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非行タイプの学校不適応生の面接過程における共感性

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 124-143)

第8章 面接過程における共感性の事例的考察

第1節  非行タイプの学校不適応生の面接過程における共感性

衷的な立場をとった。

 なお,本事例では,紙面の関係ですべてのセッシwンは記述せずに,重要なエピソー ドに焦点を当てながら,その治療部分を断片的に取り上げて記述し,検討する。

3 事例の概要

(1)クライエント:15歳,女子

(2)主訴:学校不適応,反社会的行動

(3)生育歴,家族構成等(インチ・一・・Lク時の情報)

  母(会社員),妹(申学生),クライエント(以下,1子と記す)の3人家族である。

5歳までは父方祖父母と織面していたが,嫁姑の確執などもあり両親は離婚した。1子 は母親への父親の暴力を覚えている.その後,1子は親戚宅を転々と預けられたが,小 学校3年の時に母子3人の生活が始まる。1子は肥満を気にしており,周囲の視線を強

く意識する。中学2年の夏に祖父母が母親には内緒で実父に会わせしばらく行き来した が,1子が嫌がり,交流は再び途絶える。母親は,今園の相談に来所した時も,1子を 祖父母宅に預けたいと訴え,1子のことをもてあましていた。一方,母親は妹とは気が 合い,妹は手元に置きたいと話した。1子は妹にもケガをさせるほどの激しい姉妹けん かをする。母親は1子には厳格で時には手をあげるが,妹には同情的である。

(4)相談までの経緯

 1子は,小学校時代にS市内で3度の転校を経て,同市内の中学校に入学するが,転 校を経験する度に周囲に馴染めず,その頃から反社会的行動がみられるようになった。

その後過食症になり,母子関係の問題もあり,児童相談所に保護入所もしたが,この間 母親は一一ncも面会には来なかった。1子は,次第に不登校状態となった。さらに市外に 転校し,2〜3人の非行傾向の中学生と知り合ってから生活態度が変わった。中学1年 の3学期に反社会的事件(万引き,窃盗,恐喝等)があり,それをきっかけに生活のた て直しのためにと,さらにT市に転居し転校した。ここでは,通学し始めていたが,今 度は不登校傾向の見え始めた妹の転校したいという願いを母親が受け入れて,嫌がる1 子の気持ちはくみ取られず転居することになり,1子が中学3年生の4月に,本事例で 報告するU市の原籍中学に転入した。最初の3疑問は学級に入るが,クラスに入れず保 健室登校となったが,翌5月にはそれもできなくなり,5A末に母方祖母が相談を申し 込み,母親とともに来所し,6月初めから,相談機関に併設されているフリースク・一一・7Y

(適応指導教室に類似した形態をとるものである。以下,このフリーースクールを「教室j

と記す)に入級した。この時点から著者が1子のカウンセリングを担当することになっ た。著者は,その「教室」に教育相談のスーーパーバイザーとして関わっていたが,本事 例は,依頼されて,著者自身が直接教育相談を担当したケースの申の一事例,1子への カウンセリングの経過である。

 著者は,1子のような非行型の学校不適応児の場合には,まずはその子が自分の感情 を自覚しそれを内面に保ちながらの心理的支援が必要との見通しを持った。そのために は,カウンセラーである著者の共感的理解と,1子のその信頼できる相手との安定した 関係の申での感情の十分なやりとりと,適宜の教育的介入を基盤iとした。

4 面接過程

面接はX年6月から翌年3月まで,約1Qヶ月45回であり,原則週1回5◎分としたが,

必要に応じ適宜実施することもあった。著者は教室へは,週三回〜2回程度,生徒の嘉 吉時間帯のうち半N,出向くかたちをとっていた。

 各セッシraンを#○で示し,経過状況の説明の記載についてはその時期を(#○〜#

○)のように示す。

「」は1子の書葉 〈 〉は著者(以下,Thと記す)の言葉を褒す

 〈第1期〉(#1〜#7)【心の居場所探しの時期】

 (#1〜#3)教室には6月初めから通面した。初対面の1子の印象は,決して人の 目を見ようとせず傭いていた。対人回避が強く,教室に到着すると,人9を避けるよう に別室に入った。通級生とは誰とも言葉を交わさず,顔も会わそうとしなかった。家族 の問題対人関係の問題など,1子の抱える課題は多く,心の居場所探しのためには,

具体的な居場所作りから始めた。

 #4#5:f学校に行くのはまだこわいけど,ここならちょっと慣れた」と話し,9学 校は怖い」を何度も言った。具体的に学校の何が怖いのかということについては,「自分 でもわからない」となかなか書記にならない。しかし,1子との面接から,幾度も対人 関係や集団適応に失敗し落ちこぼれと言われてきた自信のなさからの予期不安が推察さ れた。1子は「先生はなんで私にやさしくしてくれるん?珍しい人やなあ」などと話し,

