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5.5浬

  考   察

 以上に述べた結果からみると,徳島県南部沿海では,7,8月に初期のフィロゾマの採捕数が 多く,この時期がふ化盛期となっていることがわかるが,9,10月目採捕数が減少してしまうこ とから成長の時間的な経過を追うことはできない。さらに表4にみるように,Stageごとに半撚 とした体長モードもみられない。加えて6.3伽の標本の次に大きなものは8.8伽孤でこの間の標本 がなく,蔚者と後者の間に断層がある。このことは単に採捕されなかったのか,あるいは脱皮に よりこの間の伸長をとげるのか,または8.85囎以上のものが全く別の群ないし別種であるのか形 態的な特微を検討する必要がある。

徳島県南部沿岸ではイセエビの他にゴシキエビが棲息し,ニシキエビも棲息するといわれると ころがら,採捕されたイセエビ属フィロゾマ中にこれらが混在することは考えられる。体形から も少なくとも2種のイセエビ属フィロゾヤが採捕されている4)ところがら,圃一白勺に表1および

2のような体長範囲をとることには難があるごとは当然で,形態的な検討を加えた上で訂正する。

 海面下の採集では,.定層曳きでないなど,採集方法に不備があるが,野中ほか5),CHITTL£BQROUGH.

一111一

表4 フィロゾマの体長別採捕数

R.Gほか6)の指摘するように,この海域でも表層の採集が有効であろう。また,補助調査の㊦ネ ットサンプルは調査弘仁1◎を除いてはすでて昼間の採集であり,昼間は採集数が少ないことがう か・ われ,この点も前二者ら5),6)の指摘するところと一致する。

 J。H浅so遥やCKITTL聡BOUROりGHほカ・6)は周年を通じてフィロゾマを採捕しているが,筆者らは11 月から4月までの問1尾も採捕できなかった。この海域は,紀伊水道からの内海水が沿岸寄りに 南下するとともに,芸東分枝流と呼ばれる黒潮系水の徳島県審りの北上,さらには,紀南分枝流

と呼ばれる和歌山県寄りに北上する黒潮系水の左旋環流,内海水と外海水の混合水塊の滞留など,

海況的には極めて変化の激しいところであり,海況を無視してフィロゾマの分布を論ずることは

極めて危険であろうから,これらの採集結果とその時期の海況との関連性についても検討を要す

る。

 しかしながら,これまで本邦周辺のイセエビ属フィロゾマについては,M{∫R照01)・7!HARADA3)

野中ほか5),大島8)によって報告されているが,Mu盆ANO1), H ARAOA3)カご沿岸域で初期のフィロゾマ を採捕しているのを除いて沖合域で採捕されたものが多く,この調査のように比較的沿岸近くで 中,後期力感のフィロゾマが採捕されることがわかったことは今後この方面の調査に役立っもの と期待する。

   要   約

 1.昭和菊年8月から48年11月まで,徳島県南部沿海域で,イセエビ属フィロゾマの生態を明 らかにする目的で採集調査を実施した。

 2。採集は㊦ネットの夜間表層曳きを主とし,海洋観測の㊧ネット垂直曵き,昼聞の㊤ネット 表層曳きのサンプルも資料に加えたほか,一部夜闇の海面下の採集も試みた。

 3.合討300尾のイセエビ属フィロゾマを採捕したが,初期相当のstageのものが80%強を占 めており,夜聞表層曳きによる採捕数が多かった。

 4.採捕時期は5月から1G月までの間で,7・8月目初期のものが多く,この時期がふ化盛期 に当ると思われる。11月から4月まで は採捕されなかった。

 5.採捕地点は蒲生田埼から室戸岬の間の沿岸,沖合に亘っており,分布域は広い。

 6.採捕されたフィロゾマにはイセエビ属の少なくとも2種が混在していると思われるので形 態的な検討を試みる予定である。

 7.フィロゾマの分布は海況との関連を検討する必要がある。

 8.申・後期相当のフィロゾマが比較的沿岸近くでも採捕されることがわかった。

      参考文献

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 5)野中忠・若林カルロス(1973)本邦南西海域における1970年夏のPhylloso1naの分布にっ   いて,静岡水試研報,(6),15−18

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 8)大島泰雄(1942>イセエビ属のフィロゾーマに就いて,水産学会報,9.36−44

一113一 栽凶音ま支研, 113〜121, 1974

網魚礁へ集まる幼稚魚について*

福田富男・篠原基之・寺島朴

(岡山県水産試験場)

 近年栽培漁業推進の一環として,放流対象魚種の人工種苗生産技術の開発ならびにそれら魚類 の種苗放流による生産効果をあげるために,天然における生態調査が進められている。これら魚 類の棲息する場の条件は発育殺階によって当然異なるが,幼稚魚の天然における育成場所として は従来から藻場があげられている。しかし瀬戸内海における藻場は近年著しく減少し大島三)によ れば昭和47年の調査で昭和25年の50〜30%に減少したと言われる。このため入工生産種苗(幼稚 魚)を有効に天然資源に添加するためには特に幼稚魚時代の育成場所を調査研究し,入工藻場な

どの開発が望まれている。

 われわれは昭和47年以降古ノリ網を利用した入工藻場を作製して,その集魚効果を調査してい るが,環境の変化,付着生物の着生状況および刺網調査による成魚,未成魚の集魚状況などにつ いては既に前報功で報告し,スズキ,メナダ,ウミタナゴ,メバル,コノシロ等が集魚している ことを明らかにした。

 ここでは前報2)で一部しか取扱われなかった幼魚の集魚状態およびそれらの主要な餌料を考え られるエビ,カニ類について検討したので,それらの結果について報告する。なお,潜水観察に ついては前出後の結果を加え,また幼稚魚採集網の結果と比較検討を行なった。

工 方 法

   1 施設および調査定点

 施設についての詳細は前報2)で述べたのでここでは概要についての記述に留める。施設は古ノ リ網(クレモナ製)をノリ養殖用ベタ流しセットに図1のように垂下し,海面に浮かせるように したもの5台を鴎2のように配置した。以後これを「網魚礁」と呼ぶ。施設設置は1972年6月28

日に行なった。

 施設設置場所および調査水域は岡山票邑久郡牛窓町鹿忍地先の保護水面内で図3にそれを示し た。調査点の概略は次のとおりである。st。1:天然におけるアマモ場(水深1〜2鶏),st.2:網 魚礁の縁辺部(B,水深2〜3m),s宅.3:網魚礁の中心部(C,水深2〜3m), st.4:周辺が泥 場の投石魚礁(水深4〜5灘),s毛。5泥場(水深2〜3恥), st.6:周辺が岩場の投石魚礁(水深3

〜4m)である。

*岡山県水産試験場業績

図1 設置施設の見取図

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  ・ 2 調査方法

 調査は施設設置後3ケ月経過し た1972年9月より 73年までの1 年間2ケ月ごとに行なった。

 i)網魚礁に集まる幼稚魚およ び遊泳性の動物を採集するため稚 魚採集網(C魯璽一netと仮称:口径 71,5c組,網部:網目よりキャンバ ス→15c田,欝i絹GG28→96αn, GG 38→96c顕)を使用し,マブシ状の

BT−1,2, CT−1,2および AT−5>図2>を下から上部まで

水中ですくい,その中のものを網 の中にふるい落して採集した。以

後この採集方法を嚇一C輪と呼

ぶ。

 ii)施設の状態,破損の状況,

集魚効果などを確認するため潜水 観察を実施した。

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図3 調査水域および調査定点図

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ドキュメント内 栽培漁業技術開発研究 第3巻第1号 (ページ 109-113)