Kelvin
の原理
(簡易版
)
熱効率
100 %の熱機関
(第二種永久機関
)の実現は不可能である
.
熱効率が
100 %の熱機関を
,第二種永久機関という
†758†759.ここで重要なこ とは
,第二種永久機関は
,第一法則を満たしているが
†760,第二法則は満たさない点 にある
.第二種永久機関に異を唱えたのが
, Kelvinの原理である
.もしも
,第二種永久機関が創成されたならば
,たとえば
,無限大の熱容量をも つ海水を熱源にして船を動かしたり
,空気あるいは地面を熱源にして自動車を走行 させることが可能となり
†761,われわれがすべきことなど何もないだろう.
さて
,第二種永久機関が存在しえないことを
,既に導出したばかりの
,熱力学 第二法則のエントロピーによる表現を用いて
,示すこととしよう
.問題
62. Kelvinの原理が正しいこと
,すなわち
,第二種永久機関が不可能であるこ
とを証明せよ
.[
証明
]任意のサイクルに対して
,第二法則
(10.1)d′Q≤TdS (10.1)
が成立する
.それゆえに
,第二法則の周回積分も成立する
: Id′Q≤ I
TdS (10.3)
ここで
,第二種永久機関は
, (高温
)熱源から熱をもらうことを思い返す
.熱源 ならば温度は一定であるので
†762,これは等温受熱であって
,右辺に含まれる
Tを
,†758[永久機関(perpetual motion)]第一種永久機関とは, 熱源なしに仕事をし続ける機関であった.
熱の補給なしに, 仕事をし続けることは不可能である. すなわち, 熱力学第一法則に従えば, 第 一種永久機関は実現不可能といえる.
[注意]サイクルでは,内部エネルギーの変化はゼロであるから,「1周すれば元通りに戻るでは ないか」と思うかもしれないが, それは,あくまで,熱の供給があっての話である. 熱の供給な しに仕事をすれば,系の内部エネルギーは減少し続け,やがてサイクルはストップする.
†759第二種永久機関で厄介なところは,熱力学第一法則を満たす点にある.
†760100の熱の全てを, 100の仕事に変換することは,第一法則に何ら反しない.
†761地面とタイヤの摩擦によって生じる熱を使って車を走らせ,再び地面とタイヤの摩擦を生じさ せて,熱を地面へと返還すればよい.
†762[熱源の定義]思い返そう. どれだけ熱のやり取りをしても温度が不変な理想的な外界であった.
149 ⃝c 2017 Tetsuya Kanagawa
早速
,積分記号の外に出したくなるのが自然な感情である
: ITdS =T I
dS
| {z }
状態量
=T ×0 = 0 (10.4)
最右辺では, 状態量
Sの周回積分がゼロであることを用いた.
したがって, サイクルにおいて, 熱量は,
Id′Q≤0 (10.5)
を満たす
.ここで
,第一法則も立ててみよう
†763. Id′Q= I
dU
| {z }
状態量
+ I
d′W = I
d′W ≤0 (10.6)
したがって
, (正味の
)する仕事が負になってしまう
: Id′W ≤0
あるいは
W1→2→···→1 ≤0 (10.7)すなわち, 第二種永久機関は, 仕事をされることはあっても, 仕事をすることはで きない
†764.言い換えれば, 高温熱源という単一の熱源だけからサイクルを構成す ることは不可能なのである
.問題
63. (10.1)を使うことなく
, Kelvinの原理を示せ
†765.†763いかなる問題や証明においても第一法則は必ず立てることを強調し続けた.
†764いうなれば,電源から電気をもらい電気代を圧迫するばかりでありながら,電気をつけることが できない,無能な電気機器といえる.
†765別の証明方法もある. すなわち,第二法則のエントロピーによる表現(10.1)を既知としない方 法であって,有限量としてのエントロピーを計算すればよい. 次回以降に譲る予定である.
§ 10.3.3 Clausius
の原理
第二法則の言葉による表現には
,もう一つが存在する
.日常生活との対比から いえば
,クーラーや冷凍機と密接な関係がある
.Clausius
の原理
(詳細版
)
自然界に何の変化も残さずに
,熱を低温から高温の物体に継続的に移動させる 装置を作ることは不可能である
.
やはり, より易しく簡潔に述べる:
Clausius
の原理
(簡潔版)
熱が低温側から高温側に自然に流れることはない.
Clausius
の原理が正しいことの直感的理解は
, Kelvinの原理の証明よりも容
易いかもしれない
.たとえば
,クーラーを思い浮かべれば
,感覚的理解は容易い
.涼 しい部屋
(低温熱源
)の熱を奪い
,それを屋外
(高温熱源
)に捨て続けることができ るだろうか
.無茶である
.連続的な電気の供給
——すなわち
(電気的
)仕事の注入 がなければ
,クーラーが動くはずがない
.Kelvin
と
Clausiusの両表現は
,それぞれ
,熱機関と熱の移動という
,全く異な る側面に着目していると誤解されがちである. しかし, Clausius の原理と
Kelvinの 原理は, 実は全く等価である. それゆえ, どちらか片方が正しいことを示せば, もう 片方も正しいことを示すことができる
.その意味で
, Clausiusの原理の証明はあえ て割愛する
†766.問題
64. Clausiusの原理を証明せよ
†767.†766その理由は次節で明らかとなる. また,追って, エントロピーを用いて, Clausiusの原理が正し いことの証明を与えることも検討している.
†767割愛するといったばかりに手のひらを返すようだが,エントロピーを用いれば,有限量と微小量 のいずれを用いても,証明可能である. 次回示すことを計画している.
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