それまでの経験的な対人不信が感じられた。この教室のスタッフ逮からも怠学傾向と見 られがちだった。

 (#5〜#7)教室では,並行して学習指導も行われた。教室での1費の学習時問は

1時間がやっとだが,当面は,そのX子のペーaスを守りながら,できるだけ受容的な個 別援助を続けることとした。

 また,この頃の,Thを見つけるとすぐに目で合図をして手招きし,自分の方からT hを呼ぼうとする稚拙なしぐさや,Thと他の子どもとの関わりに見せる不安げな表情

に,これまでの1子の育ちの過程での希薄な愛情を感じた。まずはThとの1対1の関

係作りから始めるが,徐々に1子が肯定的な関心を示す1〜2人の通馬生との挨拶程度

の関わりを試みた。

〈第∬期〉(#8〜#21)【 対人関係の広がりと反社会的行動化の時期 】

 (#8〜#9)7月初め頃から,1子の行動に大きな変化が見られた。次第に心を開 くかのように,別室から皆と一緒の教室に入るようになった。入級当初は過度の緊張状 態であったのか,あれだけ人鼠を避けて別室に引きこもっていた1子とは別人にみえる

ほど,積極的に何人かの通級生と話し始めた。面接の中では,「私はこれまでいつも人と 話をするとボ瓢が出てたから,ここに来たときも誰ともしゃべらないようにしていた」

と話した。

 (#10〜#11)この頃,非行問題を繰り返していたし子の義心があり,最初1子

は拒否的で対立的な態度をとった。しかし1週間もすると,どちらからともなく接近し,

L子を中心に1子も含めた3〜4名の女子の行動が活発になり行動化していった。1子

たちは教室からもまっすぐに帰宅せず寄り摂することも多くなった。自己コントロール のきかないその状況から,Thは1子との面接でその新しいエネルギーを受け止めなが

らも,生活の枠作りをしていった。1子と具体的に話し始め,聞もなく:夏休みに入った。

1子と妹とのケンカに母親が耐え切れず,1子は母親の実家に夏休みの間預けられると のことで,その問,面接は休みとした。

 #12:2学期が始まり,1子は早速Thのもとにやって来た。夏休みに入り,母親

の実家にいたが,その墜苦しさに耐え切れず,10日程で家に戻った。夏休み後半には,

1子はL子たちとはいつしょに繁華街に出かけたりもした。結局,自宅の遠方だったL 子は,親の判断で夏休み明けには教室を退腐し,校区の学校に戻ったが,その後も1子 のL子たちとの交流は続いた。

 #13:珍しく誰よりも早く教室に来てThを待っていた1子は,「先生,ちょっと」

と小声で言いながら視線を送り,周囲を気にしながら手招きした。面接時間を設定し面 接室に入ると,「先生えらいことや。」 「絶対に言わんといてな。」と言う。くどうした

の?> 1子はしばらく黙って傭いていたが,実は昨ヨ近くのスーパーでL子たちと3 人で万引きして見つかり,保安係に家を闘かれ近所の親しい食堂の電話を教えてそこの おばさんに迎えに来てもらったと話した。これまでにも,何度かスーパーや警察などか ら保護者への連絡先を聞かれる度に,母親が迎えに行ったことは一度もなく,祖母など が行っていた。1子も連絡先に母親を伝えたことはなかった。最近ではこの食堂のおば

さんから母親に連絡が行くという経緯だった。盗ったのは化粧品や小物,アクセサリー などで,口紅はL子が何本もとったので何万円分にもなったという。1子は「絶対に誰 にも言わんといてな」と繰り返す。<安心しなさい。あなたに黙って言うことはないか

ら>

 1子は,嫁にはもうわかってしまったけど,きっと学校にもわかる。そしたら二度と 信用されなくなる。」「どうせ信用されなくていいけど。私は,家では信用されてるから。」

と話した。Thは,とっさにくそう,1子さんは,おうちでは信用されているのね〉と 応え,なにかしら違和感が残ったものの,その話をそれ以上は続けなかった。この時,

これ以上に面接が深まらずに次の会話に移ったのは,Thが1子の「家では信用されて いる」という言葉に違和感を感じたものの,突然のその丸葉をいったんそのまま受け止 めようとしたからである。Thは,これはほんとうの共感と言えるのだろうかという思

いは残った。

 そうして,引き続き1子が,「先生どうしょう?」と書つた。<今自分から正直に話し てくれたのは,事実がわかってしまうことよりも,もっと大切なことがあると思ったか らじゃないの?〉 「よくわからんけど,一人では苦しいから」 〈学校に信用されな いのはっらいと思うよ,だけどそれもこれからが始まりじゃない?〉 「これからどう するかということ?」 〈そうやね,今こそ,自分のことについてじっくり考えてほし い> 1子はこれから自分がどうなっていくかということへの不安を語った。そして,

Thはまずは行為の背景にある1子の内面の問題を1子と共にたぐっていくことにした。

母親に知らせなかった1子の内面やその母子関係にも取り組んでいくことにした。1子 との関係を保ちながら,一方では学校や社会という枠組みの中で1子が立ち直って行く ための教育的介入も必要と考えた。

 #14:結局,母にも学校にもその情報は入っており,学校での1子への指導も厳し く行われた。それをきっかけに,F学校はやっぱり私を悪い子と思ってる。ほかにも悪い ことしてるやろって散々言われた。どの先生もみんな疑ってる。みんなすごい顔で見て た。絶対に学校には行かん。二度と行かん。」と何度も訴えた。

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 124-143)