったのは,単に負号を考慮するのが面倒だからであって,もちろん負号付きのまま比 較してもよい. 関数形を見れば,等温線も断熱線も傾きが負であることは容易にわかるだろう.

551[復習]κ >1に対する意識がまだ浅いかもしれないが,根拠をすぐさま説明できるようにすべき である. 事細かに覚えておかずとも,定義κ=cP/cVcP =cV +R だけから,速やかに再現

される(比熱も気体定数も正だからである).

552この事実は,次節以降, Carnotサイクル(§7)や理論最大熱効率を学ぶ上で,すぐさま活用する.

553p–V 線図に, 等温線と断熱線を描き, 傾きに着目する. 比熱比の性質κ >1を思い返す.

554仕事を与える領域の大きさを眺める. 膨張ゆえに,仕事を“する”. [重要]同じ容積を膨張させた いときに,等温よりも断熱的に膨張させる方が仕事が少なくて済むことは,エネルギーの損失を 減らす(エネルギーを有効に使う)という意味において, 応用上極めて重要な性質である. 実際

, Carnotサイクル(§7)において,早速この性質が多用される. []音は空気中を断熱的に伝

わる. 大昔, Newtonは等温を仮定して理論式を導き,音速は 300 m/s程度と予測したが,実測

値との明らかな不一致が彼を悩ませた. Laplaceは断熱を仮定し,温度変化をも考慮することで, これを改善し,音速の実測値340 m/sと理論値の一致に成功した. 実に100年程度を要した.

555[等温]幾度となく現れた, 理想気体の等温過程の第一法則dU =CVdT を思い返す(なぜこの 式を第一法則とよべるのかも復習せよ). [断熱]第一法則を立てる.

556[重要]大抵何かが消えることに気づいただろう. 理想気体の断熱過程ならば入熱がゼロで,等温 過程ならば内部エネルギー変化がゼロである. すると,仕事と内部エネルギー変化が(断熱),

事と熱が(等温),それぞれ一対一となる.

ドキュメント内 1.5.1 SI kg, m, s ,, (ページ 104-107)