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第二章 民国初期における女性雑誌の出版活動

第 4 節 『婦女雑誌』から見る理想的な家庭教育(1915 年~1920 年)

4.3 理想的な養育方法―「衣・食・住」を中心に

4.3.2 食物の改良

子どもを健康に成長させるためにどのような食物を与えればよいかについての知識も中 国の先進的な知識人から要求されていた。『婦女雑誌』が科学的な育児方法を紹介する理由 は、心身共に健康な新国民を養成するための指南書として求められていたからであった。

育児に関する大部分の記事の内容は、胎教、妊娠による女性の身体の変化、病気の治療に 関する具体的説明である113。そして、出産後、特に母親の母乳による授乳は積極的に勧め られ、様々な科学的知識が用いられるようになった。「一歳から六歳までは日本人の三島博 士により、七歳から十六歳までは日本学校衛生会の資料によって調べた平均数値」に示し たように、成長中子どもの身長、体重などの標準について、中国の子どもの記録がなかっ たため、日本の子ども(1 歳~16 歳)を参考にし、同時に子どもの身体の検査を毎年行う ことの必要性を強調したことである114。中国知識人が子ども成長の基本的な情報を積極的 同時代日本の女性雑誌から多く引用して参考したことがここから見出される。

そして、1 歳以降の子どもにとって離乳食は不可欠な食物とされた。離乳食は母乳の代替

112王延榦、原文「小兒精神身體須使強壯于食料品之滋養分。日本人向有早凋之弊、及時家有余裕而僅凭自 己之愜意對于兒女裝飾其外觀忘却内部身軀上之調養」「物價価騰貴与中等家庭」(續)、『婦女雑誌』第3 巻第7號、1917年7月、67頁。

113叔子、「婦人之衛生(續)」『婦女雑誌』第 4 巻第 8 號、1918 年 8 月、77 頁。

114原文「表中一歲至六歲據日人三島博士所調查男兒之平均數、自七歲至十六歲則據日本學校衛生會所調查 之平均數」、趙英若、「兒童健康計測法」『婦女雑誌』第 4 巻第 10 號、1918 年 10 月、41 頁。

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食品として用いることができ、栄養バランスを取ることで子どもの発病率を低く抑えられ ることが認識されたため、離乳食の紹介は当時『婦女雑誌』の誌面に多く見られた。健康 な子どもを養育するために科学的な育児法が強調されている点は、子どもの食事の科学化・

衛生ともに関係がある。例えば、飄萍の「母之衛生及育兒法」という記事では、理想的な 離乳食を以下のように述べた。

最初はできれば最も軟かい食物(お粥等)を与えるが多量に与えてはいけない。三、

四歳を超えたら米飯及び鳥、魚肉と野菜の若葉を充分に煮込んだものを、みじん切り にして咀嚼しやすくするべき(中略)飲料は牛乳が望ましいが、「麦湯」と「葛湯」も よい115

このように乳幼児の食事について、大人の食物ではなく、子どもに適切な栄養がある食 物を与えることは、成長にとって非常に重要なことだと認識された。乳幼児死亡率が高い 1910 年代後期の中国では、子どもを成人まで順調に養育することは現代のように当然のこ

とではない116。そのため、子どもの体質、及びその成長への配慮は知識人らが欧米と日本 の女性雑誌から吸収し、重要視した部分ではないかと考える。しかし、筆者は 1915 年から 1920 年にかけて『婦女雑誌』で言及された幼児の養育に関連する記事をまとめ、内容には 微妙な差異があることを明らかにした。表 10 に示したように、例えば肉類に関して、消化 しやすくなるように充分に調理してから子どもに与えることは 1915 年以降の記事に見ら れたが、1917 年になると、禁食とされた食物に対する制限が見出されるようになった。こ のように、時期によって健康な子どもを養育するために理想的な「食」の不一致性が見出 されるのである。

ここでは、子どもの食事に対する制限が多いという傾向があることも見出された。民国 初期の中国においては、子どもの身体の健康を国家的な問題として認識した点から分かる ように、『婦女雑誌』は理想的な子どもの食物をいくつか取り上げたが、そこに矛盾がある ことも読み取れた。最後に、子どもの「衣・食・住」のうち、最後の「住」の改良について の分析は次節に譲りたい。

表 10.『婦女雑誌』に記載された幼児の離乳食に関する記事内容の変化(1915 年~1920 年)

掲載刊號 掲載年月

題目 題目(日本語訳) 作者 主な内容

115原文「最初宜于以最軟之食物如粥湯等不可多量。三、四歳后米飯及鳥獸魚肉与野菜之嫩叶可煮熟与之宜 切細便于咀嚼(中略)飲料以牛乳爲宜麦湯葛湯亦可」、飄萍、「母之衛生及育兒法」(續)『婦女雑誌』第 1 巻第 7 號、1915 年 7 月、68 頁。

116鳥傅溱、「小兒夭亡問題」、『婦女雑誌』第 4 巻第 7 號、1918 年 7 月、56 頁。

72 第 1 巻第 5 號

1915 年 5 月

育嬰宝鑒 育児宝典 質園 2 歳以降、普段の食事は牛 羊鶏鴨野菜などの食物が良 い、ただそれらを充分に煮 込んでからみじん切りにす る必要がある。

第 1 巻第 7 號 1915 年 7 月

母之衛生及育兒法(續) 母の衛生及び育児方法(續) 飄萍 3、4 歳以降米飯及び鳥類、

獣類、魚類の肉、野菜の若 葉等を充分に煮込んでから みじん切りにして食べさせ る。飲料は牛乳が望ましい、

「麦湯」「葛湯」も可。

第 1 巻第 12 期 1915 年 12 月

幼兒之衛生 幼兒の衛生 沈芳 幼児の飲食物は、米飯、パ ン、牛乳、牛羊鶏鴨肉、脂 肪が少ない豚肉、卵、野菜、

少量の果物等消化しやすい ものが望ましい。

第 3 巻第 4 期 1917 年 4 月

育兒問答 育兒問答 翟宣穎 1 歳以下の幼児に対してビ ーフジュ―ス、卵、蜜柑露 などの食物は不可欠。

第 3 巻第 6 期 1917 年 6 月

育兒問答(續) 育兒問答(續) 翟宣穎 2 歳以上の幼児には、蜜柑 露、充分に煮込んだ米飯、

乳酪、牛乳、卵、お粥、パ ン 及 び野 菜な ど食 べさせ る。

第 3 巻第 7 期 1917 年 7 月

育兒問答(續) 育兒問答(續) 翟宣穎 7 歳以下の幼児に食べさせ てはいけないものは、肉類

(豚肉、獣類の内臓等)、野 菜(キュウリ、茄子等)、パ ンとビスケット、飲料(茶 及び果酒等)、果物(バナナ、

葡萄等)。

第 4 巻第 6 號 1918 年 6 月

育兒問答(續) 育兒問答(續) 魏壽鏞 1 歳以下では、お粥、米飯、

肉類、野菜、果物などを適 切に調理すべき。飲料は温 水 あ るい は牛 乳等 が宜し い。

73 第 6 巻第 9 號

1920 年 9 月

妊婦須知與育兒要言 妊婦心得と育兒要説 居慧貞 3 歳~6 歳児に相応しい食 物はビーフジュース、牛乳、

チーズ、卵、果物、野菜、

片栗粉等である。相応しく ない食物は、豚・牛肉、ハム、

コーヒー、ココア、ビール、

濃茶、缶詰等である。

※下線は筆者による