よ
.両式をまとめておこう
:
dU = d′Q−pdV dH = d′Q+Vdp
(2.33)
問題
6.準静的過程における第一法則の「内部エネルギーによる表現」
(2.30)を
,「エンタルピーによる表現」
(2.32)に書き換えよ
.問題
7.準静的過程に限らない任意の過程に対して成立する次式を導け:
∆U =∆H −
∫ 2 1
pdV −
∫ 2 1
Vdp (2.34)
[
方針
]式
(2.31)を
,熱平衡状態
1から熱平衡状態
2まで定積分すればよい
. (i)準静
的の仮定は置いていないし
, (ii)熱力学第一法則すら用いていないことが重要であ
る
†310.差分記号
∆は
,状態
2における状態量から状態
1における状態量を引く演
算を意味する
†311.をうる
.有限量で書き改めるべく
,状態
1から
2まで定積分する
†312:Q1→2 =∆H(=H2−H1) (2.37)
(ii) [定容過程]†313
酸素ボンベのように, 容積が一定の場合は, dV
= 0だから,
d′Q|V = dU (2.38)
が導かれる
.これを状態
1から状態
2まで積分すると
,次式をうる
:Q1→2 =∆U(= U2−U1) (2.39)
意味するところを日本語でまとめておこう. 準静的な過程において,
(i)
定圧過程ならば
,系への入熱はエンタルピーの増加量に等しい
. (ii)定容過程ならば
,系への入熱は内部エネルギーの増加量に等しい
.こう書けば
,定圧と定容
, Hと
Uの対称性に気づくだろう
.定圧過程におけるエ ネルギー
(すなわち内部エネルギーの代替
),これこそが
,§2.6であやふやにしたエ ンタルピーの物理的意味と工学的役割
(の
1つ
)である
.われわれが究極的に知るべきは何であろうか. 内部エネルギーやエンタルピー のような, いかにも「わかりにくそうな」状態量ではない. 一般市民でも知ってい る熱や仕事こそが役立つといってよい
. (2.37)(2.39)は
,きちんとこの欲求を満た している
†314.†312[指針]工学応用上,微小な熱量など役立たないし,そもそも数値が計算できるはずもない. 決し てなんとなく積分しているのではなく,役立てるために積分しているのである.
†313[用語]定積,等積,定容,等容などの諸表現があるが,本資料では全て同義とする(書物によって は使い分けるものもある).
†314[発展]さらにいえば, (2.37)(2.39)右辺の内部エネルギーやエンタルピーを, 圧力や温度などで 表現できれば,なおのこと便利となるだろう(§4で導出).
(2.36)(2.38)
のように熱力学は添え字に支配されるので
,注意しておこう
†315†316†317.問題
8.準静的過程に対する熱力学第一法則から出発して
†318, (2.37)(2.39)を導け.
§ 2.8 熱機関とサイクル
†319熱機関
(heat engine)あるいはサイクル
(cycle)とは
†320,系の状態が変化し
,再 び元の状態に戻る過程を指す
.すなわち
,状態
1 (始点
)と状態
2 (終点
)が同じ過程 を意味する
. p–V線図において
,サイクルは閉曲線
(closed curve)を描く
.†315 [添え字と変数固定] 添え字の変数xは,その変数を固定することを意味する:
fx=const.≡fx (2.40)
熱力学特有の記号であり,単に,添え字の表現を簡潔にする以上の意味はない. 本資料では, 以
後“= const.”を省略するが,省略したくなければその都度書けばよい.
†316[添え字と導関数(主に熱力学IIで多用する熱力学特有の表記)]独立変数yを固定した偏導関数
∂f(x, y)
∂x の分子f(x, y)の表現を簡潔にする意味で,引数(x, y)を明示するのではなく
(∂f
∂x )
y
のように,右括弧の外の下添え字に,独立変数が何かを明示する. いずれの表記においても, 独 立変数y は固定されている(確認せよ). わからなければ,偏微分の定義(解析学IIで履修済)を 復習せよ. むろん, 表記の簡潔さ以上の意味はなく,両表記は数学的には等価である. “独立変 数が何かを伝える”という本質を見失わなければ,これに従わなくともよい. 熱力学IIで詳述す るが,先取り学習者を想定しての脚注である.
†317[注意]†315や†316は,物理学や工学における一般的な表記ではないが,熱力学のほぼすべての 書物はこの表記にしたがう. 単に,表記を簡潔にする以上の意味はないので,いま全てを覚えよ うとせずとも,その都度確認すればよい.
†318[復習]強調し続けているが, このように, 必ず第一法則を用いることを忘れてはならない. 第一 法則を使わないとは,§0で述べたように,エネルギーの不自然な変化を許すことを意味する(系 に仕事を加えたのに,内部エネルギーが減少する, など).
†319現時点では省略するが,後戻りする予定がある.
†320[応用例]名称にのみ触れておく. Carnot (カルノー)サイクルが最重要であるが,工学応用にも
簡単に触れておこう——ピストンエンジンとしては,内燃機関(ストーブのようなもの. 定義は 別にある)は,ガソリンエンジンのOttoサイクル(定容加熱. 火花点火機関),ディーゼルエンジ
ンのDieselサイクル(定圧加熱. 高温高圧空気中への燃料噴射による自着火),高速回転ディー
ゼルエンジンのSabath´eサイクル(定容と定圧の組み合わせ, 2段燃焼)が挙げられる. 外燃機
関(お風呂のようなもの. 定義は別にある)は,最近注目を浴びている,スターリング(Stirling)
エンジンが挙げられる. また,ガスタービンのBraytonサイクル(定圧受熱・放熱. 空気を, 圧 縮機, 燃焼器,タービンへと順次通過させ,動力を取り出す). 蒸気原動機のRankineサイクル, エアコンや冷蔵庫などの冷凍サイクル. ほかにも枚挙に暇がない(熱工学などで学ぶ).
55 ⃝c 2017 Tetsuya Kanagawa
§ 2.8.1
サイクルにおける状態量
1
周すれば元に戻るのだから
,始点と終点の間で
,状態量の変化はゼロである
.いいかえれば
,サイクルならば始点の状態量と終点の状態量は等しい
†321.§ 2.8.2
第一種永久機関
自動車のエンジン
(系
)が
,燃料
(入熱
)なしに永久に動き続ける
(仕事
†322をす る
)とすれば
,われわれがすべきことなど何もないだろう
.このような熱機関を
,第 一種永久機関
(perpetual motion machine of the first kind)とよぶ
†323.第一種永久機関は
,残念ながら理想に過ぎない
.これを直観的に理解するので はなく, 論理的に証明しよう
†324.道具はむろん第一法則
(2.8)以外にありえない.
問題
9.第一種永久機関が存在しないことを
,第一法則を
(数式を
)用いて証明せよ
.[
証明
] (i)外界からの入熱はゼロである
. (ii)サイクルゆえに
,状態量である内部エ
ネルギーの変化はゼロである
. (iii)熱力学第一法則
(2.8)から
,仕事を考察すると
,W = 0